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「ピアノの詩人ショパン展」の展示内容を紹介します(2)

2010年12月17日

パネル「フレデリック・ショパン国際コンクール」
このコンクールは、現在世界的に最も権威あるコンクールの一つと言われ、ピアニストを目指す者にとっては最高の登竜門の一つです。また、エリザベート王妃国際音楽コンクール、チャイコフスキー国際コンクールと合わせて「世界三大ピアノコンクール」とも言われています。
1927年に第1回が開催され、5年ごとに開催されています。2010年には第16回が開催され、ロシアの女流ピアニスト、ユリアンナ・アブデーエワが優勝しました。ユリアンナは何と日本のYAMAHAのピアノCFXを弾いたのです。日本製ピアノを使用した演奏者がショパンコンクールで初めて優勝したのですね。
日本人も毎回入賞しているのですが、今回は残念ながら入賞者は誰もいませんでした。次回に期待しましょう。
パネルではコンクールの優勝者や日本人入賞者などの歴史をたどることができます。

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必見1! 「ショパンの左手」
今回の目玉の「ショパンの左手」(株式会社ショパンから借用)は、彫刻家のクレサンジュ(ショパンの恋人であったジョルジュ・サンドの娘ソランジュの夫)により作られました。ショパンが息をひきとった1849年10月17日、デスマスクと左手の型が取られ、それをもとに作られたものです。つまり、本物のショパンの手と同じなのです。
 手をよく見てみましょう。決して大きくありません。むしろやや細く薬指などは弱そうに見えます。とても繊細な指ですね。この左手で力強い作品をどのように弾いたのか、不思議ですね。実際のショパンの演奏は音が小さく、大変繊細で、ニュアンスに富んだものだったとのこと。大きなホールでは耳をそばだてて聴かねばならぬようだったそうです。
また、弟子たちのレッスンでも「手をやわらかく」と口癖のように言っていたとか。以前、ラフマニノフの手をテレビで見たのですが、あまりにも巨大でびっくりしましたが、対照的ですね。ショパンが奏でたであろうピアノの音を想像しながらゆっくりご覧ください。

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 ショパンの左手の彫像(複製)  (株)ショパン所蔵

 

必見2! 「ショパンの自筆譜」
 民音音楽博物館からお借りしたショパンの自筆譜(ファクシミリ)も展示しています。「別れの曲」「黒鍵」の一部と「幻想即興曲」の一部(初版)です。とても美しい楽譜ですよ。ベートーヴェンの乱雑で大雑把な自筆譜とは大違いです。ショパン自身の書き込みや推敲の後も見られます。楽譜を見ながら、ショパンはどんな音楽を奏でたのか想像するのも楽しいですね。
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練習曲「別れの曲」の自筆譜(ファクシミリ)  民音音楽博物館所蔵

 


ショパンが大好きな日本人
ショパンは日本人が大好きな作曲家です。朝日新聞の調査によると、お気に入りの作曲家ベスト5は、1位モーツァルト、2位ショパン、3位ベートーヴェン、4位チャイコフスキー、5位シューベルトでした。(4月10日土曜版)ショパンの人気の理由の一つは、日本ではピアノ人口が多いので、ショパンを弾いてみたいと思う人が多いのではないかと思われます。もちろん、ショパンの美しい流麗な音楽は日本人好みであるという理由もあります。なお、HMVの同様の調査では、1位ベートーヴェン、2位バッハ、3位モーツァルト、4位マーラー、5位ブルックナーでした。HMVは音楽好きな人が回答しているので、傾向が違っているのがおもしろいですね。

 

ショパンの映画
ショパンを題材とした映画やショパンの音楽を使った映画はたくさんあります。ご紹介しましょう。
伝記映画は古いものでは「別れの曲」(1934年)が有名です。ショパンとコンスタンツィアの恋愛を描いています。エチュードOp.10-3を「別れの曲」と呼ぶのはこの映画の題名に由来しています。また、「楽聖ショパン」(1945年)では愛国者のショパンを生涯を通して描いています。史実と違うのではというシーンもありますのでご覧になるときはご注意を。
映画音楽で最も印象に残るのは「戦場のピアニスト」(2002年)です。ご覧になった方は多いと思いますが、これは、実在のユダヤ人ピアニスト、ウワディスラフ・シュピルマンの実際の体験を描いたものです。ショパンの音楽が重要なテーマとなっています。映画の中ではノクターン第20番の悲しい調べとバラード第1番の夢見るような調べが見るものの心を打ちます。特に後者の調べがドイツ人将校の心を打ち、シュピルマンは助かるのです。ショパンの素晴らしい音楽は、良心に訴え、感動を湧き起こし、戦争の憎しみも追いやってしまうのですね。素晴らしいエピソードです。このほかにも、「愛情物語」(1956年アメリカ)も夜想曲第2番をアレンジして有名になりました。
なお、日本でも大林宣彦監督の「さびしんぼう」では「別れの曲」が主題歌となりました。また、大ヒットした映画「のだめカンタービレ」では、のだめがシュトレーゼマンの指揮でピアノ協奏曲第1番を弾く美しいシーンが印象に残ります。
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ウワディスワフ・シュピルマン(1911-2000)

(A.M)