2010年11月123456789101112131415161718192021222324252627282930

愛知県の民俗芸能などを紹介する「ふるさとの祭in愛知 民俗芸能映像祭がVol.4」がアートプラザビデオルームで開催されています。
今回の映像の一つが「ふるさとの参候と歌舞伎」です。これは昨年12月6日に愛知県芸術劇場大ホールで行われた公演記録です。毎年、「愛知県ふるさと芸能祭」として本県及びこの地方の民俗芸能や地芝居を紹介しています。昨年は民俗芸能1団体、歌舞伎を2団体を取り上げました。
ところで「参候」は何と読むかわかりますか?「さんぞろ」と読むのですね。この「参候祭」は設楽町三都橋の津島神社に16世紀頃から伝わる大変珍しい民俗芸能です。神事というと神聖で厳粛なイメージがありますが、「参候祭」は七福神が次々と訪れ、五穀豊穣や氏子繁盛を祈るとても楽しい、ユーモラスな祭りです。
禰宜が次々と現れる神様に、「かかる尊き神座へ見慣れぬ風俗にて、御出たるは何者にて候」と尋ねると、「さん候、某は・・・」と名乗ることがこの祭りの名前の由来になっています。
筆者は昨年この事業を担当していましたので、現地まで足を運び、楽しく貴重な体験をしました。11月のとある日の夜7時ころから始まり10時くらいまで、地元の方々や観光客と一緒に芸能を味わいました。津島神社の境内の四方にしめ縄を張り,中央に竈・釜,その回りに紙垂をつけた四本の竹,昇り旗が立てられます。さらに,その外側に敷かれた薦(こも)の上で舞が行われます。最前列で座ってみることができましたので、かまどで沸かした湯をササの葉で見物客に振りまく「湯立て」の湯がかかったり、ばらまかれたお菓子をゲットすることできたり、間近で迫力ある芸能を堪能いたしました。
愛知県芸術劇場大ホールでの公演でも、とてもユーモラスな動作で観客を大いに楽しませていました。
ふるさと1.jpg【禰宜と恵比寿の問答風景】(撮影:鬼頭幸一)
 
 
ふるさと2.jpg【禰宜と布袋、寿老神、福禄寿の問答】(撮影:鬼頭幸一)
 
 
ふるさと3.jpg【禰宜と大黒天の問答】(撮影:鬼頭幸一)

さて、歌舞伎ですが、こちらは、御園座や歌舞伎座で行われる「大歌舞伎」とは異なり、素人が行う「地芝居」(「素人歌舞伎」「農村歌舞伎」とも言われます。)です。東海地方は全国でも有数の「地芝居」の盛んな地域で、全国の地芝居団体の3分の1が集中しているのですね。昔からの芝居小屋もリニューアルされ現在でも多く使われていています。愛知県では新城市が盛んで、市内には芝居団体が8団体もあります。素人だからと言って決して侮ってはいけません。プロ顔負けの舞台も見られることがあります。
今回は、浜松市引佐町の横尾歌舞伎保存会による「義経千本桜」から吉野山の場、藤岡歌舞伎は「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場を上演した記録映像を上映します。演目は歌舞伎では有名なものですのであらすじは省略しますが、団体の紹介をいたしましょう。
横尾歌舞伎保存会は200年以上前から行われてきたとても歴史のある団体です。役者・太夫・三味線・振付・床山等すべて地域の人たちが行ってきました。また、後継者の育成にも大変熱心です。「開明座」という名の小屋で年1回10月に定期公演を行っています。筆者も開明座に出かけましたが、おじいちゃんから小さな子どもまで弁当を食べながら家族で楽しんでいました。また、おひねりがじゃんじゃんと飛び、掛け声も飛び交い、地域全体で歌舞伎を支えていこうという強い熱意に打たれました。
 
ふるさと4.jpg「義経千本桜」から吉野山の場(撮影:鬼頭幸一)
 
ふるさと5.jpg「義経千本桜」から吉野山の場(撮影:鬼頭幸一)

一方、藤岡歌舞伎は、豊田市北部の藤岡地区で上演している団体です。昔は各集落で行われていたのですが、長い年月中断していました。平成8年に商工会のまちおこし事業の一環で再開して以来、毎年上演しているものです。一度途絶えたものを復活させることは大変なエネルギーがいるものですね。活動歴は短いのですが、こちらも地域全体で支えられているのですね。地元の公演では、おひねりが多く飛んでいました。
 
ふるさと6.jpg「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場(撮影:鬼頭幸一)
 
ふるさと7.jpg「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場(撮影:鬼頭幸一)


なお、これらの映像は、アートライブラリーの他に、「学びネットあいち」でも見ることができます。
http://www.manabi.pref.aichi.jp/general/gaido/bideo/top.htm

また、吉田喜重監督の「愛知の民俗芸能―聖なる祭り 芸能する心―」(1992年)と「愛知の民俗芸能―都市の祭り 芸能する歓び―」(1993年)も上映しています。この2本は愛知県が制作した短編のドキュメンタリーです。
「聖なる祭り 芸能する心」は、奥三河の祭りとして豊根村の「花祭り」を中心に紹介しています。また、「都市の祭り 芸能する歓び」では、知多地方の「門付万歳」、津島市の「天王宵祭り」、豊明市大脇神明社の「梯子獅子舞」、江南市安良町の「棒の手」、名古屋市緑区有松町の「山車からくり」を紹介しています。
これらの映像は単なる芸能を紹介した記録以上の優れたものです。吉田喜重監督の強いメッセージが感じられます。見ているうちに自分が単なる祭りの観客ではなく参加者の一員に加わっているかのような感じになるのですね。「祭り」の現代における意味は何なのか、伝統の継承はどういうことなのかを考えさてくれる傑作です。ぜひご覧ください。
この他にも、「東栄町 布川の花祭り前・後編」のビデオも上映しています。ふるさと8.jpg 
 

いにしえから伝えられてきた、各地の特色ある民俗芸能は、私たちの心のふるさとであり、長い年月をかけて生活の中で育まれてきた貴重な文化ですね。このような世界に誇れる文化を少子高齢化、過疎化の中で伝承し、後継者を育成することは大変なことです。私たちも機会があれば、祭りや芸能の行われている現地に足を運び、地域の人とともに支えていきたいですね。


愛知県の文化財を詳しく知りたい方は、「愛知県文化財ナビ」(教育委員会)まで。
http://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/index.html

(A.M)
 

お家での読書が心地よい季節になりましたね。アートライブラリー11月の新着図書紹介です。

『[NJセレクト] 声を出すのが楽しくなる 誰にでもできる発声法』
熊谷 卓著 日本実業出版社 2010年
(請求記号7671/Ku33d 資料番号9110485138)
2211-1.jpg 
カラオケ好きな方必見!マイクは竹刀のように持て?日本人は声が通りにくい?まずは姿勢を正してみよう!
本書は、1996年に出版された単行本の改訂版です。内容はそのまま、コンパクトにまとまった新書サイズになって再登場しました。
声帯のメカニズムを知り、他の人にはない自分らしい声を出すことで、今までとは違った自分になれるかもしれません。すぐにでも実践できるものばかりですので、(なかにはご自宅でゆっくり行って頂きたいトレーニングもあります)今からでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
声楽家の方や歌を歌うのが好きな方はもちろん、自分の声に自信が無い…、就職活動の真っ最中、我こそビジネスマン!という方にも、是非読んで頂きたい一冊です。
(ライブラリースタッフM.Y)


『コンサートホールへようこそ』 
臼澤裕二 著, 毎日ワンズ 2010年
(請求記号760.69/U95k 資料番号9110485129)
 2211-2.jpg
コンサートホールは私たちを非日常の世界へといざなってくれます。そしてその裏で多くの人たちが力を尽くしているのは皆さんご存知の通りです。
この本では、ホールのブッキングから始まり終演後の客席確認に至るまでの、コンサートホールの裏側や苦労、問題点などが紹介されています。特に印象的だったのは、ホールによっては観客の洋服が映えるよう、ホワイエの照明にまで気配りがなされているという点です。舞台上だけでなく、観客もまた気づかないところで演出されていたとは…驚きました。
(ライブラリースタッフA.K)


『ちょっと知りたい美術の常識 アートクイズ|ベーシック編』
美術出版社編集部編 美術出版社 2005年
(請求記号 704/C56B/ 資料番号 9110485076)
 2211-3.jpg
ベーシック編と書かれているだけあって、美術作品の基礎や有名な絵画、用語にまつわるクイズが全160問で構成されています。問題のページをめくればすぐ答えになりますが、じっくりと考えてからめくるのはもちろんのこと、多人数で競い合うのもまた一興。
正解以外の選択肢に関しても、参考としてちょっとした解説が掲載されているので、間違えた答えでも「なるほど!」と、納得ができます。
ただ、実際に問題を解いていく際には、本に答えを直接書き込まないようお願いします。

この本を学び終えてさらに知識を高めたい! という方には『もっと知りたい美術の知識 アートクイズ|ステップアップ編』( 請求記号:9110485085 704/MO95B/)はいかがでしょう? ステップアップというだけあって、難しい問題が用意されていますよ。
(ライブラリースタッフE.S)


『イラストで読む ルネサンスの巨匠たち』 
杉全美帆子著 河出書房新社 2010年
(請求記号 702.37/Su37i/ 資料番号 9110485174)
 2211-4.jpg
ジョルジョ・ヴァザーリによる「芸術家列伝」などを基に書かれた、愉快な本です。
誰もが知っている芸術家たちの、「逸話」がイラスト付きで紹介されています。
「逸話」というものは、いつの時代も、正確である証拠の無いものが多いように思われます。
それでもなお、おもしろい「逸話」を語られる人達には、「有り得る。」と思わせるところがあったのではないかと思いませんか?
巨匠達の、肩書きの多さに度肝を抜かされつつ、実在した人間なんだなあと実感した一冊です。
(アートライブラリースタッフ M.N)


このほかにもたくさんの本が入ってきています!ぜひご来館ください。
 

今年も、開催されます。秋→冬の恒例のイベントです。
アートライブラリーでも、関連する本などを集めました。

「第15回 アートフィルム・フェスティバル」は、自主企画のイベントで、海外で受賞した作品も生まれています。(詳しくは当センターHP→文化情報センターへ)

「第32回ぴあフィルムフェスティバル」は、今回全国5会場で開催され、今年第32回を迎えます。
過去の受賞者の中には、現在の映画界で大活躍の監督さんが多数らっしゃいます。

過去の、この2つのイベントについての本は、こちらです。→アートフィルム10-1.jpg

 

アートフィルム10-2.jpg←過去のぴあフィルムフェスティバル受賞者に関する、雑誌の記事を集めたのがこちら。有名な作品がずらり。

 


大野一雄に関する本、映像の紹介はこちら→アートフィルム10-3.jpg
映像は館内でご覧いただけますので、カウンターまでお申し付けくださいね。

 

 


アートフィルム10-4.jpg←こちらは、ドキュメンタリー映画に関するもの、アニメーション映画に関するものを集めました。「動画」に関する知識などが、分かりやすく書かれた本も揃えています。


映画自体に関する本、実験映画に関する本→アートフィルム10-5.jpg
映画の歴史や、裏方さんの世界まで、カラー図版で楽しくご覧いただける本もあります。


展示棚に並んでいる本の中にも、借りられる本があることはご存知でしょうか?
ご存知ない方のために・・。
バーコード右に、
 アートフィルム10-6.jpg のシールが貼ってあれば、持ち帰ってゆっくりご覧いただけます。


 アートフィルム10-7.jpg のシールが貼ってあったら、館内でご覧になってくださいね。

 

こんな感じで入り口より裏の展示棚に設置。アートフィルム10-8.jpg

開館以来、年1本ペースで制作しているオリジナル映像作品も一覧に致しました。ぜひ、ご覧いただけたらと思います。(この展示の左側面に貼りだし中。)

この展示は12月中旬まで開催する予定です。
アートライブラリー(M.N.)

 

 

[ 映像 ]

 10月31日(日)に「あいちトリエンナーレ2010」がフィナーレを迎え、すでに2週間以上が過ぎていますが、いまだ興奮冷めやらず、その余韻に浸っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。文化情報センターはトリエンナーレの「映像プログラム」の企画に協力しましたが、実験的な映像作品に初めて触れ新鮮な驚きを得た、といった観客の方々の声を聞くことが出来ました。

 そうした皆様にぜひご覧いただきたいのが、本日(11月19日(金))からスタートする「第15回アートフィルム・フェスティバル」です(会場:12階アートスペースA)。「第15回」とあるように、文化情報センターでは以前より映像事業を行っていました。それは1992年の開館時にまでさかのぼることが出来、文化情報センターは一貫して商業ベースでは上映の難しい実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリーやアニメーションなど、いわゆるアート系の作品紹介を精力的に進めてきました。

 「アートフィルム・フェスティバル」は、これら映像ジャンルの枠組みを取り払い、映像における実験性の追求を主眼に置いて、多彩な作品を取り上げるとともに、音楽やダンスなど周辺領域との関係も重視して、これら異ジャンルの越境や融合といえる作品にも光を当ててきました。

Ymene.jpg
高木正勝『Ymene0:euran(イメネロ:エウラン)』2001年

 ピョートル・カムラーが監督、リュック・フェラーリが音楽を担当し、過去とも未来ともつかぬ独自のSF的イメージを生み出したアニメーション『クロノポリス』(1982年)や、音楽と映像の両面に渡って活躍するアーティスト高木正勝の新作『Ymene』(2010年)、映画監督の七里圭がクラムボン(音楽)、黒田育世(ダンス)と組んだユニークなプロモーション・ビデオ『ASPEN』(2010年、2バージョンを上映。その内の一つは未公開版という貴重な機会です!)など、今、ジャンル間の交流が活性化していることを実感できるプログラムとなっています。去る11月7日(日)に「第14回オランダアニメーション映画祭」でグランプリを受賞した、大山慶『HAND SOAP』(2008年、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第17弾)といった話題作の上映もあります。映画ファンのみならず、多くの方々のご来場をお待ちしております。
 上映スケジュール等、詳細は愛知芸術文化センターHPをご覧ください。


追記 「あいちトリエンナーレ2010」映像プログラム関連のお知らせを一つ。長者町会場に出品した、若手アニメーション作家3人の姿を追ったドキュメンタリー番組が、NHK教育TVの「ETV特集」で放送されます。タイトルは「ぼくらの夢の物語」、放映日時は11月21日(日)22時より23時(60分)です。
「トリエンナーレ」HPのニュース欄もご参照ください。
全国放送ですので、会場にお越しになれなかった方にもご覧いただければと思います。

(T.E)
 

 「パフォーミング・アーツ・ガーデン2011」

2011年2月19日(土)に、愛知芸術文化センター小ホール、公共スペースにて「パフォーミング・アーツ・ガーデン2011」を開催します。

この催しは、昨年度から始まった、身体表現によるショーイングイベントです。愛知芸術文化センターのいろいろなスペースを使い、中部地区で活躍するパフォーミング・アーツのアーティストが表現します!昨年のパフォーミング・アーツ・ガーデンではどの会場もお客さんでいっぱい!!パフォーミング・アーツの新たな幕開けを感じさせる一日でした。

クララガーデン.jpg    
写真:昨年度のパフォーミング・アーツ・ガーデン風景

今年度は愛知県文化情報センターと、アートマネジメント講座受講生にてこの催しを企画・制作しています。
あいちトリエンナーレ2010も行われ、愛知県のパフォーミング・アーツは、各地で注目を浴びており、作品発表の絶好のチャンスです。応募締切が近くなっておりますが、まだまだ多数の参加者を募集中です。イベントを一緒に盛り上げて下さるパフォーマーをお待ちしております!

(アートマネジメント実践講座研修生Y.S)



「AACサウンドパフォーマンス道場特別公演」

2011年1月22日(土)に、小ホールで、「音を使ったパフォーマンス」=サウンドパフォーマンス の公演を開催しますが、こちらの催しでもただいま出演者募集中です。

「AACサウンドパフォーマンス道場プロジェクト」は、毎年開催している若手アーティスト育成支援事業。今年は、これまで道場プロジェクトに関わったサウンドパフォーマーたちに加えて、一般からも出演者6組程度を募集し、公演を開催します。日本を代表するサウンド・パフォーマーの足立智美やフォルマント兄弟と同じ公演に参加するチャンスです!

こちらは公演の日にちは1月ですが、応募締切は11月末。多数の応募をお待ちしています!


写真:第2回道場の出演作品


 

今年はロベルト・シューマンの生誕200年です。今回、クララとロベルトの夫妻に焦点をあて展示いたしました。ちなみにシューマンの妻クララは生誕191年です。今回の展示の見どころなどを紹介しましょう。

1 クララの自筆手紙を展示しています。
今回の一番の目玉がこれです。今回の展示のために愛知県立芸術大学の芸術資料館から借りてきました。実は、額の裏にも手紙があり、表と裏の両方から見ることができますが、展示の都合で表だけとさせていただいています。これは、クララが1851年10月にデュッセルドルフにて友人のマリアンヌにあてた手紙です。
内容は、スイスやベルギーなどへの旅の報告と近況を述べ、近況の中でフランツ・リストがシューマン夫妻を訪れ一緒にピアノの連弾を行ったことを書いています。他に友人の演奏会への忠告や子供たちの近況など日常的なことも多く述べています。

 
シューマン展2-1.jpg 額に入ったクララ自筆手紙
 
シューマン展2-2.jpg 拡大写真

2 ロベルトの自筆譜とクララの筆写譜を展示しています。(ファクシミリ、愛知県立芸術大学所蔵)
ロベルトの自筆譜は有名なピアノ協奏曲イ短調の冒頭部分を展示しています。ロベルトはモーツァルトと並んで自筆譜が美しいと言われています。楽譜を見ていると作曲家の情熱がほとばしってくるようですね。
一方、クララの方は歌曲「愛の魔力」(詩:ガイベル)の冒頭です。クララはピアニストとして大変著名で、当時のヨーロッパでは指折りの腕前として知られていました。作曲家としてはあまり知られていませんが、歌曲やピアノ曲などで美しい小品を作曲しています。この筆写譜はロベルトとクララのそれぞれの歌曲が収められています。(有名な「献呈」も収められています。)「2人の愛のアルバム」とも言えるでしょう。

 シューマン展2-3.jpg 
ロベルト:ピアノ協奏曲イ短調(冒頭)自筆譜(ファクシミリ)

 

シューマン展2-4.jpg
クララ:歌曲「愛の魔法」(冒頭)筆写譜

3 ロベルトのミステーク切手も展示しています。
 切手史上前代未聞の事件を紹介します。時は1956年、ロベルト・シューマン没後100年を記念し、東ドイツでは記念切手が発行されました。シューマンの肖像の後ろに楽譜を配した美しい切手です。ところが、よく見ると楽譜がシューマンではなくシューベルトの歌曲「さすらい人の夜の歌」の楽譜なのです。あわてた東ドイツは間違い切手を回収し、急いで正しい楽譜(歌曲「月の夜」)を配した切手を発行し直すのですが、すでに相当数出回ってしまったのです。現代では、ミステーク切手の方が高く売られているようです。
シューマン展2-6.jpg 東ドイツ発行のシューマン切手
【上段】間違い切手(今回の展示)   【下段】正しい切手

 なお、西ドイツでもシューマン切手を同時期に発行し、同様に背後に自筆譜が配されていますが、こちらはピアノ・ソナタ第一番の冒頭で、正しいものでした。
シューマン展2-5.jpg 西ドイツが発行したシューマン切手

4 ブラームスとクララ
 ところで、昨年、音楽映画「クララ・シューマン 愛の協奏曲」が封切られ、ご覧になった方も多いと思います。この映画のキャッチコピーが「シューマンとブラームス2人の天才に愛された女神」で、ブラームスとロベルトとクララの三角関係を描いています。監督がなんと、ヘルマ・サンダース=ブラームス、つまりブラームスの末裔なのですね。
 シューマン展2-7.jpg ヨハネス・ブラームス(1833-1897)

ブラームスがクララを愛していたのは事実ですが、その愛が恋愛感情なのか、プラトニックなものなのか、敬愛や友情のようなものなのか、あるいは片思いだったのか、よくわからない部分も多いようです。でも、クララがいたからこそ、ブラームスは多くの素晴らしい曲を作曲できたというのは事実です。ブラームスのロマンティックな作品を聞くと、クララへの満たされない想いが聴こえるような気がしませんか。ブラームスは生涯独身で、クララの死後、相次ぐようにして世を去ります。
 シューマン展2-8.jpgクララ・シューマン(1819-1896)

クララは、ロベルトの作曲を支え、7人の子どもを育て、ピアニストとして各地を演奏旅行します。ロベルトの死後はロベルトの作品を編集し、世に紹介するとともに、ブラームスの作曲をも支えるというスーパーウーマンだったのです。なお、ドイツではクララは大変人気があり、ユーロ切替前の昔のドイツマルク(100マルク)札にその肖像が描かれていました。 
 

今回の展示では、ぜひクララの生涯にも関心を持っていただきたいと思います。
展示は11月28日まで。

(A.M)

 

11月いっぱいアートライブラリーでは、中央棚の一角に堤剛さんをはじめ、コンサートの演奏曲に関する図書やチェロに関する図書、チェロ演奏の映像資料や録音資料を展示しています。


まず、注目して頂きたい本はこちら。
rakuen1.jpg
演奏者の皆さん、どの楽器を演奏するのにも、相当なエネルギーを使われていることと思います。今回はチェロなどの弦楽器を演奏する上での痛みや疲れ、肩こりなどを引き起こさないために、コンディショニングをサポートする図書を置きました。この機会に、是非お役立て下されば幸いです。


rakuen2.jpg
また、チェロに対しての思いをよりいっそう深めて頂ければと思い、チェロの仕組みやメンテナンスについての図書もご用意しました。なかには、一見、「チェロ」に関連する資料にみえても、中身は戯曲、音楽分析学など、バライティー豊かに取り揃えています。


rakuen3.jpg
上段の左右二箇所には、映像資料のジャケットが並んでいます。右側のジャケットのチェロ奏者は、堤剛さんの恩師である、ヤーノシュ・シュタルケル氏です。


rakuen4.jpg
中下段右側の棚には、バッハの無伴奏チェロ組曲やシャコンヌなどの演奏曲目にアプローチした資料が並んでいます。


rakuen5.jpg
こちらのスペースでは、雑誌や躍動感溢れる千人のチェロコンサートの模様を見開きでご紹介しています。


rakuen6.jpg
中下段中央には、堤剛さん関連の資料がずらり。

映像資料、録音資料、雑誌以外の図書は全て貸出が可能です。
今後も、展覧会やコンサートなどのイベントに合わせた様々な展示を企画しております。
当センターにお越しの際には、是非、1階のアートライブラリーにお立ち寄り下さい。お待ちしております。
(ライブラリースタッフM.Y)
 

11月2日から28日まで、アートライブラリーでは「ロベルト&クララ・シューマン展」を開催中です。目玉は何といってもクララ・シューマン直筆の手紙ですが、シューマン夫妻に関連する図書、雑誌、録音・録画資料もあわせて展示しています。

図書・雑誌はアートライブラリー入口付近に。雑誌のバックナンバーが豊富です。
シューマン夫妻の生涯や、作品の解説など各種取り揃えました。シューマン展1.jpg
 
そして裏面にも展示があります。こちらをご覧になるのもお忘れなく。シューマン展2.jpg
 

録音・録画資料はオーディオブース入口横に展示してあります。
すべて館内で視聴できますので、是非ご利用下さい。
シューマン展3.jpg
 
ライブラリー入口付近では「ピアノ協奏曲イ短調」(ロベルト作曲、自筆)と「愛の魔力」(クララ作曲、筆写)の楽譜のファクシミリを展示していますが、
シューマン展4.jpg
 
その録音も、もちろんあります。
シューマン展5.jpg
 

11月13日の土曜日には、地下2階のアートプラザにてシューマンの映画上映会を行います。アートライブラリーの資料で予習してからご覧になれば、面白さも倍増です!
(ライブラリースタッフA.K)
 

2010年は、ロベルト・シューマン生誕200年です。アートライブラリーでは、「ロベルト&クララ・シューマン展」を11月28日まで開催しています。今回、関連イベントとしてシューマンに関する映画の上映会をアートプラザビデオルームにて開催します。
 シューマン上映1.jpg
ロベルトとクララ

ロベルトとクララ・シューマンのラヴストーリーは大変有名ですね。この題材を扱った映画作品を今回2つ紹介します。

上演日時 平成22年11月13日(土) 
  1. 映画「愛の調べ」 13時から
  2. 映画「哀愁のトロイメライ」 10時30分からと15時30分からの2回

今回の上映映画の配役等のデータは次のとおりです。シューマン上映2.jpg


 シューマン上映3.jpg
キャサリン・ヘップバーン

シューマン上映4.jpg (C)Sportsforpeace
ナスターシャ・キンスキー

さて、この映画を見るための参考となる情報をお知らせします。
(1)素晴らしい音楽を楽しんでください。
音楽映画ですので全編にわたり、シューマンの音楽に満ちています。「愛の調べ」では、世紀の名ピアニストのアルトゥール・ルビンシュタイン(1887-1982)が演奏を吹き替えています。また、「哀愁のトロイメライ」でもフィッシャー・ディスカウ、ポコレッチ、ケンプ、サバリッシュなど名演奏家の演奏がたくさん。特に名ヴァイオリニストのギドン・クレーメルがパガニーニ役で出演しているのは驚きです。

 シューマン上映5.jpg(C)Carl Van Vechten
アルトゥール・ルビンシュタイン


(2)ロマンティックな愛の歌「献呈」
映画「愛の調べ」では「献呈」がテーマで、夫婦の愛を確かめる音楽となっています。「献呈」は、ロベルトの歌曲集「ミルテの花」の第1曲目で、クララとの結婚式の前日にミルテの花を添えてクララに献呈された曲です。ミルテの花は、美の女神ビーナスと愛を象徴する花とされ、結婚の花です。この曲はシューマンの曲の中で最もロマンティックな曲ですね。最も幸せな時代に作曲されました。聴いているだけでうっとりとしてしまいます。また、歌詞はリュッケルトによるもので、恥ずかしくなるくらいの熱愛のラブレターです。紹介しましょう。
「君こそ僕の魂、僕の心。
君こそ僕の喜び、僕の苦しみ。
君こそ僕の生きる世界。
君こそ僕の目指す天国。
ああ、君の中に僕は悩みを永遠に埋めてしまった。
君こそ憩い、君こそ安らぎ。
君こそ天から授けられた人。
君の愛は僕の誉れ。
君に見つめられ、僕は輝く。
君に愛されて僕は価値あるものとなる。
君は僕の天使、僕以上の僕。」
なお、映画では、歌ではなくピアノ(リスト編曲)で演奏されますが、ぜひ歌で聴いて欲しいと思います。
 
シューマン上映6.jpg(C)Forest & Kim Starr
ミルテの花(和名 ギンバイカ)


(3)映画と史実との違い
この映画はシューマン夫妻を題材としたフィクションで、ドキュメンタリーではありません。一部、史実に忠実ではない部分もありますのでご注意を。アートライブリーにはシューマンの伝記などもありますので、関心を持たれた方はぜひご利用いただき、正しい情報を入手いただきたいと思います。
「哀愁のトロイメライ」はドイツ映画で史実に近く、当時のドイツの美しい街並みや郊外の風景なども楽しむことができます。一方、「愛の調べ」はモノクロで、かなり創作が入っていますが、アメリカ映画らしく娯楽性に富み楽しめます。
(4)クララ対決
新旧の名女優、キャサリン・ヘップバーン(1907-2003)とナスターシャ・キンスキー(1961-)がクララを熱演しています。ヘップバーンは飾り気のないスタイルと個性的な魅力、比類なき演技力で万人から愛された演技派大女優でした。一方、キンスキーは当代一の国際派女優で、気品と透明感あるある美貌で人気を博しています。
皆さんはどちらのクララを選びますか。筆者はキンスキーの魔性的な魅力に惹かれながらも危険を感ずるのですが・・・。
(5)ストーリー
「哀愁のトロイメライ」はロベルトがヴィーク家に弟子入りして、天才少女クララと出会い、クララの父親の猛反対を押し切りめでたく結婚するというストーリー。
一方、「愛の調べ」は、めでたく結婚したロベルトとクララの幸福な結婚生活、家庭生活が、ロベルトの精神異常から破綻して、ロベルトは急死。家族のようにしていたブラームスはクララに求愛するが、ロベルトへの愛を守るというストーリー。
両映画は時代的にほとんど重なっていないので、続けて鑑賞すると2人の生涯が見えてきます。

なお、両作品は上映会終了後、アートライブラリー資料として受入を予定しています。

(A.M)