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「地元ゆかりの芸術家等の映像作品上映会」開催中

2013年02月27日

 東海地域は昔から芸能が盛んです。現在でも日本舞踊やバレエなどの習い事が盛んな地域です。また、愛知県内には4つの芸術系の大学があり、多くのアーティストを輩出しています。


 愛知県文化情報センターでは、地元のアーティストを支援し、その活動を紹介するため、様々な情報発信を行うとともに、アートライブラリーにおいて、関連の図書、図録、録音・録画資料などを重点的に収集しています。
 今回の上映会では、アートライブラリー所蔵の映像資料の中から、美術、音楽、映像、舞踊、演劇、オペラなど18本の作品を選びました。ラインアップを紹介しましょう。

 

 まず、美術では、次の5人を取り上げました。
 三岸節子氏(1905-1999)は旧尾西市(現一宮市)生まれで、女性画家の第一人者として、力強い作品を多く生み出しました。生家跡地に「三岸節子記念美術館」があります。
 片岡球子氏(1905-2008)は、ダイナミックな作風の日本画家として著名で、愛知県立芸術大学の日本画の礎を築きました。同大学の講義棟の壁には片岡氏の作品が描かれ、芸術を目指す学生を今でも見守っています。
 杉本健吉氏(1905-2004)は名古屋市生まれ。吉川英治作の『新・平家物語』等の挿絵で絶賛を得ました。また、名古屋能楽堂の鏡板で、定番となっている老松でなく若松を描いたため物議を醸しました。美浜町には「杉本美術館」があります。
 島田章三氏(1933-)は、愛知県立芸術大学学長や芸術文化センター総長を歴任されました。画家の島田鮎子夫人ともに、独自の絵画表現を確立してきました。

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島田章三《課題制作》 1980年

 荒川修作氏(1936-2010)は名古屋市生まれ。前衛的な芸術家として、日本より海外で先に高く評価されました。岐阜県養老町の「養老天命反転地」(1995年)は代表作の一つです。

 

 音楽では、ヴァイオリニストの竹澤恭子氏(1966-)を取り上げました。竹澤氏は大府市生まれ。スズキ・メソッドとして知られる才能教育研究会で学んだ後、ジュリアード音楽院へ留学して研鑽を積み、世界的な評価を勝ち得、現在では、世界中で演奏活動を続けています。

 

 映像では、愛知芸術文化センターオリジナル映像作品の作家2人と名古屋市出身の映像作家を取り上げました。
 前田真二郎氏(1969-)は、映像作家で岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の准教授です。今回の『王様の子供』では映像表現の新たな局面を切り開いています。
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『王様の子供』の1シーン

 三宅流氏(1974-)は岐阜県出身の映像作家。『究竟の地--岩崎鬼剣舞の一年』は、岩手県北上市の岩崎地域に古くから伝わる民俗芸能「岩崎鬼剣舞」(国指定重要無形民俗文化財)にたずさわる人々を一年間追い続けたドキュメンタリー作品です。
 なお、前の2人の作品は、愛知県文化情報センターのオリジナル映像作品として制作されたものです。
 名古屋市生まれの松本俊夫氏(1932-)が日本の代表的な実験映画の作家として著名で、戦後の映像作家に大きな影響を与えました。
 

 舞踊では、名古屋市出身の2人を取り上げました。日舞の山路曜生氏(1929-2010)は、創作日本舞踊家として地域の日本舞踊の発展に貢献しました。
 コンテンポラリーダンサーの平山素子氏は、振付家としても、日本のダンスシーンをリードする存在として注目を集めています。『After the lunar eclipse/月食のあと』は、愛知県文化情報センターが2009年にプロデュースした作品で、2011年にも再演されています。
jimoto4.jpg 撮影:Yutaka Mori
平山素子 近影

 

演劇では次の4つを取り上げました。
 名古屋は小劇場が盛んな地域でもあります。北村想氏(1952-)は、日本を代表する劇作家・演出家です。名古屋で劇団「プロジェクト・ナビ」を主宰していました(2003年解散)。近年は小説にも取り組んでいます。
 「少年王者舘」は、一宮市出身の天野天街氏(1960-)が主宰する劇団です。天野氏の独特の世界観は大変魅力的で、県内外での人気が高くなっています。また、芸術文化センター1994年オリジナル映像作品の『トワイライト』は、第41回オーバーハウゼン国際短編映画祭('95 ドイツ)および、第44回メルボルン国際映画祭・短編部門('95 オーストラリア)でグランプリを受賞しています。
 「ままごと」は、一宮市出身の劇作家・演出家の柴幸男氏(1982-)の作品を上演する劇団で、あいちトリエンナーレ2013でも公演が予定されています。今回、上映する『わが星』は、柴氏が岸田國士戯曲賞を受賞した作品です。
 愛知県文化振興事業団では、上演戯曲を毎年募集しており、受賞作(AAF戯曲賞)をプロデュース公演として上演しています。今回は、地元のスエヒロケイスケ氏の受賞作「water witch--漂流姉妹都市」の記録映像を上映します。

 

 オペラでは、あいちトリエンナーレ2010で高い評価を得た『ホフマン物語』(オッフェンバック作曲、愛知県文化振興事業団制作)を上映します。この上演には、地元の名フィルやオーディションで選ばれたAC合唱団が加わっています。演出や舞台も大変素晴らしく、外国でも再演されました。
 jimoto3.jpg
『ホフマン物語』公演チラシ

 

 これらのビデオ作品はすべて、アートライブラリーで視聴することができます。
 地元のアーティストたちの活動を知り、応援していきましょう。
 アートライブラリーでは、関連企画として「愛知にゆかりのある芸術家たち」と題した資料展を併せてて開催中です。


(H.K)