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「ふるさとの祭 in 愛知 民俗芸能映像祭がVol.4」が始まっています

2010年11月24日

愛知県の民俗芸能などを紹介する「ふるさとの祭in愛知 民俗芸能映像祭がVol.4」がアートプラザビデオルームで開催されています。
今回の映像の一つが「ふるさとの参候と歌舞伎」です。これは昨年12月6日に愛知県芸術劇場大ホールで行われた公演記録です。毎年、「愛知県ふるさと芸能祭」として本県及びこの地方の民俗芸能や地芝居を紹介しています。昨年は民俗芸能1団体、歌舞伎を2団体を取り上げました。
ところで「参候」は何と読むかわかりますか?「さんぞろ」と読むのですね。この「参候祭」は設楽町三都橋の津島神社に16世紀頃から伝わる大変珍しい民俗芸能です。神事というと神聖で厳粛なイメージがありますが、「参候祭」は七福神が次々と訪れ、五穀豊穣や氏子繁盛を祈るとても楽しい、ユーモラスな祭りです。
禰宜が次々と現れる神様に、「かかる尊き神座へ見慣れぬ風俗にて、御出たるは何者にて候」と尋ねると、「さん候、某は・・・」と名乗ることがこの祭りの名前の由来になっています。
筆者は昨年この事業を担当していましたので、現地まで足を運び、楽しく貴重な体験をしました。11月のとある日の夜7時ころから始まり10時くらいまで、地元の方々や観光客と一緒に芸能を味わいました。津島神社の境内の四方にしめ縄を張り,中央に竈・釜,その回りに紙垂をつけた四本の竹,昇り旗が立てられます。さらに,その外側に敷かれた薦(こも)の上で舞が行われます。最前列で座ってみることができましたので、かまどで沸かした湯をササの葉で見物客に振りまく「湯立て」の湯がかかったり、ばらまかれたお菓子をゲットすることできたり、間近で迫力ある芸能を堪能いたしました。
愛知県芸術劇場大ホールでの公演でも、とてもユーモラスな動作で観客を大いに楽しませていました。
ふるさと1.jpg【禰宜と恵比寿の問答風景】(撮影:鬼頭幸一)
 
 
ふるさと2.jpg【禰宜と布袋、寿老神、福禄寿の問答】(撮影:鬼頭幸一)
 
 
ふるさと3.jpg【禰宜と大黒天の問答】(撮影:鬼頭幸一)

さて、歌舞伎ですが、こちらは、御園座や歌舞伎座で行われる「大歌舞伎」とは異なり、素人が行う「地芝居」(「素人歌舞伎」「農村歌舞伎」とも言われます。)です。東海地方は全国でも有数の「地芝居」の盛んな地域で、全国の地芝居団体の3分の1が集中しているのですね。昔からの芝居小屋もリニューアルされ現在でも多く使われていています。愛知県では新城市が盛んで、市内には芝居団体が8団体もあります。素人だからと言って決して侮ってはいけません。プロ顔負けの舞台も見られることがあります。
今回は、浜松市引佐町の横尾歌舞伎保存会による「義経千本桜」から吉野山の場、藤岡歌舞伎は「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場を上演した記録映像を上映します。演目は歌舞伎では有名なものですのであらすじは省略しますが、団体の紹介をいたしましょう。
横尾歌舞伎保存会は200年以上前から行われてきたとても歴史のある団体です。役者・太夫・三味線・振付・床山等すべて地域の人たちが行ってきました。また、後継者の育成にも大変熱心です。「開明座」という名の小屋で年1回10月に定期公演を行っています。筆者も開明座に出かけましたが、おじいちゃんから小さな子どもまで弁当を食べながら家族で楽しんでいました。また、おひねりがじゃんじゃんと飛び、掛け声も飛び交い、地域全体で歌舞伎を支えていこうという強い熱意に打たれました。
 
ふるさと4.jpg「義経千本桜」から吉野山の場(撮影:鬼頭幸一)
 
ふるさと5.jpg「義経千本桜」から吉野山の場(撮影:鬼頭幸一)

一方、藤岡歌舞伎は、豊田市北部の藤岡地区で上演している団体です。昔は各集落で行われていたのですが、長い年月中断していました。平成8年に商工会のまちおこし事業の一環で再開して以来、毎年上演しているものです。一度途絶えたものを復活させることは大変なエネルギーがいるものですね。活動歴は短いのですが、こちらも地域全体で支えられているのですね。地元の公演では、おひねりが多く飛んでいました。
 
ふるさと6.jpg「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場(撮影:鬼頭幸一)
 
ふるさと7.jpg「絵本太功記」尼ケ崎閑居の場(撮影:鬼頭幸一)


なお、これらの映像は、アートライブラリーの他に、「学びネットあいち」でも見ることができます。
http://www.manabi.pref.aichi.jp/general/gaido/bideo/top.htm

また、吉田喜重監督の「愛知の民俗芸能―聖なる祭り 芸能する心―」(1992年)と「愛知の民俗芸能―都市の祭り 芸能する歓び―」(1993年)も上映しています。この2本は愛知県が制作した短編のドキュメンタリーです。
「聖なる祭り 芸能する心」は、奥三河の祭りとして豊根村の「花祭り」を中心に紹介しています。また、「都市の祭り 芸能する歓び」では、知多地方の「門付万歳」、津島市の「天王宵祭り」、豊明市大脇神明社の「梯子獅子舞」、江南市安良町の「棒の手」、名古屋市緑区有松町の「山車からくり」を紹介しています。
これらの映像は単なる芸能を紹介した記録以上の優れたものです。吉田喜重監督の強いメッセージが感じられます。見ているうちに自分が単なる祭りの観客ではなく参加者の一員に加わっているかのような感じになるのですね。「祭り」の現代における意味は何なのか、伝統の継承はどういうことなのかを考えさてくれる傑作です。ぜひご覧ください。
この他にも、「東栄町 布川の花祭り前・後編」のビデオも上映しています。ふるさと8.jpg 
 

いにしえから伝えられてきた、各地の特色ある民俗芸能は、私たちの心のふるさとであり、長い年月をかけて生活の中で育まれてきた貴重な文化ですね。このような世界に誇れる文化を少子高齢化、過疎化の中で伝承し、後継者を育成することは大変なことです。私たちも機会があれば、祭りや芸能の行われている現地に足を運び、地域の人とともに支えていきたいですね。


愛知県の文化財を詳しく知りたい方は、「愛知県文化財ナビ」(教育委員会)まで。
http://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/index.html

(A.M)