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 2012年はフランス近代の作曲家・ドビュッシーの生誕150年の記念年に当たります。ただいまビデオルームでは、ドビュッシーの代表的なピアノ曲、管弦楽曲、オペラなどのビデオ上映会を開催しています。
 ドビュッシーは、印象派や象徴派の絵画や文学に大きく影響を受け、独自の音楽を切り開いた前衛的な作曲家として有名でした。現代では、「牧神の午後への前奏曲」や交響詩「海」、「月の光」、「亜麻色の髪の乙女」など、情景が目に浮かぶような美しい楽曲を残したことで人気が高い作曲家です。
ドビュッシー展示1.jpg    ドビュッシー展示2.jpg
クロード・ドビュッシー(1862-1918)                                            1884年の肖像画

 今回の上映会でのお勧めのビデオを2つご紹介しましょう。
ピアノ曲では、内田光子の「12の練習曲(エチュード)」が圧巻です。演奏の前に内田光子がドイツ語で解説していますが、これがとってもおもしろいのです。「練習曲」は、名前の割にはとっても難しい曲で、なかなか満足の行く演奏ができないとか、ドビュッシーはピアノの名手であったため、ピアノを熟知しており、ピアニストの限界ぎりぎりまで考えた曲を作曲したといったお話も聴けます。
 オペラでは、「ペレアスとメリザンド」がフランス・オペラの傑作として知られています。
この原作は、「青い鳥」でも有名なメーテルリンクが書いた戯曲が元で、フォーレ、シェーンベルク、シベリウスもこの戯曲を題材とした音楽を書いています。ドビュッシーはこの象徴的な戯曲に繊細なオーケストレーションと歌を加え、とても幻想的な不思議な世界を創出しました。ブーレーズ指揮ウエールズ・ナショナル・オペラの舞台が夢幻的で美しい雰囲気のとても見やすいものとなっています。
ドビュッシー展示3.jpg モーリス・メーテルリンク(1862-1949)
 

ドビュッシー展示4.jpg 「ペレアスとメリザンド」第2幕第1場 泉
Edmund Blair Leighton画


 最後に、展示物をご紹介しましょう。
 愛知県立芸術大学芸術資料館から、オペラ「ペレアスとメリザンド」と「12のエチュード」の自筆草稿(ファクシミリ)を借用し、アートプラザ・カウンター横に展示しています。ドビュッシーの息遣いが感じられる貴重な資料です。
ドビュッシー展示5.jpg 「ペレアスとメリザンド」草稿ファクシミリ 

ドビュッシー展示6.jpg「12のエチュード」草稿ファクシミリ


 また、ドビュッシーの音楽のLPジャケットも多数展示しています。代表作の交響詩「海」のジャケットをカウンター横の衝立に並べてみました。海をイメージする様々なイラストがあります。

ドビュッシー展示7.jpg ジャケット展示風景〈交響詩「海」〉        

ドビュッシー展示8.jpg ビデオルーム内のジャケット展示風景

  

 なお、ドビュッシーは、浮世絵に代表される「ジャポニズム」の影響を受けており、葛飾北斎の「富嶽三十六景神奈川沖波裏」が自宅書斎に飾られていました。
ドビュッシー展示11.jpg ドビュッシーとストラヴィンスキー(書斎の上の絵に注目)

ドビュッシー展示9.jpg  「富嶽三十六景神奈川沖波裏」 
 

 さらに、この絵からインスピレーションを受けて、交響詩「海」を作曲し、初版楽譜の表紙にも北斎の図柄がアレンジされて使われています。

 ドビュッシーが日本の海を想像して作曲したのかどうか、考えながら聴くのも一興です。


 ドビュッシーのビデオ映像は、上映会終了後、アートライブラリーで見ることもできます。

(A.M)


 

第76回 フレッシュコンサートを10月24日(水)にフォーラム(2階)で開催しました。

『日本語による日本人のための“泣き歌”』と題して、テノールの山崎英明(やまざき ひであき)さんによる独唱と時松亮(ときまつ りょう)さんのピアノ伴奏で、150名以上の方にお楽しみいただきました。


fc76-1.jpg【山崎英明(左)さんと時松亮さん】

◎今回の歌曲
アンコールを含めて、8曲を演奏していただきました。
最初は、「ほうずき(荻原朔太郎作詞、三善晃作曲)」を歌いました。
ほうずきを漢字であらわすと「鬼灯」と書くように、その実は赤色で、男女のモチーフになっていて、花ことばは「偽り」といわれています。
コンサートテーマが誇張したものなっていますが、日本人による作詩の“泣き歌”をお聴きください。
皆さんからの拍手が私たちのご馳走です、とお話がありました。
その後、お二人の自己紹介がありました。


2曲目は、「さびしいカシの木(やなせたかし作詞、木下牧子作曲)」を歌いました。
作曲家の木下牧子さんは、50歳台の方、分かりやすい曲を作っているとのお話がありました。
 

3曲目は、「霧と話した(鎌田忠良作詞、中田喜直作曲)」を歌いました。
中田の苗字の呼び方が「なかだ」であること、中田喜直は「めだかの学校」「夏の思い出」「ちいさい秋みつけた」「雪の降るまちを」など四季風情を表した曲をたくさん作曲し、また校歌も多く作曲していること、愛知県では、県立明和高校、岡崎北高校や名古屋市立清水小学校などの校歌を作曲していることなどのお話がありました。


4曲目と5曲目は、プログラムの曲順を変更して「出船〈でふね〉(勝田香月作詞、杉山長谷夫作曲)」「死んだ男の残したものは…(谷川俊太郎作詞、武満徹作曲)」の2曲の泣き歌を続けて歌いました。
出船は山崎さんのアカペラ(無伴奏)の独唱で始まり、その後時松さんのピアノ伴奏が加わる、しんみりとした、悲しみを帯びた雰囲気の歌でした。
 

6曲目は、「鷗〈かもめ〉(三好達治作詞、木下牧子作曲)」を歌いました。
この曲の歌詞は、『ついに自由は彼らのものだ』で始まり、終わる詩で12回も繰り返されます。
三好達治が終戦直後に書いたもので自由の素晴らしさを感じさせられる感動的な詩です。
「空、雲、東の太陽、海、故郷、西の太陽、星、朝焼け、夕焼け」の中で飛ぶカモメたちに戦争でなくなった若者たちの魂にたとえたのではないかと思います。
 

7曲目は、「人 愛しくて(柚梨太郎作詞・作曲)」を歌いました。
来場者の皆さんは、山崎さんの歌が終えるたびに、温かい拍手を送っていました。
また、山崎さんの駄洒落を交えたお話も、笑いが起こっていました。
山崎さんからは、岡崎市のコンサートホール“コロネット”で、大学院修了記念のコンサートを来年の2月15日(金)に開催するとの紹介もありました。

 
アンコールは「夢見たものは(立原道造作詞、木下牧子作曲)」を歌いました。

fc76-2.jpg

来場の皆さんからは…‥
◎今回が初めての方々から
・『怪しげな日本語が飛び交う昨今、ひさしぶりに綺麗な日本語を聴き、大変感激しました。今後もこのような企画をお願いします。』《60歳台、男性》
・『美術館を訪ねに、そのとおり、フレッシュコンサートに出会って、心が癒されました。』《70歳以上、女性》

◎いつも来られる方々から
・『「死んだ男に残されたものは…」は、戦争体験のある者にとっては、胸、詰まる思い。それを夫に当てはめると、泪が出そうなメロディです。』《70歳以上、女性》 
・『美しい日本語、小学校、中学校の音楽時間にぜひ。本を読まなくなった日本人、ことばの大切さ、今一度、学び、正確な日本語でおしゃべりしたい。』《60歳台、女性》

など、様々な感想をいただきました。ありがとうございました。

 ≪ お二人の出演後のメッセージ ≫

山崎英明さん
前日の悪天候が心配でしたが、晴天の中で行えたコンサートは、
演奏するこちらも大変心地よいものでした。
お客様との距離の近さが、このフレッシュコンサートの醍醐味だと思います。
反応も上々で、30分という時間が嘘のよう,
あっという間に終わってしまいました。
また、機会がありましたら、是非とも参加させていただきたく思います。
最後に、お客様はもちろん、全スタッフの皆様、
貴重な経験ができました。
本当にありがとうございました。


時松 亮さん
お客様を身近に感じる環境でのコンサートで、密度の濃い30分間でした。
ついつい忘れがちですが、
コンサートはお客様と共に仕上げなければなりません。
今日はその事を再認させてくれるものでした。
貴重な経験となりました。
最後になりましたが、
スタッフの皆様の協力とお越し下さったお客様に
感謝を締めの言葉とさせて頂きます

 

さて、第77回フレッシュコンサートは11月28日(水)のお昼(午後0時15分?0時45分)にフォーラム(2階)で開催予定です。
『Happy 150th Birth year Debussy!』と題して、キャトルクルール(Quatre‐Couleures)の演奏で弦楽四重奏をお届けします。



◎○◎ お知らせです ◎○◎  ※受付終了しました
平成25年4月から9月までの「フレッシュコンサート出演者」の募集締め切りは、平成24年12月17日(月)となっています。ご応募をお待ちしています。

(M.K)

 2012年は、フランス近代の作曲家クロード・ドビュッシー(1862-1918)の生誕150年の記念の年です。アートプラザでは、これを記念し、「キーワードで聴くドビュッシーの名曲」と題したトーク&ミニコンサートを11月10日に開催しました。講師は音楽学がご専門の中村ゆかりさん、ピアノは愛知県立芸術大学大学院博士後期課程在学中の金澤みなつさんです。とても興味深いトークと素晴らしい演奏を皆さんにお楽しみいただきました。

ドビュッシー1.jpg 中村ゆかりさん(トーク)

 中村さんには、「ドビュッシーは、印象派の音楽家?」、「最愛の人に捧げた音楽」、「世紀末のパリの芸術のはざまで」、「ドビュッシーをめぐる水の音楽」の4つのキーワードごとに、金澤さんのピアノ演奏や当時の写真・映像などを交えながら、ドビュシーの生涯や音楽の魅力についてわかりやすくお話しいただきました。聴いていて多くの新たな発見がありました。

ドビュッシー2.jpg 金澤みなつさん(ピアノ)

 「子供の領分」というドビュッシーの有名なピアノ組曲の中に「ゴリーウォーグのケークウォーク」という曲があります。楽しく陽気な曲ですが変わった曲名で、中村さんの説明でその意味がよく分かりましました。ゴリーウォーグというのは当時はやっていた黒人の子供のマスコット、ケークウォークは20世紀初頭にパリではやった2拍子の軽快なダンスとのこと。当時のケークウォークのダンス映像が残っていたので、金澤さんのピアノの生演奏に映像のダンスステップをシンクロさせながらスクリーンに投影されました。とてもおもしろい試みでした。

ドビュッシー3.png ゴリーウォーグ(中央の黒人の人形)

 

ドビュッシー4.jpg ケークウォークダンスのレッスン

 

 また、今回のミニコンサートでは、ユニークな試みを行いました。ピアノの鍵盤を真上からと斜め横からの2箇所からビデオカメラで撮影し、演奏と同時に舞台背後のスクリーンに切り替えながら投影したのです。真上からの映像は、ピアニストの打鍵と反対向きとしたので、客席から見ると、あたかも自分がドビュッシーの曲を弾いているかのように見え、指の形や指使い、打鍵の様子もわかりとてもユニークな体験でした。
ドビュッシーのピアノ曲は難しい作品が多いのですが、金澤さんは微妙な色彩の変化を見事に表現していました。

ドビュッシー5.jpg 真上からの映像をスクリーンに投影

 

ドビュッシー6.jpg 斜め横からの映像をスクリーンに投影

 

ドビュッシー7.jpg 終演後の中村さんと金澤さん

 なお、このトーク&ミニコンサートは、ドビュッシーのビデオ上映会の関連企画として開催されたものです。上映会は、12月2日(日)まで、ビデオルームで開催しています。
ぜひお越しください。
(A.M)
 

本年、10月30日、愛知芸術文化センターは開館20周年を迎えました。
愛知県文化情報センターではこの20年間、さまざまな芸術文化に関する情報を発信してまいりました。皆様方のご支援とご協力をいただき厚く感謝申し上げます。
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開館20周年ロゴマーク

さて、今回、20周年を記念し、過去の自主事業の映像の中から、オリジナル映像作品、ダンス・音楽、オペラ・演劇と3つのジャンルに分けて、代表的な作品をビデオルームで上映しています。
 映像では、アニメーション作品の「HAND SOAP」(2008年)が、思春期の少年のデリケートな心理を描いた作品で、不思議な魅力を持ち、国内外で高く評価されています。
ダンスでは、ダンスとオペラのコラボレーションである「ダンス・オペラシリーズ」の「神曲」(2008年)が、リストの曲をはじめとした生演奏も美しく、ダンスも感動的です。
オペラでは、あいちトリエンナーレで国際的な評価も得た「ホフマン物語」(2010年)が日本を代表する女性歌手が勢ぞろいでとても楽しめます

 このほかにも自主事業の映像はアートライブリーでも見ることができます。

また、アートプラザ前のフォーラムでは自主事業のパネル展示を行うとともに、アートプラザ内のカウンター横では愛知県芸術劇場のこけら落としとなったオペラ「影のない女」(三代目市川猿之助演出)の関連資料を、ビデオルーム内では20年間の広報誌(AAC)を展示しています。
ぜひお越しください。


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パネル展示風景

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オペラ「影のない女」関連展示風景

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広報誌「AAC」展示風景

(A.M)