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 愛知芸術文化センターでは、地下2階フォーラム?にて「東日本大震災報道写真展」を、3月30日(日)まで開催中です。文化情報センターでは、これに合わせてアートプラザ内ビデオルームにて、オリジナル映像作品第22弾『放射能』(2013年、監督:舩橋淳)の上映会を行っています。上映は21日(金・祝)?23日(日)、各日とも12:00、14:00、16:00の3回です。

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 舩橋淳監督は、『echoes』(2001年、「アノネー国際映画祭」(仏)審査員特別賞、観客賞)や『Big River』(2006年、主演:オダギリジョー)などの劇映画を手掛ける一方、東日本大震災で全町民避難を余儀なくされた、福島県双葉町の住民を長期にわたって取材したドキュメンタリー『フタバから遠く離れて』(2012年)を監督し、注目を集めました。『放射能』は、その続編的な意味合いも持つ35分の短編で、全町民を対象に行われた被曝健康検査の模様などから、放射能とその身体への影響について言及します。現在、社会的な関心の高いテーマを扱った作品といえますが、「オリジナル映像作品」に一貫して流れる身体と映像の関係の追求というテーマも踏まえつつ、映像という視覚メディアは目に見えない放射能をいかに捉えるかという、表象論的なニュアンスを持つ仕上がりとなっています。
 この『放射能』が、来る5月1日(木)?6日(火)にドイツで開催される「第60回オーバーハウゼン国際映画祭」のインターナショナル・コンペティション部門に出品されることが決まりました。(「オーバーハウゼン」のサイトは、こちら。
http://www.kurzfilmtage.de/en/competitions/selection.html
Japanの欄に、「Radioactive」のタイトルで掲載されています。)
 「オーバーハウゼン」は、かつて「オリジナル映像作品」の『トワイライツ』(1994年、監督:天野天街)や『KAZUO OHNO』(1995年、監督:ダニエル・シュミット)、大山慶『HAND SOAP』(2008年)が出品され、『トワイライツ』はグランプリ(1995年)を、『HAND SOAP』は同映画祭賞(2010年)をそれぞれ受賞する、といった具合に、当センターとも縁のある映画祭です。20年以上続いた文化情報センターの活動で、1995年の『トワイライツ』の「オーバーハウゼン」出品は、国際的な広がりを持つ最初期の動きの一つだった、といえるでしょう。今、このタイミングで『放射能』の出品が決まったことに、ある種の感慨を覚えずにはいられません。アートプラザでの上映は、ドイツ上映に先立つ機会ともなりましたので、皆様、お見逃しなく!!(T.E)
 

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 11月30日(土)から12月15日(日)まで、愛知芸術文化センター12階アートスペースAにて、「第18回アートフィルム・フェスティバル」を開催します(月曜休館)。「AFF」の略称でも呼ばれるこの上映会は、映像表現の先端的な動向を、実験映画、ビデオ・アート、ドキュメンタリー、劇映画など、既存のジャンル区分にとらわれない横断的な視点からセレクトして、プログラムを構成しています。例年、11月から12月にかけての、この時期に開催しているので、一種、冬の風物詩として定着してきた感もあり、当センター近辺の画廊や書店といったスポットに、チラシ積み置きのお願いに伺うと、「もう、こんな季節になったのですね。」といった言葉をいただいたりしています。


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 「第18回アートフィルム・フェスティバル」ポスター

今年は、主に4つのプログラムから上映会を構成しています。まず、特集1は、《『ラ・アルヘンチーナ頌』初演(カラー版)初上映&「大野一雄ビデオ・ライブラリー」セレクション》です。「大野一雄ビデオ・ライブラリー」は、大野一雄舞踏研究所が、舞踏研究の資料が広く一般に活用されることを目的に、公演記録や映画、ドキュメンタリー、テレビ番組などから精選したものを公開するプロジェクトで、当センターでは1999年より、上映やビデオ・ライブラリーでの閲覧を行っています。大野一雄の代表作である『ラ・アルヘンチーナ頌』初演の記録は、本ライブラリーの中でも重要な一本といえますが、当センターに収蔵されていたのはモノクロの映像でした。今回、新たにカラー版の映像を収蔵することになったのを受けて、大野一雄の主要な作品や映像記録と併せてプログラミングしています。

 特集2《ビデオ・アート生誕50年:その過去と現在》は、今年が、ナム・ジュン・パイクとヴォルフ・フォステルがTV映像を磁石で歪める実験を行ってから、50年の節目に当たることから、当センターが所蔵するビデオ・アート作品より、初期の傑作『グローバル・グルーブ』(1973年、ナム・ジュン・パイク、ジョン・J・ゴットフリー)や、ビデオが現代アートの領域で注目される切っ掛けとなった国際展「ドクメンタ6」の模様を記録した、「ドクメンタ6・サテライト・テレキャスト」(1973年、ナム・ジュン・パイク、ヨゼフ・ボイス、ダグラス・デービス)、ビル・ヴィオラの初期作品『インフォメーション』(1973年)などを上映します。また、現在、ビデオというメディアに精力的なアプローチを行っている、河合政之や瀧健太郎らが参加した「JAPANESE VIDEO ART 2011」を、併せて上映します。

特集3《濱口竜介+酒井耕、東北を記録する》は、「あいちトリエンナーレ2013」映像プログラムで話題となった、『なみのおと』(2011年)に引き続き撮られた、『なみのこえ 気仙沼』『なみのこえ 新地町』『うたうひと』(いずれも、2013年)の三本を一挙上映します。また、特集4《愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第22弾 舩橋淳『放射能』プレミエ上映》は、“身体”を統一テーマに設定し、当センターが映像作品の制作を行うシリーズの、最新作を初公開するものです。監督の舩橋淳は、東日本大震災とそれに伴う原発事故で、全町民避難を余儀なくされた福島県双葉町の住民を追ったドキュメンタリー『フタバから遠く離れて』(2012年)で、現在、注目を集めています。『放射能』(2013年)は、人間の目に見えない放射能と、その身体への影響という観点から撮られた作品です。特集3と4は、「揺れる大地」をテーマに据えた「あいちトリエンナーレ2013」とも関連の深いプログラムで、今年の特色の一つといえるでしょう。


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舩橋淳『放射能』(2013年、愛知芸術文化センターオリジナル映像作品第22弾) 

最後に、上映作品変更のお知らせです。11月30日(土)19:50上映の、ピエール・カスト『ル・コルビュジエ、幸福の建築家』(1957年)は、ピエール・シュナル『今日の建築』(1930年、11分)に変更になりました。ル・コルビュジエ財団提供による、サイレント映画時代末期の、建築をテーマとしたドキュメンタリーです。貴重な上映機会となりますので、ぜひご来場ください。皆様のお越しをお待ちしております。(T.E)

 

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 現在、開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2013」に、愛知県文化情報センターの学芸員がキュレーターやプロデューサーとして参加しています。普段、文情の映像事業をご覧になられている皆様に、見逃せない企画が9月22日(日)から始まる「映像プログラム」です。

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 まず22日の18時から、岡崎市の松本町会場・松應寺で、〈オープニング上映〉としてパールフィ・ジョルジ監督『ファイナル・カット』(2012年)を上映します。『ハックル』(2002年)や『タクシデルミア ある剥製師の遺言』(2006年)が日本でも劇場公開されている、パールフィ・ジョルジ監督の最新作で、古今東西の劇映画450本をリミックスしたものです。既存の映画をその本来の文脈から離れて、独自の視点から再構成する手法はファウンドフッテージと呼ばれ、実験映画などでもよく用いられているのですが、アニメーションも含む多くの映画から、男女が出会い、恋をして、愛し合い、ケンカをして分かれ、再び出会い、よりを戻し・・・、という恋愛の要素を抽出した知的で批評的な構成は、ジャン=リュック・ゴダール『ゴダールの映画史』(1988-98年)にも通じるものがあるといえるでしょう。著作権の関係で、現在は教育目的や映画祭等での上映しか許可されていない作品ですので、この機会にご覧になられることをお薦めします。
 上映会場となる松應寺に打ち合わせに伺った際のご住職のお話では、1560年(永禄 3年)に徳川家康が、父・松平広忠の菩提を弔うために建立したとされる松應寺のお堂で、映画を上映するのはおそらく初めてではないだろうか、とのことでした。通常では体験することが出来ない、トリエンナーレならではの貴重な機会になると思います。(この作品は、10月12日(土)19時から、愛知芸術文化センター12階アートスペースAでも上映があります。)
 入場無料ですが、定員40名のため、事前申し込みが必要です。
 申し込み方法は、Eメールで、氏名(ペアご希望の場合、その旨を明記)、電話番号(日中、連絡可能な連絡先)をご記入の上、<filmprogram@aichitriennale.jp>あてに「オープニング上映鑑賞希望」とお書きの上、お申し込みください〈9月15日(日)必着〉。なお、申込多数の場合は、抽選となりますので、ご了承ください。
 松應寺への交通アクセス等の情報については、〈http://aichitriennale.jp/participate/2013/08/post-16.html
もご参照ください。
  引き続き、9月25日(水)-10月17日(木)に愛知芸術文化センター12階アートスペースAにて、『なみのおと』〈2011年、監督:濱口竜介、酒井耕〉や『Playback』〈2012年、監督:三宅唱〉等の作品から構成されるメイン・プログラムが上映され、10月19日(土)には長者町会場の名鉄協商パーキング長者町第3で、SjQ++によるライブ上映『arc』(2013年)が行われます(上映スケジュール等はについては、
http://aichitriennale.jp/news_data/2013/07/002603.html
をご参照ください。)アートスペースAでの上映は、国際美術展のチケットで、全プログラムをご覧いただけます。『arc』は入場無料です。
 映像関連の情報で、うっかり見落としがちなのが「モバイル・トリエンナーレ〈http://aichitriennale.jp/mobile/index.html〉です。この催しは、トリエンナーレの主会場から離れた4箇所で、出品作家の本展とは別の作品を展示する企画ですが、映像プログラムからも3名の作家の作品を上映します。
 上映作品は、ひらのりょう『河童の腕』(2009年)、川口恵里『花と嫁』(2012年)、姫田真武『ようこそぼくです2』(2012年)、『ようこそぼくです3』(2013年)となっていて、メイン・プログラム上映作品の前後に制作された、もう一つの代表作と呼ぶべきものが選ばれています。既に会期を終えた豊橋会場でも、これらの作品は老若男女を問わず好評でした。9月13日(金)-16日(月・祝)には知多市歴史民俗博物館(知多市緑町12-2、
http://www.city.chita.aichi.jp)、9月20日(金)-23日(月・祝)は文化フォーラム春日井(春日井市鳥居松町5-44、http://www.kasugai-bunka.jp)、9月27日(金)-29日(日)は東栄町の旧東部小学校(北設楽郡東栄町大字下田字軒山13-7)と、まだ鑑賞のチャンスはありますので、お近くにお住まいの方など、ぜひご覧ください。
 皆様のお越しをお待ちしております。(T.E)

 

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   「映像アート90年史」&「イメージフォーラム・フェスティバル2013」を開催!!

 

 67()より、「映像アート90年史」が始まります。この上映会は、昨年、同時期に開催した「ビデオ・アートから映像アートへ」の発展形ともいえる企画です。昨年は197080年代のビデオ・アート作品を基点に、今日、現代美術の領域でも映像メディアを使用した作品を多く目にするようになったことを受けて、こうした動向の源流をそこに見出そう、という主旨で開催します。

 今回の「映像アート90年史」では、昨年の上映会が、愛知県文化情報センターの所蔵するビデオ・アートやオリジナル映像作品によりプログラムを構成していたのに対し、ルネ・クレール『幕間』(1924)など、アートライブラリーが所蔵する1920年代の古典的なアヴァンギャルド映画も加えています。これによって、戦前のアヴァンギャルドから、戦後のアンダーグラウンド映画、そして、それを引き受けつつ、ビデオという新しいメディアを用いることで、そのさらなる展開と、表現としての高度な達成を遂げたビデオ・アートに到る歴史的な流れを、6日間の会期で凝縮してプログラミングすることが出来ました。

 ライブラリー所蔵映像の上映を快諾していただいた関係各位に、厚くお礼申し上げます。

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さらに現代のヴィヴィッドな映像表現の動向を反映させるべく、9()には「第6回愛知デジタルコンテンツコンテスト」受賞・入選作品と愛知特別プログラム「愛知の新世代たち」の、2つのプログラムを加えています。前者は、デジタルコンテンツに関わる若手人材の育成と、優れた才能の発掘を目的とするものですが、その中には知事賞グランプリを受賞した、東郷拓郎、金本有里彩『suger coat(2012)のように、約3分という短い時間の中に、短編映画と呼んでも差し支えないほどのストーリー的な展開や起伏を盛り込んだ、凝縮力ある作品も生み出されています。この機会に、多くの方々に鑑賞していただければ、と思っている次第です。

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また、後者は、612()より開催する「イメージフォーラム・フェスティバル2013」(IFF2013)のジャパントゥモロウ(一般公募部門)に応募された、愛知県在住・在学の作り手たちの作品を集めたプログラムです。実験的なアニメーションから、ハイ・クオリティのCG作品、さらにはドラマ的な実験を志向するものまで、その表現は幅広くバラエティに富んでおり、映像表現の現在の状況を知る、良い機会になるものと思っています。

 映像アートの祭典として、映像表現の実験的な動向を紹介する、国内最大級の映像フェスティバルと評される「イメージフォーラム・フェスティバル2013」と併せて鑑賞すれば、「映像アート90年史」では歴史の流れという縦糸に、「IFF2013」では表現の広がりという横糸に、同時に触れることが出来る、絶好の機会となるでしょう。

 皆様のご来場をお待ちしています。(T.E

 

上映作品、スケジュール等の詳細は、下記のサイトをご覧ください。

「映像アート90年史」

http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/jishyu/2013/13jyoei/index.html

 

「イメージフォーラム・フェスティバル2013

http://imageforumfestival.com/

 

 

 2013年は、ドイツの音楽家リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)の生誕200年の記念年です。ワーグナーは、音楽・劇・文学を結びつけた総合芸術としての「楽劇」を創始し、その後のヨーロッパ文化に多大な影響を与えました。
 今回の上映会では、彼の最高傑作である楽劇「ニーベルングの指輪」(以下「指輪」という。)を2種類の舞台でお届けします。「指輪」は史上最大のオペラで、序夜「ラインの黄金」、第1夜「ワルキューレ」、第2夜「ジークフリート」、第3夜「神々の黄昏」の4作品からなり、上演には4日間も要します。しかも、それぞれが長大で、「神々の黄昏」に至ってはなんと4時間半も掛かり、演ずる側も見る側も大変な労力が必要となります。
 
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リヒャルト・ワーグナー(1871年)
 
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「ワルキューレの騎行」 挿絵
(アーサー・ラッカム1910年)

 

 この大作を上演することは、劇場にとってもビッグイベントで、周到な準備が必要です。「指輪」を毎年上演する劇場が、バイロイト祝祭劇場です。バイロイトは南ドイツの端にある小さな街ですが、ワーグナーはここに自分の作品を上演するための理想的な専用劇場(木造、1974席)を1876年に建てたのです。
 この劇場でバイロイト音楽祭が毎年夏に開催され、世界中からワーグナー・ファンが集まります。チケットを入手するのも大変です。劇場の中は狭く、暑く、観劇するのも相当の忍耐を要します。また、観客を舞台に集中させるためにオーケストラ・ピットを舞台下に設け(「神秘の奈落」と呼ばれる)、独特の響きを醸し出しています。
 なお、熱狂的なワーグナー愛好家を「ワグネリアン」と呼び、この音楽祭に参加することを「バイロイト詣で」と呼んでいます。ヒットラーやニーチェ、ルードヴィヒ2世、ボードレールなどもワグネリアンとして有名です。しかし、ヒットラーが反ユダヤ主義の音楽としてワーグナーを利用したため、ユダヤ人からの反発は根強く、イスラエルでは、現在でも、ワーグナーの音楽はタブーとなっています。
 
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バイロイト祝祭劇場
 
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バイロイト祝祭劇場のグランドデザイン

 

 さて、今回の上演の映像ですが、前半はメトロポリタン歌劇場によるオーソドックスな舞台です。オットー・シェンクによる演出は、ワーグナーが楽譜に書き込んだ「ト書き」になるべく忠実に従った美しく神秘的なもので、神々と人間の確執を壮大な規模で描き上げたこの作品にぴったりの演出です。レヴァイン指揮の雄大で力強く迫力に富んだ演奏も非常に素晴らしく、歌手も最高のワーグナー歌手を揃えています。「指輪」入門に最適です。
 一方、後半のバレンシア州立歌劇場の舞台は、CG映像など最新テクノロジーを駆使した斬新なもので、びっくりです。演出がスペインの演劇集団「ラ・フラ・デルス・バウス」のカルルス・パドリッサ(バルセロナ・オリンピックの開会式の演出で有名)です。ダイイナミックなCG映像、レーザー光線が飛び交う舞台、SF的な衣装や装置で、神々はクレーンに、巨人はロボットに乗り、舞台を自由自在に動き回ります。まるでスターウォーズの世界のようです。ズービン・メータの指揮や歌もレベルの高いものです。この「バレンシア・リング」なら、長大な「指輪」も退屈せずに楽しめるかもしれません。まさに現代に活きるオペラです。

 

 なお、展示資料は、日本ワーグナー協会会員の小竹暢隆氏(名古屋工業大学教授)からお借りしたものです。「DIE WOCHE」は1938年にベルリンで発行された雑誌で、ワーグナー生誕125年の特集です。1938年はナチスがオーストリアを併合した年で、第二次世界大戦直前の緊迫した時代の貴重な資料です。また、1996年のバイロイト音楽祭の豪華パンフレットも展示されています。

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 ワーグナーのオペラは、「指輪」の他にも「タンホイザー」、「ローエングリン」、「トリスタンとイゾルデ」など有名なものが多くあります。アートライブラリーには、これらの映像資料を揃えていますので、どうぞご利用ください。

(A.M)

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愛知芸術文化センター12階のアートスペースAでは、現在「第17回アートフィルム・フェスティバル」を開催中です(12月16日(日)まで)。
例年に比べ寒さが厳しい中、連日、熱心なお客様に足を運んでいただいており、スタッフ一同、大変嬉しく思うとともに、映画館では上映が難しいアート系の作品を集中的に紹介するこの上映会が、名古屋の冬の風物詩として定着しているのだな、という実感を得ています。


前半に行った「特集1 フランス・ドキュメンタリー・セレクション2012」は、アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会の協力により、フランス本国のアンスティチュ・フランセから、直接DVDを送ってもらい、上映を行いました。そのため大半の作品がフランス語原語、英語字幕付きという形での上映になりました。
一部、言語的なハンディがあるので内容が十分に理解できない、というご指摘もいただきましたが、今回は映画の他、ダンス、音楽、美術など、芸術に関するアート系ドキュメンタリーをセレクトしたこともあり、画面を追っていればほぼ内容が伝わってくる作品が多く、大半の観客の方々から非常にいい反応をいただきました。


特に作品制作の現場を記録した作品は、画面に登場する人物たちのやり取りから、そこで何が起こっているか、言葉の壁を越えて伝わってくるものがあったといえるでしょう。
例えば、ゴダールやトリフォーらとともに、ヌーベルヴァーグと呼ばれる一群の作家たちの一人に数えられるエリック・ロメールの、『夏物語』(1996年)の制作過程を時系列に即して記録したジャン=アンドレ・フィエスキの『「夏物語」ができるまで』(2005年)では、撮影時に合図を送る小道具のカチンコを用いず、柔らかな感触で手を叩くことでスタートを指示する様が記録されていました。
ロメール作品の極めて自然な画面のニュアンスは、こんなところから生まれていたのだなと思うと、その創作の秘密の一端に触れた驚きと喜びが観る者に訪れます。


続く「特集2 松本俊夫「蟷螂の斧」三部作一挙上映+初期ビデオ・アート探求」では、日本において映像表現の先端的な動向を常に切り開いてきた松本俊夫が、オムニバス形式の映画に新たな可能性を探るべく挑んだ「蟷螂の斧」三部作が今年、完結したことを受けて、これを一挙上映する愛知初となる上映の機会でしたが、松本俊夫の久々の新作への関心はもちろん、当センターが所蔵する1970?90年代の代表的な作品7本を上映するプログラム「松本俊夫作品集」にも、熱心な観客の方々にお越しいただけたことも、嬉しい反応でした。
また、これも初上映となる瀧健太郎監督のドキュメンタリー『キカイデミルコト ?日本のビデオアートの先駆者たち?』(2012年)は、日本のビデオ・アートの歴史を考察する映像作品という、これまでに類例のなかった企画で、国内のみならずアメリカ、ドイツ、韓国といった海外にも取材の足を伸ばしたこの労作は、9日(日)の上映終了時には、来場した瀧監督に向け観客から拍手が巻き起こるという、嬉しい光景も見られました。


引き続き行われるプログラムでは、15日(土)、牧野貴監督『2012』(2012年)ライブ上映で、牧野監督から今回、3D上映を試みたい、という提案がありました。牧野作品は過剰なまでに多重露光を行うことによって、画面自体に奥行き感といったものがありますが、3D効果によってそれがどのように深められてゆくのか、興味を惹かれます。この貴重な機会を、ぜひお見逃し無く!

2012.jpgなお、「第17回アートフィルム・フェスティバル」が終了した翌週、22日(土)には、学生による選りすぐりの優秀作を集めた「インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル2012 名古屋特別上映」が開催される運びとなりました。年末の慌ただしい時期となりますが、こちらにも足をお運びください。


(T.E)

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“つながるヒト・つながるマチ”をキャッチコピーにして、東海地域とゆかりのある映画を、個性的で活気ある商店街として全国的にも知られる大須の街で上映しようという「大須映画祭2012」が、10月13日(土)・14日(日)に開催される運びとなりました。

第1回目となる今回、愛知芸術文化センターが20年間継続してきた「オリジナル映像作品」シリーズからもぜひ出品してほしいと声が掛かりました。

第1回ということにちなみ、この機会にシリーズ初期作品を集めて上映し、原点を振り返ってみようと思います。上映作品は『T-CITY』(監督:勅使川原三郎、1993年)、『トワイライツ』(監督:天野天街、1994年)、『KAZUO OHNO』(監督:ダニエル・シュミット、出演:大野一雄、1995年)の3本です。


 “身体”をテーマに、映像表現の新たな可能性を切り開くような、実験的な作品を制作することがこの企画のコンセプトでしたが、パフォーミング・アーツとの関わりが深いこれらの作品には、身体と映像の関係が、非常にピュアな形で考察されていたといえるのではないでしょうか。

上映は14日(日)15:40より、会場は第1アメ横ビル4階第3会議室です。
また19:05より、シアターカフェにて、制作担当学芸員によるトークも行われます。

 

トワイライツ.jpg【天野天街『トワイライツ』(1994年、Photo:羽鳥直志)】

パフォーミング・アーツと映像の関係ということでは、引き続き愛知芸術文化センター12階アートスペースAで、アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会との共同主催により「ダンス・フィルム・フェスティバル2012」を開催します。

この企画はDVDコレクション「コンテンポラリー・ダンスのランドスケープ」(2007年)をまとまった形で紹介するものですが、フランスのダンサー・振付家のみならず、フランスが評価する作り手も選出されており、現代におけるダンスの先端的な動向を俯瞰的に知ることができる、絶好の機会です。

昨年、当センターで公演し鮮烈な印象を残したジョセフ.・ナジが監督した『ジョセフ・ナジ、最後の風景』(2006年)や、アンジュラン・プレルジョカージュが振付を担当した『ブラック・パビリオン』(監督:ピエール・クーリブフ、2006年)の他、『ドミニク・メルシー、ピナ・.バウシュを踊る』(レジス・オバディア監督、2003年)、ウィリアム・フォーサイス振付による『One flat thing, reproduced』(監督:ティエリー・ドゥ・メイ、2006年)、『勅使川原三郎?不可視のダンス』(エリザベット・コロネル監督、2005年)等々、ダンス・ファンなら見逃せないラインナップです。

近年、ダンスと映像とは密接な関わりがあり、映像作品として見ても優れたものが少なくなく、映画ファンの方にも楽しんでいただけるでしょう。

上映プログラム等の詳細は、当センターHPをご覧ください。皆様のご来場をお待ちしています。

 

(T.E)

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 2年前に開催された「あいちトリエンナーレ2010」で現代美術に触れて、現代の作品には映像を使ったものが多いなあ、と感じられた方も少なくなかったのではないでしょうか。そして、なぜ映像を用いた作品が多いのだろうか、疑問をもたれた方もいらしたことでしょう。


 実は映像と美術の出会いは、1910-20年代のアヴァンギャルド映画(前衛映画)の時代にまでさかのぼることが出来ます。アヴァンギャルド映画は、この時代の前衛芸術運動であるダダやシュルレアリスムの理論を、当時のニュー・メディアである映画において実践したもの、という側面があります。このヨーロッパで発生した映像アートの最初の動きは、第二次世界大戦をへてその中心地をアメリカへと移します。1950-60年代に、この国を起点に世界的に波及していったのがアンダーグラウンド映画(地下映画)のムーブメントです。アヴァンギャルド映画からアンダーグラウンド映画へと連なる流れで生み出された、商業的な劇映画において固定化した方法論によらず、映像メディアの新しい可能性を追求するアプローチは、実験映画と総称されるようになります。


 さらに1970-80年代には、フィルムにくらべ扱いが容易なビデオが普及し始め、アーティストによる映像制作がより容易となり、ビデオ・アートと呼ばれる映像表現の新しい試みが盛んになります。ビデオ・アートとは、フィルムとは異なるビデオの表現メディアとしての可能性を追求する試みですが、実験映画の方法論やボキャブラリーを継承しているという指摘もあり、実験映画の流れを汲むものといえるでしょう。


 今回開催する「ビデオ・アートから映像アートへ」は、愛知県文化情報センターが所蔵するビデオ・アート作品より、このジャンルのパイオニアであるナム・ジュン・パイク、第二世代を代表する作家のビル・ヴィオラ、フィルムからビデオまで様々なメディアとジャンルを横断する独自の活動を行った映像作家・松本俊夫の作品をセレクトして、1970-90年代に到る流れを抽出し、ビデオ・アートがその表現としての精度を高め、深みを増すことによって、映像アートというべき今日の映像を用いた美術表現を用意していったことを照らし出します。

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【左:ビル・ヴィオラ『歯のすき間の空間』(1976年、『四つの歌』より)
右:ナム・ジュン・パイク『グローバル・グルーブ』(1973年、共作:ジョン・J・ゴットフリー)】

 会期中には、今後の活躍が期待される若手作家をフォーカスした、愛知特別プログラム「愛知の新世代たち」や、昨年開催された「第5回あいちデジタルコンテンツコンテスト」一次審査通過作品の上映も行います。映画館で観る劇映画とは異なる、映像による自由で新しい表現にぜひ触れてみてください。皆様のお越しをお待ちしております。

 会期は、6月8日(金)-10日(日)、19日(火)-21日(木)の6日間です。6月13日(水)-17日(日)は、国内最大級の映像アートの祭典「イメージフォーラム・フェスティバル2012」を開催しますので、ぜひこちらにも足をお運びください。
会場は、愛知芸術文化センター12階アートスペースAです。

(T.E)
 

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5月12日(土)、13日(日)に開催する「花開くコリア・アニメーション」に合わせ、地下2階アートプラザでは、4月27日(金)より、「韓国アニメーション・ポスター展」を開催しています。

韓国アニメポスター.jpg「花開くコリア・アニメーション」は、韓国で9月に開催されている、自主制作アニメーションを対象とした映画祭「インディ・アニフェスト」で上映された作品の中から、優れたものをセレクトして、プログラムを構成しています。
ここでは、2007年から2011年までの歴代「インディ・アニフェスト」ポスター5枚を、一度にご覧になることが出来ます。
昨年開催された「2011」のポスターは、「インディ・アニフェスト」が通算7回目となったことを受けて、数字の7がモチーフになっていることが判ります。私たちが目にしていた、「花開くコリア・アニメーション2012」のチラシは、「インディ・アニフェスト2011」のメイン・ヴィジュアルに、さらにキャラクターを描き加えて、ジャクソン・ポロックにも似たオールオーヴァー風に展開したものであることが判ります。


また、長編作品のポスターも併せて紹介しています。韓国でロングラン上映を記録した『Green Days -大切な日の夢-』(2011年、監督 アン・ジェフン、ハン・ヘジン)は、「釜山国際映画祭」用に作成されたバージョンと、英語題が『Dinosaur & Me』となっている異なるバージョンの二種類を展示しています。
また「釜山国際映画祭」受賞作で、「カンヌ国際映画祭」監督週間にも招待された『豚の王』(2011年、監督:ヨン・サンホ)のポストカードも展示中です。
『豚の王』のポスターは、韓国インディペンデント・アニメーション協会(KIAFA)の提供により、4月末に当センターに到着したところです。
連休明けには、同時に到着した「花開くコリア・アニメーション2012」出品作『家』(2010年、監督:パク・ソミン、パク・ウニョン、パン・ジュヨン、イ・ジェホ、イ・ヒョンジン)ポスターとともに、お披露目したいと思っています。お楽しみに!
なお、『家』は、ミニチュア・セットを制作し、それを写真に撮って背景に使用したという、ユニークな手法の作品です。これにちなんで、韓国観光協会から伝統的な家屋の模型をお借りして、展示しています。


5月12日(土)、13日(日)には、映像作家のカン・ミンジさん、KIAFA事務局長のチェ・ユジンさんが来日され、トークショーが開かれますが、日本の愛好家や作家の方々のと親交が深まることを願っています。
その前に、ハングルが踊るポスターを見て、韓国アニメーションの空気に触れておくのも良いでしょう。
ご来場をお待ちしております。

(T.E)
 

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3月も終わりで、温かくなったと思ったらまた冬のように寒くなったり、という日々が続いています。
でも、外に出ると早咲きなのか、一部には既に花開いている桜もあって、本格的な春ももうすぐだなぁ、と実感します。
栄周辺では、春休みに入っているので、子供たちの姿をよく目にするようになりました。

 

愛知芸術文化センターでも、春らしい企画をやろうという話が持ち上がり、地下2階アートプラザ内ビデオルームにて、春休みアニメーション特集「アニメーションの歴史を楽しく学ぼう!!」を行うことになりました(会期:2012年3月27日(火)-4月8日(日) *4月2日(月)休館)。
上映会の内容は、アートライブラリーが所蔵するDVD「世界アニメーション映画史」全20巻の内、18巻をセレクトして上映するものです。

 

映画が誕生する以前に、独自の技術で今日のアニメーションとほぼ同じ表現を実現したエミール・レイノーの『プラキシノスコープ』(1893年)に始まり、『ファンタスマゴリア』(1908年)などで知られるエミール・コールや、『リトル・ニモ』(1911年)や『恐竜ガーティ』(1914年)のウィンザー・マッケイといった最初期の作家や、猫のキャラクター、フェリックスを生み出したパット・サリバンの作品からは、本来静止しているはずの絵が動いて見えることの原初的な驚きに満ちあふれ、現代の私たちの眼にもプリミティブな喜びと楽しみを届けてくれるでしょう(レイノー作品は、第1巻「エミール・コール」に収録)。


道化師のココ、犬のビンボー(ビン坊)を始め、ベティ・ブープやポパイといった人気キャラクターを創造し、猥雑で活気ある都会的なセンスの作品で、ディズニーのライバルとして並び立ったマックス&デイブのフライシャー兄弟の作品が、第5、8、12、13、19巻と、計5巻にわたってたっぷり収められていることも、「世界アニメーション映画史」の特色の一つといえるでしょう。

フライシャー作品では、『ベティの地球競売』(1932年、監督:デイブ・フライシャー、第8巻収録)のように、漫画映画の枠組みの中で、ナンセンスというかシュルレアリスムにも通じる笑いが描かれていることに驚かされます。
こうした感覚は、ボブ・クランペット、テックス・アヴェリー、チャック・ジョーンズといった作家によって増幅され、シュルレアリスムを突き詰めたような狂気と紙一重の世界に展開してゆくといえます。
彼らの作品は、今日のアート系短編アニメーションにも影響を与えていると考えられ、その源流の一つという意味からみても興味深いでしょう。 

アニメ1.jpgデイブ・フライシャー『ベティの誕生日』

 なお最終日、4月8日(日)15:30の回は、特別企画として、「「第41回ロッテルダム国際映画祭」短編部門タイガーアワード受賞記念 愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第20弾 牧野貴監督『Generator』上映会+解説」を開催します。
去る1月25日(水)から2月5日(日)まで開催された「第41回ロッテルダム国際映画祭」で、最高賞に相当するタイガーアワードを受賞したことは日本でも新聞等で報道され話題となり、受賞作を観たいという声も寄せられました。
当日はプロデュースを担当した越後谷卓司(愛知県文化情報センター主任学芸員)のトークも予定しています。こちらにもぜひ足をお運びください。


皆様のご来場をお待ちしております。(T.E)

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愛知芸術文化センター・文化情報センターでは、1992年の開館以来、一年に一作品のペースで「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」を制作しています。

 

去る1月25日(水)に開幕したオランダの「第41回ロッテルダム国際映画祭」(2月5日(日)まで開催)に、このシリーズの第20弾として制作された、牧野貴(まきの・たかし)監督の『Generator』(2011年)が出品され、コンペティション短編部門で最高賞に相当するタイガーアワードを受賞しました。

2006年に設立された短編部門のタイガーアワードを、日本人が受賞するのは、今回が初めてという快挙です。


「ロッテルダム国際映画祭」は、1972年に第一回が開催され、ヨーロッパでは来場者数(約35万人)や上映本数(約700本)の規模では「ヴェネツィア国際映画祭」を越え、「カンヌ国際映画祭」や「ベルリン国際映画祭」、「ロカルノ国際映画祭」などと並ぶ、最も重要な映画祭の一つに数えられており、非商業的な自主制作映画(インディペンデント映画)や実験映画、映像アート作品の普及や支援に大きな役割を果たしてきたことで、高く評価されています。

 

『Generator』は平成22年度の「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」として制作され、昨年開催した「第16回アートフィルム・フェスティバル」(2011年11月22日(火)‐12月4日(日)開催)で初公開されました(上映日は12月3日(土)、4日(日))。

「オリジナル映像作品」は、映像表現の新しい可能性を切り開くことを意図し、“身体”を統一テーマに設定して、毎年、気鋭の作家を登用して実験的な映像作品を制作する企画ですが、牧野監督は人間が作り出した都市の構造が、身体の部位や器官がなす構造と類似していることに着目し、その両者をパラレルに関係づけるという構想から『Generator』を製作しました。


作中には、昨年3月11日(金)に起きた東日本大震災前の東京を、空撮でとらえた映像が登場。
その映像に落下する粒子や流動する液体といった有機的イメージがオーバーラップし、牧野監督の表現に特徴的な抽象と具象が融合する独特の映像世界が現出しています。
また牧野監督作品で音楽を提供してきたジム・オルークが本作品でも音楽を手掛け、荘厳さと緊張感を生み出しています。


12月4日(日)の初公開に合わせて行われたトークで、牧野監督は津波や原発事故による放射能汚染を想起させてしまうのではないかと悩んだが、当初のプランどおり完成させたと、製作時の苦悩を語っています。

ロッテルダムでは「震災によって危機的な状況にある自然環境の脈動と、それが併せ持つ危険性を描いている」と評価され、受賞に到りました。

 

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左:牧野貴『Generator』(2012年)
右:「第16回アートフィルム・フェスティバル」、『Generator』プレミエ上映での牧野監督によるトークの様子

 

なお「オリジナル映像作品」は、当センター1階アートライブラリーのビデオ・ブースで、リクエストにより鑑賞できます。

また、地下2階アートプラザでのアンコール上映も計画中です。詳細は決まり次第、改めてお伝えします。

 

 

(T.E)

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2011年11月22日(火)より12月4日(日)まで、「第16回アートフィルム・フェスティバル」を開催します〈於:12階アートスペースA、11月28日(月)は休館〉。

「アートフィルム・フェスティバル」は、実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、劇映画など、既存のジャンル区分に捕らわれず、映像表現の新たな可能性を切り開くような、先鋭的な作品を集めた特集上映会です。
今年は、例年にも増してバラエティに富んだプログラム構成となりました。


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上映会の開幕を飾る〈フランス・ドキュメンタリーの現在 アートと社会の交点〉では、『グレン・グールド- 時を越えて』(監督:ブルーノ・モンサンジョン、2005年)や、ストラヴィンスキーの同題オペラを題材とした『ナイチンゲール』(監督:クリスチャン・ショーデ、2004年)、リヨンのメゾン・ドゥ・ラ・ダンスで1997年に発表されたモンタルヴォ/エルヴュ・カンパニーによるダンス公演『パラディ』を記録した『パラディ(楽園)』(監督:マリ=エレーヌ・ルボワ、2004年)などは、音楽やダンスを愛好する方にもお勧めです。

 

現代アートに関心のある方には、サテライト会場となるアートラボあいち(名古屋市中区錦2-10-30〈万勝S館、「あいちトリエンナーレ2010」でATカフェとして使われた建物です〉)地下1階で、ジュリアン・デゥヴォー『フランシス・アリスの足跡に関する詳細』(2006年)やフランソワ・レヴィ=クワンツ『イヴ・クライン-青の革命』(2005年)といった、美術を題材とした作品を上映します(このプログラムはDVD、英語字幕版での上映となります)。

 


 

続く〈オムニバス作品の新しい風〉では、仙台短篇映画祭制作プロジェクト311『明日』(2011年)や、河瀬直美が企画した、なら国際映画祭製作『3.11 A Sense of Home Films』(2011年)、SOL CHORD企画、前田真二郎監修による『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW』(2011年)など、今日の状況を反映した意欲的なオムニバス作品を特集します。オムニバスとは複数の作家の短編をまとめて公開する発表形式で、1960年代に流行しましたが、いずれの作品のこの形式を現代において新たに問い直すも試みとなっています。


実験映画では、80年代より既存の映画を解体/再構築するファウンド・フッテージの手法で注目を集めたドイツのマティアス・ミュラーと、2000年代前半から始まるクリストフ・ジラルデのコラボレーションの軌跡を、それぞれの単独作品も含めて振り返る〈マティアス・ミュラー&クリストフ・ジラルデ作品集〉『闇の絵巻』(1997年)など上映機会の少ない初期作品から、代表作『フーガの技法』(2001年、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第10弾)を経て、パフォーマンス的傾向を持つ『浜の絵』(2011年)までを集めた〈石田尚志 絵画と身体〉が注目です。


〈ヴェルナー・ヘルツォーク『The Wild Blue Yonder』特別上映〉は、ヘルツォーク監督のSFファンタジー『The Wild Blue Yonder』(2005年)を名古屋初公開するプログラムで、非常に貴重な上映機会といえるでしょう。


そしてクロージングを飾る〈愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第20弾 牧野貴『Generator』プレミエ&近作セレクション〉では、オリジナル映像作品の最新作にして、牧野貴の新作である『Generator』(2011年)が初公開されます。
映像と音楽の新たな有機的関係を追求してきたことで知られる牧野監督ですが、“身体”を統一テーマとしたこの企画では、音楽を担当したジム・オルークとの間でどのような達成を示すのか、興味を惹かれることでしょう。


入場は無料です。
プログラムの詳細等、最新情報は当センターのホームページ(http://www.aac.pref.aichi.jp/)でご確認ください。皆様のご来場をお待ちしております。

 

(T.E)

 

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 8月23日(火)より「アート・アニメーション・フェスティバル2011」を開催します(28日(日)まで、於:12階アートスペースA)。2007年に始まったこの上映会も通算で5回目を数えるので、既に夏の恒例行事となった感もあります。今回は「レゾルーメント・アニメ -フランスが自信を持っておすすめするアニメ作品集」5プログラム、「東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻作品集」4プログラム、「第4回愛知デジタルコンテンツコンテスト一次審査通過作品」1プログラムの、計10プログラム、119作品を上映します。

 短いものでは1分程度、長くても15分くらいの短編作品(平均的な上映時間はおよそ7分)を集めたプログラムなので、6日間で100本を越える作品を上映することになるのですが、これだけ本数があると、どれを観たらいいのか判らない、何を観ればいいか教えてほしい、という声を耳にするのも確かです。

 一人一人の人間の顔が違い、一人一人に個性があるように、作品には一本ずつ、それぞれの持ち味や見どころ、面白さがあるので、できるだけ多くの作品を観て、自分が気に入ったものを見つけ出すのが、この種の特集上映会や映画祭の楽しみであるのですが、そうは言っても、作家の名前もタイトルも始めて聞くような作品が並んでいると、途方に暮れてしまう、という気持ちになるも分かります。

 アニメーションという言葉から思い起こすのは、子供の頃から親しんでいるTVアニメであるからか、アニメーションは子供向きの表現というイメージがあります。確かにアニメーションには、本来動かないはずの絵が動く視覚的な驚きや面白さがあるので、子供も楽しめる映像表現である、という側面もあるでしょう。今回上映する作品は、子供向けであることを前提に作られている訳ではありませんが、夏休みの時期でもありますし、子供と一緒にご覧になることを考えられている方も少なくないのではと思い、親子での鑑賞をお薦めできるプログラムを紹介しましょう。


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 【 『 待ちこがれる雨のダンス 』 ( 監督:ヴィジャヤ・クマール・アルムーガン、2006年 ) 】

 まず、「レゾルーメント・アニメ」のAプログラム「子供の楽しみ」が挙げられます。『待ちこがれる雨のダンス』(監督:ヴィジャヤ・クマール・アルムーガン、2006年)のように、子供が主役級のキャラクターとして登場したり、『「侍」対「侍」』(監督:フランソワ・カフィオ、ロマン・ノエル、トマ・サラ、2005年)や『血を吸う悪魔』(アドリアン・バルビエ、ラム・ル・タン、アドリアン・アネスレイ、2005年)のように、往年の漫画映画に似た味わいを持つ作品、『宇宙のハーモニー』(監督:ジャン=マルク・ロアル、2005年)のように純粋な視覚的な美しさを追求した作品などを多く集めています。また手描きの線や人形を用い、手作り的な暖かみを持つ「東京藝術大学」の作品や、1分前後のコンピューター・グラフィックス(CG)ながら、ストーリー性に富んだ作品に特色のある「愛知デジタルコンテンツコンテスト」も、親子での鑑賞に向いているでしょう。

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 【 『 「侍」対「侍」 』 ( 監督:フランソワ・カフィオ、ロマン・ノエル、トマ・サラ、2005年 ) 】


 もちろん、作品によっては社会的なメッセージ性が強いハードなものや、ブラックな味わいを持つものなどもあり、ちょっと子供にはハードルが高いかも、と思われる場合があるかもしれません。でも単純に楽しく面白いだけではない、いろいろなタイプの作品を観て、価値観の多様性に触れることもまた重要なのではないでしょうか。アニメーションの愛好家はもちろんですが、一般の映画ファンも満足できる深みのある作品を鑑賞できる貴重な機会です。多くの方々にお越しいただければ幸いです。皆様のご来場をお待ちしております。

(T.E)

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 現在、愛知芸術文化センターでは、【東北復興支援ウィーク】を行っています。


 その一環として7月23日(土)、24日(日)の2日間「東北復興支援チャリティ映象上映会」を開催します

 

 東日本大震災の現地における困難な状況は、TVニュースを通じて日々、私たちに届けられていますが、報道とは違う視点から、個人の映像作家による記録撮影の活動も並行して行われています。

 こうした活動が作品として、ある程度のまとまった形となるには、編集や整音などの作業をへるなど、まだ時間が必要ですが、デジタル機器の利点を生かして、短編という形で公開される作品も現れています。

 この上映会では、今年5月に発表された、復興への第一歩を感じさせる短編映像作品と、岩手県北上市岩崎地区に伝わる民俗芸能「岩崎鬼剣舞」を記録したドキュメンタリーを合わせて上映し、復興への思いに結び付けたいと思います。

 

 今回上映するのは、次の2本です。

 

岡本彰生『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW #01 ISHINOMAKI』

2011年、5分、DV

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 映像作家・前田真二郎が企画したオムニバス作品『BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW』の一編。

 ある一日を記録した5分間の映像に、その前日と翌日に録音した音声をサウンドとして使用する、という前田の指示に基づき、国内各地の20名以上の作家が参加し、作品をネット上で発表する企画で、平行してオムニバス映画としてまとめる構想も進んでいる。

 

 岡本による本作品は、2011年5月4日に、宮城県石巻の避難所で開催された編み物ワークショップを撮影。地震と津波により瓦礫が山となった灰色の風景と、ワークショップで紡がれる毛糸の色の鮮やかさが対比をなす。
 
 災害時にアートによって出来ることとは何かを、観る者に想起させる短編作品。

 

三宅流『究竟の地-岩崎鬼剣舞の一年』

2007年、161分、DV、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第16弾

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 岩手県北上市岩崎に伝わる民俗芸能「岩崎鬼剣舞」を取材したドキュメンタリー。鬼剣舞にたずさわる人々、この地域に生きる人々の姿を一年間に渡って捉えている。
 
 鬼剣舞は、農業や大工、あるいはサラリーマンとして勤めるなど、仕事をしながら、その合間をぬって皆で集まり練習を重ね、公演を行っている。
 
 また保育園や小学生では授業の一環として、また高校生では部活動としても行われるなど、あらゆる世代に浸透し、あたかもこの地域では生活と芸能が渾然一体となった様相を呈している。

 

 この映像作品により、東北地方の風土が育んできた独自の文化の豊かさに触れ、復興への誓いを確かめ合う機会としたい。

 

■上映日時・会場
 7月23日(土)14:00、18:00/24日(日)14:00
 愛知芸術文化センター12階アートスペースEF

 

 皆様のご来場をお待ちしております。

 

(T.E)

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 テーマ上映会「映像の学校II」が始まります(会期:6月10日(金)-12日(日)、21日(火)-23日(木))。


 タイトルに「II」と付いているのは、昨年「映像の学校」を開催し、その好評を受けた第二弾として企画したためです。
 愛知芸術文化センターでは、実験映画やビデオ・アートに代表される、先端的な映像作品を軸に映像事業を行ってきましたが、実験映画の源流をたどると、歴史的に、その始まりが1910-20年代の前衛映画(アヴァンギャルド映画)にあることが分かります。
 このサイレント映画(無声映画)の時代は、映画の黎明期であったため、アヴァンギャルドに限らず、映画それ自体が大いなる実験の渦中にあったといっても言い過ぎではありません。


 サイレント映画では、昨年に続き、今日の劇映画のフォーマットを作り上げたD.W.グリフィスと、チャップリン、ロイドと並ぶ三大喜劇王の一人バスター・キートンを取り上げます。
 
 グリフィスの『イントレランス』(1916年)は、サイレント映画における最大級の大作であるとともに、最も実験的ともいえる作品です。
 今回上映するプリントが16mmフィルムのサウンド版であるので、11日(土)14:00はサイレント映画本来の映写スピード1秒間18コマで、21日(火)18:30には現在のサウンド映画のスピード1秒間24コマで、計2回上映を行います。サイレントとサウンド版の違いをスクリーンで体験できる、貴重な機会です。
 

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 (D.W.グリフィス『イントレランス』(1916年))

 
 キートン『キートンの恋愛三代記』(1923年、共同監督:エディ・クライン)は、『イントレランス』のパロディとして作られたという説もある作品で、キートンが短編から長編へ進出するターニング・ポイントになったという意味でも重要です(上映は、10日(金)19:30)。


 映像表現の新たな可能性を探り、革新しようという試みは、現代にもつながっているものです。
 この上映会では、愛知芸術文化センターが制作する実験的な映像作品のシリーズ「オリジナル映像作品」より、映画監督が通常の劇映画の枠組みを離れて取り組んだ意欲作を中心に上映作品をセレクトしました。

 『愛のむきだし』(2008年)や『冷たい熱帯魚』(2010年)などの作品で近年、注目を集めている園子温の『うつしみ』(1999年、シリーズ第8弾)は、園監督の自主制作映画時代の集大成という評価もある作品で、彼のフィルモグラフィーを語る上で欠くことのできないものともいえるでしょう。この作品はまた、『イントレランス』が試みた映画の構造的な実験を継承している、という側面も持っています。

 昨年のプレミエ上映で、音を体感する新しいタイプの作品として高い評価を得た、柴田剛『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(2010年、シリーズ第19弾)のアンコール上映や、七里圭『ホッテントットエプロン-スケッチ』(2005年、シリーズ第14弾)を2011年サウンド・リミックス版で上映することなど、音楽や音に関心を持つ方にも楽しめるでしょう。

 ダンス・ファンには、昨年6月に逝去された舞踏家・大野一雄のドキュメンタリー『KAZUO OHNO』(1995年、シリーズ第4弾、監督:ダニエル・シュミット)は必見ですが、『イントレランス』〈バビロン編〉の祝祭的な群舞シーンで、アメリカ・モダンダンスの先駆者の一人、ルース・セント・デニスが出演している点も(出演場面自体は短いながらも)注目です。


 来場者には、スタンプ・サービスも行います。
 スタンプを3つ集めると、広報誌「AAC」や、イメージフォーラム提供による「イメージフォーラム・フェスティバル」カタログのバックナンバーなど、貴重な資料をプレゼント致します。

 
 皆様のご来場をお待ちしております。


(T.E)

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 「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」のシリーズ第17弾として制作された、大山慶監督『HAND SOAP』(2008年)が、去る3月22日(火)-27日(日)にアメリカ・ミシガン州で開催された「第49回アナーバー映画祭」(49th Ann Arbor FilmFestival)に出品され、ベスト・アニメーション賞(Chris Frayne Award Best Animated Film)を受賞しました。

 

 「アナーバー映画祭」は、1963年に始まった北米では最も古い歴史を持つ映画祭の一つとされ、自主映画や実験映画、ビデオ・アートを中心に、全米および世界20ヶ国の映像作家から応募があり、6日間の会期中、40プログラム、188作品(うちアニメーションは26作品)が上映されました。
 この映画祭は過去にケネス・アンガー、アンディ・ウォーホル、オノ・ヨーコ、ガス・ヴァン・サント、バーバラ・ハマー、ジョージ・ルーカスらを輩出しており、新進の映画作家がデビューする、最も活動的な実験映画祭の一つとの評価も得ています。
 2007年には、ケン・ジェイコブスと松本俊夫の回顧上映も行われ、話題となりました。
 また同年には、「オリジナル映像作品」第15弾となる辻直之監督『影の子供』(2006年)が奨励賞を受賞しており、今回の受賞は、本シリーズとしてこの映画祭二度目の受賞ともなるものです。

 

 『HAND SOAP』は、2009年10月31日(土)-11月29日(日)に開催された「ヨコハマ国際映像祭2009」で、コンペティションの第2位に相当する「優秀賞」を受賞し、その後国内外の様々な映画祭や特集上映会に出品されています。
 2010年4月29日(木)-5月4日(火)にドイツで開催された「第56回オーバーハウゼン国際短編映画祭」では、インターナショナル・コンペティション部門に出品され、「オーバーハウゼン国際短編映画祭賞」を受賞しました。
 5月18日(火)-23日(日)にチェコ・テプリツェで開催された「第9回国際アニメーション映画祭・アニフェスト2010」で審査員特別賞、7月30日(金)-8月1日(日)にスロバキア・ジリナで開催された「第3回国際アニメーション映画祭・フェストアンカ」で第3位、8月7日(土)-11日(水)開催の「第13回広島国際アニメーション映画祭」で優秀賞、8月25日(木)-29日(日)にイタリア・コンヴェルサーノで開催された「第8回イマジナリア映画祭2010」では、短編アニメーション部門(自由作品の部)でグランプリを受賞。11月3日(水)-7日(日)にオランダ・ユトレヒトで開催された 「第14回オランダアニメーション映画祭」で、短編部門グランプリを受賞。また11月19日(金)?23日(火)にエストニア・タリン他で開催された「第12回アニメーション映画祭・アニメーテッド・ドリームス2010」においてグランプリを受賞するなど受賞が続き、今回の「アナーバー」での受賞は都合9回目を数えることになります。

 

 思春期の少年と家族が暮らす家庭の中で、その日常生活から生じるナイーブでデリケートな緊張関係を、大山監督独自の実写とCGを融合する手法で描いたこの作品が、海を越えて、共感を持って広がっている様子がうかがえます。

 

              ▼大山慶『HAND SOAP』(2008年)HAND SOAP(blog).jpg

 

 今後『HAND SOAP』は、4月23日(土)に「あいちトリエンナーレ2010」のメイン会場の一つだった長者町の万勝S館(元・ATカフェ、名古屋市中区錦2-10-30)で行われる「One Day Cafe #1」(主催:あいちトリエンナーレサポーターズクラブ事務局)や、6月10日(金)-12日(日)、21日(火)-23日(木)に当センター12階のアートスペースAで開催するテーマ上映会「映像の学校II」でも上映を予定しています。

 

この機会に、ぜひご覧ください。

 

〈参考〉アナーバー映画祭ホームページ〈http://www.aafilmfest.org/

 

(T.E)

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 昨年、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品として制作された、大山慶監督『HAND SOAP』(2008年、シリーズ第17弾)が、世界各地の映画祭で上映され、「第14回オランダ・アニメーション映画祭」短編部門でグランプリを受賞するなど、国際的にも高い評価を得たことは、皆様の記憶にも新しいことだと思います。当センター地下2階のアートプラザ内ビデオルームでは、『HAND SOAP』の受賞を受けて、このシリーズで制作されたアニメーション作品3本を特集した、「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品受賞記念上映会 ‐アニメーション特集‐」を2月8日(火)‐12日(土)に開催する運びとなりました。

 開館以来、毎年一本のペースで作品制作を行っているオリジナル映像作品で、初めてのアニメーション作品となったのは、シリーズ第10弾となる石田尚志監督『フーガの技法』(2001年)でした。この作品はタイトルからも分かるように、バロック音楽を代表する作曲家J.S.バッハの『フーガの技法』より、「1番」「11番」「未完のフーガ」の3曲を映像化したものです。音楽をアニメーションとして映像化する試みは、ハンス・リヒターが監督した『リズム21』(1921年)や、ディズニーの長編『ファンタジア』(1940年)など、多くの作例がありますが、石田のこの作品は、通常のアニメーション制作では必須とされる絵コンテを起こさず、楽譜を読み解き直接、作画作業を行っています。そのためバッハ『フーガの技法』をアニメーションで演奏する、といった試みになっていることにも特色があります。

 本シリーズ2本目のアニメーションは、『フーガの技法』から5年後に制作された、辻直之監督『影の子供』(2006年、シリーズ第15弾)です。『フーガの技法』同様、作者自身の手描きによるドローイング・アニメーション作品である点は共通しますが、作品の趣は大きく異なります。辻のアニメ盾.jpgーションは、
画用木炭を用いて一枚の紙にまず起点となる絵を描き、それを消して次に続く絵を描いては、また消し・・・、という作業を繰り返すことで動きを作り出しています。画面には、アニメーションの運動の軌跡が反映されるとともに、存在と不在が併存するような、そこはかとない寂寥感が漂っていることも、辻直之作品の独特の魅力になっているといえるでしょう。

 大山慶監督『HAND SOAP』は、この2本に続くシリーズ3本目のアニメーション作品となるものです。現在、個人制作によるアニメーションは、デジタル・ビデオカメラやコンピューターが普及し、フィルム時代にくらべ制作が容易となり、多くの作り手が登場し作品が発表されて、活況ともいえる状況が生み出されています。しかし多くの作品が、コンピューターを導入していても、制作プロセスの簡略化や合理化に留まっていたのに対し、大山作品では人間の皮膚を接写した画像を取り込み、それを細かく分解しコラージュ的に再構成することで、登場するキャラクターの肌の質感を作り出すといった、より踏み込んだ創造的なアプローチを試みている点に特色があります。新しい技術を用いて、過去にはなかった表現に踏み込んでゆくという意味での現代性が、『HAND SOAP』の国際的な舞台での評価につながっている様に思われます。

 アニメーションという共通の手法を持ちながら、三者三様、それぞれが作り出した独自の表現世界を、この機会にぜひお楽しみください。会場ではオランダでグランプリを受賞した際に授与された記念の表彰楯(写真参照)など、貴重な資料の展示も行います。既に『HAND SOAP』をご覧になっていらっしゃる方にも、作品への興味がより深まるでしょう。

(T.E)

 

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AFF15_2.jpg11月19日(金)からはじまった「第15回アートフィルム・フェスティバル」も、いよいよ終盤に入りました。昨日(12月2日(木))まで上映していたプログラム「映像と音楽のコレスポンダンス」では、映画ファンのみならず、音楽やダンスに興味のある方にも、会場に足を運んでいただけた様子が伺え、ジャンルをクロスオーバーさせて、表現の新しい可能性を追求してきた文化情報センターの活動が、だんだんと浸透していっているのではないか、という思いを強くしました。

いよいよ本日(12月3日(金))より、フェスティバルの最後を飾るプログラム「オリジナル映像作品新作プレミエ&アンコール」がスタートします。「オリジナル映像作品」は、先日も大山慶監督『HAND SOAP』(2008年、シリーズ第17弾)が、11月19日(金)-23日(火)にエストニア・タリン他で開催された「第12回アニメーテッド・ドリームス2010」でグランプリを受賞し話題となりました。“身体”を統一テーマに設定して、実験的な映像作品を毎年一本、継続して制作する、全国的にも例のない、当センターのユニークな創作事業です。

プログラムの初日である3日(金)は、アンコール上映として、今年6月1日(火)に103歳で逝去された舞踏家・大野一雄を記録した、ダニエル・シュミット監督のドキュメンタリー『KAZUO OHNO』(1995年、シリーズ第4弾)で幕開けします。独自の世界を確立したアーティストどうしが、互いに敬意を払い作り上げた、宝石のようなコラボレーション映像作品といえるでしょう。併せて上映する、本編では使用されなかったシーンをまとめた『ダニエル・シュミット、レナート・ベルタ撮影による未使用フィルム』(1995年)は、貴重な映像記録です。岩手に伝わる民俗芸能である鬼剣舞を記録した三宅流監督『究竟の地-岩崎鬼剣舞の一年』(2007年)は、人間にとって身体表現とは、踊ることとは何かという本質的な問いを追求するという点で、ぜひ引き続いてご覧頂きたい作品です。


4日(土)、5日(日)には、いよいよシリーズ最新第19弾、柴田剛監督『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(2010年)が初公開されます。人間にとって音とは何か、音が人間の身体や精神に及ぼすものとは何か、という発想から出発した実験的な意欲作が、皆さんの前にその全貌を明らかにします。柴田監督が学生時代に手掛けた『NN-891102』(1999年)も、併せて上映します。原爆を題材に、架空の、もう一つの日本を描き出した16mmフィルム作品で、学生の映画という枠組みを越えた大作として当時、話題になりました。今回が、当地での初上映という、これも貴重な機会となります。

gui_aiueosu_2.jpg5日(日)には柴田監督の来場も予定しており、作品についてのトークや、質疑応答の時間も設けたいと考えています。皆様のご来場をお待ちしております。上映スケジュール等は、愛知芸術文化センターのホームページをご覧ください。

(T.E)

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 10月31日(日)に「あいちトリエンナーレ2010」がフィナーレを迎え、すでに2週間以上が過ぎていますが、いまだ興奮冷めやらず、その余韻に浸っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。文化情報センターはトリエンナーレの「映像プログラム」の企画に協力しましたが、実験的な映像作品に初めて触れ新鮮な驚きを得た、といった観客の方々の声を聞くことが出来ました。

 そうした皆様にぜひご覧いただきたいのが、本日(11月19日(金))からスタートする「第15回アートフィルム・フェスティバル」です(会場:12階アートスペースA)。「第15回」とあるように、文化情報センターでは以前より映像事業を行っていました。それは1992年の開館時にまでさかのぼることが出来、文化情報センターは一貫して商業ベースでは上映の難しい実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリーやアニメーションなど、いわゆるアート系の作品紹介を精力的に進めてきました。

 「アートフィルム・フェスティバル」は、これら映像ジャンルの枠組みを取り払い、映像における実験性の追求を主眼に置いて、多彩な作品を取り上げるとともに、音楽やダンスなど周辺領域との関係も重視して、これら異ジャンルの越境や融合といえる作品にも光を当ててきました。

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高木正勝『Ymene0:euran(イメネロ:エウラン)』2001年

 ピョートル・カムラーが監督、リュック・フェラーリが音楽を担当し、過去とも未来ともつかぬ独自のSF的イメージを生み出したアニメーション『クロノポリス』(1982年)や、音楽と映像の両面に渡って活躍するアーティスト高木正勝の新作『Ymene』(2010年)、映画監督の七里圭がクラムボン(音楽)、黒田育世(ダンス)と組んだユニークなプロモーション・ビデオ『ASPEN』(2010年、2バージョンを上映。その内の一つは未公開版という貴重な機会です!)など、今、ジャンル間の交流が活性化していることを実感できるプログラムとなっています。去る11月7日(日)に「第14回オランダアニメーション映画祭」でグランプリを受賞した、大山慶『HAND SOAP』(2008年、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第17弾)といった話題作の上映もあります。映画ファンのみならず、多くの方々のご来場をお待ちしております。
 上映スケジュール等、詳細は愛知芸術文化センターHPをご覧ください。


追記 「あいちトリエンナーレ2010」映像プログラム関連のお知らせを一つ。長者町会場に出品した、若手アニメーション作家3人の姿を追ったドキュメンタリー番組が、NHK教育TVの「ETV特集」で放送されます。タイトルは「ぼくらの夢の物語」、放映日時は11月21日(日)22時より23時(60分)です。
「トリエンナーレ」HPのニュース欄もご参照ください。
全国放送ですので、会場にお越しになれなかった方にもご覧いただければと思います。

(T.E)
 

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明日7月27日(火)より、「アート・アニメーション・フェスティバル2010」が開催されます。2007年に始まったこの上映会では、昨年「イメージフォーラム・フェスティバル2009」に出品を果たした山田園子や、今年「あいちトリエンナーレ2010」への出品が決まった岡田昭憲、有吉達宏らを取り上げ、近年活性化している日本の自主制作アニメーションのフィールドから、新しい作家の発掘と紹介を行ってきました。


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▲プリート・パルン『地球は本当にまるいの?』(1977年、2006年デジタルリマスター版)2点とも

今回のプログラムのメインとなるのは、エストニアの作家で、ヨーロッパ・アニメーション界のゴダールとも賞賛される、プリート・パルンの特集です。今年は昨年までとはやや趣を変えて、アート・アニメーションの世界で巨匠とされる作家をまとまった形で紹介することになります。デビュー作『地球は本当にまるいの?』(1977年、2006年デジタルリマスター版 *チラシでは邦訳タイトルを『世界は本当にまるいの?』としましたが、直前に変更になりました。ご了承ください)から、最新作『雨のなかのダイバー』(2010年、共作:オルガ・パルン)まで、主要な作品を集め、さらに制作の背景を伺えるドキュメンタリー2本を加えており、入門者にとっても最適なプログラミングになっています。

他に、昨年上映し好評だった「世界アニメーション映画史」の続巻に当たる第11―20巻(当センター・アートライブラリー所蔵)や、昨年開催した「第3回愛知デジタルコンテンツコンテスト」一次審査通過作品の上映も行います。

上映スケジュール等、詳細は当センターのホームページをご覧ください。
皆様のご来場をお待ちしています

(T.E)

 

当・愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品の『HAND SOAP』で、5月5日(水)に「オーバーハウゼン国際短編映画祭賞」を受賞し、続く5月18日(水)-23日(日)にチェコで開催された「アニフェスト国際アニメーション映画祭2010」でも、審査員特別賞を受賞して、今、注目を集めている大山慶監督のインタビューが、NHK国際放送「imagine-nation」で、本日、放映されます。

             ▼大山慶『HAND SOAP』(2008年)
HAND SOAP受賞.jpg「imagine-nation」は、近年、現代日本の独自の文化として認知されつつある、アニメ・マンガ・ゲームなどの最新情報を、国外に向け提供、発信しようという主旨の、海外放送用の番組です。そのため、海外でなければ視聴できないのですが、幸い国内でもホームページを通じて放送当日の内容を確認することが可能です。
NHKーWORLDのホームページで、右側の、NOW ON AIR という箇所に写るので、無料で見ることができます。)

同番組の「クリエーターズ・インタビュー」コーナーで5月26日(木)に放送されたものを、今回、「クリエーターズ・インタビュー」総集編として、再度、放映される運びとなりました。創作の核心について、監督自身が語る貴重な機会です

放映時間は未定ですが、HP上で今日、数回放映されるとのことですので、興味のある方は、ぜひチェックしてみてください

(T.E)
 

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6月11日(金)より、テーマ上映会「映像の学校」が始まります。この催しの特徴は、タイトルにも示されているように、ベーシックな映像表現の歴史と全体像を、計6日間の会期で把握できることにあるでしょう。今日、鑑賞する機会が少なくなった、D・W・グリフィス『散り行く花』(1919年)やバスター・キートン『セブンチャンス』(1925年)など、サイレント映画の代表的作品を、スクリーンで体験できることが見どころの一つです。

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                           ▲バスター・キートン『セブンチャンス』(1925年)

戦前と戦後の実験映画を橋渡しするような、歴史的な重要作品といえる、ハンス・リヒター『金で買える夢』(1946年)の上映も、貴重な機会といえるでしょう。当・愛知芸術文化センターが所蔵する、ナム・ジュン・パイク『グローバル・グルーブ』(1973年、共作:ジョン・J・ゴットフリー)や、ビル・ヴィオラ『砂漠』(1994年)など、ビデオ・アートの名作も登場します。

2009.jpg当センターのオリジナル映像作品からは、大山慶『HAND SOAP』(2008年)と、寺嶋真里『アリスが落ちた穴の中 Dark Märchen Show!!』(2009年)の2本が、リクエストの声に応えてアンコール上映されます。『HAND SOAP』は、5月5日(水)に「オーバーハウゼン国際短編映画祭賞」を受賞したことも話題になりましたが、引き続き5月18日(火)-23日(日)にチェコで開催された「アニフェスト国際アニメーション映画祭2010」で、審査員特別賞も受賞しました! アナログとデジタルを融合した先端的な映像表現を体感してください。さらに、次代を担う若手作家たちのフレッシュな作品を集めた〈愛知特別プログラム「愛知の新世代たち」〉では、新しい出会いが待っているでしょう。

              

                                                  
「映像の学校」の会期は、6月11日(金)-13日(日)、22日(火)-24日(木)です(上映スケジュールは当センターホームページをご覧ください)。16日(水)-20日(日)には、国内最大級の映像アートの祭典「イメージフォーラム・フェスティバル2010」を開催され、映像芸術を集中的に鑑賞する最良の機会となります。ご来場をお待ちしています。

(T.E)

 

愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品最新第18弾『アリスが落ちた穴の中 Dark Mächen Show!!』がアートライブラリーでご覧いただけるようになりました!

寺嶋真里監督による「不思議の国のアリス」をモチーフとした映像作品です。
パフォーマンス・ユニットRose de Reficul et Guiggles(ロウズ ド レフィクァル エ ギグルス)が、不思議の国の城で暮らすロウズ姫とギグルス王子役で主演し、特別出演として、マジシャンとして活躍し、俳優として蜷川幸雄作品の舞台にも立っているマメ山田が、不思議の国に通じる穴へ落ちてしまうアリスを演じるという、豪華な組み合わせの作品です。
上映会以外では当館でしかご覧いただけません。どなたでもご利用いただけますのでぜひお気軽にご来館ください。

映像資料記帳台の横では、あわせてご覧頂きたい本をご紹介していますので、どうぞこちらもご利用ください。
 アリス.JPG

(ライブラリースタッフT.K)

 「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」シリーズ第17弾、大山慶監督『HAND SOAP』(2008年)が、「オーバーハウゼン国際短編映画祭賞」を受賞しました。

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大山慶監督 『HAND SOAP』 (2008年)

 『HAND SOAP』は、4月29日(木)-5月4日(火)にドイツで開催された、「第56回オーバーハウゼン国際短編映画祭」のインターナショナル・コンペティション部門に出品されていましたが、映画祭の選考委員より“極めて独特なテクニックを用いて、思春期の少年の心理的・身体的経験を、印象的なイメージとして表現した”との高い評価を得、この賞を授与されました。「オーバーハウゼン国際短編映画祭賞」とは、インターナショナル・コンペティションの審査委員による審査結果を踏まえた上で、上映作品の選出を行う映画祭選考委員が、特に注目すべきであると判断した作品に対して与えてきた賞です。コンペでのグランプリには及ばないものの、国際映画祭での受賞自体、特筆すべき出来事で、喜ばしいことだと言えるでしょう。
 今回の受賞は、昨年10月31日(土)-11月29日(日)に開催された「ヨコハマ国際映像祭2009」で、コンペティションの第2位に相当する「優秀賞」に続くものです。「ヨコハマ」以後、国内・外の映画祭や特集上映会への出品が続く『HAND SOAP』ですが、次の上映は6月7日(月)-12日(土)にフランスで開催される、「アヌシー国際アニメーション映画祭2010」です。世界最大規模とも呼ばれる老舗のアニメーション映画祭で、どのような反応があるか、興味を惹かれるところですね。

 なお、『HAND SOAP』は、当センター1階のアート・ライブラリーにあるビデオ・ブースで、リクエストによりモニターでの鑑賞が可能です。世界が評価した先端的な映像作品を、気軽に楽しむことが出来ます。ぜひ、ご利用ください。

「オーバーハウゼン国際短編映画祭」公式サイト
http://www.kurzfilmtage.de/

(E.T.)

 「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」として制作された、大山慶監督『HAND SOAP』(2008年)が、4月29日(木)―5月4日(火)にドイツで開催される、「第56回オーバーハウゼン国際短編映画祭」のインターナショナル・コンペティション部門に出品されます。この映画祭は、1954年に始まった、世界で最も歴史のある短編映画の国際映画祭として知られています。
 「オリジナル映像作品」としては、1995年に天野天街監督『トワイライツ』(1994年)が、1996年にダニエル・シュミット監督『KAZUO OHNO』(1995年)が、それぞれ出品されています。特に『トワイライツ』は、「オーバーハウゼン」でグランプリを受賞し、映画初監督作品が最高賞を獲得したという快挙となり、当時、大いに話題になった、縁のある映画祭です。この時期、日本はゴールデン・ウィークという大型連休に当たりますが、ドイツも春の最も過ごしやすい時候なので、映画祭自体がとても気持ち良く楽しめる催しになっています。

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(▲左から、『トワイライツ』(1995年 天野天街、スチル写真撮影:羽鳥直志)、『HAND SOAP』(2008年 大山慶)

 『HAND SOAP』の国際映画祭出品の話題が続きます。6月7日(月)―12日(土)にフランスで開催される、「アヌシー国際アニメーション映画祭2010」への出品も決定しました。「アヌシー」は1960年に始まった、国際アニメーション映画協会(ASIFA)公認の映画祭で、今年、第50回を数え、アニメーションの映画祭としては世界最大規模を誇るものと評価されていますが、この歴史と権威のある映画祭に実験的なニュアンスを持つ『HAND SOAP』が出品されることは、特筆すべき出来事だと言ってもいいでしょう。国内外で注目される『HAND SOAP』ですが、今後、どのような上映の機会が得られるかにも、引き続き注目してください

「オーバーハウゼン国際短編映画祭」公式サイト
http://www.kurzfilmtage.de/

「アヌシー国際アニメーション映画祭」公式サイト
http://www.annecy.org/home/

(T.E.)

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 2月19日(金)から28日(日)まで、東京都写真美術館で「第2回恵比寿映像祭」が開催されます。昨年の「第1回」には、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品より『フーガの技法』(監督:石田尚志、2001年、シリーズ第10弾)、『影の子供』(監督:辻直之、2006年、同第15弾)、『究竟の地―岩崎鬼剣舞の一年』(監督:三宅流、2007年、同第16弾)、『HAND SOAP』(監督:大山慶、2008年、同第17弾)の4本が上映された、縁のある催しです。

 東京都写真美術館全館を使用し、展示や上映の他、トークやパフォーマンスなども行う、総合的な映像の祭典として注目を集めたこの企画に、今年は当センターでも作品を所蔵し、しばしば上映を行っている、映像アートのパイオニアである、ジョナス・メカスとナム・ジュン・パイクが、展示部門に出品しています。
 


パイク「グローバル・グルーブ」1ブログ用.jpg

 その他にも、20世紀最大の前衛的な音楽家で、当センターでも何度かその作品を演奏したジョン・ケージや、2008年に「gozoCinéをめぐって」を開催した詩人・吉増剛造も参加しており、文化情報センターの活動に関心をお寄せいただいている方々には、見逃せない催しといえるでしょう。
 会期は10日間とやや短めですが、展示は無料で鑑賞できるといった気軽さもあるので、東京へ行く機会のある方や、東京圏にお住まいの方は、一度、訪れてみてはいかがでしょう。
http://www.yebizo.com/
↑「恵比寿映像祭」のウェブサイトです。

*写真は、ナム・ジュン・パイク『グローバル・グルーブ』(1973年制作、共作:ジョン・J・ゴットフリー/文化情報センター所蔵)

(T.E.)

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  昨年、「ヨコハマ国際映像祭2009」CREAMコンペティション優秀賞を受賞した、大山慶監督の『HAND SOAP』(2008年)が、現在、東京・六本木の国立新美術館で開催されている、「平成21年度〔第13回〕文化庁メディア芸術祭」で、アニメーション部門の審査委員会推薦作品に選ばれ、出品されています。メディアアートから、映像、マンガ、ゲームに到るまで、幅広くメディアを用いた現代の芸術を対象とするこの祭典に、実写による映像をコンピューターに取り込みコラージュし、独特の質感を作り出す実験を試みたこの作品が選出される、ということは、大変、喜ばしい出来事です(会期は、2月14日(日)まで)。
→文化庁メディア芸術祭〔http://plaza.bunka.go.jp/festival/

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(▲大山慶『HAND SOAP』(2008年))


 愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品を担当した作家たちの活躍を伝える話題が続きます。東京都写真美術館の「躍動するイメージ。 石田尚志とアブストラクトアニメーションの源流」展に、『フーガの技法』(2001年)を出品した石田尚志監督が、3月3日(水)から開催される「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」に参加します。この催しは、国立新美術館が、国内外で今、最も注目すべき活動を展開している作家たちを選抜し、紹介する企画展で、石田監督はO JUNや斎藤ちさとらと共に、その一人に選ばれたことになります。石田監督の活躍は、美術、映像、アニメーションと、軽快にジャンルを横断しながら、愛知から発信した波動が次第に広がって行く・・・、そんな感じがします。
→国立新美術館〔http://www.nact.jp/

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(▲オリジナル映像作品『フーガの技法』(2001年制作、監督:石田尚志)上映の様子(豊田市美術館、2009年11月))

アートの森ロゴ.jpg なお石田監督は、「あいちアートの森 豊田プロジェクト 知覚の扉II」(会期:2月20日(土)―3月14日(日))にも出品します。大正時代の料亭「喜楽亭」を舞台に行われるこの展示では、欄間や床の間などの細部に装飾が施された、独特の雰囲気を持つ空間をどう変容させるのか、興味を惹かれます。東京へはちょっと遠いな、という方にも、ぜひご覧いただきたいと思います。

(T.E)

 

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 現在、東京都写真美術館で開催中の「躍動するイメージ。 石田尚志とアブストラクトアニメーションの源流」展に、当センター・オリジナル映像作品として制作された、石田尚志監督『フーガの技法』(2001年)が出品されています。

 この展覧会で注目したいのは、この作品本来のフォーマットである16mmフィルムにより、展示室で常時、上映が行われていることです。美術展に映像作品が出品される場合、長時間、映写機を廻し続けることが困難なため、フィルム作品の場合、ビデオに変換して上映されるケースが多く、その点でこれは画期的なことです。(とは言うものの、映写機のコンディションによっては調整のため休止することもある様です。こうしたことは機械には付きものなので、そんな時は温かい心で見守ってほしい、と思います。)

                              →「躍動するイメージ。」展チラシ

 昨年、豊田市美術館で行われた屋外での上映では、夜間、美術館の水面に映像が映り込むことを計算した映写で、『フーガ』のこれまでになかった側面を引き出した石田監督だけあって、今回の展示も見応えがあります。特に作家が所蔵する大量の原画が同時に展示されていることは、アニメーションの制作に数多くの画が必要であることを知っている人も、改めてその膨大な枚数とそこに費やされた労力を実感できる、貴重な体験となるでしょう。写真美術館所蔵の映画前史の様々な装置や、オスカー・フィッシンガーら抽象アニメーションの先駆者の仕事と合わせた展示構成は、アニメーションの原理や歴史を知るという意味でも意義のあるものです。

 会期は2月7日(日)までありますので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。


写美・石田展入口.jpg
↑東京都写真美術館入口(最寄駅は恵比寿です)

(T.E)

G.jpg本日12月15日より、芸術文化センター・アートスペースGで、ニブロール映像インスタレーション 『ハンノウ』が始まりました!
あいちトリエンナーレ2010にて発表する新作へ向けた、新作インスタレーション展示です。

 日時:2009年12月15日(火)―20日(日) 10:00―18:00 
     (※15日は13:00から、20日は14:00まで)
 会場:アートスペースG
 入場無料

昨日より、会場準備が進められています。準備中の部屋の中をちょっとのぞいてみましょう。

入ってすぐの部屋には、モニターや写真がズラリと並べられているようです。この部屋だけでもいろいろ楽しめてしまいそうな感じがしますね

モニターや写真がずらり。.jpg

さらに一歩奥の部屋へ進んでみると、どうやら部屋を真っ暗にしているようです・・・

こちらの部屋は真っ暗に。.jpg

ニブロール矢内原さんはいろんなデザインのハート型を、ひとつひとつ並べています
こちらはどのように使われるのでしょうか。楽しみですね。

細かい作業が行われています。.jpg

どんなふうになったのかは、ぜひご来館いただいてお確かめ下さい。

ニブロール映像インスタレーション、12月20日(日)14:00までです。お見逃しなく

(M.O)

12月15日から、アートスペースGで始まるニブロールの新作映像インスタレーション、楽しみにお待ちいただいていますでしょうか?
あいちトリエンナーレ2010にて発表する新作へ向けた、新作インスタレーションなので、内容はまだご紹介することができません

かわりに東京で発表されたニブロール公演風景をお見せします。
ニブロールの振付家の矢内原美邦さんが台湾のダンサーに振付した小品が「アジア舞台芸術祭2009東京」で上演されました。
こうしたパフォーマンスでも、しっかり映像が登場しています。
パフォーマンスが行われていないときにも、写真左のモニターには、ニブロールの映像作品が映し出されていました


東京芸術劇場のB1Fロワー広場にてnibroll.jpg

こちらがアーティストのお二人 矢内原美邦さんと高橋啓祐さんyanaihara.jpg

愛知では、ブラウン管タイプのモニタを使用するということなので、スタッフが清掃中です。TV 001.jpg

アーティスト曰く、この旧式のTVモニタがイイんだそうです。
このコたちが、どんな形に料理されるのか楽しみですね!

(E.K.)

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 11月19日(木)より、「第14回アートフィルム・フェスティバル」が始まります。冬の映像イベントとして定着してきたこの催しですが、今回は1990年代より映画制作の現場に導入されるようになったデジタル・ビデオが、単なる機材面の変化に留まらず、映像表現の本質に深く関わっているものではないか、という考えに立ち、1960から70年代の初期ビデオ・アートの貴重な作品から、近年、ハイ・クオリティな作品が多く登場している自主制作映画やホーム・ビデオなど、新たな動向までを俯瞰的にとらえます。

 この他、ジャン・ルーシュ、アラン・レネ、クリス・マルケルといった映画史にも名を残す重要作家たちの作品を集めた〈フランス・ドキュメンタリーの精華〉や、短編という形式が、作家の個性が際だつドローイング・アニメーションから社会風刺的な実験映画まで、多様な表現を生み出していることを照らし出す〈フランス発!新世代ショートフィルム〉など、多彩なプログラムで構成されています。当センターが一年一本のペースで継続している「オリジナル映像作品」の最新第18弾となる、寺嶋真里『アリスが落ちた穴の中 Dark Märchen Show!!』(2009年)の初公開も行われます


『犬たちの記憶』.jpg
*写真:12月5日(土)〈フランス発!新世代ショートフィルム〉で上映する、シモーネ・マッシ『犬たちの記憶』(2006年)


 また今回、テーマ上映会「実験映画の長編&大作」などで好評だったスタンプ・ラリーに代わり、新たな観客参加の企画として、「あいちトリエンナーレ2010プレイベント 小林はくどうワークショップ『ラプス・コミュニケーション』2009年版」が行われます。単にビデオを撮ったり、観たりといったことに留まらない、ユニークな映像体験になるでしょう。

 オープニング上映作品『見るということ』(企画・松本俊夫、2009年)に合わせ、出品作家が来館するといった情報もあり、当日にならないと判らないサプライズ・ゲストが登場するかもしれません

 ぜひ会場に足を運んでください

(T.E)

 

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 大山慶監督『HAND SOAP』(2008年)の「ヨコハマ国際映像祭2009」優秀賞受賞に続く、「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」に関する朗報です。

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 三宅流監督『究竟の地―岩崎鬼剣舞の一年』(2007年)が、「山形国際ドキュメンタリー映画祭2009」の「ニュー・ドックス・ジャパン」部門に選出され、10月13日(火)に上映されます究竟の地1.jpg。「山形」では1997年に、大木裕之監督『3+1』(97年)が「インターナショナル・コンペティション」に選出されたことがあり、「オリジナル映像作品」の上映はそれ以来となります。「山形」は国内では最大級の映画祭の一つで、国際的な評価も高く、今年は世界各国から2,000本に及ぶ作品が寄せられ選出されているので、これは快挙といってもいい喜ばしい出来事です。

 ドキュメンタリーは現在、劇映画や実験映画、個人映画などとのクロスオーバーが進み、非常に多様で、多彩な作品が生み出されているのが現状です。こうした状況の中で、対象に向き合い記録することの重要性が、逆に際だってきている、という動きも現れています。岩手に伝わる郷土芸能「岩崎鬼剣舞」を、じっくりと腰を据えて記録した『究竟の地』が、“映画の都”とも呼ばれる「山形」の地でどのように受け止められるのか、大変楽しみです。

 なお、「オリジナル映像作品」は、当センター1階のアートライブラリーにも収蔵されていますので、こちらもご利用ください。

(T.E)

 

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 愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品は、“身体”という統一テーマのもと、商業ベースでは実現が難しいアートとしての映像作品を、一年一本のペースで制作する創作プログラムです。この企画により作られた作品は、国内・外を問わず多くの上映機会を得ており、過去には『トワイライツ』(監督:天野天街、1994年)、『ボディドロップアスファルト』(監督:和田淳子、2000年)、『影の子供』(監督:辻直之、2006年)の3作品が主要な映画祭で受賞するなど、高い評価をいただいています。

 大山慶監督『HAND SOAP』(2008年)は、昨年11月に開催した「第13回アートフィルム・フェスティバル」(主催:愛知芸術文化センター)で初公開されました。人間の皮膚のテクスチャーなど、クローズアップ撮影した写真をコンピューター上でコラージュし、そこへ陰影をつけ一コマ一コマを描いていくという、大変手間のかかる手法により生まれた、これまでにない独特の映像の質感に、驚かされた方も少なくないでしょう。この作品はその後、今年2月から3月に東京都写真美術館の「第1回恵比寿映像祭」に出品されるなど、映像の現在を鮮烈に反映した重要な作品として注目を集めていました。


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 この注目の作品『HAND SOAP』が、「ヨコハマ国際映像祭2009」CREAMコンペティションの優秀賞を受賞するという、嬉しい知らせが届きました。この映像祭(会期:2009年10月31日(土)から11月29日(日)、会場:新港ピア、BankART Studio NYK、東京藝術大学大学院映像研究科馬車道校舎、他)は、今年、開港150周年を迎える横浜が、「映像文化都市・横浜」の新たな取り組みとして立ち上げた、現代美術、メディアアート、CG、アニメーション、映画、写真など、様々な映像を対象とした、映画祭でも現代美術展でもない、新しい国際的なフェスティバルとして、関係者の間で話題となっていました。ドキュメンタリー、実験映画、インスタレーション、パフォーマンス、オンライン作品など、世界中からエントリーされた総数992件より、コンペティションの第2位に相当する「優秀賞」を受賞したことは、『HAND SOAP』の完成度の高さを改めて示すものといえるでしょう。

 映像や現代アートに興味をお持ちの方は、今年、秋の横浜で、『HAND SOAP』を始めとする映像表現の現在に触れてみるのも面白いでしょう。ちなみに、『HAND SOAP』は当センターのアートライブラリーにも収蔵されていますので、こちらもご利用ください

(T.E)

 

 8月2日から開催中の上映会「アート・アニメーション・フェスティバル2009」。初期のモノクロ・サイレントのアニメーションから、若手による最新作まで、約200作品を上映中。1作品1分から5分ほどの作品が大部分なので、これだけたくさんになりますが、残念なことにどの作品もたった1回しか上映しません。だから、ぜひ何度も足を運んでほしい。
 ということで、ポイントカードを作りました。上映会を見に来ると、1日1ポイントがもらえます。
会場入口でスタンプを押してもらってくださいね.jpg

 そして3ポイントたまると、ささやかなプレゼントが!映写機をモチーフにしたスタンプです.jpg

 プレゼントは3ポイントで1点、6ポイントになるともう1点もらえます。そして全日通っていただいた方には、さらに豪華なプレゼントを考えています。

 ここでこっそりプレゼントを紹介します。それは、かわいい『KUROMAME』のポストカード(左)やシール(右)です! (なお、『KUROMAME』シリーズの上映は、8月8日(土)です。)
かわいいKUROMAMEグッズ.jpg

 多数用意していますが、数にかぎりがあるので、万一なくなってしまったら、愛知芸術文化センターの広報誌「AAC」のバックナンバーなどになります。

 ぜひぜひご来場いただいて、アニメーションを楽しんでいただくとともに、プレゼントをゲットしてくださいね。


(A.F)

 8月2日(日)より、「アート・アニメーション・フェスティバル2009」が始まります。6月に開催した「実験映画の長編&大作」にも、多くの熱心な観客の皆さまにお越しいただきました。映画館では観ることの出来ない、実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリーなど、インディペンデント(自主制作)系映像作品の鑑賞の場として、12階のアートスペースAが定着してきたのでは、と思える嬉しい反応です。

アート・アニメーション・フェスティバル2009.jpg
  映像作品の自主制作は、デジタル機器の普及により、以前にくらべて高画質の映像が簡単に撮影・編集できるようになり、ハイ・クオリティな作品が多く登場するなど、活性化しています。制作に膨大な手間と時間の掛かるアニメーションも同様で、近年、多くの作り手が登場するようになりました。

  愛知芸術文化センターでは、90年代に石田尚志や辻直之ら優れた作家が登場してきた頃から、こうした動向に注目してきましたが、この上映会では大須賀政裕、岡田昭憲、Qwi Film、山田園子、若見ありさといった、これに続く作家たちの作品も視野に入れて、今回のプログラムを組んでいます。

 映像表現の、今、最も活き活きした動きに触れる絶好の機会です。皆様のご来場をお持ちしております

(T.E)
 

5月から開催しているはじめてアート講座の<ダンス>1回目では、新しいダンスの歴史を振り返りながら、コンテンポラリーダンスまで続く、エポックメイキングなアーティストたちの斬新な活動を紹介しました。
なかでもウィリアム・フォーサイスなど現代のコンテンポラリーダンスの作家に大きな影響を与えた重要な舞踊家としてご紹介したのが、アメリカのスティーヴ・パクストンです。彼が1970年代に生み出した「コンタクト・インプロヴィゼーション」というダンス・メソードは、世界のダンス界のみならず、アートや一般の方のダンスセラピー(治療)の世界にも大きな影響を与えることになりました。
現在、このスティーヴ・パクストンの初めての本格的な展覧会が山口情報芸術センターで開催されています。先日そのプレヴューに参加してきましたので、その様子を写真で紹介します。
山口情報芸術センター.jpg
↑山口情報芸術センターを入ってすぐの所には、パクストンの映像が大きく映されています。


展示風景「背骨のマテリアル」
5つのスクリーンに囲まれたインスタレーションは、パクストン氏やダンサー、CGで合成された身体映像などが映し出されます。映像の製作にはベルギーの映像作家が協力。最新のテクノロジーを使って、最古の自然といわれる「身体」を考える試みです。
「背骨のマテリアル」展示風景.jpg


「背骨のマテリアル」について説明するスティーヴ・パクストン氏の話は、身体の本質へと・・・。次々に、興味深い言葉が並びます。
「動いていないと思っているけれども、常に身体は微細に動いている」
「私たちが認識している身体の範囲はとても狭い」
「その感覚はいつでも耕すことができる」・・・・・・・・・・・・。
スティーヴ・パクストン氏.jpg


同時に開催されていた関連イベントの数々「イメージとしての身体」
その中には、愛知芸術センターでも、<ダンスオペラ>『青ひげ城の扉』で、お馴染みのアーティスト、アレッシオ・シルヴェストリンによるインスタレーション『skinslides』がありました。この作品は、愛知県出身の大脇理知さんとアレッシオ、さらに音楽家の大友良英さんによるコラボレーション作品です。そして、愛知芸術文化センターのオリジナル映像も製作したことのある、勅使川原三郎さんの最新の映像作品もありました。
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さらに、展覧会のプレビュー後、近くのスタジオで大脇理知さんとやはり関連展示作品『Pascal pass scale』の出品作家の高嶋晋一によるパフォーマンスも開催され、センターに訪れた人たちが大移動してパフォーマンスを観賞。
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さらに、やはり講座の中でお話したマルチ・メディア・アーティストの元祖<ダムタイプ>のアーティストである高谷史郎さんにお会いしました。山口情報芸術センターのエントランスでポーズを決めてもらいました
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展示、公演の詳しいレポートはこちらからご覧ください。
アドレスリンクhttp://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-osaka/nagoya0906a.html

(E.K)

 6月14日(日)17:00より、愛知特別プログラム「あいちの新世代たち2009」の上映が行われます。このプログラムは同時期の6月17日(水)から21日(日)まで開催する「イメージフォーラム・フェスティバル2009」と連動したもので、同フェスティバルの一般公募部門「ジャパン・トゥモロウ」への応募作品より、愛知県在住・出身作家の秀作をセレクトして上映するものです。
 当初、このプログラムは4作品の上映を予定していましたが、その後、出品交渉を続けていた作家からのOKが得られたので1作品が追加され、最終的には、以下のとおり5作品を上映することになりました。

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横井正樹『countdown』2009年、ビデオ、8分

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亀山千尋『フィクションなファクト』2008年、ビデオ、11分

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林一嘉『あい』2008年、ビデオ、10分

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岡田昭憲『親愛なるアピタ様へ』2009年、ビデオ、12分

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ユクタケ“カトウ”シンペイ『Jaaja/YAN YAN』2008年、ビデオ、1分 *追加上映が決まった作品です

 近年、映像の世界ではデジタル化の進展によって、高画質の映像が一般レベルでも比較的容易に撮影できるようになりました。それにともない自主制作による映像作品のクオリティも全般的に向上していて、これらの作品は現在、映像表現のヴィヴィッドな動きとして見過ごせないものになっています。この機会に映像表現の新しい動向に触れてみてはどうでしょう。ご来場をお待ちしております。

(T.E)

[ 映像 ]

 6月12日(金)から14日(日)、23日(火)から25日(木)の6日間に渡り開催する、テーマ上映会「実験映画の長編&大作」の上映プログラムが決定し、上映スケジュールをホームページ(HP)で公開しています。チラシの作成には、デザインや印刷などの作業が必要なので、時間が掛かってしまうのですが、決定とほぼ同時に公開できるのは、HPの大きな利点ですね。(ちなみに、17日(水)から21日(日)には、映像アートの祭典「イメージフォーラム・フェスティバル2009」を開催します。この時期、芸文センターでは約2週間に渡り実験映画を集中的に鑑賞できることになる訳です。)

 毎年6月には、初心者向けの実験映画入門といった主旨でテーマ上映会を開催していて、学生の方からシニア層まで幅広い年代の方々に会場にお越しいただいています。昨年は「実験映画&ビデオ・アート名画座」と題し、ルイス・ブニュエル『アンダルシアの犬』(1929年、協同脚本:サルバドール・ダリ)や、ルネ・クレール『幕間』(1924年)など、実験映画という枠組みのみならず、映画史上にもその名を刻んでいる、古典的な名作を上映し、私たちが予想した以上の反響があり、多くの方々に楽しんでいただくことが出来ました。

遠くを見れない男.jpg 今回の上映会タイトルは「実験映画の長編&大作」です。『アンダルシアの犬』にせよ『幕間』にせよ、10分前後の上映時間で、ストーリーのない、抽象的な作品というのが、実験映画の一般的なイメージになっているのですが、今回はこうした常識に留まらない、30分から60分級のまとまった長さを持つ作品や、劇映画並みの90分級の作品、あるいは劇映画でも大作と呼んでいい3時間級の作品までをプログラムしています。短編では難しい、じっくり時間を掛けてテーマやモチーフを追求する面白さを、今年は味わってください。

 入門編とは言っていますが、愛知初公開となる作品も含んだ、これまで上映会にお越しいただいている方々にもお楽しみいただけるプログラムになっています。例えば、ピーター・ローズ『遠くを見れない男』(1981年、写真右)もこれまで上映機会のなかった作品です。スチル写真をご覧いただくと、実験映画のイメージを大きく逸脱するようなスケール感があると思いませんか?(→橋を吊す巨大なケーブル上部を、人が渡っているのです)
 これはぜひ、スクリーンで体験していただきたい作品です。

(T.E)

 2月20日(金)、東京都写真美術館で「恵比寿映像祭」が始まりました。「映画祭」ではなく「映像祭」をタイトルに掲げていることから分かる通り、この企画は上映プログラムとともに、美術館全館を使って、映像を用いたインスタレーション作品などの展示が行われ、立体的な構成となっています。

 都会で起こる男女の出会いを字幕のみで物語るチョン・ヨンヘ重工業の映像作品や、ミニチュアの映画館の中で起こる事件を鑑賞者がのぞき見するように目撃するジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー『ミリュエル湖事件』(1999年)、著名人の表情を固定カメラで撮影した、絵画と映画の中間に位置するようなアンディ・ウォーホル『スクリーン・テスト』(1964年より開始した連作)などの展示作品を観ると、1960年代から映像を用いる手法は多用化し、表現は多彩となって、今日、映像が単純に映画やTVといったメディアのみに留まるものではなくなっていることが体感できるでしょう。

 21日(土)には、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品より大山慶監督『HAND SOAP』(2008年、シリーズ第17弾)など、アニメーションの手法を用いた3作品が上映されました。上映に先立つ形でトークも行われ、上映終了後には、観客が監督に駆け付け、写真をコラージュして作られた画面の独特な質感について尋ねるなど、熱い反応がありました。

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 そしていよいよ、会期の最終日となる3月1日(日)には、三宅流監督『究竟の地 ― 岩崎鬼剣舞の一年』(2007年、シリーズ第16弾)が上映されます。岩手県に伝わる「岩崎鬼剣舞」の一年の営みを取材したこのドキュメンタリーでは、地域社会が一体となってこの民俗芸能を楽しみ、育んでいる、人間たちの濃密な関係に触れることが出来ます。21日のプログラムと併せると、“身体”を統一テーマに設定することから生まれた、シリーズの持つ広がりと奥行きも感じられるでしょう。東京圏にお住まいの皆様、この機会にぜひご鑑賞ください!

(T.E.)

 

 2月20日(金)から3月1日(日)まで、東京都写真美術館で開催される「恵比寿映像祭」に、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品より『フーガの技法』(監督:石田尚志、2001年、シリーズ第10弾)、『影の子供』(監督:辻直之、2006年、同第15弾)、『究竟の地 ― 岩崎鬼剣舞の一年』(監督:三宅流、2007年、同第16弾)、『HAND SOAP』(監督:大山慶、2008年、同第17弾)の4本が選出され、上映される運びとなりました。

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 東京で当センターのオリジナル映像作品がまとまった形で上映されるのは、2000年7月に渋谷のアップリンク・ファクトリーで「90年代実験映画の一断面 ― 愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品(選)集」と題したプログラムで、『T-CITY』(監督:勅使川原三郎、1993年、同第2弾)、『トワイライツ』(監督:天野天街、1994年、同第3弾)、『KAZUO OHNO』(監督:ダニエル・シュミット、1995年、同第4弾)、『フィリピンふんどし 日本の夏』(監督:キドラット・タヒミック、1996年、同第5弾)、『王様の子供』(監督:前田真二郎、1998年、同第7弾)、『ボディドロップアスファルト』(監督:和田淳子、2000年、第9弾)の6本が上映されて以来となるので、大変貴重な機会といえるでしょう。
 “身体”を統一テーマに、様々な作家が独自の解釈からユニークな作品を手掛けてきたこのシリーズの軌跡を、スクリーンでたどることの出来るチャンスです。東京にお住まいの方、お見逃しなく!(『フーガの技法』『影の子供』『HAND SOAP』は2/21(土)、『究竟の地』は3/1(日)上映)




 「恵比寿映像祭」は、第一回の総合テーマを“オルタナティヴ・ヴィジョンズ”に設定し、現代の多様化した映像と映像表現の状況を捉えようとする、意欲的な試みとして注目を集めている企画です。
〈公式ウェブサイト http://www.yebizo.com
 もちろんオリジナル映像作品は、当センター1階アートライブラリーのビデオコーナーで、リクエスト方式でご覧になることも出来ます。こちらもご利用ください。

(T.E.)

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 オリジナル映像作品のシリーズ第5弾として1996年に初公開した、キドラット・タヒミック監督『フィリピンふんどし 日本の夏』が、沖縄県立博物館・美術館の開館1周年記念展覧会「移動と表現」の関連イベントとして、2月7日(土)に上映されます。

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 キドラット・タヒミック『フィリピンふんどし 日本の夏』(1996年)

 この映画は、フィリピンの映画作家キドラット・タヒミックの日本との交流から生まれたもので、フィリピンの民族衣装バハグが日本のふんどしに似ているところから発想し、アジアの人間がマリリン・モンローなど西洋人のプロポーションをなぜ理想のものとするのか、といった疑問を追求してゆく、身体をめぐるユニークな比較文化論となっています。移民県としても知られる沖縄の、他国との交流から生まれた独自の表現に焦点を当て、“移動”というテーマを照らし出すこの企画展で取り上げるのにふさわしい映画だといえるでしょう。沖縄での上映では、同館の翁長直樹さんによるトークも併せて行われます。

 なおこの映画を始め、オリジナル映像作品は当センター1階アートライブラリーのビデオコーナーで、リクエストにより鑑賞することも可能です。こちらもぜひ、ご利用ください。

(T.E.)

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 現在開催中の「第13回アートフィルム・フェスティバル」(於:12階アートスペースA)も、いよいよ終盤です。29日(土)には、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品の最新第17弾となる、大山慶監督『HAND SOAP』が初公開されます。

 コンピューターを用いて実写映像など様々な素材をコラージュしたアニメーションという、膨大な手間の掛かる手法のため、これまでの作品数もけっして多くはない大山作品。『HAND SOAP』は、2006年のオムニバス映画『TOKYO LOOP』の一編『ゆきちゃん』以来の新作となります。
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 ↑大山慶監督 『HAND SOAP』(2008年)

 なお「アートフィルム・フェスティバル」は29日が最終日ですが、翌日の30日(日)には、アーティスト・トーク第6回「gozoCinèをめぐって」が、引き続き同会場で行われます。詩人・吉増剛造が2006年より始めている、映像を使った新しい仕事「gozoCinè」を、まとまって公開する初めての試みです。上映終了後には、詩人、批評家の與謝野文子、批評家の八角聡仁を交えたシンポジウムも行われます。

 新しいアートの動向に触れる貴重な機会を、お見逃しなく!

(T.E)

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愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品は、国内・外で多くの上映の機会を得ています。

辻直之監督『影の子供』は2006年のプレミエ上映以降、映画祭や特集上映会、企画展などで、しばしば上映されてきました。

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  ↑辻直之監督『影の子供』(2006年)

来る10/20(月)には、ニューヨークのアンソロジー・フィルム・アーカイブスで上映が予定されています。
アンソロジー・フィルム・アーカイブスといえば、日記映画の創始者であり、アメリカ実験映画を代表する作家ジョナス・メカスが創設した、インディペンデント映画の収集・保存を目的とした拠点的な施設なので、ここで上映されるのは大変喜ばしく、光栄なことです。
 
ちなみに日本国内では、東京国立近代美術館の「エモーショナル・ドローイング展」に出品されていて、13日(月・祝)まで開催しているので、こちらでもご覧いただけます。
 
(T.E)

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石田尚志監督の映像作品『フーガの技法』といえば、2001年に愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品として制作され、「アートフィルム・フェスティバル」などアートスペースで開催する上映会では何度も上映している人気作品です。その『フーガの技法』が、現在、愛知県美術館で開催中の「タイムスケープ」展に出品されています。

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映像作品が現代美術の展覧会に出品されることは、今ではそれほど珍しくなくなっていますが、オリジナル映像作品が愛知県美術館で展示されるのはこれが初めて。浅野弥衛や真島直子の絵画といっしょに『フーガ』が上映されているのを見ると、このアニメーションが膨大なドローイングの集積から作られていることに改めて気づかされます。

展覧会は10/5(日)までなので、興味のある方はお急ぎを!!

(T.E)