2013年はジュゼッペ・ヴェルディの生誕100年の記念年。このため、世界中のオペラハウスでヴェルディのオペラが例年以上に多く上演されています。ヴェルディは生涯に26のオペラを作曲しました。今回の上映会では、26のすべてのオペラを作曲順にたどっていくことにより、ヴェルディの音楽の深化の過程をたどることができます。
ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)
映像の舞台は、ヴェルディゆかりの生誕地(プッセート)近郊にあるパルマのテアトロ・レージョの上演が中心です。テアトロ・レージョでは、毎年ヴェルディ・フェスティバルが開催されており、イタリアの伝統的な舞台や演出を楽しむことができます。
Teatro Regio di Parma
今週で最後となる今回の上映会は、ヴェルディ後期から晩年にかけての6作品(『仮面舞踏会』、『運命の力』、『ドン・カルロ』、『アイーダ』、『オテロ』、『ファルスタッフ』)で、完成度の高い珠玉の傑作ばかりです。ドラマティックな展開、優れた心情の描写、華麗で美しいメロディーなど、音楽と演劇が見事に融合したイタリア・オペラの完成した姿が見られます。
その中でも、最晩年の作品『ファルスタッフ』は、喜劇の最高傑作です。シェイクスピアの原作をもとに、老騎士ファルスタッフをとりまくドタバタの喜劇が個性豊かな登場人物と美しい旋律に彩られています。ヴェルディは、「自分の楽しみのために作った」と言っていますが、晩年の達観した心情が反映されているかのようです。
『ファルスタッフ』を監修するヴェルディを描いたスケッチ。
フランスの週刊誌「L'Univers illustré」が1894年に掲載
さて、ヴェルディの遺産の一つが、「音楽家のための憩いの家 Casa di Riposo per Musicisti」です。世界でただ一つ、年老いた音楽家が共同で生活し、人生を全うするための家です。ヴェルディは、他の音楽家仲間の恵まれない最期を憂えて,晩年私財を投じてミラノに施設を建設しました。「私の最高傑作」とまで呼んでいます。かつての指揮者,ピアニスト,バイオリニスト,バレリーナなど,約50人の老音楽家たちが,現在も暮らしているということです。中でも世界最高のオペラハウス・スカラ座の舞台で活躍した人が多いとのこと。彼らが最後まで音楽家として尊厳を保ち、真剣に人生に立ち向かう姿は感動的です。なお、ヴェルディの墓もこの憩いの家に眠っています。
音楽家のための憩いの家(ミラノ)
ヴェルディのオペラの映像はアートライブラリーでたくさん所蔵しています。見逃した方は、こちらで見ることができます。
A.M