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 2月20日(金)、東京都写真美術館で「恵比寿映像祭」が始まりました。「映画祭」ではなく「映像祭」をタイトルに掲げていることから分かる通り、この企画は上映プログラムとともに、美術館全館を使って、映像を用いたインスタレーション作品などの展示が行われ、立体的な構成となっています。

 都会で起こる男女の出会いを字幕のみで物語るチョン・ヨンヘ重工業の映像作品や、ミニチュアの映画館の中で起こる事件を鑑賞者がのぞき見するように目撃するジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー『ミリュエル湖事件』(1999年)、著名人の表情を固定カメラで撮影した、絵画と映画の中間に位置するようなアンディ・ウォーホル『スクリーン・テスト』(1964年より開始した連作)などの展示作品を観ると、1960年代から映像を用いる手法は多用化し、表現は多彩となって、今日、映像が単純に映画やTVといったメディアのみに留まるものではなくなっていることが体感できるでしょう。

 21日(土)には、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品より大山慶監督『HAND SOAP』(2008年、シリーズ第17弾)など、アニメーションの手法を用いた3作品が上映されました。上映に先立つ形でトークも行われ、上映終了後には、観客が監督に駆け付け、写真をコラージュして作られた画面の独特な質感について尋ねるなど、熱い反応がありました。

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 そしていよいよ、会期の最終日となる3月1日(日)には、三宅流監督『究竟の地 ― 岩崎鬼剣舞の一年』(2007年、シリーズ第16弾)が上映されます。岩手県に伝わる「岩崎鬼剣舞」の一年の営みを取材したこのドキュメンタリーでは、地域社会が一体となってこの民俗芸能を楽しみ、育んでいる、人間たちの濃密な関係に触れることが出来ます。21日のプログラムと併せると、“身体”を統一テーマに設定することから生まれた、シリーズの持つ広がりと奥行きも感じられるでしょう。東京圏にお住まいの皆様、この機会にぜひご鑑賞ください!

(T.E.)

 

毎月第4水曜日のお昼のフレッシュコンサート、1月は「アンサンブル・ノービレ」の皆様による『木管五重奏』をお届けさせて頂きました

ご出演頂いた「アンサンブル・ノービレ」とは、1996年7月に演奏家6名で結成され、自主公演を開催するなど積極的に活動されているとのこと。今回のフレッシュコンサートではメンバー5名による木管五重奏で、予定されている曲目もモーツァルト「魔笛」序曲、F.ファルカシュ「古いハンガリーのダンス」など、本格的 どのような演奏会になるのか楽しみでした

 


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編成はフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンということで、低音の楽器があると曲が引き締まります。

以前から東海地方を中心に活躍されていることもあり、五人の息の合った演奏にお客様も聴き入っていました。

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途中、曲目の説明を交えたりと、お客様もクラシック音楽に親しみを感じて頂けたのではないのでしょうか img2102c.JPG

 

 

 

木管の音色に誘われてか、大勢のお客様が集まって聴いて頂きうれしかったです

毎回こんな盛況になるといいなぁ

 

 

 

 

 

2月のフレッシュコンサートは25日(水)12時15分より2階フォーラムで予定されています。演奏は「モーツァルト200メモリアル」の皆様による「弦楽四重奏」。久々の弦楽器登場! こちらも今から楽しみです

 

 2月20日(金)から3月1日(日)まで、東京都写真美術館で開催される「恵比寿映像祭」に、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品より『フーガの技法』(監督:石田尚志、2001年、シリーズ第10弾)、『影の子供』(監督:辻直之、2006年、同第15弾)、『究竟の地 ― 岩崎鬼剣舞の一年』(監督:三宅流、2007年、同第16弾)、『HAND SOAP』(監督:大山慶、2008年、同第17弾)の4本が選出され、上映される運びとなりました。

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 東京で当センターのオリジナル映像作品がまとまった形で上映されるのは、2000年7月に渋谷のアップリンク・ファクトリーで「90年代実験映画の一断面 ― 愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品(選)集」と題したプログラムで、『T-CITY』(監督:勅使川原三郎、1993年、同第2弾)、『トワイライツ』(監督:天野天街、1994年、同第3弾)、『KAZUO OHNO』(監督:ダニエル・シュミット、1995年、同第4弾)、『フィリピンふんどし 日本の夏』(監督:キドラット・タヒミック、1996年、同第5弾)、『王様の子供』(監督:前田真二郎、1998年、同第7弾)、『ボディドロップアスファルト』(監督:和田淳子、2000年、第9弾)の6本が上映されて以来となるので、大変貴重な機会といえるでしょう。
 “身体”を統一テーマに、様々な作家が独自の解釈からユニークな作品を手掛けてきたこのシリーズの軌跡を、スクリーンでたどることの出来るチャンスです。東京にお住まいの方、お見逃しなく!(『フーガの技法』『影の子供』『HAND SOAP』は2/21(土)、『究竟の地』は3/1(日)上映)




 「恵比寿映像祭」は、第一回の総合テーマを“オルタナティヴ・ヴィジョンズ”に設定し、現代の多様化した映像と映像表現の状況を捉えようとする、意欲的な試みとして注目を集めている企画です。
〈公式ウェブサイト http://www.yebizo.com
 もちろんオリジナル映像作品は、当センター1階アートライブラリーのビデオコーナーで、リクエスト方式でご覧になることも出来ます。こちらもご利用ください。

(T.E.)

2月21日、22日の小ホールで開催される「アーツチャレンジ2009舞踊部門」。熊本でのリハーサルの間をぬって、講師の山崎広太さんが、若手アーティストの竹之下亮さんにインタビューを行いました。
竹之下さんが小ホールでの公演についての創作過程や、熊本という地方でのダンス活動について、語られていますので、是非ご覧ください。

http://bal1.exblog.jp/7900597/

山崎さんは、「Body Arts Laboratory」という「社会におけるアーティストによるアーティストのためのオーガニゼーション」を立ち上げられました。アーティストが孤立化する傾向にある日本において、アーティストを中心に据えた独立した複数のプロジェクトで成り立ち、その間をアーティストが自由に行き来できるオープンでフラットな環境づくりを目標としているそうです。今回のインタビューは、アーティストたちの考えていることをまずはリサーチしたい、ということで始められたました。
今後、色々な振付家やダンサーの方々のインタビューも掲載されていくそうですので、興味がある方は、覗いてみてくださいね。

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↑竹之下さん(写真左)に指導する山崎さん(写真中央)
「アーツチャレンジ2009舞踊部門」の公演に向けて、2月に愛知県芸術劇場リハーサル室で、照明合わせが行われたときの一場面です。

(E.K)

照明合わせ、ってご存知ですか?ダンスやお芝居など、舞台で上演される作品には、照明や音楽、舞台美術など、様々な演出要素が不可欠ですね。そこで、振付家(演出家)が、作品を創作していく過程で、舞台スタッフの方々に、大まかな作品を実際に観てもらい、希望している演出プランについて打ち合わせを行うのです。このとても大切な打ち合わせを、舞台の世界では「照明合わせ」と呼んでいます。

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照明合わせのために準備された大リハーサル室に、舞台スタッフの方々と講師の方々、スタンバイ中。

2月20,21日の発表に備えて、公募で選ばれた4名の振付家の方と、彼らをアドバイスするベテランの振付家が集まり、舞台監督(舞台全体を仕切るリーダー)、照明プランナー(文字通り、照明のプランを考えて、実現させる方)、音響デザイナー(音響のデザイン、音楽の編集、本番での音だしなどを行う音のプロフェッショナル)さんたちとの照明合わせを行いました。

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地元愛知県出身の振付家の鈴村由紀さん(写真中央)が、音響さんと舞台監督さんに舞台上での音のきっかけを説明中。

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鈴村さん、解説しながら踊ってみせます。
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鈴村さんを担当することになった講師の平山素子さん(写真右)が見守る中、舞台での自分の動きを解説し、スタッフの方々に作品について理解してもらうよう説明します。

特に、ダンス作品では、振付家が演出家も、ダンサーも同時に兼ねることも多いため、一人何役もこなさなければならないアーティストはてんてこ舞です。

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愛知で活動中の振付家・服部哲郎さんの作品で踊る女性ダンサーたち。
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今回は、自身は出演せず、振付に集中した服部さん(写真中央左)。スタッフさんに説明するために、舞台でダンサーたちに指示を出します。それを見守っている平山さん(写真右下)。

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熊本から参加した竹之下亮さん(写真左上)と講師の山崎広太さん(写真右上)がスタッフさんに相談中。

音響について、とってもユニークなアイデアをお持ちの竹之下さん。そのクリエイティブな発想を、現場で実現できるかどうか、そこが経験豊かな舞台スタッフさんの腕の見せ所。アーティストの活躍の裏には、それを支える沢山の舞台スタッフさんの力があるのです。

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自作自演の竹之下さんも踊る・踊る・・・。

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関東から参加した宝栄美希さん(写真右)と講師の佐多達枝さん(写真左)。
宝栄さんは衣装をつけて踊ります。照明プラン決定には、衣装の色や素材もとても重要な要素なんです。

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現在も創作中のこのプロジェクト。発表は、2週間後です。
愛知発のプロジェクト、県民の皆さん、是非ご自身の目で見届けてくださいね。( しかも、入場無料 )

(E.K)


アーツ・チャレンジ2009 新進アーティストの発見inあいち
<舞踊部門公演>
若手アーティスト4名が、ワークショップ講師3名の指導、助言を得て創作したオリジナル振付作品の公演を行います。
なお、2月21日(土)の公演終了後、振付を行ったアーティストと講師によるアフタートークを実施します。
 

  • 日    時  :  平成21年2月21日(土) 午後4時30分開演/2月22日(日) 午後1時開演
            
  • 会    場  :  愛知県芸術劇場小ホール
     
  • 入場料  :  無料(要申込)
     
  • アーティスト  :  竹之下亮、服部哲郎、宝栄美希、鈴村由紀
     
  • 講    師  :  佐多達枝、平山素子、山崎広太
     
  • 申込方法
    舞踊の鑑賞を希望される方は、次の方法によりお申込ください。応募者多数の場合は抽選とさせていただきます。
    往復はがきに、希望日(2月21日又は22日)、住所、氏名(2名まで記載可能)、電話番号を記入のうえ、愛知県文化芸術課舞踊担当(〒460‐8501 住所記入不要)へお申込ください。
    ※2月16日(月)必着です。
     
  • 下記のHPより、講師のコメントなどの詳細がご覧いただけます。
    http://arts-challenge.com/dance.html
[ 映像 ]

 オリジナル映像作品のシリーズ第5弾として1996年に初公開した、キドラット・タヒミック監督『フィリピンふんどし 日本の夏』が、沖縄県立博物館・美術館の開館1周年記念展覧会「移動と表現」の関連イベントとして、2月7日(土)に上映されます。

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 キドラット・タヒミック『フィリピンふんどし 日本の夏』(1996年)

 この映画は、フィリピンの映画作家キドラット・タヒミックの日本との交流から生まれたもので、フィリピンの民族衣装バハグが日本のふんどしに似ているところから発想し、アジアの人間がマリリン・モンローなど西洋人のプロポーションをなぜ理想のものとするのか、といった疑問を追求してゆく、身体をめぐるユニークな比較文化論となっています。移民県としても知られる沖縄の、他国との交流から生まれた独自の表現に焦点を当て、“移動”というテーマを照らし出すこの企画展で取り上げるのにふさわしい映画だといえるでしょう。沖縄での上映では、同館の翁長直樹さんによるトークも併せて行われます。

 なおこの映画を始め、オリジナル映像作品は当センター1階アートライブラリーのビデオコーナーで、リクエストにより鑑賞することも可能です。こちらもぜひ、ご利用ください。

(T.E.)

1月23日(金)
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館の舞踊部門芸術監督にして、公立文化施設初めてのレジデンシャルカンパニーNoismの芸術監督でもある演出振付家・金森穣さんのトークショーを開催しました。180名でいっぱいの会場が満席、愛知県待望の初来名に、多くの方が熱心にお話に聴き入っていました。

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 ↑真剣な眼差しで語る金森さん (撮影:加藤光)

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 ↑満席の会場には、熱気が溢れていました。

トークの前半では、ダンスとの出会いや海外での経験、振付の方法など、ご自身の舞台芸術にかける想いをお聴きしました。今回は、観客の皆さんの言葉からトークショーの様子をご紹介します。 


アンケートより

・金森さんの舞台芸術、身体表現にかける情熱に感動しました。(30代、女性)
・とても良いお話が聴け、エネルギーをいっぱいもらいました。(40代、女性)



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 ↑DVDを観ながら作品を説明中の金森さん (撮影:加藤光)

また、中盤では、金森さんが編集されたこれまでのNoismの代表作、「SHIKAKU」
「black ice black garden」、「NINA-物質化する生け贄」などのDVDを観ながら、作品のコンセプトや作品に込めたメッセージなどを丁寧に語ってくださいました。

アンケートより

・舞台を見なくて、話だけで面白いのかな、と思って参加しましたが、金森さんは言語表現も素晴らしくて、ドキドキしっぱなしの時間を過ごせました。不景気の時代だからこそ、芸術のエネルギーが心を潤す役割は大切だと思います。(40代、女性)


笑いも溢れる穏やかなトーク2.jpgそして後半は、日本で始めてのレジデンシャルカンパニーとなった新潟市民芸術文化会館芸術監督就任の経緯や海外と日本の文化施設のシステムの違い、プロのダンサーとしてのあり方、今後の目標など、その内容はどんどん深くなっていきました。

エネルギッシュな金森さんのトーク、次から次に溢れ出る舞台芸術へのピュアな言葉の洪水に誰もが飲み込まれてしまいそう。「このまま何時間でも話し続けることができそうなのに!」と、惜しまれつつ終了したトークショーでした。



←笑いも溢れる穏やかなトーク。 
(撮影:加藤光)

 

 
 

 

アンケートより

・ 90分があっという間でした。
・ 踊りをやっているので、今日のお話を生かして頑張ります。(10代、女性)
・ 発想の豊かさ、アンテナの鋭敏さ、自らを「生贄」とまでおっしゃる求道者のような姿勢が印象に残りました。(40代、男性)

「今度は、是非、愛知の皆さんに身体で自分の表現を伝えたい」とおっしゃっていた金森さん。その言葉どおり、近いうちに、Noismの舞台を実現させたいな、と思っています。

(E.K)