2013年08月12345678910111213141516171819202122232425262728293031

 あいちトリエンナーレのオペラとしてプッチーニの名作『蝶々夫人』が上演されます。この公演に関連し、『蝶々夫人』を中心にプッチーニのオペラやジャポニスム・オペラを上映していますが、連日、大盛況です。席は30席用意してありますが、先着順ですので、お早めにお越しください。

 蝶々夫人1.jpg ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)

 

『蝶々夫人』の魅力
 このオペラは、美しいメロディと悲しいストーリーで世界中で愛されています。ピンカートンの帰りを待ち続ける蝶々さんの純情な姿は、私たちの心を動かします。泣けるオペラの代表格ですね。プッチーニはメロディーと和声の天才です。「愛の二重唱」、「ある晴れた日に」、「ハミングコーラス」など名曲がいっぱいです。
 また、日本人にはおなじみの日本のメロディも多く含まれています。「君が代」、「さくらさくら」、「お江戸日本橋」、「越後獅子」、「鬼さんこちら」、「宮さん宮さん」など。プッチーニは、当時、ヨーロッパを巡業して人気を博していた、名古屋にもゆかりのある川上貞奴らに取材し、取り入れたのです。
 
蝶々夫人2.jpg 川上貞奴(1871-1946)

 

初演は歴史に残る大失敗
 「世界3大初演失敗名作オペラ」としても有名です(他の2つは『椿姫』と『セビリヤの理髪師』)。1904年2月17日ミラノ・スカラ座での初演は大失敗でした。失敗の理由は、第2幕に1時間半を要すなど上演時間が長すぎたことや、文化の異なる日本を題材にした作品であったため観客が違和感を覚えたという原因が挙げられています。
 しかし、プッチーニは、改稿に取りかかり、3か月後の5月28日、イタリアのプレッシャで行われた公演は、大成功を収めました。因みに、1906年のパリ公演のために改定された第6版(パリ版)が、蝶々夫人の決定版となっています。

 今回は、蝶々夫人初演100年を記念して日本で上演されたプレッシャ版による映像も上映します。

蝶々夫人3.jpg
初演時のポスター:Adolfo Hohenstein (1854–1928)

 
ジャポニスム・オペラ
 ジャポニスムは、19世紀後半からフランスを中心としたヨーロッパで見られた日本趣味のことです。万国博覧会(国際博覧会)への出品などをきっかけに、日本美術(浮世絵、琳派、工芸品など)が注目され、西洋の作家たちに大きな影響を与えました。日本の文化そのものが当時のヨーロッパのブームとなりました。

 蝶々夫人4.jpg クロード・モネ「ラ・ジャポネーズ」(1876)

 

 オペラでは、イタリアの作曲家マスカーニ(1863-1945)による『イリス(あやめ)』があります。江戸を舞台に、盲目の父・チェーコと住む娘・イリスが騙されて遊郭に売られていく悲しいストーリーをマスカーニが美しいメロディーで作曲しています。
 また、イギリスの作曲家サリヴァン(1842-1900)によるオペレッタ『ミカド』もあります。イギリスの空前の日本ブームに乗っかったもので、当時の英国の世相、上流階級や支配階級に対する辛辣な風刺を、作品の舞台を英国からできるだけ遠い「未知の国・日本」に設定し、ストーリーを展開させています。

 蝶々夫人5.jpg 「ミカド」のポスター


『蝶々夫人』や『イリス』、『ミカド』は、アートライブラリーで鑑賞できます。

(A.M)
 

「第85回 フレッシュコンサート」を7月24日(水)にフォーラムI(2階)で開催しました。

『天上の響き♪ ア・カペラコンサート』と題して、L’aura(ラウラ)の内田由美子(うちだ ゆみこ)さん、本田美香(ほんだ みか)さん、五十嵐舞(いがらし まい)さん、庄村由美江(しょうむら ゆみえ)さん、長谷由紀子(はせ ゆきこ)さん、井澤古都(いざわ こと)さん、小野香奈(おの かな)さん、丹羽幸子(にわ さちこ)さんによるア・カペラの歌唱を150名以上の方にお楽しみいただきました。

laura1.jpg
 
【 前列左から、井澤古都さん、本田美香さん、庄村由美江さん、小野香奈さん
  後列左から、五十嵐舞さん、内田由美子さん、長谷由紀子さん、丹羽幸子さん 】

◎ 今回の演奏会は…‥
教会音楽、日本の唱歌、アンコールを含め7曲、ア・カペラを中心として歌っていただきました。

laura3.jpg
 
 

第1曲目は、セザール・フランク(1822-1890)作曲「天使の糧(パン)」を長谷さんのオルガン伴奏により、ステージ右側のエスカレータ中ほどで内田さんが、ステージ後方上段のスロープ階段で本田さん、五十嵐さん、庄村さん、井澤さん、小野さん、丹羽さんが歌いました。
この曲は、フランクがパリのサント・クロチルド教会のオルガニストであったころに「荘厳ミサ イ長調」を改定した際に独唱曲として追加さたもので、聖体祭のために、中世の神学者トマス・アクィナスが作った賛歌の一部をテキストとしています。優美な旋律で広く親しまれています。

演奏後に、長谷さんから、「ヨーロッパの教会のようなスペース(フォーラムI)で、歌う機会が得られました。最後までア・カペラをお楽しみください。」とのお話がありました。

laura2.jpg

 

続いて、本田さんから、「二人の作曲家の『アヴェ・マリア』を歌います。アヴェ・マリアは、グノー、シューベルトなどが作曲した曲とは少し違ったフォーメーションを変えての『アヴェ・マリア』をお聴きください。」との紹介がありました。

 
2曲目は、観客の皆さんを円形で囲むようにステージ中央に庄村さんと小野さんが、ステージ左側に本田さん、丹羽さんと井澤さん、そして右側に内田さん、五十嵐さんと長谷さんがジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ(1525‐1594)作曲「アヴェ・マリア」を歌いました。
パレストリーナは、イタリア・ルネサンス後期の音楽家でバチカンのシスティーナ礼拝堂で活躍しました。100以上のミサ曲や250以上の教会音楽を多く作曲したことから「教会音楽の父」とも言われています。
三方を囲んでのア・カペラの合唱は、不思議な幽玄な響きを生み出し、システィーナ礼拝堂にタイム・スリップしたかのような感動を覚えました。

 laura4.jpg
 

3曲目も本田さんから、「ドイツの作曲家であるフランツ・ビーブル(1906‐2001)が1964年に作曲した『アヴェ・マリア』を選曲しました。この曲を一人1声部で担当し、初めは7声部で中ほどから8声部で歌います。」との説明がありました。
ラウラの皆さんのうち、第1声部を長谷さん、第2声部を五十嵐さん、第3声部を内田さんの3人はステージ後方のスロープで、本田さん、井澤さん、丹羽さん、庄村さん、小野さんの5人がステージで歌いました。
なお、『アヴェ・マリア』とは、ラテン語で「おめでとう。マリア」の意味で、カトリック教会での聖母マリアへの祈祷及び教会音楽を指しています。多くの作曲家「アヴェ・マリア」を残しています。

コンサートタイトルにある「天上の響き」の如く、歌姫のア・カペラは、フォーラムIの吹き抜けを透き通るような澄んだ清らかな響きで満たし、正に教会堂の中にいるような敬けんな思いに満たされました。

本田さんから「教会の響きのある3曲をお届けしました。次は、夏の思い出を思わせる懐かしい歌、唱歌をお聴きください。『浜辺の歌』は、高校時代に恩師から指導を受けましたが、ピアノ伴奏をするに当たっては中々難しく、苦労した思い出があります。この曲を聴くと恩師を思い出しますが、愛情が大きく膨らむ、温かく感じられる曲です。」とのお話がありました。
その後、4曲目の「浜辺の歌(成田為三(1893 -1945)作曲、林古渓(1875‐1947)作詞)」を歌いました。
浜辺の早朝と夕暮れの風景が眼前に繰り広げられるような美しい歌唱でした。
成田為三は、秋田県出身の作曲家で、「望郷の歌」「かなりや」「赤い鳥小鳥」などの歌曲、童謡や「秋田県民歌」などの作曲家としても有名です。
 

 laura5.jpg
 

5曲目は、「松原遠く消ゆるところ…」の歌い出しの「海」を歌いました。
この曲は、1913年に『尋常小学校唱歌 第五学年用』に発表された文部省唱歌で、作詞家、作曲家は不詳です。「ウミ」という同名異曲の文部省唱歌もありますが、こちらの曲は、「ウミハ ヒロイナ 大キイナ…」の歌い出しで、1941年に文部省が発行した国民学校初等科1年生の芸能科音楽の教科書『ウタノホン上』にある一つの曲です。ラウラの皆さんが合唱するハーモニーが会場の2階から12階までの吹き抜けに快く響きわたり、うっとりとなり、あたかも、身体が海原に浮かんでいるような気持ちでした。

6曲目は、文部省唱歌「故郷」(高野辰之(1876-1947)作詞、岡野貞一(1878-1941)作曲)を歌いました。 
高野辰之作詞の「兎追ひし彼の山…」の歌詞は、本人が生まれた長野県中野市の風景を詩っているともいわれています。また、岡野貞一と組んだ唱歌には「春が来た」「春の小川」「朧月夜」などがあります。
美しいハーモニーに観客の皆さんからは、温かい拍手が送られました。

laura6.jpg
 
 

最後に、本田さんから、「温かい拍手をいただきました。もう1曲、『夏の思い出』を歌います。歌を知っている方は、一緒に歌ってください。」とのお話に、拍手が起こりました。
アンコールを観客の皆さんと井澤さんのピアノ伴奏で、歌っていただきました。
「夏が来れば 思い出す 遥かな尾瀬 遠い空…」の歌詞は、詩人の江間章子(1913-2005)が戦時中に食料物資を求めに、群馬の山間を訪れた折に、真っ白な眩しい花(水芭蕉)に見惚れて詞を作り、敗戦を迎え、荒廃した国土に暮らす日本国民に夢と希望を与える歌を流したいとNHKのラジオ番組『ラジオ歌謡』にその詞を捧げられました。この詞を中田喜直(1923-2000)が作曲した唱歌です。1949年6月13日の『ラジオ歌謡』で、シャンンソン歌手の石井好子(1922-2010)が最初に歌い、瞬く間に多くの日本人の心を引きつけ、曲に歌われる尾瀬の人気が高まりました。

後半の日本の歌は、誰もが知っている懐かしいメロディーで聴いている皆さんも昔の思い出や心情に癒されるように感じられたでしょう。
ラウラの皆さん、本当にありがとうございました。
 

来場の皆さんからは…‥
◎ 今回が初めての方々から
・『教会におけるコンサートのようでした。パレストリーナ作曲のアヴェ・マリアを初めて聴きました。人間の声のすばらしさを感じました。』《70歳以上、男性》
・『宗教曲の歌は、ハーモニーも美しく、天上から響いてくるようにとても心に残りました。「海」も言葉が良くわかり、改めて日本の歌や歌詞の素晴らしさを感じました。』
《70歳以上、女性》
・『歌声に引かれて聴きにきました。神々しい気持ちになり、はるばる来た甲斐があり、感謝します。人の「声」がこんなに美しいものかと感動しました。』《50歳台、男性》

◎ いつも来られる方々から
・『一服の清涼剤? 澄んだ美しい歌声に癒されました。もっと聴きたいのに…。』《70歳以上、女性》 
・『天上からの天使のようにうっとりしました。上から、横からの声が素敵でした。』《70歳以上、女性》
・『天より降り注ぐ、清澄な声に感動。空間に響きわたる歌唱、素晴らしく聴き入っていました。聴きに来てよかった。もう少し時間がほしい!』
《60歳台、男性》

など、様々な感想をいただきました。ありがとうございました。


≪ ラウラの皆さんからのメッセージ ≫
内田由美子さん
柔らかな残響に包まれる心地よい会場で、雨天にもかかわらずご来場下さった沢山のお客様の
あたたかい拍手に後押しして頂き、嬉しく楽しく歌わせて頂きました。
このフレッシュコンサートの常連さんやたまたま通りかかった方、
私達の演奏をお聴きくださった皆様と、お客様と私達が出会うチャンスをくださった
このコンサートに感謝申し上げます。
ラウラはゆるやかではありますが、音楽と真摯に向き合いマジメに活動しております。
また皆様とどこかでお会いできる日を楽しみにしております。
 

本田美香さん
愛知県の皆様のおかげで私達は、愛知県立芸術大学という素晴らしい大学で育まれ、
そしてかけがえのない仲間に出逢えました。
そんな私達が愛知の文化の発信源であるこの愛知芸術文化センターで、
音楽が出来る事はこの上ない喜びです。
お暑い中優しい笑顔でお聴き下さったお客様、本当にありがとうございました。
 

五十嵐舞さん
私たちは、お聴きくださる皆様がいらしてこそ、歌を歌い、
音楽を続けていくことができます。
お暑い中、あたたかな表情で、私たちの演奏に耳を傾けてくださったことに
深く感謝致します。ありがとうございました。
 

庄村由美江さん
30分という短い時間でしたが、沢山のお客様に熱心に聞いて頂きとても嬉しく思います。
このフレッシュコンサートならではの素晴らしい空間を生かし、
私達も楽しく歌わせて頂きました。本当にありがとうございました。
 

長谷由紀子さん
今回は、人の声という「楽器」の奥深さを実感するコンサートでした。
空間と音(響き)の関わりを考えるのはとても難しかったですが、
めったに演奏することの出来ない場所でのコンサートは、ワクワク感が満載でした!
コンサートに足を運んで下さった方々、愛知芸術文化センターの皆様に、
心よりお礼申し上げます。
 

井澤古都さん
愛知県の顔とも言える愛知芸術文化センターの吹き抜けを舞台に
演奏会をさせていただけたことを、とても光栄に思っています。
演奏場所や季節によって、クラシックを始め様々なジャンルの曲を
歌ってきた私達にとって貴重な経験となりました。
聴いてくださっている方々の温かさも身近で感じられ、
幸せなコンサートとなりましたことを心から感謝しています。
 

小野香奈さん
本日は、たくさんのお客様に来ていただきありがとうございました。
素敵な仲間と、そして皆様と音楽を共有できたこと、とても幸せに思います。
また、素敵な音楽をお届け出来るよう頑張って参ります。
 

丹羽幸子さん
あたたかい方々にかこまれ、素晴らしい空間の中で演奏できましたこと、
本当に感謝いたします。ありがとうございました。

さて、次回は、第86回フレッシュコンサートを、平成25年8月28日水曜日のお昼(午後0時15分-0時45分)にフォーラムI(2階)で開催を予定しています。
『ソプラノとピアノによる音楽の花束』と題して、神田知里さん、佐藤なつみさんによる演奏をお楽しみいただきます。
 (M.K&A.M)