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ワーグナー生誕200年記念 楽劇「ニーベルングの指輪」ビデオ上映会開催中

2013年02月14日

 2013年は、ドイツの音楽家リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)の生誕200年の記念年です。ワーグナーは、音楽・劇・文学を結びつけた総合芸術としての「楽劇」を創始し、その後のヨーロッパ文化に多大な影響を与えました。
 今回の上映会では、彼の最高傑作である楽劇「ニーベルングの指輪」(以下「指輪」という。)を2種類の舞台でお届けします。「指輪」は史上最大のオペラで、序夜「ラインの黄金」、第1夜「ワルキューレ」、第2夜「ジークフリート」、第3夜「神々の黄昏」の4作品からなり、上演には4日間も要します。しかも、それぞれが長大で、「神々の黄昏」に至ってはなんと4時間半も掛かり、演ずる側も見る側も大変な労力が必要となります。
 
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リヒャルト・ワーグナー(1871年)
 
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「ワルキューレの騎行」 挿絵
(アーサー・ラッカム1910年)

 

 この大作を上演することは、劇場にとってもビッグイベントで、周到な準備が必要です。「指輪」を毎年上演する劇場が、バイロイト祝祭劇場です。バイロイトは南ドイツの端にある小さな街ですが、ワーグナーはここに自分の作品を上演するための理想的な専用劇場(木造、1974席)を1876年に建てたのです。
 この劇場でバイロイト音楽祭が毎年夏に開催され、世界中からワーグナー・ファンが集まります。チケットを入手するのも大変です。劇場の中は狭く、暑く、観劇するのも相当の忍耐を要します。また、観客を舞台に集中させるためにオーケストラ・ピットを舞台下に設け(「神秘の奈落」と呼ばれる)、独特の響きを醸し出しています。
 なお、熱狂的なワーグナー愛好家を「ワグネリアン」と呼び、この音楽祭に参加することを「バイロイト詣で」と呼んでいます。ヒットラーやニーチェ、ルードヴィヒ2世、ボードレールなどもワグネリアンとして有名です。しかし、ヒットラーが反ユダヤ主義の音楽としてワーグナーを利用したため、ユダヤ人からの反発は根強く、イスラエルでは、現在でも、ワーグナーの音楽はタブーとなっています。
 
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バイロイト祝祭劇場
 
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バイロイト祝祭劇場のグランドデザイン

 

 さて、今回の上演の映像ですが、前半はメトロポリタン歌劇場によるオーソドックスな舞台です。オットー・シェンクによる演出は、ワーグナーが楽譜に書き込んだ「ト書き」になるべく忠実に従った美しく神秘的なもので、神々と人間の確執を壮大な規模で描き上げたこの作品にぴったりの演出です。レヴァイン指揮の雄大で力強く迫力に富んだ演奏も非常に素晴らしく、歌手も最高のワーグナー歌手を揃えています。「指輪」入門に最適です。
 一方、後半のバレンシア州立歌劇場の舞台は、CG映像など最新テクノロジーを駆使した斬新なもので、びっくりです。演出がスペインの演劇集団「ラ・フラ・デルス・バウス」のカルルス・パドリッサ(バルセロナ・オリンピックの開会式の演出で有名)です。ダイイナミックなCG映像、レーザー光線が飛び交う舞台、SF的な衣装や装置で、神々はクレーンに、巨人はロボットに乗り、舞台を自由自在に動き回ります。まるでスターウォーズの世界のようです。ズービン・メータの指揮や歌もレベルの高いものです。この「バレンシア・リング」なら、長大な「指輪」も退屈せずに楽しめるかもしれません。まさに現代に活きるオペラです。

 

 なお、展示資料は、日本ワーグナー協会会員の小竹暢隆氏(名古屋工業大学教授)からお借りしたものです。「DIE WOCHE」は1938年にベルリンで発行された雑誌で、ワーグナー生誕125年の特集です。1938年はナチスがオーストリアを併合した年で、第二次世界大戦直前の緊迫した時代の貴重な資料です。また、1996年のバイロイト音楽祭の豪華パンフレットも展示されています。

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 ワーグナーのオペラは、「指輪」の他にも「タンホイザー」、「ローエングリン」、「トリスタンとイゾルデ」など有名なものが多くあります。アートライブラリーには、これらの映像資料を揃えていますので、どうぞご利用ください。

(A.M)