「音と色彩の共鳴」カンディンスキーとシェーンベルク映像上映会開催中です。
--抽象絵画の創始者と無調音楽の創始者の運命的な出会い--
ただいま、愛知県美術館にて「カンディンスキーと青騎士」展が開催中です。カンディンスキーは抽象絵画の祖として知られていますが、ウィーンの音楽家で無調音楽の祖であるシェーンベルクと深い交流がありました。今回、アートプラザビデオルームでは、シェーンベルクとその弟子のベルクの作品などの映像などにより、同時代の革新的な音楽を紹介します。
カンディンスキーの聴いたシェーンベルクのコンサートを聴いてみませんか?
日時:1911年1月2日{月} 午後7時30分 場所:ヤーレスツァイテンザール、ミュンヘン 演奏:ロゼ弦楽四重奏団 マリー・グタイル・ショーダー(ソプラノ) エッタ・ヴェルンドルフ(ピアノ) 曲目:弦楽四重奏曲第2番嬰へ短調Op.10 3つのピアノ曲Op.11 ※ この他、歌曲、弦楽四重奏曲第1番も演奏 |
1911年1月2日、カンディンスキーは、マルク、ヤウレンスキー、ミュンター及び「新芸術家協会」の仲間とともに、シェーンベルクの音楽コンサートに出かけました。ここで演奏された2つの作品は、調性音楽から自由な無調音楽の時期に向かう時期のもので、シェーンベルクの作品の中でも大変重要な意味を持っています。
このコンサートは、聴衆の大多数を不快感に落し入れましたが、カンディンスキーは深い感動を覚えました。その印象を絵画にしたのが、《印象III(コンサート)》です。
(現在、愛知県美術館で展示中)
カンディンスキー《印象III(コンサート)》 1911年
Städtische Galerie im Lenbachhaus und Kunstbau München
カンディンスキーは、少年時代からチェロを弾き、音楽的な素養と音楽に対する繊細な感受性がありました。シェーンベルクの異様で分裂的な響きや無調性、不協和音などが、自分の絵画との共通性を感じたのでしょうか。2週間後の1月18日に、カンディンスキーは、一面識もないシェーンベルクに初めて手紙を送ります。これがきっかけとなり、両者の交友が始まります。2人の関係はいち早く友情へと発展し、家族ぐるみのつきあいが始まります。また、2人の交流は、それぞれの創作過程や人格にも大きな影響を及ぼすこととなります。
両者の往復書簡は『出会い』(シェーンベルク/カンディンスキー みすず書房)に収められています。アートライブラリーに所蔵されていますのでご覧ください。
ヴァシリー・カンディンスキー(1866-1944)
アーノルド・シェーンベルク(1874-1951)
(左から)カンディンスキーとニーナ夫人、ゲルトルート夫人とシェーンベルク
1927年ヴェルター湖畔
ただいま上映中の「シェーンベルク演奏会再現」では、上記の2つの曲をシェーンベルクやカンディンスキーの作品スライドともに聴くことが出来ます。カンディンスキーが新しい音楽に触れた感動をぜひ体験してみてください。
また、シェーンベルクやベルクのオペラ作品なども上映しています。特にオペラ『モーゼとアロン』は曲も前衛的ですが、ウィリー・デッカーの演出もそれに輪をかけるように過激です。ルール・トリエンナーレ(ドイツ・ボーフム)で上演の記録映像ですが、ドイツでの最新の前衛的なオペラ演出をお楽しみください。(英語字幕付き)
カンディンスキーと同時代のウィーンの前衛作曲家の音楽を知ることにより、カンディンスキーへの理解がより深まることでしょう。
(A.M)