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「楽聖ベートーヴェン特集」ビデオ上映会開催中

2014年02月13日

 愛知県文化振興事業団主催のコンサートシリーズ「ベートーヴェン―その原点と到達点」に関連し、ベートーヴェンの名曲を名演奏家の映像でお楽しみいただいていますが、いよいよあと3日で終了です。最後を飾るのは、晩年の傑作群、交響曲第9番「合唱」、ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)、オペラ「フィデリオ」です。いずれもベートーヴェンが渾身の力を込めた、人類の遺産ともういうべき力作です。
 

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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)

 

 特に3月8日(土)に愛知県芸術劇場コンサートホールで上演される「ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)」は、演奏に80分近くかかる大作で、教会音楽の中でも最高傑作の一つです。ベートーヴェンはこの曲の楽譜の冒頭に"Von Herzen ― möge es wieder ― zu Herzen gehen"(心から出で、願わくば再び、心へと至らんことを)と記しています。ミサ曲はカトリック教会の礼拝(ミサ)の中で歌われるものですが、この曲は、本来の意味を超えて、人類への普遍的な愛を歌ったものと言えましょう。ミサ曲の終章「dona nobis pacem(我らに平安を与えたまえ)」の冒頭には「Bitte um innern und äussern Frieden(内的そして外的平安を求める祈り)」と記されています。彼はその中で、神の世界、精神世界の平和のみならず、この世の平和を祈っています。「平和への祈り」は、戦争の影におびえる現代の人々の心にも強く訴えかけてきます。


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「ミサ・ソレムニス」より「キリエ」(冒頭)の自筆譜
※冒頭の余白に“Von Herzen ― möge es wieder ・・・・”という記述がある。

 

 また、2月16日(日)11時からは、ベートーヴェンを題材とした音楽映画「不滅の恋:ベートーヴェン」を上映します。ベートーヴェンが亡くなった後、秘密の家具の引き出しから3通の熱烈なラブレターが見つかったのです。筆跡はベートーヴェンのものでした。抑えようのない情熱がほとばしりるような、迫力と切迫感に満ちたこの手紙は、いつ、誰に向けて書かれたのか、また、相手に届けられたのかどうか、謎に包まれています。その手紙の一節を紹介します。
 「私の忠実な唯一の宝、私のすべてでいてください。あなたにとって私がそうであるように」
「あなたがどんなに私を愛していようと、私はそれ以上にあなたを愛している」
 「わが不滅の恋人よ、運命が私たちの願いをかなえてくれるのを待ちながら、心は喜びに満たされたり、また、悲しみに沈んだりしています。」
 この映画は、弟子のシントラーが、この手紙の「不滅の恋人」探しをするというストーリーです。映画にはフィクションもかなり含まれていますが、ベートーヴェンの女性との関わり(意外に女性にもてたようです。)や当時の社会風景なども描かれ、とても興味深いとともにベートーヴェンの音楽もたくさん使われ(音楽監督は指揮者のゲオルク・ショルティ)、音楽ファンにも楽しめる映画です。
 「不滅の恋人」がいったい誰だったのか・・・いろいろな説がありますが、現在の研究ではアントニア・ブレンターノ(1780-1869;オーストリア伯爵家の出、夫は銀行家)であるとされています。映画では別人となっていますが、謎のままであった方がベートーヴェンの希望に沿うのではないでしょうか・・・。
この映画は、上映終了後にアートライブラリー・ビデオブースで視聴することができます。


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「不滅の恋人への手紙」(最後の部分)
※「あなたを――私のいのち――私のすべて――
 お元気で――おお――私を愛し続けてください――
 あなたの恋人の忠実な心を、けっして誤解しないで。
 L. 
 永遠にあなたの  永遠に私の 永遠に私たちの」

 

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「不滅の恋人」とされるアントニア・ブレンターノ(1780-1869)

 

 なお、アートプラザ・カウンター横では、ミサ・ソレムニス(キリエ)と交響曲第9番「合唱」の自筆譜(ファクシミリ)を愛知県立芸術大学芸術資料館から借用して展示しています。

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 プラザ内で展示中の自筆譜(ファクシミリ)

 自筆譜を見ると、作曲家の個性が現れ、とてもおもしろいですね。ベートーヴェンの自筆譜は大変荒々しく、悪く言うと殴り書きみたいなのですが、苦闘しながら推敲に推敲を重ねて作曲している様子がよくわかります。こちらも是非ご覧ください。

(A.M)