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シェイクスピア映像作品上映会開催中

2011年08月24日

シェイクスピアの戯曲は西洋文化の原点とも言えるでしょう。いまもなお、世界中で上演されています。まさに「古典の中の古典」です。今回、愛知県文化振興事業団主催の「子どものためのシェイクスピアカンパニー『冬物語』」上演に関連し、彼の全37作品をおおむね年代順に上映しています。

 

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ウイリアム・シェイクスピア(1557-1616) 

 

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最初の全集ファースト・フォリオ(1623年)に掲載された肖像画

 

◇ 今回の映像の特徴
今回の映像は、英国BBC放送が7年の歳月と35億円をかけて完成させた映像史に残る作品です。1978年、BBCはウィリアム・シェイクスピアの全戯曲を映像化するという偉業に乗り出しました。演劇界・TV界からは最高の 演出陣が集められ、当代きっての名優たちによる迫真の演技と原作への忠実な取り組みにより高く評価されています。日本でも以前NHKで放映され大変な評判を呼びましたので記憶に残っている方もいることでしょう。
 舞台や衣装、音楽も作品の時代をできるだけ忠実に表わし、見ているだけで当時にタイムスリップするようでわくわくしてきます。
また、せりふもすばらしい英語です。字幕も、シェイクスピアの戯曲翻訳に第一人者である小田島雄志氏監修によるもので、とてもこなれた日本語となっています。 
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◇ シェイクスピアとオペラ
シェイクスピアの戯曲は、文学や演劇にとどまらずに、オペラ・映画・バレエ・美術などさまざまなジャンルに大きな影響を及ぼしています。今回はオペラ・ミュージカルを取り上げ、ヴェルディやグノー、ブリテンのオペラとポーターのミュージカルなどもあわせて上映しています。また、映画では「ロミオとジュリエット」の現代版の「ウエストサイド物語」を取り上げました。原作と対比してみると、作曲家がシェイクスピアをどのように解釈しているかがわかり、大変興味深いことでしょう。
特にイタリアの大作曲家ヴェルディはシェイクスピアの戯曲が大好きで、「マクベス」「オテロ」「ファルスタッフ」という名オペラを残しています。この中では特に「オテロ」がお勧めです。(なお、ゲームの「オセロ」は黒人オセロと白人デズデモーナの波乱万丈の物語をイメージして名づけられたそうです。)「嫉妬」がテーマですが、ヴェルディは見事に人間の感情の変化を音楽で表現しています。演劇はせりふと身体表現によりドラマ(感情やストーリー)を表わしますが、オペラは、音楽(歌や楽器)がメインです。せりふも歌となり、音楽がドラマを表現します。オペラが深い感動を呼び起こすのは、台本の素晴らしさ以上に音楽の素晴らしさにあるのですね。一方では台本は単純化され、せりふはかなり省略されてしまうのはやむを得ないでしょう。原作を知らずにオペラを見ても十分楽しめますが、やはり原作に触れた上で、オペラを見ると、何気ない言葉にも深い意味があることが分かり、ストーリーの背景への理解が広がり、感動も深まります。


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ジュセッペ・ヴェルディ(1813-1910)      

 

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「ヴェネチアのオセロとデスデモーナ」 Théodore Chassériau (1819-1856)

 

また、アートライブラリーには、シェイクスピア関連の映像以外にも原作の戯曲、解説書などたくさんの資料があります。そちらもぜひご利用ください。
(A.M)