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バレエ「春の祭典」ミニトークを開催

2013年11月28日

 今年は、ストラヴィンスキーのバレエ「春の祭典」が初演されて100年です。

 文化情報センターでは、この記念年にあわせて、Co.山田うんによる「春の祭典」公演を行うとともに、「春の祭典」を特集したビデオ上映会を開催しています。
 11月9日にビデオルームで開催されたミニトークでは、当センターのダンス専門の学芸員である唐津絵理が、「春の祭典」の見どころやCo.山田うんの公演の特徴について熱く語りました。
以下、概要をかいつまんでお伝えします。

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バレエ・リュスについて **************

 「春の祭典」はバレエ・リュス(ロシア・バレエ)のために作曲されたバレエ音楽です。
 ディアギレフというロシアのプロデューサーが、ロシアの優れたダンサーを集め、西欧に新しい息吹を紹介しようとします。それ以前のバレエ音楽は、踊りやすいように作曲された単なる伴奏でしたが、ディアギレフは新しい音楽による完成度の高い作品を創り上げます。さらに一流の美術家にも舞台美術を依頼し、総合的な芸術作品を完成させます。
 バレエ・リュスに参加したアーティストは、ピカソ、シャガール、ラヴェル、サティ、ドビュッシー、シャネル、コクトー等、きらめく宝石のようですね。

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Leo Bakst (1866-1924). ''Portrait of Serge Diaghilev and His Nanny'' (1906).


「春の祭典」について **************

 「春の祭典」には明確な物語はありません。第1部「大地礼賛」では、春の到来を祝い、大地に感謝する踊りが踊られます。第2部の「犠牲」では、太陽神イアリロに捧げられるため、一人の処女が生け贄として選ばれ、祭壇の前で激しいダンスを踊り息絶えます。
 ストラヴィンスキーの書いた音楽は、複雑で不規則なリズムや変拍子を多様化したため、踊り手はリズムやカウントをとるのが大変でしたが、リトミック理論に想を得て、よる振付を行い、120回のリハーサルを経て完成しました。

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Igor Stravinsky as drawn by Pablo Picasso (dated 31 December 1920).


「春の祭典の騒動」について **************

 1913年5月29日、パリのシャンゼリゼ劇場で初演を迎えましたが、歴史に残るスキャンダルとなりました。ストラヴィンスキーの音楽は理解不能、ニジンスキーによる内股を強調し、大地を踏み鳴らすような斬新な振付に聴衆は度肝をぬかれ、ブーイングや叫び声でオーケストラの音が舞台に届かず、ニジンスキーは舞台袖でダンサーに大声で拍子を叫びました。
 なお、ニジンスキー版は、アメリカのミリセント・ホドソンとケネス・アーチャーの尽力により再振付されました。直筆のドローイングが展示してあります。(アートプラザカウンター横)

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Dancers in Nicholas Roerich's original costumes
 

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Sketches of Maria Piltz performing the sacrificial dance
 

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ホドソン氏のドローイングと手紙〔展示中〕


「結婚」と「日本の3つの抒情詩」について **************

 今回のCo.山田うん公演では、ストラヴィンスキーの「結婚」と「日本の3つの抒情詩」もあわせて上演します。〔愛知芸術文化センター委嘱〕
 「結婚」は1923年に完成された、ロシアの農民の結婚式をテーマとしたカンタータです。ニジンスキーの妹のニジンスカが振付けました。「結婚」の持つ幸福感や希望のような甘いイメージとは正反対の淡々とした抽象的な作品です。今回の上演では家族や友人などの群舞を排除し、新郎新婦の2人だけで踊ります。
「日本の3つの抒情詩」は、1913年に作曲された3つの和歌(山部赤人、源當純、紀貫之)による短い作品です。「春の祭典」と「結婚」をつなぐ大変重要な作品です。

 

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 ビデオ上映会では、「春の祭典」のオーケストラ演奏、バレエ、ドキュメンタリーなど異なった演奏や振付による多彩なメニューを用意しています。オーケストラでは、先日名演を披露したばかりのサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルの演奏がお勧めです。ラトルは打楽器奏者出身なので、リズム感が抜群です。バレエでは、ベジャールの振付がお勧めです。人間の欲望や愛と性、生への闘争を壮大に描いています。

http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/plaza/videoimg/13b_spring.pdf


 Co.山田うんの「春の祭典」公演は、12月5日〔木〕、6日(金)19時から愛知県芸術劇場小ホールで開催されます。詳細は次のアドレスをご覧ください。

http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/jishyu/2013/13spring/index.html

(AM)