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 アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会との共催で、アマチュア写真家によるインターナショナル・フォトコンクール優秀者の写真展を開催しています。
 今年のテーマは、« Métiers du monde »(世界の職業)。世界5大陸74か国167名の参加者の中から25名の優秀者が決定されました。本展では、優秀者の44作品をご覧いただきます。ダイナミックな職業の驚くべき多様性と日々の仕事の厳しくも美しい側面の中で人間が表現されています。今回の優秀者の国籍は、中国、インド、ドミニカ、タイ、バヌアツ、コロンビア、ベネズエラなどいわゆる先進国以外の国が多く、職業もホワイトカラーではなくブルーカラーがほとんどです。そのためか、真剣に労働する人々の苦労、仕事をする喜びなどがダイレクトに伝わってきます。
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写真展示の様子


 

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Wulttiphat PHONGPHAEW(Thailande)

 

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Xiaogang NING(Chine) 1er Prix

 

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Samuel BREUIL(Republique Domunicaine)

 


また、金、土、日曜日14時からの上映会では、短編ドラマ『男の親友 (Le Meilleur ami de l’homme) 』(監督:ヴァンサン・マリエット)と長編コメディー『女優たちの宴 (Le Bal des actrices)』(監督:マイウェン・ル・ベスコ)を続けて上映します。
 短編『男の親友』は、犬の調教師がテーマ。男の親友の老いた犬、上司、恋人との関係を描いた12分の短いドラマです。見終わった後に不思議な余韻を残す作品です。
 長編『女優たちの宴』は、とてもおもしろい作品です。監督にダメだしされる女優、オーディションで落とされる女優、活躍の舞台をハリウッドへ移すべく英会話に磨きをかける女優、役づくりに触発されて母性が芽生え始める女優、全部嫌になってインドに行っちゃう女優…など「女優」のありのまま全てを汲み取ろうとする意欲的な作品です。監督のマイウェンは女優としても有名ですが、この映画の撮影がさまざまな問題を引き起こし、自分の家庭にも騒動を引き起こしてしまいます。しかし、これも事実なのかフィクションなのか・・・・。フランス映画が好きな人にはフランスの女優がたくさん出演していますので、興味深いことでしょう。

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マイウェン・ル・ベスコ(1976- )

なお、3月1日(土)14時から、アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会館長クリストフ・ドレイエール氏によるミニトークがあります。上映する作品の解説や写真の説明なども予定していますので、ぜひお越しください。

A.M
 

 愛知県文化振興事業団主催のコンサートシリーズ「ベートーヴェン―その原点と到達点」に関連し、ベートーヴェンの名曲を名演奏家の映像でお楽しみいただいていますが、いよいよあと3日で終了です。最後を飾るのは、晩年の傑作群、交響曲第9番「合唱」、ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)、オペラ「フィデリオ」です。いずれもベートーヴェンが渾身の力を込めた、人類の遺産ともういうべき力作です。
 

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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)

 

 特に3月8日(土)に愛知県芸術劇場コンサートホールで上演される「ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)」は、演奏に80分近くかかる大作で、教会音楽の中でも最高傑作の一つです。ベートーヴェンはこの曲の楽譜の冒頭に"Von Herzen ― möge es wieder ― zu Herzen gehen"(心から出で、願わくば再び、心へと至らんことを)と記しています。ミサ曲はカトリック教会の礼拝(ミサ)の中で歌われるものですが、この曲は、本来の意味を超えて、人類への普遍的な愛を歌ったものと言えましょう。ミサ曲の終章「dona nobis pacem(我らに平安を与えたまえ)」の冒頭には「Bitte um innern und äussern Frieden(内的そして外的平安を求める祈り)」と記されています。彼はその中で、神の世界、精神世界の平和のみならず、この世の平和を祈っています。「平和への祈り」は、戦争の影におびえる現代の人々の心にも強く訴えかけてきます。


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「ミサ・ソレムニス」より「キリエ」(冒頭)の自筆譜
※冒頭の余白に“Von Herzen ― möge es wieder ・・・・”という記述がある。

 

 また、2月16日(日)11時からは、ベートーヴェンを題材とした音楽映画「不滅の恋:ベートーヴェン」を上映します。ベートーヴェンが亡くなった後、秘密の家具の引き出しから3通の熱烈なラブレターが見つかったのです。筆跡はベートーヴェンのものでした。抑えようのない情熱がほとばしりるような、迫力と切迫感に満ちたこの手紙は、いつ、誰に向けて書かれたのか、また、相手に届けられたのかどうか、謎に包まれています。その手紙の一節を紹介します。
 「私の忠実な唯一の宝、私のすべてでいてください。あなたにとって私がそうであるように」
「あなたがどんなに私を愛していようと、私はそれ以上にあなたを愛している」
 「わが不滅の恋人よ、運命が私たちの願いをかなえてくれるのを待ちながら、心は喜びに満たされたり、また、悲しみに沈んだりしています。」
 この映画は、弟子のシントラーが、この手紙の「不滅の恋人」探しをするというストーリーです。映画にはフィクションもかなり含まれていますが、ベートーヴェンの女性との関わり(意外に女性にもてたようです。)や当時の社会風景なども描かれ、とても興味深いとともにベートーヴェンの音楽もたくさん使われ(音楽監督は指揮者のゲオルク・ショルティ)、音楽ファンにも楽しめる映画です。
 「不滅の恋人」がいったい誰だったのか・・・いろいろな説がありますが、現在の研究ではアントニア・ブレンターノ(1780-1869;オーストリア伯爵家の出、夫は銀行家)であるとされています。映画では別人となっていますが、謎のままであった方がベートーヴェンの希望に沿うのではないでしょうか・・・。
この映画は、上映終了後にアートライブラリー・ビデオブースで視聴することができます。


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「不滅の恋人への手紙」(最後の部分)
※「あなたを――私のいのち――私のすべて――
 お元気で――おお――私を愛し続けてください――
 あなたの恋人の忠実な心を、けっして誤解しないで。
 L. 
 永遠にあなたの  永遠に私の 永遠に私たちの」

 

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「不滅の恋人」とされるアントニア・ブレンターノ(1780-1869)

 

 なお、アートプラザ・カウンター横では、ミサ・ソレムニス(キリエ)と交響曲第9番「合唱」の自筆譜(ファクシミリ)を愛知県立芸術大学芸術資料館から借用して展示しています。

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 プラザ内で展示中の自筆譜(ファクシミリ)

 自筆譜を見ると、作曲家の個性が現れ、とてもおもしろいですね。ベートーヴェンの自筆譜は大変荒々しく、悪く言うと殴り書きみたいなのですが、苦闘しながら推敲に推敲を重ねて作曲している様子がよくわかります。こちらも是非ご覧ください。

(A.M)
 

 いよいよクリスマスです。街中がクリスマスの飾りやキャロルであふれています。クリスマスChristmasは、本来は「キリストChristのミサmass」という意味です。キリストの降誕を祝う祭です。

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The Adoration of the Shepherds(Gerard Honthorst 1590-1656)

 さて、アートプラザ・ビデオルームでの「クリスマス特集上映会」もあと4日間となりました。クリスマスを題材とした音楽、映画、オペラ、バレエなどを上映してきましたが、いよいよオラトリオの傑作、J.S.バッハの「クリスマスオラトリオ」とヘンデルの「メサイア」が登場します。

J.S.バッハとヘンデルは二人とも同年(1685年生まれ)、しかもドイツ東部の生まれですが、活躍場所や作曲内容は大きく異なります。J.S.バッハはアイゼナッハに生まれ、ドイツ東部(ワイマール、ケーテン、ライプチッヒ)で主に教会音楽家として活躍しました。一方、ヘンデルはハレに生まれましたが、イギリスに渡り、オペラ、オラトリオなどの劇場音楽の作曲家として人気を博し、イギリスに帰化しました。ローカルで地味ながら着実な仕事をしたJ.S.バッハに対し、外交的で華やかで国際的な活躍をしたヘンデル。現在では、評価は逆転し、J.S.バッハは「音楽の父」と呼ばれ、後世の作曲家に大きな影響を及ぼしました。ヘンデルの作品の多くは忘れ去られましたが、近年では再評価されています。
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             J.S.バッハ(1685-1750)                                            ヘンデル(1685-1759)

J.S.バッハの「クリスマスオラトリオ」は、「クリスマスの物語」(マリアとヨセフ、馬小屋の飼い葉桶に眠る幼子イエス、天使の群、羊飼いたち、東方3人の博士たちなどが登場)を基に6つの独立したカンタータ(礼拝用の音楽)を一つにまとめたものです。構成は、器楽曲、合唱曲、レチタティーヴォ(話すように言葉の抑揚をつけて歌われる曲)、アリア(旋律的に歌われる 曲)、コラール(ドイツ賛美歌)から成ります。クリスマスの喜びが伝わってくるような輝かしく素晴らしい音楽です。ビデオ作品はオリジナル楽器によるガーディナーの演奏とバッハの権威であるリリングの演奏の2種類を上映します。

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「クリスマスオラトリオ」冒頭(自筆譜)

ヘンデルの「メサイア」は合唱好きの人は誰でも知っている名曲です。「メサイア」とは救世主の意味です。聖書の言葉に基づき、イエス・キリストの生涯を、独唱・重唱・合唱で歌うもので、素晴らしい曲ばかりです。特に、第20曲のアルトのアリア「この方は侮られて」では、ヘンデルが感動のあまり涙を流しながら書いているところを召使が目にしたという説話も残っています。また、第2部最終曲の「ハレルヤ (Hallelujah)」(通称「ハレルヤコーラス」)は特に有名で、1743年、初めてロンドンで演奏された際、国王ジョージ2世が、「ハレルヤ」の途中に感動のあまり起立したため、それ以降“ハレルヤ”のところでは聴衆が立ち上がる習慣ができたといわれています。ビデオ作品は、ホグウッドによるオリジナル楽器による演奏です。
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「ハレルヤコーラス」終結(自筆譜)

この他にも、名歌手や有名合唱団のクリスマス・キャロルも上映しています。本物のクリスマスの喜びを味わっていただければ幸いです。
(A.M)

 今年は、ストラヴィンスキーのバレエ「春の祭典」が初演されて100年です。

 文化情報センターでは、この記念年にあわせて、Co.山田うんによる「春の祭典」公演を行うとともに、「春の祭典」を特集したビデオ上映会を開催しています。
 11月9日にビデオルームで開催されたミニトークでは、当センターのダンス専門の学芸員である唐津絵理が、「春の祭典」の見どころやCo.山田うんの公演の特徴について熱く語りました。
以下、概要をかいつまんでお伝えします。

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バレエ・リュスについて **************

 「春の祭典」はバレエ・リュス(ロシア・バレエ)のために作曲されたバレエ音楽です。
 ディアギレフというロシアのプロデューサーが、ロシアの優れたダンサーを集め、西欧に新しい息吹を紹介しようとします。それ以前のバレエ音楽は、踊りやすいように作曲された単なる伴奏でしたが、ディアギレフは新しい音楽による完成度の高い作品を創り上げます。さらに一流の美術家にも舞台美術を依頼し、総合的な芸術作品を完成させます。
 バレエ・リュスに参加したアーティストは、ピカソ、シャガール、ラヴェル、サティ、ドビュッシー、シャネル、コクトー等、きらめく宝石のようですね。

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Leo Bakst (1866-1924). ''Portrait of Serge Diaghilev and His Nanny'' (1906).


「春の祭典」について **************

 「春の祭典」には明確な物語はありません。第1部「大地礼賛」では、春の到来を祝い、大地に感謝する踊りが踊られます。第2部の「犠牲」では、太陽神イアリロに捧げられるため、一人の処女が生け贄として選ばれ、祭壇の前で激しいダンスを踊り息絶えます。
 ストラヴィンスキーの書いた音楽は、複雑で不規則なリズムや変拍子を多様化したため、踊り手はリズムやカウントをとるのが大変でしたが、リトミック理論に想を得て、よる振付を行い、120回のリハーサルを経て完成しました。

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Igor Stravinsky as drawn by Pablo Picasso (dated 31 December 1920).


「春の祭典の騒動」について **************

 1913年5月29日、パリのシャンゼリゼ劇場で初演を迎えましたが、歴史に残るスキャンダルとなりました。ストラヴィンスキーの音楽は理解不能、ニジンスキーによる内股を強調し、大地を踏み鳴らすような斬新な振付に聴衆は度肝をぬかれ、ブーイングや叫び声でオーケストラの音が舞台に届かず、ニジンスキーは舞台袖でダンサーに大声で拍子を叫びました。
 なお、ニジンスキー版は、アメリカのミリセント・ホドソンとケネス・アーチャーの尽力により再振付されました。直筆のドローイングが展示してあります。(アートプラザカウンター横)

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Dancers in Nicholas Roerich's original costumes
 

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Sketches of Maria Piltz performing the sacrificial dance
 

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ホドソン氏のドローイングと手紙〔展示中〕


「結婚」と「日本の3つの抒情詩」について **************

 今回のCo.山田うん公演では、ストラヴィンスキーの「結婚」と「日本の3つの抒情詩」もあわせて上演します。〔愛知芸術文化センター委嘱〕
 「結婚」は1923年に完成された、ロシアの農民の結婚式をテーマとしたカンタータです。ニジンスキーの妹のニジンスカが振付けました。「結婚」の持つ幸福感や希望のような甘いイメージとは正反対の淡々とした抽象的な作品です。今回の上演では家族や友人などの群舞を排除し、新郎新婦の2人だけで踊ります。
「日本の3つの抒情詩」は、1913年に作曲された3つの和歌(山部赤人、源當純、紀貫之)による短い作品です。「春の祭典」と「結婚」をつなぐ大変重要な作品です。

 

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 ビデオ上映会では、「春の祭典」のオーケストラ演奏、バレエ、ドキュメンタリーなど異なった演奏や振付による多彩なメニューを用意しています。オーケストラでは、先日名演を披露したばかりのサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルの演奏がお勧めです。ラトルは打楽器奏者出身なので、リズム感が抜群です。バレエでは、ベジャールの振付がお勧めです。人間の欲望や愛と性、生への闘争を壮大に描いています。

http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/plaza/videoimg/13b_spring.pdf


 Co.山田うんの「春の祭典」公演は、12月5日〔木〕、6日(金)19時から愛知県芸術劇場小ホールで開催されます。詳細は次のアドレスをご覧ください。

http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/jishyu/2013/13spring/index.html

(AM)
 

 2013年はジュゼッペ・ヴェルディの生誕100年の記念年。このため、世界中のオペラハウスでヴェルディのオペラが例年以上に多く上演されています。ヴェルディは生涯に26のオペラを作曲しました。今回の上映会では、26のすべてのオペラを作曲順にたどっていくことにより、ヴェルディの音楽の深化の過程をたどることができます。

 ヴェルディ全集1.jpg ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)

 

 映像の舞台は、ヴェルディゆかりの生誕地(プッセート)近郊にあるパルマのテアトロ・レージョの上演が中心です。テアトロ・レージョでは、毎年ヴェルディ・フェスティバルが開催されており、イタリアの伝統的な舞台や演出を楽しむことができます。
 

 ヴェルディ全集2.jpg Teatro Regio di Parma

 

 今週で最後となる今回の上映会は、ヴェルディ後期から晩年にかけての6作品(『仮面舞踏会』、『運命の力』、『ドン・カルロ』、『アイーダ』、『オテロ』、『ファルスタッフ』)で、完成度の高い珠玉の傑作ばかりです。ドラマティックな展開、優れた心情の描写、華麗で美しいメロディーなど、音楽と演劇が見事に融合したイタリア・オペラの完成した姿が見られます。
 その中でも、最晩年の作品『ファルスタッフ』は、喜劇の最高傑作です。シェイクスピアの原作をもとに、老騎士ファルスタッフをとりまくドタバタの喜劇が個性豊かな登場人物と美しい旋律に彩られています。ヴェルディは、「自分の楽しみのために作った」と言っていますが、晩年の達観した心情が反映されているかのようです。
 

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 『ファルスタッフ』を監修するヴェルディを描いたスケッチ。
フランスの週刊誌「L'Univers illustré」が1894年に掲載


 さて、ヴェルディの遺産の一つが、「音楽家のための憩いの家 Casa di Riposo per Musicisti」です。世界でただ一つ、年老いた音楽家が共同で生活し、人生を全うするための家です。ヴェルディは、他の音楽家仲間の恵まれない最期を憂えて,晩年私財を投じてミラノに施設を建設しました。「私の最高傑作」とまで呼んでいます。かつての指揮者,ピアニスト,バイオリニスト,バレリーナなど,約50人の老音楽家たちが,現在も暮らしているということです。中でも世界最高のオペラハウス・スカラ座の舞台で活躍した人が多いとのこと。彼らが最後まで音楽家として尊厳を保ち、真剣に人生に立ち向かう姿は感動的です。なお、ヴェルディの墓もこの憩いの家に眠っています。
 

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音楽家のための憩いの家(ミラノ)

 

 ヴェルディのオペラの映像はアートライブラリーでたくさん所蔵しています。見逃した方は、こちらで見ることができます。

A.M
 

 あいちトリエンナーレのオペラとしてプッチーニの名作『蝶々夫人』が上演されます。この公演に関連し、『蝶々夫人』を中心にプッチーニのオペラやジャポニスム・オペラを上映していますが、連日、大盛況です。席は30席用意してありますが、先着順ですので、お早めにお越しください。

 蝶々夫人1.jpg ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)

 

『蝶々夫人』の魅力
 このオペラは、美しいメロディと悲しいストーリーで世界中で愛されています。ピンカートンの帰りを待ち続ける蝶々さんの純情な姿は、私たちの心を動かします。泣けるオペラの代表格ですね。プッチーニはメロディーと和声の天才です。「愛の二重唱」、「ある晴れた日に」、「ハミングコーラス」など名曲がいっぱいです。
 また、日本人にはおなじみの日本のメロディも多く含まれています。「君が代」、「さくらさくら」、「お江戸日本橋」、「越後獅子」、「鬼さんこちら」、「宮さん宮さん」など。プッチーニは、当時、ヨーロッパを巡業して人気を博していた、名古屋にもゆかりのある川上貞奴らに取材し、取り入れたのです。
 
蝶々夫人2.jpg 川上貞奴(1871-1946)

 

初演は歴史に残る大失敗
 「世界3大初演失敗名作オペラ」としても有名です(他の2つは『椿姫』と『セビリヤの理髪師』)。1904年2月17日ミラノ・スカラ座での初演は大失敗でした。失敗の理由は、第2幕に1時間半を要すなど上演時間が長すぎたことや、文化の異なる日本を題材にした作品であったため観客が違和感を覚えたという原因が挙げられています。
 しかし、プッチーニは、改稿に取りかかり、3か月後の5月28日、イタリアのプレッシャで行われた公演は、大成功を収めました。因みに、1906年のパリ公演のために改定された第6版(パリ版)が、蝶々夫人の決定版となっています。

 今回は、蝶々夫人初演100年を記念して日本で上演されたプレッシャ版による映像も上映します。

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初演時のポスター:Adolfo Hohenstein (1854–1928)

 
ジャポニスム・オペラ
 ジャポニスムは、19世紀後半からフランスを中心としたヨーロッパで見られた日本趣味のことです。万国博覧会(国際博覧会)への出品などをきっかけに、日本美術(浮世絵、琳派、工芸品など)が注目され、西洋の作家たちに大きな影響を与えました。日本の文化そのものが当時のヨーロッパのブームとなりました。

 蝶々夫人4.jpg クロード・モネ「ラ・ジャポネーズ」(1876)

 

 オペラでは、イタリアの作曲家マスカーニ(1863-1945)による『イリス(あやめ)』があります。江戸を舞台に、盲目の父・チェーコと住む娘・イリスが騙されて遊郭に売られていく悲しいストーリーをマスカーニが美しいメロディーで作曲しています。
 また、イギリスの作曲家サリヴァン(1842-1900)によるオペレッタ『ミカド』もあります。イギリスの空前の日本ブームに乗っかったもので、当時の英国の世相、上流階級や支配階級に対する辛辣な風刺を、作品の舞台を英国からできるだけ遠い「未知の国・日本」に設定し、ストーリーを展開させています。

 蝶々夫人5.jpg 「ミカド」のポスター


『蝶々夫人』や『イリス』、『ミカド』は、アートライブラリーで鑑賞できます。

(A.M)
 

プーシキン美術館展「フランス絵画300年」関連企画として、絵画と同様に17世紀半ばから20世紀半ばまでのフランス音楽の歩みをたどるビデオ上映会をアートプラザ・ビデオルームにて開催しています。
(6月23日(日)まで)

西洋音楽の本場と言えば、「音楽の都」ウィーンを思い浮かべる方が多いと思いますが、フランスも負けてはいません。「芸術の都」であるパリは、ヨーロッパ隋一の大都市として、多くの芸術家が集まってきました。音楽の分野では、17世紀からロココ風の華やかなフランス宮廷音楽が栄え、フランス音楽の基礎を築きます。19世紀にはスペクタクルな見せ場を持つグランドオペラも盛んに上演されるようになりました。

19世紀後半から20世紀初頭にかけてのパリは、数回の万国博覧会が開催され、世界各地から多彩な文化が集まります。そういう中で、時代の最先端を走る芸術家たちが活躍します。当時は、音楽や美術、文学、舞台芸術が、互いに影響し合い、時に共同で作品をつくり上げる成熟した文化活動が行なわれていました。

ルノワール(1841-1919)、モネ(1840-1926)、ドニ(1870-1943)などの印象派の画家たちと交流があった代表的な作曲家はクロード・ドビュッシー(1862-1918)です。ドビュッシーは同時代に活躍した画家や詩人から得たインスピレーションを作風に反映しています。代表作の『牧神の午後への前奏曲』(1892-94年)は、象徴派の詩人マラルメ(1842-1898)の「牧神の午後」(1876年)に感銘を受けて生まれました。また、印象派、象徴派の画家たちからの影響は、ピアノ曲「版画」(1903年)や「映像」(1905-12年)といった視覚芸術を想起させる作品にも反映されています。

今回の上映会ではドビュッシーの代表作であるオペラ「ペレアスとメリザンド」(1902年初演)を取り上げています。大変繊細で美しいオペラで、感覚的な音楽表現により美しい情景を描写しています。近代オペラ最高傑作の一つです。

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ドビュッシー                                     ルノワール(1875年頃)
 
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モネ(1899年)                                         ドニ

 


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マラルメ(1896)

他に画家との関わりのある作曲家に、フランシス・プーランク(1899-1963)がいます。プーランクは、バレエ・リュスを主宰するセルゲイ・ディアギレフからの委嘱によってバレエ『牝鹿』を作曲しますが、そのときの舞台・衣装はマリー・ローランサン(1883-1956)が作っています。
今回上映するプーランクのオペラ『カルメル会修道女の対話』(1956年初演)は、フランス革命時における修道女たちの処刑を描いたもので、大変美しく、味わい深い作品です。最後に修道女たちが聖歌を歌いながらギロチンにかかって死んでいくシーンは衝撃的で、涙を誘います。


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プーランクとワンダ・ランドフスカ                         マリー・ローランサン(1932年)

フランス音楽を聴いた後に、フランス美術を見ると、描かれた当時の時代の雰囲気がより理解できるのではないでしょうか。

なお、6月13日(木)の朝日新聞夕刊(9面)にも「もっと!プーシキン美術館展 画家と作曲家の交流感じて」と題して、今回の上映会の紹介がされています。
フランス音楽8.jpgのサムネール画像
朝日新聞名古屋本社転載許諾済

(A.M)
 

 

   「韓国アニメーション・ポスター展」開催中です!!

 

 来る518()19()に、アートスペースEFで開催する「花開くコリア・アニメーション2013」に先立ち、アートプラザにて「韓国アニメーション・ポスター展」を開催しています。

この上映会は、日本ではまだ十分に知られていない、韓国の質の高いアート系アニメーション作品の鑑賞機会を設けようとするものですが、ポスター展は、作品の雰囲気に一足早く触れ、また、その制作背景などの一端を知る機会となっています(519日まで開催)。

 まず目を引くのが、やや劇画的なニュアンスも入った、リアルな人物描写が静かな迫力を醸し出している『豚の王』(2011年、監督:ヨン・サンホ、英語題:The King of Pigs18()14:00/19日(日)16:20の2回上映)のポスターです。この作品は、昨年、韓国の長編アニメーションとしては初めて「第65回カンヌ国際映画祭」監督週間に招待された話題作で、韓国インディペンデント・アニメーション協会がいち早く対応してくださったお蔭で、昨年のポスター展で展示することが出来ました。このインパクトの強いイラストを、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。

 いよいよ今年、「花開くコリア・アニメーション2013」でこの作品が日本初上映されることを受けて、ポスターも再登場する運びとなりました。この作品の上映は、現代のアニメーションが、人間の心の深い闇の領域をも表現する力を有しているのだと知る、良い機会となるのではないでしょうか。koreaanime01.JPG

 『豚の王』の右隣にある小型のポスターが、今回、来日を予定しているキム・ギョンジン、チョン・ミニョン両監督の『楽園』(2011年、18()16:00「短編Bプロ」で上映)です。手前のアクリル・ケースには、この作品のスチルや、メイキング写真、キャラクターを造型する元となったドローイングのパネルを収めています。メイキングを見ると、撮影にデジタル一眼レフ・カメラを使用している様子や、ドローイングと実際に造型されたキャラクターの微妙なニュアンスの違いも垣間見られ、興味深い内容となっています。koreaanime02.JPG

 なお、18()17:30から、両監督に日本から人形アニメーション作家の江口詩帆さんを加えて、トーク「日韓ストップモーションの世界」を開催します。また、19()10:30より、この三者の指導によるワークショップ「コマ撮りでマジックショー!? みんなで変身トリック映像を作ろう!」も行います。

 毎回、ユニークなイラストがかわいいと評判な「Indie-AniFest」のポスターも、2007から12年までの6枚をまとめて展示しています。「花開くコリア・アニメーション」は、毎年秋に韓国・ソウルで開催されている「Indie-AniFest」の巡回プログラムですので、これらポスターはチラシの原イメージともいえるものです。一般的にポスターは、催し物の情報を人々に伝達することがその大きな役割ですが、会期終了後に時間を置いて眺めてみると、改めてイラストやデザインの良さが伝わってきたりするものです。この機会に、ぜひお立ち寄ください。(T.E)

 

 

 私たちにできることは「忘れないこと・想うこと」。
 東日本大震災の直後から被災地に入った、タレントで書家の矢野きよ実さんは、壊滅的な被害を受けた日本の硯シェア90%を誇る硯のまち宮城県石巻市雄勝の地に立ち、その際ガレキの中から出てきた傷だらけの硯と出逢ったことをきっかけに、被災地の子どもたちと「心の声」を聞きながら一緒に書をかき、そして、子どもたちから預かった書を全国で展示する活動を続けています。

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初日に会場に訪れた矢野さん
 

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展示風景

 今回の展示会場は、名古屋市の中心部にある愛知芸術文化センター。オアシス21地下連絡通路から入った地下2階アートプラザ前の広場で、4月16日から5月12日まで開催しています。
 子どもたちの心の叫びを見てください。


※作品のコメントは、会場で配布中の小冊子『子どもたちの心の音』より。

 

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「父」
「父ちゃん亡くなったけど、ここに書いたらずっといるからみんなに俺の父ちゃんみせて」と預けてくれました。
 

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「3月11」
忘れられない津波
 

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「命」
しん災で多くの人がなくなったから命が大切 


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「春」
早く春が来てほしいと思った

 

(K.I)
 

 「3.11」未曾有の災害をもたらした東日本大震災から2年が経ちました。
 しかし、復興はまだこれからです。ふるさとを離れ、帰れるめどの立たない人々がたくさんいます。福島第一原発事故は、いまだに終わりが見えません。
 あのとき何が起きたのか、いま被災地がどのようになっているのか。あらためて震災のもたらしたものを考えるとともに、復興に向けての思いを新たにしていただきたいということで企画しました。
 写真は、朝日新聞の報道カメラマンが現地で撮った、選りすぐりのものばかりです。悲しみ、うめきから、希望、喜びまで、被災地の方々の思いが生々しく伝わってきます。
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 写真展は、次の4部から構成されています。
第1部 あのとき何が
第2部 原発事故
第3部 悼む
第4部 明日へ


 これらの写真の中から一部をご紹介します。(写真・キャプションは朝日新聞社提供)


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「慟哭」
大津波で壊滅的な被害を受けた宮城県名取市閖上地区で、道路に座り込み涙を流す女性(2011/3/13宮城県名取市閖上)
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「見つけたよ」
「あったあ!」。全壊した自宅の中からお気に入りのノートを見つけ出した小学2年生(2011/3/30宮城県石巻市)

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「無念」
「原発さえなければ」。新築したばかりの堆肥舎の壁にメッセージを残し、酪農家は命を絶った。出荷停止で原乳を捨てる日々が続いていた。(2011/6/13福島県相馬市)

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「いたわる」
高田松原で津波被害に耐えて1本だけ残った「奇跡の一本松」。中秋の名月がいたわるように照らす。衰弱のため枯れてしまい伐採されたが、特殊加工されてモニュメントに(2011/9/12岩手県陸前高田市)

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「帰ってきて」
明かりを頼りに死者が帰ってくると言われる「松明かし」を自宅跡地でする女性。震災で母と祖母を亡くし、当時4歳の長男は行方不明。「いつまでもずーーっと帰りを待ってるからね」(2012/8/14岩手県大槌町)

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「笑顔輝く」
福島第一原発事故の影響で外遊びを控える子どもたちにと、福島県立美術館に敷布団の巨大オブジェがつくられた。子どもたちの笑顔が輝く(2012/11/9福島市)

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「待望 」
津波で大きな被害を受けた宮城県名産の養殖カキが解禁された。県内初の仮設処分場が完成し、殻むき作業をする人たち。「この日を迎えられたことに感謝したい」(2012/10/15宮城県南三陸町)

 

 写真展は5月12日(日)まで開催中。「矢野きよ実被災地支援プロジェクト 子どもたちの心の音―石巻・陸前高田.・亘理・福島より―」も同時開催中。入場無料ですので、お気軽にお越しください。

(A.M)
 

 ドイツの巨匠ウォルフガング・サヴァリッシュ氏が今年2月22日に亡くなられました。氏の偉業を偲び、氏の関連本や写真などをアートプラザで展示しています。
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 サヴァリッシュ関係図書として、アートライブラリーには次の2冊が所蔵されています。
・『音楽と我が人生』(ウォルフガング・サヴァリッシュ著、真鍋圭子訳 第三文明社
・『サヴァリッシュの肖像』(ハンスペーター・クレルマン著、前田明雄訳 日本放送出版協会
前者は自伝ですが、表紙を開けてびっくり。サヴァリッシュ氏のサインとともに「NOVEMBER 1992」という年月が書いてありました。更に、あとがきには、訳者である真鍋圭子氏(現サントリーホール エグゼクティブ・プロデューサー)の署名もありました。通常、図書館の蔵書にはサインはしないのですが、これはきっと何か経緯があるはずだと思い、調べてみました。


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サイン入り自伝『音楽と我が人生』

 

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「バイエルン国立歌劇場1993/1994年鑑」(左)と『音楽と我が人生』の表紙(右)


 1992年11月はサヴァリッシュ氏がバイエルン国立歌劇場とともに、愛知県芸術劇場での杮落とし公演のため滞在していた時です。オペラ準備を担当していた田中民雄氏(当時愛知県文化振興事業団課長補佐)に伺ったところ、その経緯がわかりました。
 田中さんにその時の経緯やエピソードなどを寄稿いただきましたので、ご紹介いたします。
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「名総監督サヴァリッシュ氏と愛知県芸術劇場」
 1992年11月、オープンした愛知県芸術劇場のこけら落とし公演は、バイエルン国立歌劇場によるリヒャルト・シュトラウスの『影のない女』で幕を開けた。
 その時の総監督が、ヴォルフガング・サヴァリッシュ氏であった。あれから20年、そのサヴァリッシュ氏が今年2月22日ドイツ・グラッサウの自宅で亡くなった。89歳であった。
「このホールは、すばらしいコンサートホールになるでしょう。でも、もう少し客席を長くすれば、もっとすばらしいホールになると思うが、伸ばせませんか?」。これが1991年9月に建設中のコンサートホールを視察したサヴァリッシュ氏の第一声であった。彼は、ワインヤード型のホールよりも、ヨーロッパ伝統のシューボックス型のホールの方がお好きなようだった。
 視察を終えたあとの記者会見で、サヴァリッシュ氏は、「来年この劇場で本当のプレミエ(初演)、オペラの歴史に残る新しい出来事を体験するでしょう」と予告した。さらに彼は、「オープニングで上演する『影のない女』は、日本とドイツの両国にまたがる文化のかけ橋となるであろう」と語った。この言葉は、当日のプログラムの彼のあいさつにも書かれている。
 当初、世界初演はバイエルン国立歌劇場で行われることになっていた。ところが、バイエルン国立歌劇場の舞台機構にアクシデントが生じ、改修する必要が生じたため、急きょ世界初演を新しくオープンする愛知県芸術劇場で行った。思わぬアクシデントのおかげで、新設の愛知県芸術劇場が世界初演の栄誉を歴史に残した。
愛知での世界初演を、総監督のサヴァリッシュ氏は決断した。愛知に決めた理由は、計画どおり劇場が完成することを事前の視察で確かめていたこと。そして、両劇場の関係者の間に強い信頼関係ができていたためである。
 サヴァリッシュ氏とドイツ留学経験のある愛知芸術文化センターの飯島宗一総長とは、初対面の時から、お互いをdu(君)で呼び合う親しい間がらであった。一方、両方の技術スタッフたちも、信頼と仲間意識が十分にできていた。これには、この劇場の建設委員で舞台監督の小栗哲家さんの存在が大きかった。小栗さんは、愛知県半田市出身で、優れた舞台監督として海外で広く知られており、バイエルン側の技術スタッフは、小栗さんに全幅の信頼を寄せていた。
 サヴァリッシュ氏は、事前に劇場を視察した時に、劇場の総監督の仕事として、約400人に及ぶソリスト、オーケストラ、コーラス、そしてスタッフが宿泊するホテルを下見し、ソリストたちの部屋割りも自分で決めていった。
 公演本番の2週間前、オーケストラだけの練習が大ホールのオーケストラピットで始まった。この日は、まだサヴァリッシュ氏が指揮する予定の日ではなく、リハーサルは練習指揮者が進めていた。
 そこへ、客席のうしろ扉からサヴァリッシュ氏がホールに入ってきて練習を見ていた。しばらくするとサヴァリッシュ氏は、背広を脱ぎ、白いワイシャツ姿でオーケストラピットに降りてゆき、指揮をし始めた。するとオーケストラの音は一変し、リヒャルト・シュトラウスの重厚なサウンドが大ホールに響き渡った。オーケストラから流れ出てくる音は、CDで聴いていた音とは全く異なり、ホールで聴く音は全く別世界の音だった。
 結局、彼は『影のない女』の第1幕を、途中止めることもなく通してしまった。本番そのものの演奏だった。時間にして約30分。客席で聴いていた私は、思わず「ブラボー」と、小さな声で叫んでしまった。
 サヴァリッシュ氏は、演奏旅行にメヒトヒルト夫人を同行してきた。夫人は、母親のように温和な性格のすてきな女性で、いつも夫のそばにいた。サヴァリッシュ氏は、いつも「ごめん、ごめん」と言いながら夫人に優しく語りかけ、夫人は、毎日ホテル近くのデパートの地下売場へ出かけ、夫のためにパンを買い求めていた。
11月8日から始まった世界初演の公演は、国内外からやってきた多くの観客に深い感動を与えた。公演は、国内外の新聞や雑誌、テレビなどで報道されるとともに、高い評価をもって祝福された。
 その後、『影のない女』は、高い評価を証明するように、ミュンヘン国立歌劇場でレパートリーとして、たびたび上演されている。
 文化情報センターのアートライブラリーに、サヴァリッシュ氏の著書『音楽と我が人生』がある。サヴァリッシュ氏に、来館の記念にサインをお願いしたところ、彼はすごいスピードで見事なサインをした。同行していた翻訳者である真鍋圭子さんも、本の最後のページにサインをして来館の記念とした。
 我が家に、セラミックスで作ったバイオリンの形をした白い風鈴が掛っている。同じ風鈴をサヴァリッシュ氏にプレゼントした。彼は、風鈴が気にいったらしく「この風鈴を掛ける場所をもう決めましたよ。」と、嬉しそうに鳴らしていたのを思い出す。
 サヴァリッシュ氏が逝ってしまった今、「日本とドイツにまたがる文化のかけ橋」を渡って、素晴らしいオペラ作品をドイツに届けることが、サヴァリッシュ氏に対する恩返しかもしれない。
今は、ただご冥福をお祈りするのみである。
2013年4月1日
日進市副市長 田中民雄
愛知県文化振興事業団課長補佐)
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 日本初のオペラハウスである愛知県芸術劇場オープン当時の熱気や、この公演にかけるサヴァリッシュやスタッフの熱い思いが生き生きと伝わってきます。貴重な証言ですね。

 田中さん提供の写真も展示しています。
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サヴァリッシュ(右から4人目)と先代猿之助(右から3人目) 東急ホテルでの歓迎パーティにて
 
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サヴァリッシュ夫妻(後列右から2,3人目)を囲んで記念撮影(ナゴヤキャッスルにて)

 

 また、サヴァリッシュのCD、映像作品もアートライブラリーに多く所蔵していますので、こちらもぜひご利用ください。
 

 (A.M)

IWD0.gif 「3月8日」が「国際女性デー(International Women’s Day(以下「IWD」)」ということをご存知ですか? 女性の平等な社会参加を求める運動が起源となり、国際連合が1975年の国際婦人年に定めたものです。現在では、多くの国々で祝日や記念日とされ、女性同士で、また、男性から女性へ、感謝と敬意の気持ちを込めて、プレゼントが贈られています。

 今回は、このIWDを記念して、女性をテーマとした写真展とビデオ上映会を3月5日(火)から17日(日)まで、アートプラザ・ビデオルームで開催します。
 写真展「Planète femme 世界の女性たち」は、アリアンス・フランセーズ財団とクーリエ・インターナショナル誌が行った写真コンクールに参加した世界80 か国以上のアマチュア写真家たちの作品の中から、ファッションとアートの専門家たちからなる審査委員会に選ばれた最良の作品をご紹介します。審査員には、審査員長のアニエス・ベーを筆頭に、ソフィー=アン・デロム(クーリエ・インターナショナル誌アートディレクター)、クリスティーヌ・レイリッツ(マリクレール誌編集長)、さらにマリー=アンジュ・ムロンゲ(ルイ・ヴィトン文化施設責任者)らが名を連ねています。
 写真は、少女から老女まで、世界の女性たちのそれぞれの思いが伝わってくるものばかりで、「世界の女性たちに捧げるオマージュ」と言えるでしょう。
  IWD1.jpgphoto: Sam Lim

 

IWD2.jpgphoto: Enrique Lopez Ortega

 

IWD3.jpgphoto: Luca Khour

 

IWD4.jpgphoto: Zhanna Zdorova

 

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展示風景

  
 ビデオは、最新のフランス映画で「C’est gratuit pour les filles (女の子は無料)」(2009 年フランス、23 分)と「Tout ce qui brille (きらきらしている)」(2010 年フランス、100 分)の2作品を毎日上映します(日本語字幕付き)。
 「女の子は無料」は、プロの美容師になろうとする若い女の子二人の青春物語です。この作品は、フランスで最も権威ある映画賞である第35回 セザール賞(2010年)での短編映画賞を始め世界で5つの賞を受賞しています。
 長編映画の「きらきらしている」は、コメディ作品です。題名は、フランスの格言「Tout ce qui brille n'est pas or(光るもの必ずしも金に非ず)」からとられています。きらきらしたパリとその周囲に集う人々に憧れて、仲良しの女性2人がその世界に入り込もうとするストーリーです。とても楽しく、フランスの若い女性の考え方やパリの生活風景もよくわかり、楽しめる映画です。

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Géraldine Nakache et Leïla Bekhti lors d'une conférence de presse du film Tout ce qui brille (2010), reproduisant leur pose de l'affiche du film.


【プレゼントのお知らせ】
 3/8(金)のIWDに来場され、アンケートに回答いただいた方に、メナード化粧品から
IWDリップキャンペーンプレゼントがあります。数に限りがありますので、お早めにお越しください。
 メナード化粧品は、IWDに関連し、開発途上国の子どもたちに教育支援を行うNPO法人「ルーム・トゥ・リード・ジャパン」の女子教育支援プログラムをサポートしています。
 (A.M)

 

 東海地域は昔から芸能が盛んです。現在でも日本舞踊やバレエなどの習い事が盛んな地域です。また、愛知県内には4つの芸術系の大学があり、多くのアーティストを輩出しています。


 愛知県文化情報センターでは、地元のアーティストを支援し、その活動を紹介するため、様々な情報発信を行うとともに、アートライブラリーにおいて、関連の図書、図録、録音・録画資料などを重点的に収集しています。
 今回の上映会では、アートライブラリー所蔵の映像資料の中から、美術、音楽、映像、舞踊、演劇、オペラなど18本の作品を選びました。ラインアップを紹介しましょう。

 

 まず、美術では、次の5人を取り上げました。
 三岸節子氏(1905-1999)は旧尾西市(現一宮市)生まれで、女性画家の第一人者として、力強い作品を多く生み出しました。生家跡地に「三岸節子記念美術館」があります。
 片岡球子氏(1905-2008)は、ダイナミックな作風の日本画家として著名で、愛知県立芸術大学の日本画の礎を築きました。同大学の講義棟の壁には片岡氏の作品が描かれ、芸術を目指す学生を今でも見守っています。
 杉本健吉氏(1905-2004)は名古屋市生まれ。吉川英治作の『新・平家物語』等の挿絵で絶賛を得ました。また、名古屋能楽堂の鏡板で、定番となっている老松でなく若松を描いたため物議を醸しました。美浜町には「杉本美術館」があります。
 島田章三氏(1933-)は、愛知県立芸術大学学長や芸術文化センター総長を歴任されました。画家の島田鮎子夫人ともに、独自の絵画表現を確立してきました。

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島田章三《課題制作》 1980年

 荒川修作氏(1936-2010)は名古屋市生まれ。前衛的な芸術家として、日本より海外で先に高く評価されました。岐阜県養老町の「養老天命反転地」(1995年)は代表作の一つです。

 

 音楽では、ヴァイオリニストの竹澤恭子氏(1966-)を取り上げました。竹澤氏は大府市生まれ。スズキ・メソッドとして知られる才能教育研究会で学んだ後、ジュリアード音楽院へ留学して研鑽を積み、世界的な評価を勝ち得、現在では、世界中で演奏活動を続けています。

 

 映像では、愛知芸術文化センターオリジナル映像作品の作家2人と名古屋市出身の映像作家を取り上げました。
 前田真二郎氏(1969-)は、映像作家で岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の准教授です。今回の『王様の子供』では映像表現の新たな局面を切り開いています。
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『王様の子供』の1シーン

 三宅流氏(1974-)は岐阜県出身の映像作家。『究竟の地--岩崎鬼剣舞の一年』は、岩手県北上市の岩崎地域に古くから伝わる民俗芸能「岩崎鬼剣舞」(国指定重要無形民俗文化財)にたずさわる人々を一年間追い続けたドキュメンタリー作品です。
 なお、前の2人の作品は、愛知県文化情報センターのオリジナル映像作品として制作されたものです。
 名古屋市生まれの松本俊夫氏(1932-)が日本の代表的な実験映画の作家として著名で、戦後の映像作家に大きな影響を与えました。
 

 舞踊では、名古屋市出身の2人を取り上げました。日舞の山路曜生氏(1929-2010)は、創作日本舞踊家として地域の日本舞踊の発展に貢献しました。
 コンテンポラリーダンサーの平山素子氏は、振付家としても、日本のダンスシーンをリードする存在として注目を集めています。『After the lunar eclipse/月食のあと』は、愛知県文化情報センターが2009年にプロデュースした作品で、2011年にも再演されています。
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平山素子 近影

 

演劇では次の4つを取り上げました。
 名古屋は小劇場が盛んな地域でもあります。北村想氏(1952-)は、日本を代表する劇作家・演出家です。名古屋で劇団「プロジェクト・ナビ」を主宰していました(2003年解散)。近年は小説にも取り組んでいます。
 「少年王者舘」は、一宮市出身の天野天街氏(1960-)が主宰する劇団です。天野氏の独特の世界観は大変魅力的で、県内外での人気が高くなっています。また、芸術文化センター1994年オリジナル映像作品の『トワイライト』は、第41回オーバーハウゼン国際短編映画祭('95 ドイツ)および、第44回メルボルン国際映画祭・短編部門('95 オーストラリア)でグランプリを受賞しています。
 「ままごと」は、一宮市出身の劇作家・演出家の柴幸男氏(1982-)の作品を上演する劇団で、あいちトリエンナーレ2013でも公演が予定されています。今回、上映する『わが星』は、柴氏が岸田國士戯曲賞を受賞した作品です。
 愛知県文化振興事業団では、上演戯曲を毎年募集しており、受賞作(AAF戯曲賞)をプロデュース公演として上演しています。今回は、地元のスエヒロケイスケ氏の受賞作「water witch--漂流姉妹都市」の記録映像を上映します。

 

 オペラでは、あいちトリエンナーレ2010で高い評価を得た『ホフマン物語』(オッフェンバック作曲、愛知県文化振興事業団制作)を上映します。この上演には、地元の名フィルやオーディションで選ばれたAC合唱団が加わっています。演出や舞台も大変素晴らしく、外国でも再演されました。
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『ホフマン物語』公演チラシ

 

 これらのビデオ作品はすべて、アートライブラリーで視聴することができます。
 地元のアーティストたちの活動を知り、応援していきましょう。
 アートライブラリーでは、関連企画として「愛知にゆかりのある芸術家たち」と題した資料展を併せてて開催中です。


(H.K)
 

 ドイツの名指揮者ウォルフガング・サヴァリッシュ氏が、2月22日、亡くなられました。
サヴァリッシュ氏は、NHK交響楽団の指揮者として長年日本でも活躍したため、日本には馴染が深く、多くのファンがいます。


 サヴァリッシュ氏と愛知県との関わりは、愛知県芸術劇場の杮落としとして、バイエルン国立歌劇場とともに「影のない女」(R.シュトラウス)を3代目市川猿之助演出により上演し、歴史的な出来事となりました。【1992年11月8日、11日】
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公演のプログラム(展示品)


 サヴァリッシュ氏は、この作品には特別な力を入れていました。彼は20年以上にわたって続けてきたバイエルン国立歌劇場総監督をこの来日公演の後に退くこととなっていました。その最後の公演の一つとして「影のない女」を取り上げ、演出には市川猿之助氏にお願いしたいと強く希望されたのです。また、建設中の愛知県芸術劇場にも2回も足を運ばれ、新しい劇場にも大きな関心を持っておられました。

 
 このときの公演記録がDVDとして発売されています(アートライブラリーで視聴できます)。そのDVDのライナーノートに寄せて、サヴァリッシュ氏はこのように述べています。
 

「1992年秋のことを思い起こすと、筆舌に尽くしがたい美しい記憶が蘇ってきます。あの時、名古屋では、新しく建てられたオペラ・ハウスの落成がR.シュトラウスの傑作《影のない女》によって祝われ、そして、同時にコンサートホールの杮落としも行われたのでした。・・・」

 

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当時の新聞記事スクラップのパネル


 サヴァリッシュ氏にとっては、この時の体験は忘れられないものとなったのでしょう。その後、1996年(フィラデルフィア管弦楽団)と2001年(NHK交響楽団)の2回、愛知県芸術劇場で公演を行っています(愛知県文化振興事業団主催)。1996年の来日公演では、サヴァリッシュが当時の飯島総長に直々に話をし、愛知での公演を実現させたとのことです。この時は、コンサートホールが既に埋まっていたため、オペラの公演が入っている大ホールの利用のない日で実施することとなり、当時の事業団のスタッフは相当の苦労をされたとお聞きしています。


 サヴァリッシュ氏の演奏は、録音で聴くとやや優等生的な感じを受けるのですが、生の演奏は感興豊かでとても素晴らしいものです。音楽そのものの素晴らしさがダイレクトに伝わってきます。マエストロの至芸ですね。ご冥福をお祈りします。

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展示風景

 なお、アートプラザでは、2月26日(火)から28日(木)までの3日間、サヴァリッシュのドキュメンタリーを上映するとともにミニ展示を行っています。また、アートライブラリーでは、録音・録画資料や関連書籍もあります。

(A.M)
 

 2013年は、ドイツの音楽家リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)の生誕200年の記念年です。ワーグナーは、音楽・劇・文学を結びつけた総合芸術としての「楽劇」を創始し、その後のヨーロッパ文化に多大な影響を与えました。
 今回の上映会では、彼の最高傑作である楽劇「ニーベルングの指輪」(以下「指輪」という。)を2種類の舞台でお届けします。「指輪」は史上最大のオペラで、序夜「ラインの黄金」、第1夜「ワルキューレ」、第2夜「ジークフリート」、第3夜「神々の黄昏」の4作品からなり、上演には4日間も要します。しかも、それぞれが長大で、「神々の黄昏」に至ってはなんと4時間半も掛かり、演ずる側も見る側も大変な労力が必要となります。
 
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リヒャルト・ワーグナー(1871年)
 
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「ワルキューレの騎行」 挿絵
(アーサー・ラッカム1910年)

 

 この大作を上演することは、劇場にとってもビッグイベントで、周到な準備が必要です。「指輪」を毎年上演する劇場が、バイロイト祝祭劇場です。バイロイトは南ドイツの端にある小さな街ですが、ワーグナーはここに自分の作品を上演するための理想的な専用劇場(木造、1974席)を1876年に建てたのです。
 この劇場でバイロイト音楽祭が毎年夏に開催され、世界中からワーグナー・ファンが集まります。チケットを入手するのも大変です。劇場の中は狭く、暑く、観劇するのも相当の忍耐を要します。また、観客を舞台に集中させるためにオーケストラ・ピットを舞台下に設け(「神秘の奈落」と呼ばれる)、独特の響きを醸し出しています。
 なお、熱狂的なワーグナー愛好家を「ワグネリアン」と呼び、この音楽祭に参加することを「バイロイト詣で」と呼んでいます。ヒットラーやニーチェ、ルードヴィヒ2世、ボードレールなどもワグネリアンとして有名です。しかし、ヒットラーが反ユダヤ主義の音楽としてワーグナーを利用したため、ユダヤ人からの反発は根強く、イスラエルでは、現在でも、ワーグナーの音楽はタブーとなっています。
 
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バイロイト祝祭劇場
 
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バイロイト祝祭劇場のグランドデザイン

 

 さて、今回の上演の映像ですが、前半はメトロポリタン歌劇場によるオーソドックスな舞台です。オットー・シェンクによる演出は、ワーグナーが楽譜に書き込んだ「ト書き」になるべく忠実に従った美しく神秘的なもので、神々と人間の確執を壮大な規模で描き上げたこの作品にぴったりの演出です。レヴァイン指揮の雄大で力強く迫力に富んだ演奏も非常に素晴らしく、歌手も最高のワーグナー歌手を揃えています。「指輪」入門に最適です。
 一方、後半のバレンシア州立歌劇場の舞台は、CG映像など最新テクノロジーを駆使した斬新なもので、びっくりです。演出がスペインの演劇集団「ラ・フラ・デルス・バウス」のカルルス・パドリッサ(バルセロナ・オリンピックの開会式の演出で有名)です。ダイイナミックなCG映像、レーザー光線が飛び交う舞台、SF的な衣装や装置で、神々はクレーンに、巨人はロボットに乗り、舞台を自由自在に動き回ります。まるでスターウォーズの世界のようです。ズービン・メータの指揮や歌もレベルの高いものです。この「バレンシア・リング」なら、長大な「指輪」も退屈せずに楽しめるかもしれません。まさに現代に活きるオペラです。

 

 なお、展示資料は、日本ワーグナー協会会員の小竹暢隆氏(名古屋工業大学教授)からお借りしたものです。「DIE WOCHE」は1938年にベルリンで発行された雑誌で、ワーグナー生誕125年の特集です。1938年はナチスがオーストリアを併合した年で、第二次世界大戦直前の緊迫した時代の貴重な資料です。また、1996年のバイロイト音楽祭の豪華パンフレットも展示されています。

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 ワーグナーのオペラは、「指輪」の他にも「タンホイザー」、「ローエングリン」、「トリスタンとイゾルデ」など有名なものが多くあります。アートライブラリーには、これらの映像資料を揃えていますので、どうぞご利用ください。

(A.M)

 いよいよクリスマスですね。ただいまアートプラザでは、クリスマスにちなんだ作品を上映しています。
「クリスマス」は、サンタクロースが子どもたちにプレゼントし、恋人が愛を語らい、家族が集まり団欒するなど、1年で最も楽しい日ですが、本来は「キリストのミサ」という意味で、キリストの降誕を祝うものです。

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「羊飼いにキリストの誕生を告げる天使たち」(Govert Flinck 1639)

 今回の上映会では、「クリスマスキャロル」をメインに取り上げました。「クリスマスキャロル」とは、キリストの誕生を祝い、誕生にまつわる様々な場面や逸話を歌詞にした歌をいいます。「きよしこの夜」「あらのの果てに」「もろびとこぞりて」などの歌は、誰でも知っていますね。これらの素朴な歌をパバロッティやカレーラス、プライなどの大歌手が歌っているのはとてもゴージャスな体験です。
 また、イギリスのキングス・カレッジやライプチッヒの聖トーマス教会(J.S.バッハが音楽監督を勤めた)の少年聖歌隊が礼拝堂で賛美する映像もあり、その透き通るような少年の声は、まさに天使の歌声のようで、心が清らかにされる思いがします。
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キングス・カレッジ・チャペル(ケンブリッジ)

 

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聖トーマス教会のバッハウインドウ

 クリスマスのオペラといえば「ヘンゼルとグレーテル」(フンパーディング作曲)、バレエといえば「くるみ割り人形」(チャイコフスキー作曲)が定番ですね。子どもたちも一緒に見て楽しむことができます。
 なお、オペラ「ラ・ボエーム」(プッチーニ作曲)は、前半がパリのクリスマス・イブの設定なので、選びました。特に第2幕は、ゼッフィレッリ演出によるゴージャスなパリのクリスマスの雰囲気が味わえます。
 一方、オラトリオ(宗教的音楽劇)では、「クリスマスオラトリオ」(J.S.バッハ作曲)と「メサイア」(ヘンデル作曲)が定番です。前者は、クリスマスの喜びに満ちあふれた作品で、当時のルター派教会での礼拝用の作品です。後者は、「ハレルヤコーラス」で有名で、キリストの生涯を音楽でたたえます。

 クリスマス4.JPG photo: Benutzer:Flyout
くるみ割り人形

 

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ヘンゼルとグレーテル(アーサー・ラッカムによる挿絵1908年)

 さらに今回は、ベートーベンの「第九」(交響曲第9番「合唱つき」)も特集しています。トスカニーニ、クレンペラー、カラヤン、バーンスタインなど9人の大指揮者による異なった演奏を楽しむことができます。「第九」は、人類の音楽の最高傑作の一つです。第4楽章の合唱の歌詞には、シラーの『歓喜に寄す』が用いられ、その主題は『歓喜の歌』としても親しまれています。欧州連合では、ヨーロッパの統一性を象徴する「欧州の歌」として歌われています。
 日本では、毎年年末になると「第九」があちこちで演奏・歌唱され、風物詩のようになっていますが、欧米では、「第九」は、劇場のこけら落としや国際的なイベントなど、特別の行事の時に演奏されます。近年では、ベルリンの壁崩壊を祝うイベントでバーンスタインが東西のオーケストラの団員を集めて演奏し、世界中に感動を与えました。その映像とドキュメンタリーが今回上映されますのでぜひご覧ください。バーンスタインの「自由への思い」が伝わってくる熱演です。
クリスマス6.JPG photo: Allan warren
レナード・バーンスタイン(1918-1990)

 なお、「第九」の自筆譜のファクシミリと、ベートーベンの傑作の一つで同時期に書かれた「ミサ・ソレムニス」の自筆譜のファクシミリを愛知県立芸術大学芸術資料館から借用し、展示しています。ベートーベンの大胆で荒々しい筆致が味わえます。
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(A.M)
 

 2012年はフランス近代の作曲家・ドビュッシーの生誕150年の記念年に当たります。ただいまビデオルームでは、ドビュッシーの代表的なピアノ曲、管弦楽曲、オペラなどのビデオ上映会を開催しています。
 ドビュッシーは、印象派や象徴派の絵画や文学に大きく影響を受け、独自の音楽を切り開いた前衛的な作曲家として有名でした。現代では、「牧神の午後への前奏曲」や交響詩「海」、「月の光」、「亜麻色の髪の乙女」など、情景が目に浮かぶような美しい楽曲を残したことで人気が高い作曲家です。
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クロード・ドビュッシー(1862-1918)                                            1884年の肖像画

 今回の上映会でのお勧めのビデオを2つご紹介しましょう。
ピアノ曲では、内田光子の「12の練習曲(エチュード)」が圧巻です。演奏の前に内田光子がドイツ語で解説していますが、これがとってもおもしろいのです。「練習曲」は、名前の割にはとっても難しい曲で、なかなか満足の行く演奏ができないとか、ドビュッシーはピアノの名手であったため、ピアノを熟知しており、ピアニストの限界ぎりぎりまで考えた曲を作曲したといったお話も聴けます。
 オペラでは、「ペレアスとメリザンド」がフランス・オペラの傑作として知られています。
この原作は、「青い鳥」でも有名なメーテルリンクが書いた戯曲が元で、フォーレ、シェーンベルク、シベリウスもこの戯曲を題材とした音楽を書いています。ドビュッシーはこの象徴的な戯曲に繊細なオーケストレーションと歌を加え、とても幻想的な不思議な世界を創出しました。ブーレーズ指揮ウエールズ・ナショナル・オペラの舞台が夢幻的で美しい雰囲気のとても見やすいものとなっています。
ドビュッシー展示3.jpg モーリス・メーテルリンク(1862-1949)
 

ドビュッシー展示4.jpg 「ペレアスとメリザンド」第2幕第1場 泉
Edmund Blair Leighton画


 最後に、展示物をご紹介しましょう。
 愛知県立芸術大学芸術資料館から、オペラ「ペレアスとメリザンド」と「12のエチュード」の自筆草稿(ファクシミリ)を借用し、アートプラザ・カウンター横に展示しています。ドビュッシーの息遣いが感じられる貴重な資料です。
ドビュッシー展示5.jpg 「ペレアスとメリザンド」草稿ファクシミリ 

ドビュッシー展示6.jpg「12のエチュード」草稿ファクシミリ


 また、ドビュッシーの音楽のLPジャケットも多数展示しています。代表作の交響詩「海」のジャケットをカウンター横の衝立に並べてみました。海をイメージする様々なイラストがあります。

ドビュッシー展示7.jpg ジャケット展示風景〈交響詩「海」〉        

ドビュッシー展示8.jpg ビデオルーム内のジャケット展示風景

  

 なお、ドビュッシーは、浮世絵に代表される「ジャポニズム」の影響を受けており、葛飾北斎の「富嶽三十六景神奈川沖波裏」が自宅書斎に飾られていました。
ドビュッシー展示11.jpg ドビュッシーとストラヴィンスキー(書斎の上の絵に注目)

ドビュッシー展示9.jpg  「富嶽三十六景神奈川沖波裏」 
 

 さらに、この絵からインスピレーションを受けて、交響詩「海」を作曲し、初版楽譜の表紙にも北斎の図柄がアレンジされて使われています。

 ドビュッシーが日本の海を想像して作曲したのかどうか、考えながら聴くのも一興です。


 ドビュッシーのビデオ映像は、上映会終了後、アートライブラリーで見ることもできます。

(A.M)


 

 2012年は、フランス近代の作曲家クロード・ドビュッシー(1862-1918)の生誕150年の記念の年です。アートプラザでは、これを記念し、「キーワードで聴くドビュッシーの名曲」と題したトーク&ミニコンサートを11月10日に開催しました。講師は音楽学がご専門の中村ゆかりさん、ピアノは愛知県立芸術大学大学院博士後期課程在学中の金澤みなつさんです。とても興味深いトークと素晴らしい演奏を皆さんにお楽しみいただきました。

ドビュッシー1.jpg 中村ゆかりさん(トーク)

 中村さんには、「ドビュッシーは、印象派の音楽家?」、「最愛の人に捧げた音楽」、「世紀末のパリの芸術のはざまで」、「ドビュッシーをめぐる水の音楽」の4つのキーワードごとに、金澤さんのピアノ演奏や当時の写真・映像などを交えながら、ドビュシーの生涯や音楽の魅力についてわかりやすくお話しいただきました。聴いていて多くの新たな発見がありました。

ドビュッシー2.jpg 金澤みなつさん(ピアノ)

 「子供の領分」というドビュッシーの有名なピアノ組曲の中に「ゴリーウォーグのケークウォーク」という曲があります。楽しく陽気な曲ですが変わった曲名で、中村さんの説明でその意味がよく分かりましました。ゴリーウォーグというのは当時はやっていた黒人の子供のマスコット、ケークウォークは20世紀初頭にパリではやった2拍子の軽快なダンスとのこと。当時のケークウォークのダンス映像が残っていたので、金澤さんのピアノの生演奏に映像のダンスステップをシンクロさせながらスクリーンに投影されました。とてもおもしろい試みでした。

ドビュッシー3.png ゴリーウォーグ(中央の黒人の人形)

 

ドビュッシー4.jpg ケークウォークダンスのレッスン

 

 また、今回のミニコンサートでは、ユニークな試みを行いました。ピアノの鍵盤を真上からと斜め横からの2箇所からビデオカメラで撮影し、演奏と同時に舞台背後のスクリーンに切り替えながら投影したのです。真上からの映像は、ピアニストの打鍵と反対向きとしたので、客席から見ると、あたかも自分がドビュッシーの曲を弾いているかのように見え、指の形や指使い、打鍵の様子もわかりとてもユニークな体験でした。
ドビュッシーのピアノ曲は難しい作品が多いのですが、金澤さんは微妙な色彩の変化を見事に表現していました。

ドビュッシー5.jpg 真上からの映像をスクリーンに投影

 

ドビュッシー6.jpg 斜め横からの映像をスクリーンに投影

 

ドビュッシー7.jpg 終演後の中村さんと金澤さん

 なお、このトーク&ミニコンサートは、ドビュッシーのビデオ上映会の関連企画として開催されたものです。上映会は、12月2日(日)まで、ビデオルームで開催しています。
ぜひお越しください。
(A.M)
 

本年、10月30日、愛知芸術文化センターは開館20周年を迎えました。
愛知県文化情報センターではこの20年間、さまざまな芸術文化に関する情報を発信してまいりました。皆様方のご支援とご協力をいただき厚く感謝申し上げます。
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開館20周年ロゴマーク

さて、今回、20周年を記念し、過去の自主事業の映像の中から、オリジナル映像作品、ダンス・音楽、オペラ・演劇と3つのジャンルに分けて、代表的な作品をビデオルームで上映しています。
 映像では、アニメーション作品の「HAND SOAP」(2008年)が、思春期の少年のデリケートな心理を描いた作品で、不思議な魅力を持ち、国内外で高く評価されています。
ダンスでは、ダンスとオペラのコラボレーションである「ダンス・オペラシリーズ」の「神曲」(2008年)が、リストの曲をはじめとした生演奏も美しく、ダンスも感動的です。
オペラでは、あいちトリエンナーレで国際的な評価も得た「ホフマン物語」(2010年)が日本を代表する女性歌手が勢ぞろいでとても楽しめます

 このほかにも自主事業の映像はアートライブリーでも見ることができます。

また、アートプラザ前のフォーラムでは自主事業のパネル展示を行うとともに、アートプラザ内のカウンター横では愛知県芸術劇場のこけら落としとなったオペラ「影のない女」(三代目市川猿之助演出)の関連資料を、ビデオルーム内では20年間の広報誌(AAC)を展示しています。
ぜひお越しください。


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パネル展示風景

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オペラ「影のない女」関連展示風景

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広報誌「AAC」展示風景

(A.M)

 1912年は、有名な指揮者が生誕した当たり年とも言われ、セルジュ・チェリビダッケ、サー・ゲオルグ・ショルティ、ギュンター・ヴァント、イゴール・マルケヴィチ、クルト・ザンデルリンクなど20世紀を代表する巨匠たちが誕生した年です。

 その中でも、「20世紀最後の巨匠」と言われ、晩年、絶大な人気を集めたのは、ルーマニアで生まれドイツで活躍したセルジュ・チェリビダッケSergiu Celibidache(1912-1996)です。「チェリ」(愛称)とも呼ばれ、レコーディングを嫌い、「幻の指揮者」と呼ばれたこともあります。
 チェリは、終戦直後のベルリン・フィルを再建しました。首席指揮者のヴィルヘルム・フルトヴェングラーが戦犯容疑で演奏禁止となったため、チェリが400回以上の演奏を行ったのです。しかし、フルトヴェングラー没後、ベルリン・フィルが首席指揮者に選んだのは、ヘルベルト・フォン・カラヤンです。チェリの厳しいリハーサルや激しい性格に団員が反発をしたとか、カラヤンの方がレコーディングなどのビジネスが期待できるから、と言われており、その結果、チェリはベルリンを追い出されました(後年、インタビューで、チェリは「カラヤンはコークのごとし」と発言し、話題を呼びました。)。
 チェリは、その後、ヨーロッパ各地で活躍し、晩年にはミュンヘン・フィルの音楽総監督及びミュンヘン市の芸術監督として、素晴らしい演奏を繰り広げ、愛知県芸術劇場コンサートホールでもミュンヘン・フィルを指揮し、聴衆に大きな感銘を与えています。


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読売ランドにて1978年3月(石原良也氏撮影)

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オーチャードホールにて1990年10月(石原良也氏撮影)

 さて、今回の上映会では、チェリの多くのライブ映像とドキュメントをお楽しみいただけます。その中では、特に、次の2つの映像がお勧めです。
 一つは、映画「チェリビダッケの庭」です。長男のイオアン・チェレビダーキ(チェリビダッケの別発音)監督によるもので、最晩年のチェリの音楽への情熱が伝わってくる映像です。
 もう一つは、チェリが37年ぶりにベルリン・フィルに復帰したドキュメント「勝利の帰還」です。チェリは、この世界一プライドが高いオーケストラに向かって、長々と講釈を垂れ、1小節ずつ細かい指示を与えています。すさまじいリハーサル風景で、必見です。

 さらに、今回は、石原良也氏からチェリの自筆手紙、写真、プログラム、ベルリンの新聞記事など貴重な資料を多く借用し、アートプラザ内に展示しています。特に、自筆手紙は、チェリの肉筆が間近に見られ、この機会を逃がすともう見られないでしょう。なお、石原氏は、チェリとの親交が深く、映画「チェリビダッケの庭」の日本語字幕の作成や、チェリに関する著作の翻訳、CD解説なども行い、チェリ研究の第一人者として知られています。


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BERINER MORGENPOST(1992年4月2日付)  チェリビダッケのベルリン復帰の記事チェリ4.jpg
展示風景

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チェリビダッケ自筆手紙

 チェリのビデオは、アートライブラリーに多く所蔵していますので、上映会終了後にビデオブースでぜひご覧ください。

(A.M)

 

 ただいま、アートプラザでは、愛知県文化振興事業団主催の「子どものためのシェイクスピアカンパニー『リチャード3世』」公演(8月25日(土)、26日(日))に関連し、シェイクスピアの歴史劇を上映しています。
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 ウイリアム・シェイクスピア(1564-1616)

 シェイクスピアは生涯で37タイトルの作品を残していますが、いずれも傑作で人類の遺産と言えるでしょう。
 彼の作品は悲劇、喜劇、ロマンス劇、歴史劇と区分されていますが、今回は、歴史劇に焦点を当て、10作品を取り上げました。『ジョン王』、『ヘンリー4世第1部』、『同第2部』、『ヘンリー5世』、『ヘンリー6世第1部』『同第2部』、『同第3部』、『リチャード2世』、『リチャード3世』、『ヘンリー8世』です。どれも2時間以上もかかる大作ばかりで、中には4時間もかかるものもあります。「ばら戦争」、「英仏百年戦争」(ジャンヌ・ダルクで有名)など、イギリスの歴史を念頭においてから見ると理解しやすいでしょう。

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 ジャンヌ・ダルク(1412-1431)

上映作品のメインは、英国放送協会(BBC)制作の映像です。オーソドックスな演出でかつ当時の時代を髣髴させる美しい映像なので、とても楽しめます。当時の音楽も使われています。また、日本を代表する演出家の蜷川幸雄による『リチャード3世』と『ヘンリー6世』も必見です。市村正親、上川隆也、大竹しのぶなど日本を代表する俳優陣の白熱した演技をお楽しみください。
 戯曲以外にも、関連したオペラ、映画なども充実しています。まず、オペラでは、サン・サーンスの『ヘンリー8世』がとても珍しい作品です。
また、ヘンリー8世の愛人アン・ブーリンを題材にしたドニゼッティの『アンナ・ボレーナ』も、今をときめく歌姫のアンナ・ネトレプコの主演する大変美しい作品です。

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     ヘンリー8世(1491-1547)                                       アン・ブーリン(1507-1536)

 映画では、アル・パチーノ監督の映画『リチャードを探して』はドキュメンタリーでシェイクスピアや『リチャード3世』入門にぴったりです。
 また、『わが命つきるとも』は、ヘンリー8世の時代、愛人アン・ブーリンとの再婚に反対する大法官トマス・モアを描いた作品で、神(又は良心)への忠誠とヘンリー8世への忠誠の間で悩みながらも意志をつらぬくモアの姿は感動的です。

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 トマス・モア(1478-1535)

 歴史劇の他にも、シェイクスピアの映像作品は、アートライブラリーで多く所蔵しています。暑い夏はシェイクスピアとともにお過ごしください。

(A.M)
 

 「ベルカント・オペラ」とは、19世紀前半の高度な歌唱技術を伴うオペラです。
代表的な作曲家はロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニの3人です。今回は、愛知県文化振興事業団主催の『ランメルモールのルチア』公演に関連して、ドニゼッティとベッリーニを取り上げました。
 この2人は、次に述べるとおり、性格も音楽も対照的です。なお、ドニゼッティのオペラが再評価されたのは、今世紀後半になってからで、マリア・カラスの功績とも言われています。

 

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ガエターノ・ドニゼッティ(1797-1848)

 ドニゼッティは、イタリアのベルガモに生まれました。彼は、大変多くの作品を作り、オペラは70近く作曲しました。彼の特技は、オペラの早書きです。『愛の妙薬』は上演に約2時間かかりますが、これをわずか2週間で書き上げています。『ランメルモールのルチア』には珍しく6週間もかけましたが、『連隊の娘』の第2幕に至ってはたった4時間で完成したと言われます。
 

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ヴィンチェンツォ・ベッリーニ(1801-1835)

 一方、ベッリーニは、シチリア島・カターニアに生まれ、34歳で亡くなった早逝の作曲家です。ベッリーニの音楽は気品があり、その息の長い流麗なメロディは、深い憂愁と情感を湛えて聴く人の胸を締めつけます。彼の音楽を愛したショパンは、ベッリーニの墓のそばに埋葬されたいと願いました。ワグナーも賞賛を惜しまなかったそうです。イタリアの作曲家のアリーゴ・ボイートは、「ベッリーニを愛さない人は、音楽を愛さない人だ」とまで言っています。

 

 さて、今回の上映会の目玉は、ドニゼッティの『ランメルモールのルチア』です。これは、イタリア・オペラの屈指の名作で、美しい旋律にあふれています。
また、主役のソプラノ歌手の名技を最大限に見せるため、最終幕に、悲劇に耐えきれず精神錯乱して、コロラトゥーラ(速いフレーズの中に装飾を施した旋律)で曲芸的アリアを歌うという、「狂乱の場」でも有名です。


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「ルチアの六重唱」のカリカチュア (1900年頃)


 今回の上映会では、『ルチア』の4本のビデオを用意しました。サザーランド、デヴィーア、ボンファデッリ、ネトレプコの4人の歌姫の競演です。この中では、ネトレプコが容姿・歌唱とも最高ですね。メトライブ(メトロポリタン歌劇場の公演)として、映画館でも上映されました。


 ベルカント4.jpg  photo: Marcimarc 
アンナ・ネトレプコ(1971-)

 愛知県文化振興事業団の公演では、ルチア役を日本を代表するソプラノ歌手の一人である佐藤美枝子さんが演じ歌います。佐藤さんは、オペラ『ファルスタッフ』公演(平成20年、愛知県文化振興事業団主催)でもその輝かしい歌唱で愛知の聴衆を魅了しました。佐藤さんのコロラトゥーラが楽しみですね。

 なお、今回ご紹介できませんでしたが、ドニゼッティのオペラ「アンナ・ボレーナ」は、ヘンリー8世の愛人、アン・ブーリンを描いたオペラです。次回の「シェークスピア歴史劇」映像上映会で、ネトレプコ主演の映像(英語字幕)を上映します(8月17日(金)14時30分から)ので、どうかお見逃しなく。

A.M
 

 2012年は、ピアニストのグレン・グールド(Glenn Gould 1932-1982)の生誕80年及び没後30年の記念の年となることから、ビデオ上映会を企画しました(6月24日までアートプラザ・ビデオルームで開催中)。

 数々の伝説に彩られた、カナダが生んだ孤高の天才ピアニストであるグールドは、20世紀の芸術家の中で、最も人気のあったピアニストの一人です。クラシック愛好家だけでなく、ジャズやロックの愛好家にまで幅広い層から愛されました。特に日本での人気は大変高いものでした。彼の演奏は、クラシック音楽の約束事にはこだわらないことから、評価は大きく分かれますが、自由奔放な解釈や疾走しスイングする音楽やリズムが多くの人の心を掴んだといえますね。グールドの研究家の宮澤淳一氏は、「グールドはクラシックの音楽家ではない」とまで言っています。

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 グールドは、デビュー・アルバムとしてバッハの「ゴールドベルク変奏曲」を1955年に録音し、世界中に衝撃を与え、それまでのバッハの演奏概念を大きく変えました。日本では評価が低かったのですが、先日亡くなられた音楽評論家の吉田秀和氏は、この盤を聴き、グールドの素晴らしさを絶賛しています。日本でグールドの真価を広く伝えたのは吉田秀和氏の功績です。その後カラヤン、バーンスタイン、セルなど一流の指揮者と共演し、名声を築きますが、1964年31歳の時に全てのステージから引退するいわゆる「コンサート・ドロップアウト」を行い、以後はレコーディングと音楽の創作、著作活動に専念しました。1982年に亡くなりますが、その直後にリリースされたのが「ゴールドベルク変奏曲」の再録音盤です。地下2階オアシス連絡通路のポスターケースにゴールドベルク変奏曲の新旧LPジャケットが展示してありますので、是非ご覧ください。
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 「ゴールドベルク変奏曲」ジャケット(左は再録音版、右が初録音版)

 

 今回の「グレン・グールド・コレクション」は、1954年から77年までにカナダ放送協会(CBC)で放映されたテレビ番組をフランスの映像作家B.モンサンジョンが12のプログラムにまとめ直したもので、グールドの演奏だけでなく、名ヴァイオリニストのメニューインとの対話やラジオ番組のためのテレビCMなどが盛り沢山です。類まれなる天才ピアニストの多彩な姿をとらえたグールド・ファン必見の映像作品をお楽しみください。

 

 さらに、グールドのLPレコードジャケットもビデオルームに多数展示していますので、ジャケット・アートもお楽しみください(LPジャケットの多くは、愛知県立芸術大学の図書館から借用したものです。)。

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 なお、今回のビデオを見逃した方は、1階アートライブラリー・ビデオブースにて視聴できますので、どうぞご利用ください。
(A.M)

 県美術館の「魔術/美術」展に関連して、アートプラザ・ビデオルームで「魔法とオペラ・バレエ」ビデオ上映会を開催しています。「魔術」「魔法使い」「悪魔」「魔女」「妖精」など「魔法」に関わるオペラ・ビデオをに集めました。

 「魔法」に関するオペラ・ビデオが意外に多いことにびっくりし、リストアップした作品はもっと多かったのですが、できるだけ有名な演目を選びました。
最も有名な作品はモーツァルト(1756-1791)の「魔笛」ですね。モーツァルトの死の3ヶ月前に完成した作品です。透明で美しい音楽と愉悦感に満ち溢れ、生きる喜びと力を与えてくれます。
なお、モーツァルトは「フリーメイソン」(会員同士の親睦を目的とした友愛団体・秘密結社)に加入しており、この作品にはフリーメイソンのさまざまなシンボルや教義に基づく歌詞や儀式が用いられていることが知られています。
フリーメイソンとの関わりを覚えながら、この作品を見ると新しい発見があるかもしれません。

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「魔笛」初演200年記念切手(DBP1991)


 
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フリーメイソンの入会儀式の一部(1800年頃)

 

 今回「魔笛」の4種類の映像を用意しました。この中でユニークなものはベルイマン監督による映画版「魔笛」です。ベルイマン(1918-2007)はスウェーデン出身で映画界の鬼才とも呼ばれ、難解な作品も多いのですが、これはメルヘン的で素朴な雰囲気をよく表現しています。小劇場で上映されているという設定で、出演者がくつろいでいたり、幕の隙間から観客席を覗く光景などもあります。映像は「サクリファイス」のスヴェン・ニイクヴィストによるもので、夢幻的な映像美が、愛と夢の世界を美しく描いています。オペラと映画が見事に融合した作品です。なお、歌唱はスウェーデン語です。
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 「野いちご」撮影中のベルイマン(1957)

 

 「魔笛」のほかに、「シンデレラ」「真夏の夜の夢」では異なる作曲家によるオペラとバレエの2種類の作品が楽しめます。比較して観賞するのもおもしろいでしょう。

 なお、これらの作品は一部を除き、上映会終了後にアートライブラリーで見ることができます。今年3月からビデオブースの機器を入れ替えるとともに、観賞席も4ブースから6ブースへと増やしました。こちらもどうぞご利用ください。

(A.M)

 ただいま、アートプラザ・ビデオルームでカラヤンのドキュメンタリーやコンサートのビデオを上映しています。(3月25日(日)まで)

カラヤンってどんな人
ヘルベルト・フォン・カラヤンは20世紀で最も有名で人気のあった指揮者です。
カラヤンは1908年にオーストリアのザルツブルクに生まれました。第2次大戦前・中はウルムやアーヘンといったドイツの中小オペラハウスで頭角を現し、ベルリン国立歌劇場でも活躍しました。戦後はナチ入党のため一時演奏禁止となりますが、ウィーン国立歌劇場、フィルハーモニア管弦楽団(ロンドン)、ベルリン・フィル、ミラノ・スカラ座、パリ管弦楽団などの首席指揮者や音楽監督を務め、「音楽界の帝王」とも呼ばれました。多くの録音や映像も残し、世界中でベストセラーとなります。クラシック音楽の大衆化に貢献しました。
 私生活でも話題を呼びます。3番目の夫人エリエッテはディオールのトップ・モデル、自家用ジェット機を自ら操縦し、世界を飛び回り、スポーツカーやヨットを乗り回すスター指揮者でした。
 若い演奏家の発掘や育成にも熱心でした。小澤征爾もカラヤンに弟子入りしていました。
日本にも11回も来日し、多くのファンを集めました。筆者も日本公演を聴きに行きたかったのですが、チケット代があまりに高かったので断念してしまいました。今では後悔しています・・・。
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カラヤン(1938年)

 

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カラヤンとロストロポーヴィチ(1968)

 

今回のビデオの見どころ
○ヴェルディ「レクイエム」が必見です。これは映画監督として有名でフランスのヒッチコックとも称されたアンリ=ジョルジュ・クルーゾー(1907 - 1977)による1967年に制作された映像です。カラヤンの意図を正確に演出し、冴えた編集で見事な映像作品にしあげています。すべてが終わったとき、カラヤンはクルーゾーに「心の底からの、千回もの感謝」を捧げたという逸話が残っています。ミラノ・スカラ座の演奏や若き日のパヴァロッティの映像も貴重です。
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アンリ=ジョルジュ・クルーゾー


○ベートーヴェン/交響曲全集も実験的な映像です。凝ったカメラ・アングルやコラージュなど様々な映像演出が施されています。曲によってオーケストラ配置も3ブロックに分けたり、照明も曲想に合わせて変化させたり、演奏者の顔ではなく楽器だけを撮影したり、やりたい放題です。「音楽をいかに視覚化するか」という命題に対するカラヤンの苦心とアイデアが随所にうかがえます。当時としては画期的だったのですが、現在ではこのような手法はほとんど使われなくなっています。

 カラヤンの映像・録音はアートライブラリーにたくさんあります。また、書籍も数冊あります。書籍では特に「カラヤンとともに生きた日々/エリエッテ・フォン・カラヤン著,松田暁子訳」と「素顔のカラヤン/眞鍋圭子著」がお勧めです。前者は夫人の見たカラヤンが描かれ、冷たくて独裁者的なイメージのする彼が家庭では優しいパパであることがわかり衝撃でした。後者も人間味あふれるカラヤンの姿が描かれています。ぜひお読みください。

(A.M)
 

カラヤンLP大集合

2012年03月12日

 ただいま「名指揮者『カラヤン』特集ビデオ上映会」にあわせ、アートプラザ・ビデオルームで巨匠ヘルベルト・フォン・カラヤンのLPジャケットを約60枚展示しています。1950年代から1980年代までのライブラリー所蔵資料を中心に、ほぼ録音年代順に並べました。

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 並べて見てみると、いろいろなことがわかり楽しいです。
1.壮年期のカラヤンの凛々しい顔が老人の顔になっていくのは寂しいですが、一方で、共演者の若かりし顔が楽しめるのもおもしろいです。例えば、ムター(今は貫禄たっぷりのヴァイオリニスト)の可愛いらしい姿はご愛嬌です。

2.レーベルによりジャケットの作り方が違います。ドイチュ・グラモフォンはさすが、一貫してイエローレーベルを前面に出しています。ややしつこい気はしますが。EMIは、ジャケットも趣向をこらしていますので、楽しめます。カラヤンはドイチュ・グラモフォンと長い間契約していたのでその録音が多いのですが、EMIとも若い頃と1970年代以降に契約しています。

3.LP製作時の当時の社会の雰囲気も感じられます。特に1950年代のジャケットはやや貧弱なイメージですね。時代が新しくなるほど洗練されてきます。

4.カラヤンの写真は意識的にポーズをとっているものが多いですね。カラヤンは写真に厳しく、自分がOKを出さないものは決して外に出すことを許可しませんでした。この中で一番傑作は『R.シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」』(EMI)のジャケットです。黒の革ジャンに赤のタートルネックで、後から後光がさしているようなライトを大きく反射させています・・・「私が英雄である」とでも言いたいような写真ですね。カラヤンは斜め横からのショットが多いのですが、真正面からとった珍しい写真です。これが世に出たとき、アンチ・カラヤン派の人はヒトラーのようだと批判したということです。

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【英雄の生涯・・・上段真中】

 

 展示されているLPのほとんどは、展示終了後、アート・ライブラリーにて視聴することができます。たまにはLPレコードに針を下ろしてアナログの音に浸るのも楽しいと思います。

 ビデオ上映会は3月25日まで開催中です。ぜひお越しください。

(A.M)

 

 

ただいま、アートプラザ・ビデオルームでは『マクベス』に関するビデオ上映会が開催中です。『マクベス』をテーマとしたオペラ、演劇、バレエ、映画などが勢ぞろいです。愛知県文化振興事業団の主催公演ヴェルディ作曲オペラ『マクベス』(3月17日コンサートホール)の関連企画です。 

『マクベス』と言えば、『ハムレット』『リア王』『オセロ』と並ぶ、シェイクスピアの4大悲劇の一つです。この中では最も簡潔でドラマティックな構成のため、人気が高く、上演機会が多いことでも知られています。多くの演出家や作曲家、映画監督などの、創作意欲をかきたてるのでしょうか。様々なジャンルの作品が生み出されています。

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ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)

 

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"Macbeth seeing the ghost of Banquo"  Théodore Chassériau(1819-1856)

 

イタリア・オペラの作曲家ヴェルディは、生涯で3回、シェイクスピアに挑んでいます。最初がこの『マクベス』、次が『オテロ』、最後が『ファルスタッフ』です。オペラ『マクベス』はヴェルディ若かりし頃(1847年初演、34歳)の力作です。原作自体は、オペラ向きとは言い難い作品だと思います。通常オペラには男女の愛がつきもので、「愛の2重唱」が聴き所ですが、この「マクベス」には、悪と陰謀に満ちた夫婦や魔女など血なまぐさい、どろどろした世界が描かれています。ヴェルディはドラマの展開に強い関心を持ったのでしょうか。甘い愛のドラマがないためか、聴衆には不人気だったようです。ヴェルディは自信作だったのですが・・・。その後、改作もしています。シェイクスピアのドラマをヴェルディがどのように音楽化したかという観点でご覧いただくとおもしろいでしょう。演劇のお好きな方にはぴったりのオペラです。
今回の上映会では6種類の異なったオペラ作品を用意しましたので、演出の違い、歌手の違いなどをお楽しみください。一昔前の演出では、時代背景にあった豪華な舞台や衣装による写実的な演出が主流でしたが、最近の演出では時代を現代に移したり、抽象的な舞台装置を用いて、聴衆の想像力にゆだねるなど様々な工夫をこらしています。オペラの演出も時代とともに変遷するのです。

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ジュセッペ・ヴェルディ(1813-1901)

 

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" Macbeth and Banquo meeting the witches on the heath"
Théodore Chassériau(1819-1856)

 

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Lady Macbeth sleepwalking by Henry Fuseli(1781-1784)


 このほか、ソビエトの作曲家ショスタコーヴィチ(1906-1975)のオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』も衝撃的な作品です。マクベス夫人(野心家の悪女)という名が示すとおり、女主人公は不倫を見つかったため、義父と夫を殺害し、愛人とシベリアに送られるが愛人に裏切られ、自殺するというすさまじいストーリーです。スターリンはこのオペラを見て激怒しました。余りに過激で品がないからでしょうか。上演禁止となり、ショスタコーヴィチの生命まで危ぶまれる事態を引き起こしたのです。その後、彼は『カテリーナ・イズマイロヴァ』という名で改作を行い、刺激的な音楽や場面を減らしたため、当局に受け入れられることとなりました。両者を比較しながら改作の過程をたどるのもおもしろいでしょう。
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ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)

 

このほか、日本的な演出で世界を魅了した『Ninagawaマクベス』やマクベスの時代を戦国時代に移した黒澤明監督の作品で三船敏郎の熱演で有名な映画『蜘蛛巣城』も必見です。
(A.M)
 

 アートプラザ・ビデオルームで開催中の「バレエ&ダンスの魅力 ビデオ上映会」が大変盛況です。ローザンヌ国際バレエコンクールで1位に輝いた菅井円加さん(17)の快挙のおかげでバレエへの関心が高まっているのでしょうか。

 今回の上映会では、『白鳥の湖』などのクラシック・バレエからモダン・バレエ、最先端のコンテンポラリーダンスに至るまで幅広いジャンルを取り上げました。すべての作品を観ればバレエ・ダンスの変遷がわかるのではないでしょうか。

今回の演目でお勧めの作品を2つ紹介しましょう。

バレエ1.jpg  ピナ・バウシュ(1940-2009)  写真:Leafar

 一つ目が、ピナ・バウシュ振付の『オルフェオとエウリディーチェ』です。
ピナは演劇とダンスの境界線を取り払った「ダンス・シアター」という独自な様式で大変有名です。2009年6月に亡くなりましたが、これはその生涯で唯一テレビ撮影とそのDVD化を許した舞台です。
歌い手とダンサー達が舞台に共に立ち、音楽とダンスが同時進行するという、美しいステージによるダンスオペラです。グルック作曲のオペラとダンスが同時に2倍楽しめるという豪華な舞台ですね。パリオペラ座のエトワールを始めとするダンサーも最高です。この舞台は「この世のものとは思えない」と絶賛されたそうです。ぜひご覧ください。

 

バレエ2.jpg アンジュラン・プレルジョカージュ(1957-)   写真: Raphaël Labbé


 二つ目が、アンジュラン・プレジョカージュ振付のパリ・オペラ座バレエ団による『ル・パルク』です。
この作品は2008年5月に愛知県芸術劇場大ホールでの公演でご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
 モーツァルの典雅な美しい音楽が流れる中、男女の恋物語が進みます。とてもシンプルな舞台ですが、モーツァルトの音楽とダンサーの踊りが見事にマッチングし、幻想的で美しい舞台が生み出されました。
音楽がお好きな方にもぴったりの作品です。

 

 その他、モーリス・ベジャール(1927-2007)、ジリ・キリアン(1947-)、ジョージ・バランシン(1904-1983)、ジョン・ノイマイアー(1942-)、ローラン・プティ(1924-2011)など代表的な名振付家たちの作品やドキュメンタリーが次々と上映されます。どうぞお楽しみください。

 
バレエ3.JPGモーリス・ベジャール(1927-2007)   写真: Erling Mandelmann
 
 

バレエ4.jpgジョージ・バランシン(1904-1983) 


 

 バレエ5.jpgローラン・プティ(1924-2011)   写真:Thomas Peter Schulz


 最後に、文化情報センターが企画制作するジョセフ・ナジの「カラス」公演のご案内です。ナジはフランスを拠点として世界で活躍する振付家・ダンサーです。今回は、ジャズ・ミュージシャンのアコシュ・セレベニとのコラボレーションで,全身を筆にしたアクション・ペインティングを楽しむことができます。ダンスだけでなく、音楽、美術、書など様々なアートに関心のある方にとっては必見の舞台です。ぜひお越しください。
なお、公演日までの間、プロモーション映像を当センター地下2階マルチビジョンで毎時13分-20分(9時台から18時台)の間上映しています。こちらもぜひご覧ください。

「カラス/Les Corbeaux」
◇ 日時 2月21日(火)19時、22日(水) 19時
◇ 場所 愛知県芸術劇場小ホール
◇ 料金 5,000円(前売り)、5,300円(当日) 全席自由


(A.M)
 

 「生誕200年記念リスト展」関連行事として、リストとショパンに関するトーク&コンサートが10/22に開催されました。講師は、愛知県立芸術大学非常勤講師の中村ゆかりさん、演奏は若きピアニストで同大学大学院の博士課程在学の金澤みなつさんです。金澤さんの奏でる名曲を聴きながら、リストのパネルに囲まれ、二人の作曲家の個性の違いを味わう楽しいひと時をすごしました。
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 今回の演奏にはサプライズな演出がありました。ピアノ鍵盤をビデオカメラで撮影して同時にそのまま背後のスクリーンに投影するもので、ピアニストの手や指の動き(打鍵や運指など)がアップで見ることができ、ピアノを習っていない方でも興味深々でした。ビデオルームだからこそ実現できた仕掛けです。
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 さて、中村さんからは二人にまつわる3つのエピソードを紹介いただきました。
最初が「愛」。二人とも女性にとても人気があったとともに、それぞれ夫ある女性と激しい恋愛を経験します。(今でいう「不倫」ですが、当時の上流階級では寛容だったとのこと。)献身的な女性の支えがあったからこそ素晴らしい名曲が多く生み出されたのですね。金澤さんの弾くリストの『愛の夢』、ショパンの『ワルツ第7番』とも作曲家の想いを感じさせられました。「愛」は芸術にインスピレーションを与えるのですね。
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マリー・ダグー伯爵夫人(1805-1876)                        ジョルジュ・サンド(1804-1876)
  ※リストの愛人                                         ※ショパンの愛人

 
 2番目が「技巧」です。2人ともヴィルトゥオーゾ(イタリア語、完璧な演奏技巧によって困難をやすやすと克服することのできる、卓越した演奏能力の持ち主に対する称賛の言葉)として有名です。特にリストの技巧は「ピアノの魔術師」と言われるくらいすさまじいものでした。
リストの指もスライドで見ましたが、ショパンに比べてもかなり大きいものでした。
リストは難しい曲も初見で弾けましたが、唯一ショパンの練習曲Op.12は初見で弾けず、残念だったとのこと。金澤さんもリストの超絶技巧にチャレンジし、熱演していました。

 
 リストトーク5.jpg「リストの手」の切手(1961東ドイツ)


 3番目が「作曲家」です。繊細なピアニズムで魅せるショパンと華麗な技巧で熱狂させるリスト、ショパンの『ノクターン』とリスト編曲の『菩提樹』と2人の対照的な音楽を楽しみました。シューベルトの『菩提樹』が華やかなピアノ曲に変身しているのは驚きです。
リストは編曲魔としても知られ、多くの曲をピアノ用に編曲し、ヨーロッパ中を演奏旅行して新しい曲を広めていったのですね。

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リストやショパンのCD、DVDはアートライブラリーで視聴できます。ぜひご利用ください。
(A.M)
 

2011年は「ピアノの魔術師」とも呼ばれるフランツ・リスト(1811-1886)の生誕200年の記念年です。アートプラザでは、昨年の「ショパン展」に続き、民音音楽博物館の作成したパネルを借用し、「リスト展」を開催しています。
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リストは、ロマン派の大作曲家で、当時ヨーロッパで最も賞賛された名ピアニストでもあります。数多くのピアノ曲などを作曲・編曲し、後世に多くの影響を与えました。
今回のパネルでは、「リストの年表」、「旅するヴィルトゥオーゾ・リスト」、「ワイマールでのリスト」、「晩年のリスト」等と題し、リストの生涯をわかりやすく紹介しています。
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リストは、「ピアノの魔術師」とも呼ばれるように、超絶技巧の持ち主です。
パネルの風刺画にも8本の手で演奏しているように描かれています。また、その情熱的な演奏は特に女性に人気がありました。熱狂的なファンが、リストを取り囲みました。演奏が始まると気絶する人、リストの髪の毛を拾う女性、忘れていった手袋を奪いあう貴婦人たちなど。彼は、ヨーロッパ中を演奏旅行するのですが、各地で熱狂的な歓迎を受けます。今のロック・スターのようなものですね。リストに熱狂する人は「リストマニア」と呼ばれました。華やかな演奏活動、スキャンダルな異性関係、晩年のカトリック聖職者への帰依など波乱万丈の生涯を送りました。
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パネルでは、他にもリストに影響を与えた作曲家(ベートーヴェン、チェルニー、ワグナー、ベルリオーズなど)やロマン派を代表する作曲家も紹介しています。
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さらに、ブレンデル、グールド、フランソワ、キーシン、アラウ、内田光子などの名ピアニストたちの映像も毎日、ビデオルームで上映しています。あわせてご覧ください。

なお、10月22日(土)14時から「トーク&ミニコンサート リスト&ショパン ―名曲に聴く二人の個性― 」が同会場で開催されます。音楽学者の中村ゆかりさんが、リストとショパンの出会いや違いなどをお話し、ピアニストの金澤みなつさんがピアノによる名曲を演奏します。10月9日まで往復はがきによる申込を受け付けています。詳細はホームページをご覧ください。 ※受付終了しました

(A.M)
 

シェイクスピアの戯曲は西洋文化の原点とも言えるでしょう。いまもなお、世界中で上演されています。まさに「古典の中の古典」です。今回、愛知県文化振興事業団主催の「子どものためのシェイクスピアカンパニー『冬物語』」上演に関連し、彼の全37作品をおおむね年代順に上映しています。

 

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ウイリアム・シェイクスピア(1557-1616) 

 

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最初の全集ファースト・フォリオ(1623年)に掲載された肖像画

 

◇ 今回の映像の特徴
今回の映像は、英国BBC放送が7年の歳月と35億円をかけて完成させた映像史に残る作品です。1978年、BBCはウィリアム・シェイクスピアの全戯曲を映像化するという偉業に乗り出しました。演劇界・TV界からは最高の 演出陣が集められ、当代きっての名優たちによる迫真の演技と原作への忠実な取り組みにより高く評価されています。日本でも以前NHKで放映され大変な評判を呼びましたので記憶に残っている方もいることでしょう。
 舞台や衣装、音楽も作品の時代をできるだけ忠実に表わし、見ているだけで当時にタイムスリップするようでわくわくしてきます。
また、せりふもすばらしい英語です。字幕も、シェイクスピアの戯曲翻訳に第一人者である小田島雄志氏監修によるもので、とてもこなれた日本語となっています。 
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◇ シェイクスピアとオペラ
シェイクスピアの戯曲は、文学や演劇にとどまらずに、オペラ・映画・バレエ・美術などさまざまなジャンルに大きな影響を及ぼしています。今回はオペラ・ミュージカルを取り上げ、ヴェルディやグノー、ブリテンのオペラとポーターのミュージカルなどもあわせて上映しています。また、映画では「ロミオとジュリエット」の現代版の「ウエストサイド物語」を取り上げました。原作と対比してみると、作曲家がシェイクスピアをどのように解釈しているかがわかり、大変興味深いことでしょう。
特にイタリアの大作曲家ヴェルディはシェイクスピアの戯曲が大好きで、「マクベス」「オテロ」「ファルスタッフ」という名オペラを残しています。この中では特に「オテロ」がお勧めです。(なお、ゲームの「オセロ」は黒人オセロと白人デズデモーナの波乱万丈の物語をイメージして名づけられたそうです。)「嫉妬」がテーマですが、ヴェルディは見事に人間の感情の変化を音楽で表現しています。演劇はせりふと身体表現によりドラマ(感情やストーリー)を表わしますが、オペラは、音楽(歌や楽器)がメインです。せりふも歌となり、音楽がドラマを表現します。オペラが深い感動を呼び起こすのは、台本の素晴らしさ以上に音楽の素晴らしさにあるのですね。一方では台本は単純化され、せりふはかなり省略されてしまうのはやむを得ないでしょう。原作を知らずにオペラを見ても十分楽しめますが、やはり原作に触れた上で、オペラを見ると、何気ない言葉にも深い意味があることが分かり、ストーリーの背景への理解が広がり、感動も深まります。


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ジュセッペ・ヴェルディ(1813-1910)      

 

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「ヴェネチアのオセロとデスデモーナ」 Théodore Chassériau (1819-1856)

 

また、アートライブラリーには、シェイクスピア関連の映像以外にも原作の戯曲、解説書などたくさんの資料があります。そちらもぜひご利用ください。
(A.M)
 

愛知県文化振興事業団が今年度、新たにスタートしたのが「AAFリージョナルシアター2011=京都と愛知=」です。京都と愛知の劇団をつなぐ新しい試みです。
京都舞台芸術協会に所属する劇団のビデオ上映会は既に終了(6/14-6/26)し、現在、愛知の劇団、少年王者舘のビデオ上映を行なっています。

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少年王者舘は1982年に天野天街さんを中心に旗揚げ、愛知を代表する劇団で、全国でも活躍し、地元の小劇場をリードしています。また、主宰で劇作家・演出家の天野天街さんは、演劇分野以外でも活躍され、芸術文化センターのオリジナル映像作品「トワイライツ」(94年)で、第41回オーバーハウゼン国際短編映画祭グランプリ('95 ドイツ)を受賞しています。 

ojakan2.jpg「トワイライツ」の1場面
Photo : 羽鳥直志

今回の上映は「こくう物語」、「シフォン」、「アジサイ光線」の3本です。いずれもダンスや映像。音響などを駆使したとても幻想的な作品です。会場には、ポスターの原画や写真、ちらし、Tシャツなども展示してあり、幻想的な雰囲気で、休憩時間に展示を見るのも楽しいですよ。少年時代に帰るようなとても懐かしい気分になり、別世界に迷い込むような驚きを覚えます。

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ぜひ一度ご覧ください。

(A.M)

7がつの 21にち から ずがこうさくの きょうしつ アート スコーレが はじまり ました。

こんかいの テーマは 「こんな おうちに すみたいな!」 です。 つち ねんどで いえを つくる こうさく です。 その ようすを しょうかい します。

まずは、 ねんどで つくる まえに、 どんな かたちの いえを つくるか えを かきます。

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えが かけたら だんボールがみで いえの かたを つくります。 
こうしの せんせいが せつめい して いる ところ。

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だんボールがみを えらんで いる ところ。

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くみたてて いる ところ。

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かみの おうちが できたら、 ビニールで おおいます。

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いよいよ ねんどを つかい ます。

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おおきな ひらたい いたの かたちの かべを なんまいも つくります。

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そして、 それを かみの おうちに はりつけて いきます。

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おおまかな ところが できたら、 まどや やねの もようなどを つくって いきます。

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これで いちおう できあがり。

 

あとは、 かんそう して すやきに します。

やきあがった ものは ごじつ おわたし します。

それを いえに もちかえって、 いろを ぬって ほんとうの できあがり。

 

23にち(どようび)、24にち(にちようび)も アート スコーレは やって いますので、

きょうみの ある おともだちは、 かいじょうに きてね!

(H.K)

 

 ただいま、アートプラザビデオルームにてイタリアオペラ上映会が開催されています。今週はヴェルディの中期から後期の最も脂の乗り切った時期の作品ばかりで、名作が目白押しです。満席の場合もありますので、ご来場はお早めに。

 イタリアオペラというと、真っ先に挙げられるのがヴェルディとプッチーニですね。世界中のオペラハウスのどこかで毎日のように上演されています。2人のオペラの目ざすものは少し異なっています。ヴェルディは演劇的要素を取り込み、音楽のドラマ化を目指しています。特にシェイクスピアを題材にした『マクベス』、『オテロ』、『ファルスタッフ』などは歌と芝居が見事に融合していますね。人間の心理を実に見事に表現しています。
一方、プッチーニは天性のメロディストです。庶民的な題材と一度聞いたら忘れられなくなる美しいメロディにあふれ、多くの人に親しまれています。フィギュアスケートでも彼の音楽がよく使われています。


 たとえていうと、ヴェルディはスケールが大きい大河ドラマで、プッチーニは、人情豊かなメロドラマでしょうか。筆者はプッチーニの『蝶々夫人』や『ラ・ボエーム』を見ると涙腺が刺激されてしまいますが、ヴェルディの場合は、そのようなことは余りありません。むしろ力がわきあがるような感動を覚えます。
みなさんはヴェルディとプッチーニどちらがお好きでしょうか。

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ジュセッペ・ヴェルディ(1813-1901)

 

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ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)


 さて、今回の上映会はメトロポリタン歌劇場(MET)の来日に関連して企画したものです。METといえば、世界でトップとも言えるオペラハウスですね。劇場の巨大さ(客席数3,800)、舞台の豪華さ、一流の名歌手と名手のオーケストラなど、世界で最も豪華なオペラが見られます。オーソドックスな演出が多いというのがオペラ好きの人にはやや不満な点ですが、最近では、あっと驚くような斬新な演出も増えてきています。今回、海外のオペラハウスの来日公演の中止が相次ぐ中で、来日を英断したのですね。うれしい限りです。


 最近では、METライブビューイングという映画館で見るオペラが人気ですね。METで上演された最新の演目の映像を大画面で楽しむことができます。舞台裏でのインタビューや舞台展開のシーンなども挟まれ、楽しいひと時をすごすことができます。先日のライブビューイングでは、MET総裁のP・ゲルブ氏が「がんばれ日本」と日本へ励ましのメッセージを送っていました。


イタリアオペラ3.jpg (C)Paul Masck

 

 今回の上映会を見逃した方も、アートライブラリーにて両作曲家のオペラを楽しむことができます。どうぞご利用ください。
 次回は「サウンドパフォーマンスと現代オペラ特集」です。オペラ好きの方は普段見る機会のない現代オペラも満載です、ぜひご覧ください。

(A.M)

ビデオルームでは、ただいま世界の美術館の名画を紹介するビデオを上映しています。(―5月8日(日)まで)ヨーロッパを代表する18の美術館の代表的な絵画千点以上を見ることができます。


美術館都市特徴
ルーブル美術館フランスパリ西洋美術の全領域に及ぶ世界最大の美術館
オルセー美術館印象派作品のコレクションが充実
エルミタージュ美術館ロシアサンクト
ペテルブルク
300万点を超えるコレクション
プラド美術館スペインマドリッドベラスケス、ゴヤなどスペイン絵画が充実
ウィーン美術史美術館オーストリアウィーンハプスブルグ家の珠玉コレクション
オーストリア美術館バロックと世紀末美術の「栄光のウィーン」を展示
(ベルヴェデーレ宮)
ウフィツィ美術館イタリアフィレンツェメディチ家のコレクション、ルネッサンス絵画の宝庫
ピッティ美術館ルネッサンス絵画が充実
アカデミア美術館ヴェネチアヴェネチア絵画500年の傑作が展示
バチカン美術館バチカンバチカン歴代ローマ教皇のコレクション、彫刻・壁画が充実
ドレスデン絵画館ドイツドレスデンザクセン王国のコレクション
アルテ・ピナコテークミュンヘン北方ルネッサンスの大作が揃う
ノイエ・ピナコテーク18世紀末から20世紀初頭のコレクション
ナショナル・ギャラリーイギリスロンドンイタリア・ルネサンス、オランダ絵画が充実
アムステルダム国立美術館オランダアムステル
ダム
17世紀オランダ絵画全盛期の作品が充実
ゴッホ美術館ゴッホの生涯をコレクションでたどる
クレラー・ミュラー美術館オッテルローゴッホコレクションを多く所蔵
カイロ博物館エジプトカイロ人類の文化の歴史を紀元前から遡る
 

 

今回紹介されている美術館を簡単に紹介しましょう。

ヨーロッパの美術館は歴史が古く、人類の遺産とも言える素晴らしい作品をたくさん所蔵しています。そもそも美術館の概念はヨーロッパで生まれたのです。中世のキリスト教会、近世の王家や貴族が収集したコレクションが元になり、フランス革命後に美術館で美術品を収集、保存、展示するようになっていったのです。こうしたヨーロッパの美術館を巡るのは、まさにヨーロッパの歴史をたどることにもなるのですね。

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エルミタージュ美術館
 

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プラド美術館

 

今回の上映企画では、わざわざ海外まで行かなくても、様々な美術館を映像で訪問し、感動を体験することができるのです。(ハイビジョンカメラによる収録は大変鮮明です。)
また、美しい絵画にあわせてさまざまなクラシック音楽がBGMとして流れています。美しい音楽を聴きながら、人類の遺産である「美術」を楽しむという至福のひと時をどうぞお楽しみください。
なお、印象派スペシャルとして、印象派の映像作品も2本上映しています。こちらもフランス印象派音楽のBGMとともにお楽しみください。
 今回の上映会を見逃した方も、アートライブラリーにて見ることができますので、ご利用ください。

(A.M)

3がつ26にち から はる やすみ アートスコーレが はじまりました。

こんかいは 「わくわく ねんど ランド」と だいして、 まいにち ちがった テーマで

いろんなものを ねんどで つくっていきます。

3がつ31にちの テーマは 「すきな いきものを つくろう」。

その ようすを しょうかい します。

まずは、 せんせいの せつめいから。

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さいしょに、 つくりたい いきものの えを かいて、 どんな かたちに つくるか きめます。

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ずかんを さんこうに して えを かいている おともだちも います。

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この おともだちは おさかなを つくろうと して いるのかな。

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せんせいが ねんどの つかいかたの みほんを みせています。

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いよいよ ねんどで こうさく かいし。

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だいぶ かたちが できて きました。

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ねんどで かたちが できあがったら、 かんそう します。

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かんそうが おわったら はい できあがり。

じょうずに できたかな。

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アートスコーレは 4がつ3にちの にちようび まで やっています。

かいじょうに くれば さんか できますので、

じかんの ある おともだちは、 どんどん きて ください。

せんせいも スタッフも まっています。

(H.K)

ミニトーク 「シェーンベルクとカンディンスキー」が開催されました。
  --絵画《印象III(コンサート)》から聴こえる青騎士の響き--

皆様は愛知県美術館の「カンディンスキーと青騎士」展はご覧になりましたか?
カンディンスキーの絵を見ていると音楽が聴こえてくるような不思議な気がしませんか。さて、3月12日にこの展覧会の関連事業として、絵と音楽との関わりについてミニトークを開催しました。講師は愛知県立芸術大学の非常勤講師の中村ゆかり先生(専門は西洋音楽史)でした。中村先生は宗次ホールやNHK文化センターで「恋する作曲家」シリーズなどでわかりやすくクラシック音楽を解説しています。また、3年前ですが愛知県文化振興事業団主催の愛知の未来を紡ぐコンサートで「バッハ万華鏡=バッハを愛した作曲家たちの響宴」という素晴らしい企画をプロデュースしていただいています。

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 トークはシェーンベルクの生きた19世紀後半から20世紀前半までの音楽を概観し、その後、彼の作品を紹介しました。彼はブラームスとワグナーから大きな影響を受け、初期の「調性音楽の時代」には、『グレの歌』や『浄夜』などとてもロマンティックな曲を書いていますが、次第に「無調音楽の時代」(『月に憑かれたピエロ』など)へ移り、そして「12音音楽の時代」(『モーゼとアロン』など)へと向かっていきます。

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シェーンベルクと息子ゲオルグ(1911)


今回のカンディンスキーが聴いたシェーンベルクコンサート(1911.1.2)での演奏曲では、『弦楽四重奏曲第2番』は調性音楽時代の最後に、『3つのピアノ曲』は無調音楽の時代の初めに当たります。トークでは、特に弦楽四重奏曲第2番について、各楽章の主題やモチーフとその関連についてわかりやすく、美しい声で歌いながら解説いただきました。特に第4楽章は無調音楽でできているとのことで、空中に浮遊するようなとても不思議な音楽です。
なお、このコンサートの当日のプログラムも紹介していただきました。演奏はロゼ・クァルテット(ヴァイオリンのアーノルト・ロゼはウィーンフィルのコンサートマスターでマーラーの妹のユスティーネと結婚)、ソプラノはマリー・グートハイル=ショーダー(ウィーンで活躍した著名なオペラ歌手で、同時代の音楽も歌う。)ピアノはエッタ・ヴェンドルフです。会場はミュンヘンのヤーレスツァイテンザール(現在もホテル・ケンピンスキー・フィア・ヤーレスツァイテンの中にケルビーニザールと名を変えて残っているようです。)


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シェーンベルクコンサートのプログラム(1911.1.2)

 トークの後では、このコンサートの曲の再現をCDとスライドで聴いていただきましたが、中村先生の解説を聴いた後ですので、曲の理解がより深まったことと思います。
なお、当日の記事が中日新聞(3月13日朝刊)に掲載されました。
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中日新聞社許諾済 許諾番号 20110323-9453


(A.M)

 

 

「音と色彩の共鳴」カンディンスキーとシェーンベルク映像上映会開催中です。
--抽象絵画の創始者と無調音楽の創始者の運命的な出会い--

ただいま、愛知県美術館にて「カンディンスキーと青騎士」展が開催中です。カンディンスキーは抽象絵画の祖として知られていますが、ウィーンの音楽家で無調音楽の祖であるシェーンベルクと深い交流がありました。今回、アートプラザビデオルームでは、シェーンベルクとその弟子のベルクの作品などの映像などにより、同時代の革新的な音楽を紹介します。

カンディンスキーの聴いたシェーンベルクのコンサートを聴いてみませんか? 

日時:1911年1月2日{月} 午後7時30分
場所:ヤーレスツァイテンザール、ミュンヘン
演奏:ロゼ弦楽四重奏団 マリー・グタイル・ショーダー(ソプラノ)
   エッタ・ヴェルンドルフ(ピアノ)
曲目:弦楽四重奏曲第2番嬰へ短調Op.10
   3つのピアノ曲Op.11
※ この他、歌曲、弦楽四重奏曲第1番も演奏

1911年1月2日、カンディンスキーは、マルク、ヤウレンスキー、ミュンター及び「新芸術家協会」の仲間とともに、シェーンベルクの音楽コンサートに出かけました。ここで演奏された2つの作品は、調性音楽から自由な無調音楽の時期に向かう時期のもので、シェーンベルクの作品の中でも大変重要な意味を持っています。
このコンサートは、聴衆の大多数を不快感に落し入れましたが、カンディンスキーは深い感動を覚えました。その印象を絵画にしたのが、《印象III(コンサート)》です。
 (現在、愛知県美術館で展示中)
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カンディンスキー《印象III(コンサート)》 1911年
Städtische Galerie im Lenbachhaus und Kunstbau München

カンディンスキーは、少年時代からチェロを弾き、音楽的な素養と音楽に対する繊細な感受性がありました。シェーンベルクの異様で分裂的な響きや無調性、不協和音などが、自分の絵画との共通性を感じたのでしょうか。2週間後の1月18日に、カンディンスキーは、一面識もないシェーンベルクに初めて手紙を送ります。これがきっかけとなり、両者の交友が始まります。2人の関係はいち早く友情へと発展し、家族ぐるみのつきあいが始まります。また、2人の交流は、それぞれの創作過程や人格にも大きな影響を及ぼすこととなります。
両者の往復書簡は『出会い』(シェーンベルク/カンディンスキー みすず書房)に収められています。アートライブラリーに所蔵されていますのでご覧ください。

 カンディンスキー肖像.jpgヴァシリー・カンディンスキー(1866-1944)

 
シェーンベルク肖像.jpgアーノルド・シェーンベルク(1874-1951)

 

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(左から)カンディンスキーとニーナ夫人、ゲルトルート夫人とシェーンベルク 
1927年ヴェルター湖畔


ただいま上映中の「シェーンベルク演奏会再現」では、上記の2つの曲をシェーンベルクやカンディンスキーの作品スライドともに聴くことが出来ます。カンディンスキーが新しい音楽に触れた感動をぜひ体験してみてください。
 また、シェーンベルクやベルクのオペラ作品なども上映しています。特にオペラ『モーゼとアロン』は曲も前衛的ですが、ウィリー・デッカーの演出もそれに輪をかけるように過激です。ルール・トリエンナーレ(ドイツ・ボーフム)で上演の記録映像ですが、ドイツでの最新の前衛的なオペラ演出をお楽しみください。(英語字幕付き)

 カンディンスキーと同時代のウィーンの前衛作曲家の音楽を知ることにより、カンディンスキーへの理解がより深まることでしょう。

 (A.M)

今年はグスタフ・マーラー(1860-1911)の没後100年の記念年。昨年も生誕150年でしたので2年連続の記念年となりますね。今回、レナード・バーンスタインの指揮でマーラーの交響曲を全曲お楽しみいただきます。

マーラーの魅力
 マーラーは交響曲作曲家として有名です。生涯に11の交響曲を書きました。(『大地の歌』含む。第10番は未完)いずれも後期ロマン派を代表する作品で、大オーケストラの醍醐味を味わうことのできる名作ばかりです。(特に第8番「千人の交響曲」は、合唱団、ソリストを含め千人に及ぶ演奏家が必要となる大曲です。)
マーラーの音楽には人間の感情のすべてが含まれているように思います。恋のときめき、失恋、愛と嫉妬、絶望、怒り、自然、信仰、死への恐怖、陶酔、酩酊、来世へのあこがれ・・・
交響曲は1時間を超えるものも多くとても長いのですが、最初から最後までが一つのドラマとなっています。そのドラマの中に身を置くと、自分の中の感情を追体験でき、とても深い感動を覚えることが出来ます。

  マーラー交響曲1.jpgグスタフ・マーラー 1909年 

 

マーラー交響曲2.jpgアルマ・マーラー1879-1964

「やがて私の時代が来る」
 マーラーの有名な言葉です。マーラーはウィーン国立歌劇場などの指揮者を務め、当時は作曲家というより指揮者として華やかな活躍をしていました。マーラーの巨大な音楽が当時の聴衆には十分理解できなかったかもしれませんね。特にナチスの時代には、マーラーはユダヤ人のため、冷遇されました。ユダヤ人作曲家の曲は演奏禁止となり、3M(メンデルスゾーン、マイヤベーア、マーラー)の曲はしばらくの間演奏されませんでした。元妻のアルマ・マーラーもアメリカへの亡命を余儀なくされています。
マーラー復活は戦後になってからで、特にステレオが発明されてからは、レコードによりその音楽の素晴らしさに多くの人が気付いたのですね。マーラーの予言通り、「私の時代」がやってきたのです。今では、世界中で演奏されています。ここ名古屋でもマーラーが盛り上がっています。名古屋マーラー音楽祭が1月から始まり、愛知県芸術劇場コンサートホールでアマチュアのオーケストラと合唱団が交響曲全曲演奏に取り組んでいます。

バーンスタインの映像
 レナード・バーンスタインは「ウエストサイド物語」の作曲家としても有名ですが、指揮者としても、ヘルベルト・フォン・カラヤンと並んで世界中で活躍しました。バーンスタインはユダヤ人ですので、同じユダヤ人のマーラーに深く共感するのでしょうか、若い時からマーラーの伝道師として、積極的に取り上げてきました。現在のマーラー・ブームも彼の働きによるものが大きいでしょう。
今回の映像も彼が50代の最も精力的な時期のもので、大変貴重なものです。演奏はほとんどがマーラーも指揮者を務めたウィーンフィル。まさに最高の演奏ですね。彼は、いつも全身全霊を込めて指揮をするので、見ているだけでとても感動的です。まさにマーラーが乗り移ったかのような白熱的な演奏です。
 
マーラー交響曲3.jpgレナード・バーンスタイン(1918-1990)

マーラーに関する映画もお楽しみください
最終日には2本の映画を上映します。映画「ベニスに死す」はイタリアのルキノ・ビスコンティ監督の名作です。トーマス・マンの原作では主人公は老作家としていたのを、ビスコンティは音楽家に変え、マーラーらしい人物にしています。また、シェーンベルクらしい人物も登場します。テーマ音楽はマーラーの交響曲第5番第4楽章アダージェットで、この映画により大変有名となりました。とても美しい映画です。
映画「マーラー」はイギリスの監督ケン・ラッセルによる伝記映画です。単純な伝記ではなく、幻想的なシーンも多く、内容は相当エキセントリックなものとなっていますのですので、ご覧になる場合はびっくりされないよう。
 
今回見逃した方もアートライブラリーで見ることができます。

 
マーラー交響曲4.jpgルキノ・ビスコンティ(1907-1976)  

マーラー交響曲5.jpgケン・ラッセル(1927-)
(C)Ken Russell
 

マーラーLPジャケット展示中
 マーラーの交響曲のLPも展示しています。昔のLPジャケットは美しいものが多く、眺めるだけでも新しい世界に触れる気がしますね。筆者も若いころはせっせとLPを集めていましたので、一枚一枚に深い愛着を感じます。CDになってからはジャケットも小さくなり、インパクトがなくなってしまいとても残念ですね。

 マーラー交響曲6.jpg

(A.M)

「パブロ・カザルスとチェロ映像上映会」関連事業として、1月23日(日)天野武子先生によるトークとミニコンサートが開催されました。抽選で選ばれた約40名の方々が熱心に耳を傾けました。

天野先生は、愛知県立芸術大学教授で後進者の育成に携わるとともに、チェリストとしても大変精力的な活動をされています。今年の3月でご退官とのことで、大変ご多忙な中ですが、ご無理を言って来ていただきました。
 天野1.jpg

 

さて、トークは『鳥の歌』から始まりました。天野先生は1971年の国連平和デーでのカザルスの演奏をテレビで見て、人生が変わるほどのショックを受けたとのことです。カザルス94歳(なくなる2年前)のときの演奏で、その時の言葉を紹介しました。カザルスは「私はもう14年もチェロの公開演奏をしていませんが、今日は弾きたくなりました」と運ばれてきた愛用のチェロを手にとって、「これから短いカタルーニャの民謡《鳥の歌》を弾きます。私の故郷のカタルーニャでは、鳥たちはピース、ピース、ピース!と鳴きながら飛んでいるのです」と右手を高く上げて、鳥が飛ぶように動かしながら、ピース、ピース!とくり返しました。「この曲はバッハやべートーヴェンや、すべての偉大な音楽家が愛したであろう音楽です。この曲は、私の故郷カタルーニヤの魂なのです」。
天野先生は、これまでずっとこの『鳥の歌』を演奏できませんでしたが、1992年のバルセロナ・オリンピックの閉会式で歌手(ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルス)がこの歌を歌うのを聞き、カトリックのイエス様の誕生を祝うクリスマスソングであったことが分かり、その後、演奏するようになったということです。
天野2.jpgFerdinand Schmutzer 1914
 
 

この後、天野先生からカザルスの生涯をじっくりと語っていただきました。カザルスの生い立ちから、晩年(81歳)に若い美人の奥様(21歳)と結婚し、亡くなるまで、数多くの画像を紹介しました。また、カザルスの故郷へ旅行した時の写真も交え、大変熱のこもったお話が聞けました。天野先生が心底カザルスを敬愛していることが伝わってきました。
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トークの後は2曲演奏しました。バッハの『無伴奏チェロ組曲第1番全曲』と『鳥の歌』です。バッハの曲は13歳だったカザルスが、バルセロナの楽譜屋で楽譜を偶然手にして、当時練習曲と思われていたこの曲の真価を察したのですね。その後10年にわたって研鑽を積み、満を持して開かれた演奏会は世界に衝撃をもたらしたとのこと。カザルスの発見した楽譜はカザルス博物館にも残っており、天野先生も現地で確認されたのですが、オリジナルに近いものではなかったとのことです。最近では研究も進み、またオリジナル楽器(古楽器)の影響もあり、響きもやや軽めな演奏が増えています。天野先生の演奏も最近の研究成果も踏まえ、バッハの自由で孤高な精神を表現しているように感じられました。
最後の『鳥の歌』はカザルスのエピソードと重ね合わせて聞くと、キリストの誕生と平和への想いが伝わり、とても心が動かされました。
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チェロは人間の声に最も近いと言われます。音域が似ているのですね。ヴァイオリンのやや高めの音と違い、温かみのあるゆったりとしたチェロの素晴らしい音を堪能することができました。40人という大変小さな空間での眼前での演奏で、とても贅沢なひと時でした。また、カザルスを通して、芸術と社会との関わりや平和についていろいろ考えさせられる一日でした。

(A.M)
 

 近年、チェロへの関心が高まっていますね。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画「おくりびと」の影響もあるかもしれません。愛知県文化振興事業団のコンサートシリーズも今年度はチェロがテーマです。
 今回の上映会では、「チェロの神様」とも呼ばれるパブロ・カザルスとカザルスがその真価を再発見したJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」を取り上げました。

カザルスはどんな人?
1. チェロの神様・カザルス
 パブロ・カザルス(1876-1973)は、スペイン・カタルーニャの生んだ偉大なチェリスト・音楽家です。チェロの奏法を熱心に研究し、奏法を確立することによってチェロの持つ表現力を高めました。また、当時単なる練習曲と捉えられていたバッハの『無伴奏チェロ組曲』(チェロの聖書とも呼ばれることも)を立派な芸術作品として世に広めました。カザルスはバッハを心底から敬愛していました。毎日の朝の日課でバッハのプレリュードとフーガを2曲ずつ弾くことを80年以上続けてきたと本人は言っています。
カザルスの演奏は録音で多く残っています。アートライブラリーにもありますので、ぜひお聞きください。とても力強い演奏です。
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2. 音楽家・教育者・カザルス
 カザルスは、チェリストだけではありません。指揮者として、作曲者としてまた教育者としても活躍しました。プラド(フランス)やプエルトリコでは音楽祭やコンクールを主宰し、多くの音楽家がカザルスを慕って集まりました。カザルスの薫陶を受けた音楽家は世界中に広がっています。日本にも1回だけ1961年に来日しましたがチェロは演奏せず、指揮と公開レッスンを行いました。
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3. ヒューマニスト・カザルス
 カザルスは1936年のスペイン内戦でファシズムに反対し、スペインを去り、フランスの寒村プラドに移住しました。終戦後も、各国政府がフランコ政権を容認する姿勢に失望し、公開演奏停止を宣言します。その後、プラド音楽祭などで演奏はしましたが、フランコ政権を容認する国で決して演奏しませんでした。
一方、積極的な平和運動を行います。シュバイツァー博士とともに米ソ両国に対し核兵器禁止を訴えたり、国連では何度も演奏し、世界に平和を強く訴えました。1971年10月24日、カザルス94歳のときにニューヨーク国連本部において「私の生まれ故郷カタロニアの鳥は、ピース、ピース(英語の平和)と鳴くのです」と語り、『鳥の歌』をチェロ演奏したエピソードは伝説的で、録音も残されています。 

カザルスは、音楽家としても人間としても信念を貫き通した高潔な人と言えるでしょう。
彼の生涯と演奏やレッスン風景を4本のドキュメンタリー映像でお楽しみください。

 

3人の名チェリストと無伴奏チェロ組曲
 ロストロポーヴィッチ、ヨーヨー・マ、マイスキーの3人の名チェリストによるバッハ『無伴奏チェロ組曲全6曲』の映像もあわせて上映します。
 ロストロポーヴィチはロシアのチェリスト・指揮者でした。人間と芸術の自由を擁護し、作家ソルジェニーツィンをかくまったため、ソ連を追放されました。人道主義的な行動はカザルスに似ていますね。日本にも何度も来日しています。2007年に亡くなりました。この映像では、彼がピアノを弾きながらわかりやすく曲の解説もしています。カザルスと出会ったエピソードも語られています。
 
カザルス4.jpg ロストロポーヴィチ(1927-2007)

 

 マイスキー(1948?)は、ラトビア生まれのユダヤ系チェリストです。ソビエト当局の監視下に置かれ、18か月も強制収容所に収容させられたという経歴もあります。彼はチェロを手にした吟遊詩人によく例えられます。とってもロマンティックで情熱的な演奏ですね。
 
カザルス5.jpg マイスキー(1948- )

 

 ヨーヨー・マは日本でも人気が高いですね。中国系アメリカ人です。彼は、様々な分野で活躍するアーティストとのコラボレーションに挑み、バッハの音を映像化しています。今回の映像は、映画監督アトム・エゴイアン、歌舞伎役者 坂東玉三郎、アイスダンスのトーヴィル&ディーン、振付師マーク・モリスなどとのコラボレーションを通じて、『無伴奏チェロ組曲』の新たな側面を発見することができるでしょう。
 
 ヨーヨー・マ(1955-)

 

自筆楽譜(ファクシミリ)等も展示
 今回の展示は、チェリストの天野武子氏所蔵のカザルスのポスター、カザルス博物館の冊子、バッハ『無伴奏チェロ組曲』の自筆譜(ファクシミリ)と愛知県立芸術大学所蔵のベートーヴェン『チェロソナタ第3番』の自筆譜(ファクシミリ)です。
 特に『無伴奏チェロ組曲』は、バッハの自筆譜が見つからず、2番目の妻のアンナ・マグダレーナの筆写譜が残されていますが、間違いや謎が多く、多くの版が出されています。5種類の版を展示しましたので比較するのも面白いでしょう。 

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バッハの妻アンナ・マクダレーナによる
無伴奏チェロ組曲第1番ト長調 BWV1007の写譜
前奏曲(Praeludium)
 

 今回の上映作品はアートライブラリーでも視聴できます。どうぞご利用ください。

(A.M)


 

 新年のウィーンはウィーン・フィルのニューイヤーコンサートで始まります。このコンサートでは毎年楽しいJ.シュトラウス父子のワルツ・ポルカなどが中心に演奏されますね。これからの寒い季節、ウィーンは舞踏会シーズンです。ウィンナ・オペレッタでもワルツや舞踏会が欠かせません。今回、ニューイヤーということで「ウィンナ・オペレッタ映像特集」を企画しました。どうぞお楽しみください。
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ニューイヤーコンサート会場(ウィーン・ムジークフェライン大ホール)

オペレッタとオペラ、ミュージカルはどう違うのでしょうか
 オペレッタは「喜歌劇」とも訳され、歌・芝居・踊りが三位一体となった音楽劇です。オペラは音楽中心で作られるのに対して、オペレッタはセリフが非常に多く、演劇的な要素が大きいのが特徴です。また、内容も演じ方も、オペラに比べよりリアルなのでわかりやすく、初めてみる方でも理屈抜きに楽しめるものばかりです。19世紀から20世紀前半までが全盛期で、この後、ミュージカルが取って代わります。ミュージカルはマイクを通じて歌い演じますが、オペレッタは基本的には伝統的なオペラ歌手と同じテクニックを用いて、「ナマ」の声で歌い演じるという違いがあります。

ウィンナ・オペレッタの魅力
 「ウィンナ・オペレッタ」には独特の魅力があります。美しく甘いメロディ、心躍るリズム、ウィンナワルツやチャールダッシュ,フレンチカンカンなどの楽しい踊りにあふれています。また、テーマのほとんどは「愛」。何種類もの愛が同時に進行します。あらゆる種類の愛が一杯あふれ、愛の百科事典とも言えるでしょう。観客は舞台の登場人物との一体を求めて、一喜一憂しながら、最後はハッピーエンドに終わるのです。見ればどんなに疲れていてもたちまちハッピーとなる不思議な魅力にあふれていますね。まさに夢の世界です。

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ウィルヘルム・ローズ『ホーフブルクの宮中舞踏会』、1900年   チャールダッシュ

 ウィンナ・オペレッタは、歴史的には終わったとされていますが、今でもウィーンでは生き生きと息づいています。その中心がオぺレッタの殿堂ウィーン・フォルクスオーパーです。世界トップレベルのウィーン・シュターツオーパー(小澤征爾が最近まで音楽監督を務めた)とは違い、より庶民的なオペレッタ劇場です。筆者も20数年前の来日公演で初めて接しましたが、その魅力にすっかりはまってしまいました。現地にも行きましたが、独特の雰囲気があり、劇場がウィーンの日常生活に溶け込んでいるという感じがしました。
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ウィーン・フォルクスオーパー

 今回は、ウィンナ・オペレッタの「黄金の時代」と呼ばれるJ.シュトラウス2世、「白銀の時代」と言われるレハールやカールマンの作品を中心にお楽しみいただきます。気品のあるJ.シュトラウスからハンガリー的な色彩が色濃く出たレハール、ミュージカルに近づいているカールマンまでウィンナ・オペレッタの変遷をたどることができるでしょう。

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J.シュトラウス2世(1825-1899)       フランツ・レハール(1870-1948)   エメリヒ・カールマン(1882-1953)

今回の上映会の見どころ
 今回の映像はユニテル制作の映画がほとんどを占めています。映画ですので、舞台上演では見られないような現地の農村の風景や宮廷の情景、豪華な衣装、大変豪華でリアルなセットが見どころです。演技も歌も踊りも上手な美男・美女が登場するのも楽しみですよ。
 入門向けの作品としては、「こうもり」「メリー・ウィドゥ」「チャールダッシュの女王」がお勧めです。「こうもり」では、伝説的な指揮者、カルロス・クライバーの華麗な指揮ぶりも楽しめます。クライバーも下積みではオペレッタを多く振り、オペレッタで指揮者デビューを果たしています。オットー・シェンク演出のこの映像はスタンダードとなっています。「メリー・ウィドゥ」はワルツが有名で誰でも知っています。美しいメロディと踊りにあふれています。ドイツ語版(オリジナル)とフランス語版の2種類お楽しみください。
オペレッタでは、原語にこだわらず、現地の国の言葉で演じ歌われることが多いです。
 「チャールダッシュの女王」はストーリーも面白く、最高傑作の一つです。むせび泣くかのようなヴァイオリン、もの憂いジプシーの響き、そして激しいダンスは大変魅力的です。モッフォ、コロといった人気キャストと素晴らしいアンサンブルも見どころです。
 オペレッタの魅力に目覚めた方には、「ウィーン気質」「ルクセンブルク伯爵」「マリッツァ伯爵夫人」などはいかがでしょうか。美しいメロディは口ずさみたくなってきます。また、日本ではめったに上演されない演目には「オペラ舞踏会」「ドルの女王」「サーカスの女王」などがあります。いずれも豪華な映像でとても楽しめるものばかりです。
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「こうもり」挿絵                                「ロシアの皇太子」挿絵

 今回の上映を見逃した方も、アートライブラリーで視聴できますのでぜひご覧ください。

(A.M)



 

12月23日より いつも ながい やすみに おこなって いる アートスコーレ(ずがこうさくの きょうしつ)が はじまり ました。 こんかいの テーマは しんねんの えとで ある ウサギの ねんどざいく です。
その ようすを しょうかい します。

まずは はじめに こうしの せんせいの おはなし から。
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 どうたいと あたまの しんに なる しんぶんしを まるめます。
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まるめた しんぶんしを ねんどで つつむように して どうたいの ぶぶんを つくります。
おなじように あたまの ぶぶんも。
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みみに なる ところを つくって あたまに くっつけます。
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どうたいに あしと しっぽを くっつけます。
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あたまと どうたいを くっつけて うさぎの かたちが できあがり。
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ドライヤーで かわかせます。 この さぎょうは おかあさんも おてつだい。
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そして いろづけ。
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また ドライヤーで かわかせます。
これで かんせい。 はい ポーズ。
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こんかいの きょうしつは しょうがっこう 1ねんせい だけを たいしょうに ひらかれました。

じかい はるやすみは もっと はばひろい ねんれいの じどうが さんか できるように します。

みなさん、おたのしみに。

(H.K)

 

 12月18日(土)の昼下がり、芸文センターに男声の力強い歌声が響き渡りました。びっくりされた方も多いでしょう。地下2階の大型ビジョンの前の仮設ステージで、クリスマスツリーやリースを背景に13人の男たちが歌い始めました。クリスマスと男たちという不思議な組み合わせです。


演奏者を紹介しましょう。合唱は、「昭和男爵コーラス」の皆様です。名古屋市の昭和生涯学習センター主催の講座受講生が母体で、平均年齢が67歳とのこと。中には合唱のベテランも含まれています。指揮とソプラノは加藤佳代子さんです。加藤さんは声楽家でオランダ留学後、地元を中心にソロや合唱の指導など幅広く活躍しています。芸文センターでもAC合唱団に加わったり、15周年記念行事でもソロを歌ったこともあり、関わりが深いのです。ピアノは小森真紀さんです。 
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前半は日本の名曲を4曲歌いました。(『高原列車は行く』『水色のワルツ』『雪の降る街を』『島原地方の子守唄』)13人の男声のハーモニーから、男たちの熱いロマンが漂ってくるように感じました。若い人たちの声からは出せない、人生の重みを感じさせられますね。特に「雪の降る街を」はスタッカート気味に始まり、意表をつきましたが、雪の中をとぼとぼと歩く寂寥感が見事に表現されていました。
加藤佳代子さんの指揮ぶりもとっても表現豊かで、歌詞の意味や感情をうまく引き出し、見ているだけでこちらも歌いだしたくなるようでしたね。

後半はがらっと趣が変わり、クリスマスに関わる宗教曲です。『Dona Nobis Pacem(私たちに平和をお与えください)』は美しい3声のカノンです。
『カッチーニのアヴェ・マリア』では加藤佳代子さんのソプラノ独唱が加わり、清らかな歌声が会場に響きわたります。加藤さんはクリスチャンですので、自らの信仰が自然に歌に現われているのです。とても美しい陶酔的な曲ですね。イタリアの作曲家カッチーニ(1545-1618)の作と言われていますが、実はそうではなく、ソ連の音楽家ヴァヴィロフ(1925-73)が自作をカッチーニの名前を借りて発表したものとか。確かにバロック音楽らしくありませんね。
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最後の曲は世界中で愛されている『きよしこのよる』です。お客様と一緒になって歌い、3番では加藤さんの美しいハイソプラノが加わりました。
この曲には有名な伝説があります。1818年のクリスマス・イヴのこと,オーストリアのオーベンドルフの聖ニコラス教会では,教会のオルガンが壊れてしまって,賛美歌の伴奏をすることができなくなってしまったため、取り急ぎ教会助祭のヨーゼフ・モール(1792-1848)が詩を書き、同教会のオルガニストで小学校長のフランツ・グルーバー(1787-1863)がギターを伴奏とした新しい曲をつけ、イヴの日の真夜中のミサで無事に初演されたというものです。心にしみわたってくる名曲ですね。 
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きよしこの夜100周年ポスター(左上:モール、右上:グルーバー)

あっという間の30分でしたが、午後の楽しい一時を過ごすことができました。

アートプラザビデオルームでは、時々ミニコンサートも行っています。次回は1月23日(日)「チェリスト天野武子によるトーク&ミニコンサート」を開催します。ただいま受講者を募集しています。(往復はがきによる申込み)詳細はホームページをご覧ください。

(A.M)

 

パネル「フレデリック・ショパン国際コンクール」
このコンクールは、現在世界的に最も権威あるコンクールの一つと言われ、ピアニストを目指す者にとっては最高の登竜門の一つです。また、エリザベート王妃国際音楽コンクール、チャイコフスキー国際コンクールと合わせて「世界三大ピアノコンクール」とも言われています。
1927年に第1回が開催され、5年ごとに開催されています。2010年には第16回が開催され、ロシアの女流ピアニスト、ユリアンナ・アブデーエワが優勝しました。ユリアンナは何と日本のYAMAHAのピアノCFXを弾いたのです。日本製ピアノを使用した演奏者がショパンコンクールで初めて優勝したのですね。
日本人も毎回入賞しているのですが、今回は残念ながら入賞者は誰もいませんでした。次回に期待しましょう。
パネルではコンクールの優勝者や日本人入賞者などの歴史をたどることができます。

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必見1! 「ショパンの左手」
今回の目玉の「ショパンの左手」(株式会社ショパンから借用)は、彫刻家のクレサンジュ(ショパンの恋人であったジョルジュ・サンドの娘ソランジュの夫)により作られました。ショパンが息をひきとった1849年10月17日、デスマスクと左手の型が取られ、それをもとに作られたものです。つまり、本物のショパンの手と同じなのです。
 手をよく見てみましょう。決して大きくありません。むしろやや細く薬指などは弱そうに見えます。とても繊細な指ですね。この左手で力強い作品をどのように弾いたのか、不思議ですね。実際のショパンの演奏は音が小さく、大変繊細で、ニュアンスに富んだものだったとのこと。大きなホールでは耳をそばだてて聴かねばならぬようだったそうです。
また、弟子たちのレッスンでも「手をやわらかく」と口癖のように言っていたとか。以前、ラフマニノフの手をテレビで見たのですが、あまりにも巨大でびっくりしましたが、対照的ですね。ショパンが奏でたであろうピアノの音を想像しながらゆっくりご覧ください。

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 ショパンの左手の彫像(複製)  (株)ショパン所蔵

 

必見2! 「ショパンの自筆譜」
 民音音楽博物館からお借りしたショパンの自筆譜(ファクシミリ)も展示しています。「別れの曲」「黒鍵」の一部と「幻想即興曲」の一部(初版)です。とても美しい楽譜ですよ。ベートーヴェンの乱雑で大雑把な自筆譜とは大違いです。ショパン自身の書き込みや推敲の後も見られます。楽譜を見ながら、ショパンはどんな音楽を奏でたのか想像するのも楽しいですね。
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練習曲「別れの曲」の自筆譜(ファクシミリ)  民音音楽博物館所蔵

 


ショパンが大好きな日本人
ショパンは日本人が大好きな作曲家です。朝日新聞の調査によると、お気に入りの作曲家ベスト5は、1位モーツァルト、2位ショパン、3位ベートーヴェン、4位チャイコフスキー、5位シューベルトでした。(4月10日土曜版)ショパンの人気の理由の一つは、日本ではピアノ人口が多いので、ショパンを弾いてみたいと思う人が多いのではないかと思われます。もちろん、ショパンの美しい流麗な音楽は日本人好みであるという理由もあります。なお、HMVの同様の調査では、1位ベートーヴェン、2位バッハ、3位モーツァルト、4位マーラー、5位ブルックナーでした。HMVは音楽好きな人が回答しているので、傾向が違っているのがおもしろいですね。

 

ショパンの映画
ショパンを題材とした映画やショパンの音楽を使った映画はたくさんあります。ご紹介しましょう。
伝記映画は古いものでは「別れの曲」(1934年)が有名です。ショパンとコンスタンツィアの恋愛を描いています。エチュードOp.10-3を「別れの曲」と呼ぶのはこの映画の題名に由来しています。また、「楽聖ショパン」(1945年)では愛国者のショパンを生涯を通して描いています。史実と違うのではというシーンもありますのでご覧になるときはご注意を。
映画音楽で最も印象に残るのは「戦場のピアニスト」(2002年)です。ご覧になった方は多いと思いますが、これは、実在のユダヤ人ピアニスト、ウワディスラフ・シュピルマンの実際の体験を描いたものです。ショパンの音楽が重要なテーマとなっています。映画の中ではノクターン第20番の悲しい調べとバラード第1番の夢見るような調べが見るものの心を打ちます。特に後者の調べがドイツ人将校の心を打ち、シュピルマンは助かるのです。ショパンの素晴らしい音楽は、良心に訴え、感動を湧き起こし、戦争の憎しみも追いやってしまうのですね。素晴らしいエピソードです。このほかにも、「愛情物語」(1956年アメリカ)も夜想曲第2番をアレンジして有名になりました。
なお、日本でも大林宣彦監督の「さびしんぼう」では「別れの曲」が主題歌となりました。また、大ヒットした映画「のだめカンタービレ」では、のだめがシュトレーゼマンの指揮でピアノ協奏曲第1番を弾く美しいシーンが印象に残ります。
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ウワディスワフ・シュピルマン(1911-2000)

(A.M)
 

ただいま、アートプラザビデオルームで「ピアノの詩人ショパン展」が開催されています。

壁一面にショパンの生涯や作品についての美しいパネルが展示されています。このパネルは、東京の民音音楽博物館で今年の1月から7月まで開催された「ショパン展」で展示されたもので、同博物館のご厚意によりお借りしたものです。
パネルの一部を紹介しましょう。

パネル「ショパンの生涯」
 ショパンは1810年、ワルシャワ近郊のジェラゾヴァ・ヴォラに生まれます。子供のころからピアノ演奏や作曲に才能を示し、ワルシャワ音楽院で音楽を学びます。卒業後ワルシャワを離れますが、祖国で反ロシア暴動が失敗に終わったため、芸術家の都であるパリに向います。パリでは様々な芸術家と交流し、独創的な演奏と作品により名声を博します。特にジョルジュ・サンドとの出会いは、ショパンの創作意欲を高め、多くの名曲を生み出すのですね。
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パネル「ショパン作品リスト」、「ショパンが作曲した主な楽曲形式」
 ショパンは約230曲作曲したと言われていますが、そのほとんどはピアノ独奏曲です。室内楽曲、ピアノ協奏曲、歌曲も一部作っています。
 ショパンは新しいピアノ音楽の形式を確立しました。ポーランドの民俗舞踊に基づく「マズルカ」「ポロネーズ」、また、夜の情景を思い起こさせる「夜想曲(ノクターン)」、物語を語るような「バラード」、即興的な「バラード」などがあります。

 

パネル「ショパンの愛した女性」
ショパンが生涯に愛した女性は4人います。まず初恋のコンスタンチア・グアドフスカはワルシャワ音楽院の同級生。繊細なショパンは思いをなかなか伝えられなかったようです。次が、婚約までしながら破談となってしまったマリア・ヴォジンスカ。ショパンは真剣に結婚を考えていたようで、悲しみは深いものでした。
ショパンのよき理解者であった作家のジョルジュ・サンドとの同棲生活は余りにも有名ですね。サンドはショパン好みの女性ではなかったようで、初対面の印象を「なんて感じの悪い女だろう。あれでも本当に女なのだろうか。」と書いています。その後、交際の中で深く愛し合うようになります。サンドの愛と支えにより数々の名曲が生み出されたのですね。男勝りの女性作家と病弱な天才作曲家のユニークな組み合わせは当時の社会では話題になりました。
最後にピアノの弟子でソプラノ歌手のデルフィーナ・ポトツカ。絶世の美女だったとか。近年ショパンがデルフィーナにあてた恋文が発見されたと発表されましたが、偽作だったようです。「謎の恋人」です。
パネルを見ながら、ショパンは4人の女性たちのどこに惹かれたのか考えてみるのも楽しいでしょう。

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ジョルジュ・サンド(1804-1876)                                       デルフィーナ・ポトツカ(1807-1877)

 

パネル「ショパンの肖像のパネル」
さまざまな画家が描いた29点の肖像画がパネルとなっています。若いころから晩年までショパンの肖像の変化をたどるのも面白いでしょう。また画家によりショパンをどのようにとらえているのか比較するのも面白いでしょう。今まで見たことがないショパンに出会えるかもしれません。なお、ショパンは170センチメートルで体重40キロという「超やせ型」でしたが、服装は最高級のブランド物で身を固め、貴婦人方の人気の的であったとか。
 
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1849年死の数か月前の写真

 

パネル「レクイエム」
ショパンはパリで39歳の生涯を閉じました。死因は結核とされています。遺体はパリのペール・ラシューズ墓地に埋葬されました。彼がポーランドを出るときに持ってきた土がふりかけられました。心臓はショパンの遺言で、姉によりワルシャワに持ち帰られました。ようやく故郷に帰れたのですね。この心臓は、聖十字架教会に保存されました。この教会は第2次世界大戦でドイツ軍に破壊されたのですが、心臓は奇跡的に無事だったのですね。なお、2008年には科学者らが死因を解明するため、DNA検査を求めたのですが許可されなかったというニュースがありました。
 
ショパン展5.jpg (c)Mathiasrex, Maciej Szczepańczyk
ワルシャワ・聖十字架教会の柱(ショパンの心臓が埋められている)

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パネル「ショパンのピアノ」
 ショパンが生涯愛用したピアノは「プレイエル」(1839年製)です。現在はパリのプレイエルコレクションにあります。リストも「ショパンは銀色のように美しく、いくらかベールのかかったような音の響きと非常に弾きやすいタッチの故にプレイエルを好んだ」と言っています。
 また、ショパンはエラール社のピアノもたびたび弾いており、最後に弾いたピアノもエラール社のものです。

次回は、「ショパンの左手」と「自筆譜」などを紹介します。

ショパン展は12月22日(水)まで。お逃しなく!

(A.M)
 

アートプラザでは、長期休みに児童を対象とした美術系のワークショップを開催しています。今冬は小学1年生のみを対象に、ねん土細工に色づけをする工作教室を予定しています。関係機関の協力を得て、県内の対象児童にチラシを配布しました。定員180名に対し1,500通以上の応募がありました。
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地域性を考慮して県内をいくつかのブロックに分け、そのブロックごとに抽選を行い参加者を決定しました。
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申込をされた方々には結果通知の返信はがきが間もなく届きますので、運よく参加できるお友達は冬休みにお会いしましょう。残念ながら抽選にはずれたお友達は、春休みにも「アートスコーレ」を開催しますので、今回応募しなかったお友達を含めぜひご参加ください。
(H.K)
 

2010年はショパン生誕200年。この記念年にアートプラザでは「ピアノの詩人ショパン展」を開催しています。今回関連イベントとして電子ピアノによるコンサートを開催しました。
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演奏は関本淑乃(しゅくの)さん。関本さんは愛知県立芸術大学音楽学部の出身で、現在は文化情報センター職員です。関本さんは県芸大ではフランツ・リストを研究されていたとのこと。本人はピアニストと呼ばれるのを嫌がっていますが、腕前はなかなかのもの。今回は、大好きなショパンの曲ということで、しっかりと準備をされていました。
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当日は、ダン・タイ・ソン(ショパンコンクール優勝者)のコンサートと時間が重なってしまいました。しかし、中日新聞に紹介されたこともあり、約40名もの方々に来ていただき、ビデオルームは満席になってしまいました。ショパンの時代でも、貴族のサロンではこうした小さな空間で演奏されていたのですね。ショパンのパネルに囲まれながら、美しいピアノの音色に至福の一時を過ごされたことと思います。
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さて、演奏はまず、『華麗なる大円舞曲』と『子犬のワルツ』という対照的な2曲のワルツから始まります。ワルツといってもショパンのものは踊るためというよりは聴くためのものですね。前者では華やかな舞踏会の雰囲気が、後者では子犬が自分の尻尾を追い掛け回しているかわいい情景が浮かんできます。関本コンサート4.jpg
 

次は練習曲(エチュード)を4曲演奏しました。のだめカンタービレでも有名になったOp.10-4、右手が黒鍵ばかりを弾く『黒鍵』、ショパンの祖国であるポーランドのワルシャワが陥落した怒りと悲しみが込められた『革命』、大きくうねる感じの『大洋』と、スケールの大きい曲が続きます。ショパンの激しい情熱を関本さんは的確に表現していました。
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エンゲルマン作 1831年ワルシャワ蜂起の石版画

最後のプログラムは『幻想即興曲』です。この曲はショパンの最もロマンティックな曲の一つですね。筆者がぜひともとリクエストしました。関本さんの解説によると、一拍を左手は6つ、右手は8つと両手が異なるリズム刻むので難しいとのこと。ジャーンという衝撃的な音から始まり、ざわめくような左手の分散和音と右手の情熱的な美しい旋律で始まるこの曲は、聴くものをしびれされる力がありますね。関本さんの演奏もとてもロマンティックでした。

盛大な拍手にこたえてのアンコールは『別れのワルツ』です。この曲は恋人マリア・ヴォジンスカに捧げられたのですが、2人は結局結ばれませんでした。この曲はショパンの死後に発見されました。ショパンは生涯自分一人の大事な思い出として胸の中にしまいこんでいたのですね。少し哀愁を帯びたとても美しい曲です。

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マリア・ヴォジンスカ(1819‐1896)

あっという間に終わってしまったコンサートですが、聴きながら筆者が改めて感じたのは、ショパンはとても繊細で孤独な作曲家であったのではないかということです。彼の39歳という短い生涯は、幸福な一生ではありませんでしたが、心の中にある満たされない思いが、このような素晴らしい作品を作り上げたように思うのです。

ショパン展は12月22日まで開催しています。皆様ぜひお越しください。次回のブログではショパン展の展示内容についてお知らせします。
(A.M)
 

愛知県の民俗芸能などを紹介する「ふるさとの祭in愛知 民俗芸能映像祭がVol.4」がアートプラザビデオルームで開催されています。
今回の映像の一つが「ふるさとの参候と歌舞伎」です。これは昨年12月6日に愛知県芸術劇場大ホールで行われた公演記録です。毎年、「愛知県ふるさと芸能祭」として本県及びこの地方の民俗芸能や地芝居を紹介しています。昨年は民俗芸能1団体、歌舞伎を2団体を取り上げました。
ところで「参候」は何と読むかわかりますか?「さんぞろ」と読むのですね。この「参候祭」は設楽町三都橋の津島神社に16世紀頃から伝わる大変珍しい民俗芸能です。神事というと神聖で厳粛なイメージがありますが、「参候祭」は七福神が次々と訪れ、五穀豊穣や氏子繁盛を祈るとても楽しい、ユーモラスな祭りです。
禰宜が次々と現れる神様に、「かかる尊き神座へ見慣れぬ風俗にて、御出たるは何者にて候」と尋ねると、「さん候、某は・・・」と名乗ることがこの祭りの名前の由来になっています。
筆者は昨年この事業を担当していましたので、現地まで足を運び、楽しく貴重な体験をしました。11月のとある日の夜7時ころから始まり10時くらいまで、地元の方々や観光客と一緒に芸能を味わいました。津島神社の境内の四方にしめ縄を張り,中央に竈・釜,その回りに紙垂をつけた四本の竹,昇り旗が立てられます。さらに,その外側に敷かれた薦(こも)の上で舞が行われます。最前列で座ってみることができましたので、かまどで沸かした湯をササの葉で見物客に振りまく「湯立て」の湯がかかったり、ばらまかれたお菓子をゲットすることできたり、間近で迫力ある芸能を堪能いたしました。
愛知県芸術劇場大ホールでの公演でも、とてもユーモラスな動作で観客を大いに楽しませていました。
ふるさと1.jpg【禰宜と恵比寿の問答風景】(撮影:鬼頭幸一)
 
 
ふるさと2.jpg【禰宜と布袋、寿老神、福禄寿の問答】(撮影:鬼頭幸一)
 
 
ふるさと3.jpg【禰宜と大黒天の問答】(撮影:鬼頭幸一)

さて、歌舞伎ですが、こちらは、御園座や歌舞伎座で行われる「大歌舞伎」とは異なり、素人が行う「地芝居」(「素人歌舞伎」「農村歌舞伎」とも言われます。)です。東海地方は全国でも有数の「地芝居」の盛んな地域で、全国の地芝居団体の3分の1が集中しているのですね。昔からの芝居小屋もリニューアルされ現在でも多く使われていています。愛知県では新城市が盛んで、市内には芝居団体が8団体もあります。素人だからと言って決して侮ってはいけません。プロ顔負けの舞台も見られることがあります。
今回は、浜松市引佐町の横尾歌舞伎保存会による「義経千本桜」から吉野山の場、藤岡歌舞伎は「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場を上演した記録映像を上映します。演目は歌舞伎では有名なものですのであらすじは省略しますが、団体の紹介をいたしましょう。
横尾歌舞伎保存会は200年以上前から行われてきたとても歴史のある団体です。役者・太夫・三味線・振付・床山等すべて地域の人たちが行ってきました。また、後継者の育成にも大変熱心です。「開明座」という名の小屋で年1回10月に定期公演を行っています。筆者も開明座に出かけましたが、おじいちゃんから小さな子どもまで弁当を食べながら家族で楽しんでいました。また、おひねりがじゃんじゃんと飛び、掛け声も飛び交い、地域全体で歌舞伎を支えていこうという強い熱意に打たれました。
 
ふるさと4.jpg「義経千本桜」から吉野山の場(撮影:鬼頭幸一)
 
ふるさと5.jpg「義経千本桜」から吉野山の場(撮影:鬼頭幸一)

一方、藤岡歌舞伎は、豊田市北部の藤岡地区で上演している団体です。昔は各集落で行われていたのですが、長い年月中断していました。平成8年に商工会のまちおこし事業の一環で再開して以来、毎年上演しているものです。一度途絶えたものを復活させることは大変なエネルギーがいるものですね。活動歴は短いのですが、こちらも地域全体で支えられているのですね。地元の公演では、おひねりが多く飛んでいました。
 
ふるさと6.jpg「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場(撮影:鬼頭幸一)
 
ふるさと7.jpg「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場(撮影:鬼頭幸一)


なお、これらの映像は、アートライブラリーの他に、「学びネットあいち」でも見ることができます。
http://www.manabi.pref.aichi.jp/general/gaido/bideo/top.htm

また、吉田喜重監督の「愛知の民俗芸能―聖なる祭り 芸能する心―」(1992年)と「愛知の民俗芸能―都市の祭り 芸能する歓び―」(1993年)も上映しています。この2本は愛知県が制作した短編のドキュメンタリーです。
「聖なる祭り 芸能する心」は、奥三河の祭りとして豊根村の「花祭り」を中心に紹介しています。また、「都市の祭り 芸能する歓び」では、知多地方の「門付万歳」、津島市の「天王宵祭り」、豊明市大脇神明社の「梯子獅子舞」、江南市安良町の「棒の手」、名古屋市緑区有松町の「山車からくり」を紹介しています。
これらの映像は単なる芸能を紹介した記録以上の優れたものです。吉田喜重監督の強いメッセージが感じられます。見ているうちに自分が単なる祭りの観客ではなく参加者の一員に加わっているかのような感じになるのですね。「祭り」の現代における意味は何なのか、伝統の継承はどういうことなのかを考えさてくれる傑作です。ぜひご覧ください。
この他にも、「東栄町 布川の花祭り前・後編」のビデオも上映しています。ふるさと8.jpg 
 

いにしえから伝えられてきた、各地の特色ある民俗芸能は、私たちの心のふるさとであり、長い年月をかけて生活の中で育まれてきた貴重な文化ですね。このような世界に誇れる文化を少子高齢化、過疎化の中で伝承し、後継者を育成することは大変なことです。私たちも機会があれば、祭りや芸能の行われている現地に足を運び、地域の人とともに支えていきたいですね。


愛知県の文化財を詳しく知りたい方は、「愛知県文化財ナビ」(教育委員会)まで。
http://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/index.html

(A.M)
 

2010年は、ロベルト・シューマン生誕200年です。アートライブラリーでは、「ロベルト&クララ・シューマン展」を11月28日まで開催しています。今回、関連イベントとしてシューマンに関する映画の上映会をアートプラザビデオルームにて開催します。
 シューマン上映1.jpg
ロベルトとクララ

ロベルトとクララ・シューマンのラヴストーリーは大変有名ですね。この題材を扱った映画作品を今回2つ紹介します。

上演日時 平成22年11月13日(土) 
  1. 映画「愛の調べ」 13時から
  2. 映画「哀愁のトロイメライ」 10時30分からと15時30分からの2回

今回の上映映画の配役等のデータは次のとおりです。シューマン上映2.jpg


 シューマン上映3.jpg
キャサリン・ヘップバーン

シューマン上映4.jpg (C)Sportsforpeace
ナスターシャ・キンスキー

さて、この映画を見るための参考となる情報をお知らせします。
(1)素晴らしい音楽を楽しんでください。
音楽映画ですので全編にわたり、シューマンの音楽に満ちています。「愛の調べ」では、世紀の名ピアニストのアルトゥール・ルビンシュタイン(1887-1982)が演奏を吹き替えています。また、「哀愁のトロイメライ」でもフィッシャー・ディスカウ、ポコレッチ、ケンプ、サバリッシュなど名演奏家の演奏がたくさん。特に名ヴァイオリニストのギドン・クレーメルがパガニーニ役で出演しているのは驚きです。

 シューマン上映5.jpg(C)Carl Van Vechten
アルトゥール・ルビンシュタイン


(2)ロマンティックな愛の歌「献呈」
映画「愛の調べ」では「献呈」がテーマで、夫婦の愛を確かめる音楽となっています。「献呈」は、ロベルトの歌曲集「ミルテの花」の第1曲目で、クララとの結婚式の前日にミルテの花を添えてクララに献呈された曲です。ミルテの花は、美の女神ビーナスと愛を象徴する花とされ、結婚の花です。この曲はシューマンの曲の中で最もロマンティックな曲ですね。最も幸せな時代に作曲されました。聴いているだけでうっとりとしてしまいます。また、歌詞はリュッケルトによるもので、恥ずかしくなるくらいの熱愛のラブレターです。紹介しましょう。
「君こそ僕の魂、僕の心。
君こそ僕の喜び、僕の苦しみ。
君こそ僕の生きる世界。
君こそ僕の目指す天国。
ああ、君の中に僕は悩みを永遠に埋めてしまった。
君こそ憩い、君こそ安らぎ。
君こそ天から授けられた人。
君の愛は僕の誉れ。
君に見つめられ、僕は輝く。
君に愛されて僕は価値あるものとなる。
君は僕の天使、僕以上の僕。」
なお、映画では、歌ではなくピアノ(リスト編曲)で演奏されますが、ぜひ歌で聴いて欲しいと思います。
 
シューマン上映6.jpg(C)Forest & Kim Starr
ミルテの花(和名 ギンバイカ)


(3)映画と史実との違い
この映画はシューマン夫妻を題材としたフィクションで、ドキュメンタリーではありません。一部、史実に忠実ではない部分もありますのでご注意を。アートライブリーにはシューマンの伝記などもありますので、関心を持たれた方はぜひご利用いただき、正しい情報を入手いただきたいと思います。
「哀愁のトロイメライ」はドイツ映画で史実に近く、当時のドイツの美しい街並みや郊外の風景なども楽しむことができます。一方、「愛の調べ」はモノクロで、かなり創作が入っていますが、アメリカ映画らしく娯楽性に富み楽しめます。
(4)クララ対決
新旧の名女優、キャサリン・ヘップバーン(1907-2003)とナスターシャ・キンスキー(1961-)がクララを熱演しています。ヘップバーンは飾り気のないスタイルと個性的な魅力、比類なき演技力で万人から愛された演技派大女優でした。一方、キンスキーは当代一の国際派女優で、気品と透明感あるある美貌で人気を博しています。
皆さんはどちらのクララを選びますか。筆者はキンスキーの魔性的な魅力に惹かれながらも危険を感ずるのですが・・・。
(5)ストーリー
「哀愁のトロイメライ」はロベルトがヴィーク家に弟子入りして、天才少女クララと出会い、クララの父親の猛反対を押し切りめでたく結婚するというストーリー。
一方、「愛の調べ」は、めでたく結婚したロベルトとクララの幸福な結婚生活、家庭生活が、ロベルトの精神異常から破綻して、ロベルトは急死。家族のようにしていたブラームスはクララに求愛するが、ロベルトへの愛を守るというストーリー。
両映画は時代的にほとんど重なっていないので、続けて鑑賞すると2人の生涯が見えてきます。

なお、両作品は上映会終了後、アートライブラリー資料として受入を予定しています。

(A.M)
 

 10月19日から11月5日まで、「ルネッサンス・バロック音楽関連映像」がアートプラザ・ビデオルームで上映されていますが、関連事業として、10月30日(土)14時から中世ルネサンス古楽奏集団「ウンガレスカ」ミニライブが開催されます。
 ウンガレスカのユニークな紹介がちらしにありましたので紹介します。
3年前に結成。古楽器や民族楽器を織り交ぜながら演奏し、楽しむことを基本に古楽普及に励む。各地イベント、幼稚園、高校、カフェ、雑貨店、路上などに出没。他己紹介「中世の世界観が大好きな田舎育ちの古楽伝道師たち」「何はともあれ音が気持ちいい」「一緒に混ざりたい」(http://ungarescha.untokosho.com

今回のミニライブに当り、ウンガレスカからメッセージも届いています。
「中世ルネサンスの都市や農村の世界を、私たちの音で楽しんでいただけたら嬉しく思います。」

ウンガ1.jpg  ウンガレスカのリハーサル風景

ウンガ2.jpg
 
 さて、当日の演奏曲目が決まりましたのでお知らせします。
(演奏曲目)
◇ウンガレスカとサルタレロ (Ungaresca&Saltarello)
◇ディンディリン、ディンディリン(Dindirin, dindirin),水を越えて(Pase el agua)
◇Santa Maria,strela do dia (聖母マリアのカンティガ集100番)
◇聖母マリアのカンティガ集119番,302番
◇ロンドとサルタレロ (Ronde&Saltarello)
◇ヴォルタ (La Volta)
◇皆で声をそろえて歌おうよ(Cuncti simus concanentes)
◇ドゥクチア(Ductia)
◇シチリアーナ( Siciliana)

13世紀から16世紀ころまでのヨーロッパ各地(イタリア、スペイン、フランドル、イングランド)の民衆の踊りの音楽、宮廷の音楽、巡礼者の聖歌など大変バラエティに富んだ曲目です。中世・ルネサンス時代の音楽が、当時使われていた楽器(復元楽器)によって現代によみがえります。当時にタイムスリップするような不思議な体験ができます。曲も短いものばかりで、とても楽しめますよ。

 先着30名ですので、どうぞお早めにお越しください。
(A.M)

 

 

今回の上映会にあわせて、ルネサンス・バロック時代に使われていた楽器の展示をしています。
 展示している楽器は、上映会期間中の10月30日(土)(14:00から)にミニライブをしていただく古楽奏集団ウンガレスカさんから提供いただいています。  

 ルネ2-1.jpg上映会開会日の前日でしたが、同じ愛知芸術文化センターの中にある愛知県美術館から展示ケースを運んでディスプレイしました。


 楽器展示で難しいのは、楽器は音を奏でるというのがいちばんの目的であるはずなのに、お客様に楽器そのものに触れていただくことがむずかしい点やそれぞれの楽器の音色をどのようにお伝えするかというところでした。
そこでまず、ただ並べただけでは何がなんだかわからないので、展示の常套である楽器の呼び名と簡単な説明文を添えました。
それでも楽器に触れたい。音が出してみたい。どんな音がするのか確認したい。という方は、ライブに来ていただいて、所有者であるウンガレスカさんとお友達になっていただきたいと思います。

 まず、はじめにお断りしておきますが、ここに展示してある楽器は、すべてレプリカ(いわゆる複製品)です。なぜなら、当時製作され演奏された楽器で現代にまで残っているものは、大変数も少なく、演奏できる状態の楽器のほとんどが、高名な演奏家や博物館に所蔵されているためです。
 でも、今回上映している映像にもあるように、当時の貴族の館でこんな楽器を使って楽しんでいたのかという思いをはせるだけでも楽しくなりませんか?
筆者は、子どものころ、自分は貴族にはなれないが、その雰囲気は庶民の私でも味わうことができる。そんな強い思いにかられてリコーダーを必死にそして楽しく練習しました。

 展示されている楽器を、写真や文章でお伝えするのは大変難しいのですが、ご来場いただけるきっかけになればと思ってご紹介します。

ルネ2-2.jpgこれは、ゲムスホルンといいます。
動物の角をくりぬいて作ってあります。
上の2本と下の1本は水牛製(本物です)。上から3番目は陶器製です。息を入れて、穴を指で押さえて音程をかえます。大きくなるほど低い音がします。現代のオカリナのような柔らかい音がします。

 

 


 

ルネ2-3.jpg次に、バロックリコーダー(写真上)とルネサンスリコーダー(写真中)です。
バロック時代のリコーダーは、管内部が円錐形、ルネサンス時代のリコーダーは、円筒形で、その内径構造からルネサンスリコーダーの方がバロックリコーダーに比べ倍音が少なく、素朴で大きな音がします。
この2本は、ソプラノタイプで、小学校で手にするサイズと同じですが、本体は、プラスチックではなくて木でできています。展示されている楽器では、部分的に金属や象牙が使われています。
写真下は、シャリュモーといいます。
現代のクラリネットの祖先にあたる楽器です。リード(植物の葦(あし)を薄くけずったもの)がつけてあって、そこに息を入れることでリードを振動させて音を出します。これも、穴を指先の腹で押さえたり開けたりして音程をかえます。

 

ルネ2-4.jpg左の写真上がツィンクです。コルネットと呼ばれることもあります。
現代の金管楽器と同じくマウスピースに唇を当て振動させて音を出します。本体は、木製革巻きで、8角錐をゆるやかにカーブさせた形状となっています。
マウスピースは、現代のように金属ではなく木製です。


そして、写真下がラオシュプファイフェというなんだか舌をかみそうな名前の楽器ですね。甲高い大きな音がでる楽器で、屋外での演奏向きのようです。馬の上に乗って演奏している版画が残っています。
キャップの中に、リードが2枚合わせた状態で入っていて、息により圧力をかけ、2枚のリードを振動させて音を出します。現代のオーボエやファゴットが、同じ発音構造でダブルリード楽器の仲間です。

 

ルネ2-5.jpg最後にルネサンス・ギターです。
これまでは、すべて管楽器でしたが、これだけは、現代のギターと同様に、張ってある弦を指で弾いて音を出します。見飽きない美しい楽器です。
弦の張り方や本数は、現代楽器のウクレレとそっくりです。

 

 

 


 

今回の映像の中には、展示品と同種の楽器も使われています。
また、10月30日(土)のウンガレスカミニライブでは、ヴィオラ・ダ・ガンバ、プサルテリ、ハーディ・ガーディなんていうあまり聞きなれない珍しい楽器も登場しますので、お楽しみに!

皆様のご来場をお待ちしております。

(Y.K)
 

ルネサンス・バロック音楽って何?
 ルネサンス音楽は15世紀から16世紀にかけてのヨーロッパの音楽です。ルネサンスは「再生」を表す言葉で、古代ギリシャ・ローマの復興を目指した美術・文学などの文化運動ですね。ただしルネサンス音楽は時代は同じですが復興とは関係がありません。声楽曲(教会音楽)が中心で、今のフランスやベルギー、イタリア地方で栄えました。日本にもザビエルがこの時期の音楽を伝えたようです。
代表的な作曲家にパレストリーナ(1525頃-1594)、ラッソ(1532-1594)がいます。

 

 

パレストリーナ

 

 バロック音楽は17世紀から18世紀、1750年頃(バッハの没まで)までの音楽です。バロックとは元来「いびつな真珠」という意味です。均整と調和のとれたルネサンス様式に対し、ゆがんだ印象があるという意味で名づけられたとのこと。自由な感動表現、動的で量感あふれる装飾形式が特色です。この時代に現代の音楽の基礎が作られたと言えるでしょう。代表的な作曲家には、J.S.バッハ(1685-1750)、ヘンデル(1685-1759)、ヴィヴァルディ(1678-1741)がいます。
 バロック音楽は近年大変な人気を博しています。オリジナル楽器(古楽器)の演奏者が増え、様々な演奏表現で古い音楽から新しい魅力を引き出しています。特に、バロック・オペラはヨーロッパでは大ヒットしています。様々な音楽にあふれている現代人の心にバロック音楽はさわやかに響き、癒しのような効果をあげるのではないでしょうか。

 ルネ2.jpg   ルネ3.jpg     ルネ4.jpg 
   J.Sバッハ                 ヘンデル              ヴィヴァルディ

 
今回の映像の見どころは?

 今回上映している映像は、昨年アートライブラリーが受入れたDVD「ルネッサンスバロック音楽大系」(アイエムシー出版)で、全21巻にわたる壮大なシリーズです。作曲家はダンスタブル(1390頃生)、デュファイ(1397-1474)からモンテヴェルディ(1567-1643)、ヴィヴァルディを経てバッハ、ヘンデルに至るまで約350年にわたる作曲家75人の作品371曲を取り上げています。

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このシリーズの見どころを紹介しましょう。

ア 楽器に注目してください!ルネ6.jpg
 当時使われたオリジナル楽器(古楽器)が多く使われています。現代楽器と似ていますがどこが違っているのでしょうか。見たことのないような珍しい楽器も多くありますので楽しんでください。
たとえば、バロック・ヴァイオリン(右図)ではモダン・ヴァイオリンと異なり、駒の下部が薄く上部が厚いこと、指板が短いこと、ネックが太いことなどの特徴があります。また、バロックボウ(弓)は中間部が少し膨らんだ本当の弓に近くなっています。

イ 音色や演奏方法に注目してください!
音色は優美でありやや渋く聞こえますね。これは当時のピッチ(音高)が現代(A440Hzが標準)よりも低かったのですね。(バロックピッチA415Hz)また、弦楽器ではヴィブラートをかけずに(又は少なくして)演奏しています。
                                              バロック・ヴァイオリン
 

ウ 美しい収録場所と衣装に注目してください!ルネ7.jpg
収録は、曲目にあわせてヨーロッパの歴史的な宮殿や教会で行われています。美しい宮殿の広間や教会の礼拝堂も必見です。また、演奏者は当時の華麗な衣装をまとっており、あたかも数百年前にタイムスリップしたかの感がします。

エ 映像や音にも注目してください!
デジタルハイビジョンでの鮮明な画像と録音は大変素晴らしく、カメラワークもとても見やすく、見るものを飽きさせないようになっています。 
 

                                                     撮影の一部が行われたコロルノ宮殿
                                                      (パルマ/イタリア)

 

オ 各国ごとの音楽の違いを味わってください!
イタリア、フランス、ドイツ、イギリスなどそれぞれの国の風土や民族性、宗教の違いなどが音楽にも現れています。その違いも楽しいです。
                     
カ 「アーティストによる古楽器紹介」の映像をご覧ください!
この映像は、アーティストが実際に使用した古楽器の歴史や構造をわかりやすく解説しています。鍵盤楽器、弦楽器、管楽器にわたり15の楽器を紹介しています。これは必見ですよ。

 

 なお、筆者のお気に入りは、時代が最も古い「ルネッサンス=声楽曲集=」です。聴いているうちに心が清められ、そこからなにか新しい力を得るような感動を覚えます。

 

 次回は、上映会場で実際に展示されている古楽器について紹介します。
(A.M.)
 

日本で初めての本格的オペラハウス誕生
 1992年(平成4年)10月30日、待ち望んでいた芸術の殿堂「愛知芸術文化センター」が名古屋の栄に誕生しました。このセンター内に国内初のオペラハウスである3面舞台の「愛知県芸術劇場」大ホールができました。どうしてオペラハウスと呼ばれたかというと、3層のバルコニーからなる馬蹄型ホールであること、舞台が主舞台、側舞台、後舞台の3面舞台であること(これにより複数の舞台のセットが可能で迅速な舞台転換が可能。また、毎日演目を変える事が可能)、さらに舞台設備が大規模であることなどがその理由です。(今では同様のオペラハウスは新国立劇場やびわ湖ホール、兵庫県立芸術文化センターなど増えました。) 

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愛知県芸術劇場大ホールの3面舞台

 

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大ホールの馬蹄形客席

 

東西の芸術が融合した歴史的な公演
 この劇場の杮落としがバイエルン国立歌劇場によるオペラ『影のない女』(R.シュトラウス作曲)でした。この公演は、市川猿之助が歌舞伎の手法を用いて演出を行うということで大変話題を呼びました。また、R.シュトラウスを得意とする名指揮者サヴァリッシュとバイエルン国立歌劇場の引越し公演ということでチケットの争奪戦ともなりました。筆者も朝からプレイガイドの列に並び、かろうじてチケットを確保しました(S席は40,000円でした)。また、当日は、満席となった大ホールの豪華な客席で、わくわくしながら幕が上るのを待っていたことを思い出します。
 さて、公演も大変優れたものでした。市川猿之助演出は歌舞伎の所作に基づく動きやすばやい場面転換、衣装やメイクなど徹底しており、東洋的で幻想的な舞台を創り上げていました。また、サヴァリッシュも大編成のオーケストラから豊かな響きを引き出すとともに、歌手も役柄を見事に演じていました。まさに日本のオペラ上演史の1ページを飾る伝説的な公演であったと言えるでしょう。

 

オペラ『影のない女』
 R.シュトラウスのオペラで有名なのは『ばらの騎士』や『サロメ』ですね。次が『エレクトラ』か『ナクソス島のアリアドネ』でしょうか。今回の『影のない女』は、R.シュトラウスのオペラの中では頂点をなす作品と言われますが、めったに上演されません。その理由は、台本が難解であること、メルヘン的であるため演出が難しいこと、歌手の負担が大きいことなどが考えられます。国内でも上演は珍しいのですが、今年度は5月に新国立劇場での上演があり、さらに来年2月にはマリインスキー・オペラ来日公演と、最近ようやく脚光を浴びてきたようです。

 02-aac3.jpg 第1幕より  夢の誘惑
染物師バラクの妻から影を奪いとるため、皇后と乳母は魔法を使って幻想の世界を作りだす。夢の誘惑にうっとりとなるバラクの妻。(写真:木之下 晃 AAC No.3より)


 RStrauss.jpg リヒャルト・シュトラウス(1864―1949)

11-aac3.jpg 第2幕より  ファンタジー
染物師バラクの妻から影を奪い取るのに失敗した皇后と乳母が霊界に戻っていくシーン(写真:木之下 晃 AAC No.3より)

 このオペラの台本は文豪フーゴー・フォン・ホフマンスタールです。R.シュトラウスは彼との共同制作で名作オペラを多く残しています。ストーリーはおとぎ噺風で、2組の夫婦(皇帝と皇后、染物師バラクとその妻)が試練を経て、真の愛で結ばれるというもので、モーツァルトの「魔笛」の世界を20世紀に蘇らせたものと言えるでしょう。ところで『影のない女』の「影」とはどういう意味でしょうか?皇后が子どもができないのは影がないためであるということからすると、「母親であることの証」あるいは「人間となることの証」と言えるでしょうか。皇后は「影」を必死に手に入れようとします。先日上演されたばかりのトリエンナーレオペラ「ホフマン物語」で、「影」を失ってしまったホフマンのことも連想されますね。あらすじは複雑となりますので省略します。ビデオを見てのお楽しみといたしましょう。

 

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 なお、当時のポスター、パンフレット、写真、新聞記事なども展示しますので、ぜひご来場ください。先着30名ですので、満員の場合はお断りすることもございます。また、オペラの雰囲気を楽しむため、途中入場はご遠慮いただきますので、お早めにお越しくださるようお願いします。
 (A.M)

 

  「ルネッサンス・バロック音楽関連映像上映会」<10月19日― 11月5日、アートプラザビデオルーム>の関連事業として、10月30日(土)14時からウンガレスカのミニライブが開催されます。
 ウンガレスカは愛知県を中心に主に中世ルネサンス時代のヨーロッパの音楽を演奏する古楽奏集団です。ウンガレスカという名前は、マイネリオ作曲の「ウンガレスカとサルタレロ」という曲をよく演奏していたところからつけられたとのこと。ウンガレスカは、ハンガリーの舞曲でもあるようです。

 ウンガレスカホームページ ↓
 http://ungarescha.untokosho.com/index.html

 このウンガレスカのリハーサルが10月3日、芸術文化センターで行われました。メンバーが5人集まり、様々な珍しい楽器をたくさん持ってきて練習しました。初めて見る楽器ばかりで、どんな音がするのでしょうか。興味津々でした。その楽器の一部を紹介しましょう。

ハーディー・ガーディー.jpg◇ハーディー・ガーディー Hurdy gurdy

別名手廻しヴァイオリン。弓の代わりにハンドルを回すと木の円盤で弦を擦り、ボタンのような鍵盤で弦を押さえて旋律を鳴らせます、時にリズミックなノイズを出し伴奏します。バグパイプのような音を出します。放浪の大道芸人がよく使用したとのことです。今でもフランス、ハンガリーなどの国の伝統楽器として使用されることが多いです。

ハンマー・ダルシマー.jpg◇ハンマー・ダルシマー Hammer dulcimer
箱型の共鳴体に張られた多数の金属製の弦を、ばちで打って演奏します。金属製の弦を打って音を出す点や、音色の類似性から「ピアノの先祖」と呼ばれることもあります。同系の楽器として、西南アジアのサントゥール、ハンガリーのツィンバロムなどがあります。音の減衰が長く、繊細で美しいのが特色。

ゴシック・ハープ.jpg◇ゴシック・ハープ Gothic harp
中世のハープ。現在のハープと異なり、音を換えるペダルはありません。またアイリッシュハープのように半音を換える器具もありません。とても繊細で音の立ち上がりがクリアで、音の形をそのまま再現します。






 

 まだまだ、いろいろ珍しい楽器がありましたが、ライブでのお楽しみといたしましょう。

 筆者もリハーサルの一部を見学させていただきました。
 「聖母マリアの賛歌」では、民衆のマリアへの敬虔な思いが伝わってきました。カトリックの聖職者が歌うグレゴリア聖歌のような静的なものではなく、動的であり、踊りたくなってくる音楽です。民衆の素朴な思いが感じられますね。中世の農村生活が思い浮かぶような心地がしました。
 「シチリアーノ」では、美しく懐かしいメロディーが、ゴシック・ハープ、ハーディー・ガーディーとリコーダーで奏でられ、余りの懐かしさと美しさにうっとりしてしまいました。これはどこの民謡だったのだろうかと考えていたら、レスピ―ギ作曲の「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3番の曲ということを思い出しました。レスピーギは16世紀イタリアの作者不詳のリュート曲から編曲したのですね。この曲はTVCMでも流れたことがあります。また、平原綾香さんも編曲して歌っていますね。なお、シチリアーノとは、ルネサンスからバロック音楽に遡る舞曲の一つで、ためらいがちにたゆとう曲想と付点リズムが特徴的です。

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リハーサル風景

 ライブでは、この他にも、ドゥクチア、ヴォルタなども演奏されます。
古楽器の演奏を聴くと、現代の楽器から失われてしまった何かを強く感じます。懐かしさというか、素朴な暖かさが心の中に蘇ってきます。
 めったに聴く事ができない貴重な演奏ですので、ぜひお楽しみください。なお、会場の都合で、先着30名となっていますので、ご理解いただききますようお願いします。
 さらに、上記の上映会期間中には、ウンガレスカが普段使っている珍しい古楽器も展示いたします。こちらもお楽しみください。

(A.M.)

マーラー「大地の歌」とローザス
 重厚壮大な「マーラー」の音楽と斬新でポップなコンテンポラリーダンス・カンパニーの「ローザス」、この2つはどういう関係なのか、首をひねる方もいらっしゃると思います。この企画はあいちトリエンナーレの最後を飾るパフォーミングアーツ『3Abschied(3つの別れ)』の関連事業なのですね。『3 Abschied』では、マーラーの大作「大地の歌」の終楽章「告別」が生演奏され、ローザスを率いるアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル他によるダンスが加わるコラボレーション作品です。さらに、演奏は現代音楽を得意とするアンサンブル・イクトゥスです。日本初演となる記念すべきこの公演もぜひご覧ください。(この公演の詳細は次のホームページをご覧ください。)

 http://aichitriennale.jp/artists/performing-arts/-anne-teresa-de-keersmaeker-jerome-bel-ictus.html


マーラー1.jpg生誕150年のマーラーと「大地の歌」
 グスタフ・マーラー(1860年―1911年)は今年、生誕150年、さらに来年は没後100年という2年連続のアニバーサリー作曲家です。マーラーは後期ロマン派の作曲家で100人以上の編成による大規模な交響曲を11曲書きました。(第10番は未完に終わりました。)
 この「大地の歌」は1908年に書かれた9番目の交響曲です。6楽章からなり、テノールとアルトが交互に独唱をつとめています。歌詞は李白らによる唐詩に基づき、ドイツの詩人・翻訳家のベートゲが自由に翻訳した詩集『中国の笛』に基づいています。色彩的で耽美的な表現や漂う東洋的な無常観、厭世観のゆえにマーラーの作品の中でも人気の高い曲となっています。
 全6楽章のうち終楽章「告別」は約30分かかる大曲です。前半が孟浩然の詩、後半が王維の詩によっています。現世との別れ、生への告別を扱ったもので、「死」という厳粛なテーマを扱ったものと言えるでしょう。
なお、今回の「3Abschied」の公演では、シェーンベルクが編曲した室内楽バージョンでの演奏ですので、
原曲 の大オーケストラ演奏の重厚さとは異なる演奏となりますので印象が異なると思います。

 

「大地の歌」のビデオ
 今回は、バーンスタイン指揮とデイヴィス指揮の2種類の映像をお楽しみいただきますが、特にマーラーを得意とするバーンスタイン/イスラエルフィルの演奏は圧倒的です。マーラーと同じユダヤ人の血が流れているためか、全身全霊をこめた感動的な演奏となっています。

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「大地の歌」ジャケットも展示しています
LPやLDという名前を聞いて懐かしく思われる方もいると思います。今では、CDやDVDに媒体が変わってしまいました。昔のLPジャケットはデザイナーが丁寧に工夫をこらして作成しており、一つのアートとも言えるでしょう。今回、「大地の歌」の12枚のジャケットを展示しています。(一部愛知県立芸術大学から資料提供いただきました。)中国の風景や写真をイメージしたもの、指揮者をクローズアップしたものなど様々です。ジャケットから何かが見えてくるかもしれません。


(A.M)
 

8月15日(日)、トリエンナーレオペラ「ホフマン物語」を演出する粟國淳氏がアートプラザ・ビデオルームに来場されました。そこでオペラについての楽しいトークをしていただきました。

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粟國氏は日本を代表する若手オペラ演出家の筆頭です。日本とイタリアの各地で幅広く活躍しています。愛知県芸術劇場でも、愛知県文化振興事業団主催で、ローマ歌劇場の初来日のときのスタッフとしての活動以来、「椿姫」、「ラ・ボエーム」での演出において豪華で感動的な舞台を繰り広げたのは記憶に新しいものです。イタリアでの生活も長く、日本語よりもイタリア語の方がうまいとか・・・。ちょうど「ホフマン物語」の稽古が大リハーサル室で始まっていて、忙しい合間をぬって来ていただきました。

 粟国2.jpg  粟国3.jpg

 さて、粟國氏のお話は、とても表情豊かで、オペラの様々な作曲家や作品のお話をはじめ、歌やせりふも飛び出すとても楽しいものでした。以下、講演の一部をお伝えします。

・オペラは作曲家だけではなく、台本づくりの作家と一緒になって創られます。プッチーニは、言葉とストーリーの助けなしに作曲はできないと言っています。
・オペラはドラマです。ヴェルディは、オペラのドラマ性を重視し、人間のストーリーを描きました。特に歌手の発音の明瞭化を重視し、キーになる言葉(たとえば「愛」、「死」、「復讐」など)をいかに、観客の耳にストレートに入れるかを工夫しています。
・オペラは時代の遺産であるが博物館の所蔵品ではありません。100年前のものであっても、できたときは現代アートでした。「椿姫」も、初演された当時は、内容が同時代の出来事で、衝撃的なテーマであったに違いありません。
・オペラは娯楽であり、楽しいものです。今で言う「映画」と同じようなもので、スペクタクルな要素もあります。
・オペラ歌手は、体が楽器であり、歌が歌えるのは当然で、さらに演技も要求され、大変です。オペラ歌手は喉の油分がとれてしまうため、幕間のウーロン茶は禁物です。
・「ホフマン物語」はオペレッタの神様とも言われるオッフェンバックが書いたとてもドラマティックな作品で、ミステリアスであり、悪魔が出てきたりしてダークな部分もあるホラー映画のようなところもあります。
 
 その他にも多くのお話をいただきました。当初予定の30分を超えてのトークでしたが、あっという間に時間がたってしまった感じです。また、機会があればじっくりお話を伺いたいですね。9月18日と20日の本公演ではどのような楽しい舞台を見せてくれるのでしょうか、とても楽しみです。
 ビデオ上映会も20日まで開催しています。また、アートライブラリーでは、「ホフマン物語」特別展示を行っていますので、ぜひ足をお運びください。
(A.M)
 

昨年につづき、今年も8月3日(火)から8日(日)にアートスコーレを開催しました。今回のテーマは「アートでしりとり」。
初日のお題は「森」。

アートスコーレ2208-1.jpg    アートスコーレ2208-2.jpg

 

 

前日までにつくられた作品をプロジェクタ映像で見ます。

アートスコーレ2208-3.jpg

 

前日までの作品からイメージをふくらませて、ねん土や絵の具での創作作業にはいります。

アートスコーレ2208-4.jpg    アートスコーレ2208-5.jpg

 

講師の先生のアドバイスを受けている様子。

アートスコーレ2208-6.jpg

 

完成したら記録撮影。

アートスコーレ2208-7.jpg   アートスコーレ2208-8.jpg

 

 撮影した画像はスライドショーに編集して、8月21日(土)からのビデオルームでの催し(トリエンナーレ関連企画)で上映予定です。

(H.K)

 

 

オペラ「ホフマン物語」ビデオ上映会(第2弾)が始まりました!
―フランスオペラの本場新旧パリ・オペラ座の上演をお楽しみください―

 

 パリ・オペラ座には2つのオペラハウスがあります
 「ホフマン物語」は、フランスオペラの珠玉の傑作です。フランスオペラ最高峰のパリ・オペラ座での上演こそ、最も作曲家の意図を現しているのではないでしょうか。

ガルニエ.jpg←ガルニエ宮
 さて、パリ・オペラ座には二つのオペラハウスがあることはご存知でしょうか。オペラ座というとミュージカル「オペラ座の怪人」で有名ですね。これはこの劇場が舞台です。設計者のシャルル・ガルニエの名から「ガルニエ宮」とも呼ばれ、1875年に落成しました。ネオバロック様式の劇場はあっと驚くほど豪華絢爛であり、劇場の天井にはマルク・シャガールの幻想的な絵が描かれ、とっても素敵です。(客席は2,167)
 

バスティーユ.jpg←オペラ・バスティーユ
 一方のオペラ・バスティーユはフランス革命200年を記念して、バスティーユ広場に建てられたもので1989年に落成しました。外観はガラス張りのモダンな建築で、舞台装置はコンピューター制御でなんと世界最大の9面舞台、客席は2,703です。(ちなみに愛知県芸術劇場大ホールは3面舞台)
現在では、バスティーユがオペラ上演で多く使われ、ガルニエは主にバレエで使われています。日本には、オペラ座のバレエ団は何度も来ていますが、合唱、オーケストラを含めたオペラ集団としては2008年に初来日しました。

 

「ホフマン物語」は上演ごとに内容が異なります
 この新旧パリ・オペラ座の映像はそれぞれかなり異なっています。30年近く時代が離れていますので、画質や演出が異なるのは当然ですが、最も大きな違いは幕の構成です。旧が第1幕ジュリエッタ⇒第2幕オランピア⇒第3幕アントニアと進むのに対し、新がオランピア⇒ジュリエッタ⇒アントニアと進みます。また、ニコラウスは通常は女性が男性役として歌うのですが(ズボン役といいます)、旧では男性がそのまま歌っています。不思議ですね。実は、作曲家のオッフェンバックは「ホフマン物語」を完成させずに亡くなったのです。エルネスト・ギローがアレンジを加えて完成させたのですが、初演時(1881年)の楽譜が消失してしまったので、それ以降、自筆譜の一部が新たに発見されたりして、さまざまな版が現れているのです。今回のあいちトリエンナーレはどのような版によるのでしょうか。

 

 特別プログラム(8/15)では伝説の映像を上演します
 8月15日(日曜日)には、特別にフェルゼンシュタイン演出による伝説的の映像「ホフマン物語」を上演します。 

フェルゼンシュタイン.jpg←ワルター・フェルゼンシュタイン(1901-75)
フェルゼンシュタインはドイツの演出家で、オッフェンバックを再評価し、オペラ界に衝撃を与えました。また、第2次大戦後は、東ベルリンにコーミッシュ・オーパーを創設し、オペラのなかのドラマの部分に光をあてた「ムジークテアター(音楽劇)論」を展開しました。オペラに「演出の時代」をつくった功労者です。今回は、ドイツ語による上演で、いつものフランスオペラの雰囲気とは違いますが、とても演劇的な内容で、人間の真実が素直に力強く伝わってきます。
さらに、同日11時からは、あいちトリエンナーレオペラで演出を担当する粟國淳さんに会場に来ていただき、ミニトークをしていただきます。オペラは演出によってメッセージや感動も異なってきます。粟國さんがどのような演出をされるかとても楽しみです。

(A.M)

※ あいちトリエンナーレ2010プロデュースオペラ「ホフマン物語」の詳細は下記の特別サイトへ  http://www.aac.pref.aichi.jp/sinkou/event/hoffmann2010/index.html
 

 開催まであと1ヶ月半とせまった「あいちトリエンナーレ」のパフォーミングアーツ関連のプレ企画として、出演団体をフィーチャーしたビデオ上映会をビデオルームで開催しています。
 今回は、ただいま上映中の平田オリザ氏の演劇ビデオについて紹介します。
平田オリザ氏は、日本を代表する劇作家・演出家です。1980年代に『青年団』の活動を通して、全く新しい演劇技法「静かな演劇」を確立、今もなおその方法論と著作が国際的に高い評価を受けています。
今回の映像『平田オリザの現場』は、氏が手がけた舞台の数々を収録したシリーズです。毎日異なる映像を上映しています。この中では、特に岸田國士戯曲賞を受賞した「東京ノート」が日本を代表する作品として有名で、9ヶ国語に翻訳され、また、世界各国でも上演されています。(7月7日上映予定)

 平田1.jpg


平田氏の演劇は、暗転や舞台転換も、効果音もBGMもなく、劇全体が一つの場面となっていることが多いのですが、日常そのもののせりふをじっくりと味わうことができます。対話の中から揺れ動く人間関係が浮かび上がり、新たな発見や感動が沸き上ってきますよ。
なお、トリエンナーレのオープニングとして、平田オリザ+石黒浩研究室プロジェクトによるロボット版『森の奥』が8月21日から始まります。同プロジェクトによるロボット演劇の劇場初公開です。果たしてどのような舞台を繰り広げるのか、公演が楽しみですね。(チケットはただいま発売中)
ビデオ上映会は、この後も、ヤン・ファーブル、チェルフィッチュ、Nibroll、ローザスと続きます。上映日をご確認の上、ぜひお越しください。
(A.M)

オペラ「ホフマン物語」ビデオ上映会(第1弾)が始まりました!
―9月の公演の予習として、またオペラ入門としてお楽しみください。
     
オペラ「ホフマン物語」は、フランスの作曲家オッフェンバックが作曲した唯一のオペラです。(オッフェンバックはオペレッタ(軽歌劇)作曲家として有名です。誰もが知っている「カンカン踊り」もオッフェンバックのオペレッタ「地獄のオルフェ(邦題:天国と地獄)」の一部なのです。)
オッフェンバック.jpg ←ジャック・オッフェンバック(1819-1880)

このオペラは「ホフマンの舟唄」でとても有名なのですが、上演の機会が限られています。ここ愛知県芸術劇場でも、今までたった1回しか上演されていません。その理由は、規模が大きいこと(全部で5幕もある。)、主役級の歌手が多く必要であることなどで、要は制作に多くの経費と労力がかかるためなのです。ということで、今回9月18,20日に大ホールで上演のトリエンナーレオペラ、見逃すと今度はいつ見られるか分からない!見逃すのはもったいないですよ。ホフマン上映.jpg
 

さて、今回上映する二つの映像は、特に「ホフマン」役のテノールに注目ください。コヴェントガーデン歌劇場は若き日のプラシド・ドミンゴが主役です。ホフマンはドミンゴの当たり役で、若々しく力強い声と演技が楽しめます。ホフマンの愛する女性たちも著名歌手が揃っています。この映像はいわばホフマン物語の「定番」です。
一方、マチェラータ音楽祭のホフマン役はヴィンチェンツォ・ラ・スコーラです。スコーラはポスト3大テノール(3大テノール:パバロッティ、ドミンゴ、カレーラス)の筆頭とされ、太陽のような輝かしい声で人気を呼んでいます。また、若いイタリアのコロラトゥーラ、ランカトーレの超絶テクニックも注目です。演出もとても楽しいものとなっています。
新旧テノールの競演以外にも演出の違いもお楽しみください。オペラは演出によって、印象も感動も全く変わってきます。オペラは決して過去の遺物ではありません。演出によって現代に新しく生まれ変わり、今を生きる私たちに語りかけて来るのですね。9月の公演も若手演出家の粟國淳氏がどのような演出で私たちに語りかけて来るのでしょうか。とても楽しみです。
6月19日(土)14時30分から、このオペラの制作に携わっている愛知県文化振興事業団の大脇可子さんに、わかりやすく見どころ、聴きどころなどを解説していただきます。解説を聞いてからオペラを見ると、新しい部分が見えてきて、感動がより深まることでしょう。
※  あいちトリエンナーレ2010プロデュースオペラ「ホフマン物語」の詳細は下記の特別サイトへ  http://www.aac.pref.aichi.jp/sinkou/event/hoffmann2010/index.html
(A.M)
 

 アートプラザ ビデオルームで春のアートスコーレが開催されています。今回は初日参加のお友達の様子を紹介します。アートスコーレは3月31日(水)までやっているので、興味を持ったお友達はぜひ参加してください。

まずはねん土を使ったプログラムの様子。

アートスコーレ3月1.jpg 何を作っているのかな。

 

アートスコーレ3月2.jpg つのがうまくできたかな。

 

アートスコーレ3月3.jpg お母さんもお手伝い。

 

 

今度は絵の具を使ったプログラムを紹介。

アートスコーレ3月4.jpg さくらの絵が上手に描けていますね。

 

アートスコーレ3月5.jpg どうなふうにかこうかな。

 

アートスコーレ3月6.jpg どうな色があるのかな。

 

このほかにもいろんなプログラムを用意して待っています。

春休みの思い出に一度お立ち寄りくださるとスタッフ一同カンゲキです。

(H.K)

 

地下2階アートプラザ内に新たに交流コーナーを開設しました。供用開始日は2月2日(火)でした。
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プラザ内に簡単な打合せが出来る場所を確保することにより、芸術家やそのタマゴたちに話し合いの場を提供して、その活動を支援することが大きな目的です。さらに、そこで知り合った芸術家同士がコラボレートして新たな創作活動のキッカケになればなお良いです。
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実際に利用した方々の感想を伺ったところ「簡単な手続で利用できて、とても便利」とのことでした。
プラザカウンターで利用状況を確認して空いていればその場で申し込んで即利用可能です。利用方法の詳細は後日ホームページ上にアップの予定です。
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コーナー内にはホワイトボードも用意してあり、定員は10名ですので、小規模な会合に最適です。


また、プラザ内のテーブル席の運用もコーナー設置を機に見直しました。今まで、テーブル席は図録等の閲覧を考慮して打合せなどができませんでした。今回の見直しで、閲覧専用席を1テーブルにし、
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残りの3テーブルは「歓談席」とし、簡単な打合せ等ができるようになりました。
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どんどん活用していただきたいと思います。ただし、飲食は相変わらずできませんので、ご注意ください。

(H.K)
 

今回は、8/27(木)に開催のアートスコーレ第4回「木と木をくっつけて いろんなものを作ってみよう!」の模様を紹介します。まずスタッフの紹介を。

写真中央の男の人が愛知教育大学の樋口先生です。まわりの女性の方々はアシスタントの学生さんです。木と木1.jpg

タイトルからも分かるように木材を利用して参加者が好きな形のものを作る内容です。

しかし、使う道具は紙やすりと接着剤のみ。

木と木2.jpg

 

あらかじめ、いろいろな形や大きさにカットした木片を講師の先生が用意しました。木と木3.jpg

 

参加者が自分で必要なパーツを探して、組合せを考えます。木と木4.jpg

 

紙やすりを使って部品の形や面の滑らかさ(手ざわり)を仕上げます。木と木5.jpg

 

アシスタントの学生さんのアドバイスを受け組み立てている様子です。木と木7.jpg

 

出来上がった作品を先生が記録のため撮影。

 木と木6.jpg

 

最後に、参加した子どものほか保護者の方にもアンケートにご協力をいただきました。木と木8.jpg

 

 

今夏のアートスコーレは第4回でおしまいです。

アートプラザでは、今後もこのような催しを企画開催したいと思います。

次の機会をお楽しみに。

最後に日程の都合で第3回「手染めに挑戦」に取材にいけませんでした。ゴメンなさい。

(H.K)

 

 

 

 

 

22日(土)にアートプラザビデオルームで第2回のアートスコーレ「思いっきりカラフルマイカップ」がありました。今回はその模様を紹介します。

「思いっきりカラフルマイカップ」とは、粘土でまずカップを作りそれに塗料で色付けをします。その後乾燥して、焼成(やきあげ)します。当日は、カップの成形と色付けまでを行いました。

まず、型を使ってカップの形を粘土で作ります。

マイカップ1.jpg

マイカップ2.jpg

マイカップ3.jpg←いろいろな型

 

カップの形ができたら、さあ色付け。

マイカップ4.jpg

マイカップ5.jpg←どんな模様にしようかな

 

 マイカップ10.jpg

 

先生のアドバイスを聞いて、もうひとガンバリ。

マイカップ6.jpg

 

中も外も色を付けます。

マイカップ7.jpg

 

マイカップ8.jpg←こんなモノかな!

 

参加者の乾燥中の作品がビデオルームで、8/25(火)26(水)の2日間展示されています。

ぜひご本物をご覧ください。

 マイカップ11.jpg

 

焼き上がりがどんな色合いになるか楽しみですね。

木曜日(27日)にも第4回「木と木をくっつけて作ってみよう」があります。ぜひご参加を!

(H.K)

 

 

本日、アートプラザビデオルームにおいてアートスコーレ第1回「大きな絵の中へ入ろう」の催しが行われました。講師の赤塚一三(あかつかかずみ)先生の指導のもと参加した子どもたちとその保護者の方がみんなで一つの大きな作品を完成させました。

その過程を紹介します。
まず、大きな和紙に森をイメージして絵を描きます。
    大きな絵1.jpg森の絵を描いているところ

赤青黄の三原色から無数の色を作り出せることを子どもたちが体験しました。
  大きな絵2.jpg絵の具を調合して色をつくっているところ


その紙を竹を組合せた骨組みに張り合わせて大きなドームを作ります。
 大きな絵3.jpg骨組みを作っているところ

 大きな絵4.jpg

  大きな絵5.jpgお母さんたちも協力

 

 大きな絵6.jpg

 

完成した作品を森に見立てて中に入ってみます。小鳥のさえずりをBGMに雰囲気を盛り上げています。

 大きな絵7.jpg

 

 

会場を暗くして、幻想的な森も体験してみます。

 大きな絵8.jpg


 
最後はみんなで記念撮影。

大きな絵9.jpg
 
アートスコーレは他の内容で、まだまだ開催されます。このブログをご覧になって関心をもたれた方は、ぜひご参加ください。

(H.K)


 

実験映画の17年展.jpg現在、地下2階アートプラザビデオルームでは「芸文・実験映画の17年展 ―テーマ上映会・プラザプレイベント― 」を28日(日)まで開催中です!
この催物は、6月12日(金)から14日(日)、6月23日(火)から25日(木)までアートスペースAにて開催されるテーマ上映会「実験映画の長編&大作」のプレイベントとして企画されました。

愛知芸術文化センターの開館以来定期的に行われてきた、実験映画をテーマに取り上げた主催事業の17年をふりかえり、今まで上映された実験映画の貴重な資料を展示し、当日配布されたプログラムなども、手にとってご覧いただけます。今まで開催されたポスターや資料が並ぶ様子は、なかなかの見ものです
また、展示だけでなく実際に映像作品もご覧いただけるよう、期間限定ではありますが6月12日(金)、16日(火)、27日(土)、28日(日)に、ゴダールの『映画史』全8章を上映します。

ゴダール.jpg
ジャン=リュック・ゴダール
『映画史』全8章 1988-98

 
 この作品は、1988年に制作を開始、映画生誕100年の年である95年を通過して、98年に完成した、ジャン=リュック・ゴダールのビデオによる大作です。昨年度開催された、第13回アートフィルムフェスティバルでも上映されました。

 なにしろ4時間25分の大作なので、第1章から第4章(6/12、27)、第5章から第8章(6/16、28)と日にちを分けて上映します。上映当日は、1→4、5→8の順番で2回、繰り返し上映します。12日はテーマ上映会とは開演時間が重ならないようになっていますので、テーマ上映会に参加予定の方も、会場に向かわれる前にぜひお立ち寄りください。また、テーマ上映会に参加された後「もっと色々観たい!」と思われる方もいらっしゃるかと思い、テーマ上映会終了後の土日に上映されるように設定しました。

実験映画とは、「新しく先鋭的な表現の可能性を常に追求している映像表現」とのこと。そのため芸文センターでは、劇映画やドキュメンタリーでも、映像表現の新たな可能性を追求する作品を幅広く取り上げてきました。ヌーベルヴァーグの作家と一般的には知られているゴダールの『映画史』も、そんな一本です。
新しく先鋭的って、一体どんな作品なのだろう?と思われた方、「百聞は一見にしかず」ともいいますし、この機会にぜひ一度ご覧ください。観た後には、今まで気づかなかった世界が開けるかもしれません。

ちなみに、実験映画は「あいちトリエンナーレ2010」でも取り上げる予定です(作品は未定です)。愛知初のトリエンナーレ開催前に、現代芸術を体感してみてください。
今回のゴダール『映画史』上映は、入場無料、事前申込も不要、いつでも気軽に入場できます!

(K.A)

今回ご紹介するのは愛知芸術文化センターの地下2階アートプラザにある、ビデオルームというスペースです。
以前よりアートプラザをご利用いただいている方はご存知かもしれませんが、数年前まではここで「プラザシアター」という上映会を定期的に開いていました。しかし設備の見直しに伴い、残念ながら一旦終了することになりました。
その後、ビデオルームは多目的ルームとして、色々な催し物を開催してきました。その中には上映会もありましたが、テレビを利用しての上映会でした。

それがこの度、上映の設備を整える機会ができ、大きな画面と音質のよいスピーカーで上映会を企画できるようになりました!
ビデオルーム.jpg
↑テレビ画面より迫力ある大きな画面とスピーカー

すでにこの環境を利用して、「ふるさと秋の祭in愛知 民俗芸能映像祭」を11月17日から12月7日まで開催しました。次回開催は12月20日から12月25日のクリスマスシーズンにあわせて「Xmasはオルガンだ!クリスマスコンサート・ビデオシアター」を開催します。

クリスマス.jpgビデオルームからクリスマスを感じる音楽が聞こえたら、覗いてみてください。無料で、いつでも入場できます。
2005年に開催した「Xmasはオルガンだ!4」も上映されますので、12月23日開催の「Xmasはオルガンだ!6」の雰囲気を事前に感じることができ、当日の公演をよりいっそう楽しめるのではないでしょうか。

クリスマスの雰囲気をビデオルームで感じて、楽しい年末をお過ごしください♪
(K.A)