あいちトリエンナーレのオペラとしてプッチーニの名作『蝶々夫人』が上演されます。この公演に関連し、『蝶々夫人』を中心にプッチーニのオペラやジャポニスム・オペラを上映していますが、連日、大盛況です。席は30席用意してありますが、先着順ですので、お早めにお越しください。
ジャコモ・プッチーニ(1858-1924)
『蝶々夫人』の魅力
このオペラは、美しいメロディと悲しいストーリーで世界中で愛されています。ピンカートンの帰りを待ち続ける蝶々さんの純情な姿は、私たちの心を動かします。泣けるオペラの代表格ですね。プッチーニはメロディーと和声の天才です。「愛の二重唱」、「ある晴れた日に」、「ハミングコーラス」など名曲がいっぱいです。
また、日本人にはおなじみの日本のメロディも多く含まれています。「君が代」、「さくらさくら」、「お江戸日本橋」、「越後獅子」、「鬼さんこちら」、「宮さん宮さん」など。プッチーニは、当時、ヨーロッパを巡業して人気を博していた、名古屋にもゆかりのある川上貞奴らに取材し、取り入れたのです。
川上貞奴(1871-1946)
初演は歴史に残る大失敗
「世界3大初演失敗名作オペラ」としても有名です(他の2つは『椿姫』と『セビリヤの理髪師』)。1904年2月17日ミラノ・スカラ座での初演は大失敗でした。失敗の理由は、第2幕に1時間半を要すなど上演時間が長すぎたことや、文化の異なる日本を題材にした作品であったため観客が違和感を覚えたという原因が挙げられています。
しかし、プッチーニは、改稿に取りかかり、3か月後の5月28日、イタリアのプレッシャで行われた公演は、大成功を収めました。因みに、1906年のパリ公演のために改定された第6版(パリ版)が、蝶々夫人の決定版となっています。
今回は、蝶々夫人初演100年を記念して日本で上演されたプレッシャ版による映像も上映します。
初演時のポスター:Adolfo Hohenstein (1854–1928)
ジャポニスム・オペラ
ジャポニスムは、19世紀後半からフランスを中心としたヨーロッパで見られた日本趣味のことです。万国博覧会(国際博覧会)への出品などをきっかけに、日本美術(浮世絵、琳派、工芸品など)が注目され、西洋の作家たちに大きな影響を与えました。日本の文化そのものが当時のヨーロッパのブームとなりました。
クロード・モネ「ラ・ジャポネーズ」(1876)
オペラでは、イタリアの作曲家マスカーニ(1863-1945)による『イリス(あやめ)』があります。江戸を舞台に、盲目の父・チェーコと住む娘・イリスが騙されて遊郭に売られていく悲しいストーリーをマスカーニが美しいメロディーで作曲しています。
また、イギリスの作曲家サリヴァン(1842-1900)によるオペレッタ『ミカド』もあります。イギリスの空前の日本ブームに乗っかったもので、当時の英国の世相、上流階級や支配階級に対する辛辣な風刺を、作品の舞台を英国からできるだけ遠い「未知の国・日本」に設定し、ストーリーを展開させています。
「ミカド」のポスター
『蝶々夫人』や『イリス』、『ミカド』は、アートライブラリーで鑑賞できます。
(A.M)