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2月19日(土)開催のパフォーミング・アーツ・ガーデン2011の当日の出演順をお知らせします。


<小ホール>

<13:30― 第一部開演>
1 Geonori
2 Kino Kugel
3 Bonds
4 至学館A
5 石原+田中
6 precious jewel

約10分間休憩

<15:10頃― 第二部開演>
7 ヒフプロジェクト
8 至学館B
9 魂宮時
10 OPT
11 生き音

約10分間休憩

<16:50頃― 第三部開演>
12 鈴村由紀 杉町明子
13 太めパフォーマンス
14 はるみぶし&ひろ
15 water drops
16 afterimage

移動&休憩


<地下2階フォーラム>

<18:30頃― 第四部開演>
17 Geonori―タバマ企画


[19時過ぎ  終演予定]


(A.F.)
 

2月23日(水)に開催される第56回フレッシュコンサートの出演者から出演に際しメッセージをいただきました。(次回は、いつもの2階フォーラムではなく、10階美術館前で開催しますので、会場をお間違えなく!!) 

 

東海地方を中心に活動する個性豊かな奏者5人で結成された金管五重奏団です。
「あるくす」とは、ラテン語で「虹」という意味で、音楽と聴衆を虹の架橋で結びたいというメンバーの思いでつけられました。虹のように色とりどりの柔らかいサウンドで、クラシックからポップスまで、枠にとらわれない活動をしています。
今回演奏する曲目は、アメリカに関係のある曲を集めました。
ロブリー作曲の「AMERICAN IMAGES」は、アメリカのイメージを、Early Days、Blues、Fiestaの3曲にした曲で、アメリカの情景が思い浮かぶ曲です。
ガーシュウィン作曲の「AMERICAN IN PARIS」は、パリ見物に来たアメリカ人の情景と感情の描写が描かれた大がかりな表題音楽です。
そして、「A DAY AT THE CAMPTOWN RACES」は馴染みのある草競馬、「WASHINGTON POST」は、スーザのマーチの中の名曲、「AMERICAN PATROL」は、ミーチャムの名曲と、みなさまが日ごろよく聞く曲も演奏いたしますので、どうぞお楽しみに!!

あるくすの皆さん♪.jpg


 私たち運営スタッフも金管の柔らかい音色が10階美術館前に響くのをとても楽しみにしてます。
それでは会場でお会いできるのを楽しみに!
 

(文責:K.K.)

[ 音楽 ]

“音を用いた新しいパフォーマンス作品”=サウンドパフォーマンスによる、多様なアーティストが一堂に会する公演を行いました。

出演者はなんと15組!!第1部、第2部に分けての上演でしたが、休憩も含めて約6時間もの長丁場で、お客様からは「とってもおもしろかった!!全部聴いたら疲れたけど。」という率直なお声を多数いただきました。

以下、特色あるパフォーマンス&アーティストを中心に、全公演を報告します。なかでも、音楽とただの音、作品か即興か偶然かなど、境界線を問うてくる作品は、いかにもサウンドパフォーマンス道場らしい、と思います。


第1部より
holon.jpgholon(幻燈ダンス)+ 福島諭(サウンド)「影向-YÔGÔ-」
名古屋を拠点に活動を続けるメディア・ダンス・パフォーマンス・ユニットholon(ホロン)と、新潟と東京を中心に活動する作曲家・演奏家の福島諭のコラボレーション。holonは、この道場第1回で、唯一の選考委員特別賞とオーディエンス賞をダブル受賞しました。また福島さんはやはり第1回道場で優秀賞を受賞。彼らは、このサウンドパフォーマンス道場で初めて出会い、以来、時々共演を重ねています。holonによる、OHPを使った独特の流動的で美しい光と、影のダンス。それに重なり寄り添う福島さんの音の響き。重層的な時空間に身をゆだねた時間でした。

MYK!!.jpgMYK!! (マイク!!)『CLAY MUSIC』
 今回もっとも若い、名古屋芸術大学サウンドメディアコース2年生を中心とするグループ。舞台に向かって右手(上手)にミュージシャン、左手(下手)にクレイ(粘土)の操作者が位置し、クレイ(粘土)の風景が変わっていく様子を撮影・加工して投影、音楽も演奏を加工して掛け合わせ、人の手によってユートピア(理想郷)が作られ壊れていく様を表現したコラボレーション。初めての舞台に取り組んだという成果の発表でした。


ikedamoe.jpg池田萠『improvisation for flute solo』
 “クラシック音楽のフルートの独奏のように見せかけながら、すべてが全くの偽り”、という作品。とはいえ、現代音楽のフルート独奏でも、息音を含む奏法や楽器の音と同時に声を出す発声奏法、キーを叩く打楽器的奏法など楽器音以外が多々登場する今日、ましてノイズや息や声が主流のサウンドパフォーマンス道場では、「偽り」には聞こえづらかったかもしれません。



mizunomikako.jpg水野みか子 『H-aki』 (演奏:中川さと子 (ヴァイオリン)、水野みか子(コンピュータ))
 こちらは、完全なヴァイオリンの生演奏と、そこに絡み、加工するコンピュータの音の共演。客席を四方から囲むようにスピーカーを設置し、音が動いたり、音に囲まれたりするように聞こえる曲でした。即興で進行する作品が多い中で、きっちりと構成されたこの作品は完成度の高さを感じさせました。なお水野さんは第1回から4回まで選考委員を務めていただきました。








tokuhisa.jpg徳久ウィリアム(ヴォイス)+竜巻太郎(ドラム)「即興デュオ」
 照明を全く使わない中でのヴォイスとドラムの即興デュオ。徳久さんはヴォイスソロで、第3回オーディエンス賞を受賞しています。暗闇の中、舞台左手から聞こえるドラムと、歩き回るいろいろな声。時に一瞬フラッシュが光りますが、目くらましとなって、ますます視覚には何も映りません。演奏が終わり挨拶のため出演者が登場したのですが、ドラムの竜巻太郎さんはタツマキ星人だったそうで、全身銀色でした。舞台上には2つの小屋?のようなものが置かれていて、左手側にドラムが載っていたのでした。

itou.jpg井藤雄一『fmi』
 コンピュータの画面がプロジェクターで投影され、画面にペンライトで光を当てると、その軌跡が映し出されたり、色彩が移り変わる作品。音もそれにつれて変化してゆきます。その色彩は、まもなく愛知県美術館で展覧会が始まるカンディンスキーの絵のように美しかったです。




adati.jpg足立智美(voiceほか)+田中悠美子(義太夫三味線)「即興デュオ」
声・各種センサー・自作楽器によるソロ演奏などで活動するパフォーマー・作曲家の足立智美。足立さんは第3回および第4回選考委員を務めていただきました。5年前に、「現代音楽家シリーズ第12回 : クリス・マン+足立智美(2005.7.12)」で、レクチャー&パフォーマンスを開催していますので、それをご覧になった方もいらっしゃると思います。
共演者は、義太夫三味線を携えて伝統から即興まで演奏を行う田中悠美子。田中さんは、大友良英、カール・ストーンら多様なミュージシャンと共演したり、ドイツ人演出家の第一人者ハイナー・ゲッペルス『Hashirigaki』、アメリカ前衛人形劇の寵児バジル・ツイスト『Dogugaeshi』などに出演する、希有な義太夫三味線演奏家です。当センターでも、10年前に、「特集公演 若手邦楽家の挑戦(2000.2.29-3.1)」で、野村誠、片岡祐介と一緒に義太夫節に基づく曲をオリジナルアレンジして演奏していただいています。
百戦錬磨の二人の即興演奏は、多種多様な音を自由に操り、勝手にやってるようで、ちゃんと計算された起伏がありました。音の洪水に飲み込まれ、あっと言う間の時間でした。


第2部
kaburagi.jpg鏑木章裕(サウンド)+舞澤智子・下垣浩(パフォーマンス) 『metamorphosen-変容-』
第2部は、ダンスとサウンドのコラボレーションから。白い木々に囲まれた沼のようなところから、命あるものが生まれ巣立っていく様子が描かれました。





baba.jpg馬場省吾+北條知子 『コンピュータ同士の将棋対局における棋譜読み上げ』
当日パンフレットに記されたアーティストの言葉によると、“現代の「何でもアートになり得る」という状況に立ち向かうための一つの術”、であるという作品。タイトルどおり、将棋の棋譜の読み上げを、通常と速めの速度で行っただけのパフォーマンス。賛否両論、デュシャンの「泉」のような作品になるか、といったところでしょうか。



kakio.jpg垣尾優(動き)×高村聡子(歌) 『息の先』
こちらは、音を聴くことについて考えさせ、実際に耳を澄まして音を聴くことを促す作品。歌の高村さんが様々な音について話し、またプロジェクターで多様な音が文字として投影され、実際にいくつかの音を立てます。一方、垣尾さんは、動くことによって様々な音を立て、高村さんが作るプロットに変化を与えていきます。




kurosawa.jpg黒澤勇人 『携帯電話のための5分間』
お客さんが、配られた楽譜に従って携帯電話の着信音を鳴らす作品。少し空席があったためややまばらな印象でしたが、満席であればもっと現象としての作品の形がくっきりと表れたかもしれません。






electro.jpgElectro-Acoustic Operation 『T.V. show “R”』 
ブラウン管テレビが生み出す、アナログノイズの音と、人手(黒子)によって光源が積み上がり移動して生まれる空間。Electro-Acoustic Operation(エレクトロ・アコースティック・オペレーション)の名称で活動する平尾義之さんによると、ブラウン管テレビを捨てる前に1991年初演のこの作品を上演しておきたかったとのこと。機材やテクノロジーの変化がパフォーマンスを変えていくことを物語ると感じました。


yasuno.jpg安野太郎 『音楽映画 第十番』
安野さんが第2回オーディエンス賞受賞したのも、この彼の代表作「音楽映画」シリーズでした。第3番で、名古屋の様々な場所やモノを映し出し、その名前や状況や印象を読み上げていく声を加工して重ねていくという作品。今回の第10番は、「自分と記憶と欲望」がキーワードで、自分撮りを多用しているとのこと。映像と読み上げの選択が、安野さん独特のおおらかさとユーモアセンスがあり、今回も爆笑の連続でした。



folmant.jpgフォルマント兄弟『せんだいドドンパ節』(演奏:岡野勇仁(MIDIピアノ))、『NEO都々逸』(演奏:岡野勇仁(MIDIピアノ)+田中悠美子(義太夫三味線))
フォルマント兄弟は、サウンド・メディア・アーティストの佐近田展康と、作曲家の三輪眞弘によるユニット。佐近田さんも三輪さんも、道場第1回から第4回まで選考委員を務めていただきました。まずは、自分たちの活動の趣旨―テクノロジーと芸術の今日的問題を《声》を機軸探求し、21世紀の《歌》を機械に歌わせることを目指すーについて、自らが語るトークの映像を流してから、そのときに生まれた『せんだいドドンパ節』を上演。岡野勇仁がMIDIピアノを弾くと、出てくる音は、架空の人物、高音キンの《声》となって、『せんだいドドンパ節』を歌うという作品。2曲目の『NEO都々逸』は、第1部で足立智美さんと共演した田中悠美子さんがお師匠さんで、岡野勇仁さんにお稽古をつけるという趣向。田中師匠にたしなめられた岡野さんがMIDIピアノを弾いて答えるやりとりを織り交ぜながら、現代的な都々逸を、岡野さんがMIDIピアノを弾くことで綴りました。2曲とも、笑みのこぼれる作品でしたが、実は高度なテクノロジーと演奏技術によって成り立っているのでした。

ikedatakumi.jpg池田拓実『テーブルの音楽(Table Music)』
最後は、昨年度の第4回優秀賞を受賞した、池田拓実さんの『テーブルの音楽(Table Music)』改訂再演。テーブルの上に物を置いてその音を取り込み加工してゆくとともに、その様子を映像で映し出し、置かれた物はしばらくすると色で覆い隠されてゆくというパフォーマンス。テーブルの上に物を置くという簡単な行為の音と映像は、テーブルマジックのように、変化していく楽しさがありました。最後に技術トラブルがあり、シンプルになってしまったのが、残念ですが、やはり優秀賞を受賞し、再演を重ねた結果の高い完成度が印象的でした。


【関連情報】
今回のAACサウンドパフォーマンス道場特別公演に出演した方々が多数出られる催しが、東京で開催されます。
”AACサウンドパフォーマンス道場の東京ヴァージョン”という印象です。

東京近郊にお住まいの方で、道場公演においでになれなかった方、こうした催しにもぜひご参加くださいね!


クリエイディヴ・ファンタジスタ「ライブで感じるメディアアート」
http://fantasista.creativecluster.jp/2011/02/211-12-live-fantasita.html



(A.F.)

 

[ 映像 ]

 昨年、愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品として制作された、大山慶監督『HAND SOAP』(2008年、シリーズ第17弾)が、世界各地の映画祭で上映され、「第14回オランダ・アニメーション映画祭」短編部門でグランプリを受賞するなど、国際的にも高い評価を得たことは、皆様の記憶にも新しいことだと思います。当センター地下2階のアートプラザ内ビデオルームでは、『HAND SOAP』の受賞を受けて、このシリーズで制作されたアニメーション作品3本を特集した、「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品受賞記念上映会 ‐アニメーション特集‐」を2月8日(火)‐12日(土)に開催する運びとなりました。

 開館以来、毎年一本のペースで作品制作を行っているオリジナル映像作品で、初めてのアニメーション作品となったのは、シリーズ第10弾となる石田尚志監督『フーガの技法』(2001年)でした。この作品はタイトルからも分かるように、バロック音楽を代表する作曲家J.S.バッハの『フーガの技法』より、「1番」「11番」「未完のフーガ」の3曲を映像化したものです。音楽をアニメーションとして映像化する試みは、ハンス・リヒターが監督した『リズム21』(1921年)や、ディズニーの長編『ファンタジア』(1940年)など、多くの作例がありますが、石田のこの作品は、通常のアニメーション制作では必須とされる絵コンテを起こさず、楽譜を読み解き直接、作画作業を行っています。そのためバッハ『フーガの技法』をアニメーションで演奏する、といった試みになっていることにも特色があります。

 本シリーズ2本目のアニメーションは、『フーガの技法』から5年後に制作された、辻直之監督『影の子供』(2006年、シリーズ第15弾)です。『フーガの技法』同様、作者自身の手描きによるドローイング・アニメーション作品である点は共通しますが、作品の趣は大きく異なります。辻のアニメ盾.jpgーションは、
画用木炭を用いて一枚の紙にまず起点となる絵を描き、それを消して次に続く絵を描いては、また消し・・・、という作業を繰り返すことで動きを作り出しています。画面には、アニメーションの運動の軌跡が反映されるとともに、存在と不在が併存するような、そこはかとない寂寥感が漂っていることも、辻直之作品の独特の魅力になっているといえるでしょう。

 大山慶監督『HAND SOAP』は、この2本に続くシリーズ3本目のアニメーション作品となるものです。現在、個人制作によるアニメーションは、デジタル・ビデオカメラやコンピューターが普及し、フィルム時代にくらべ制作が容易となり、多くの作り手が登場し作品が発表されて、活況ともいえる状況が生み出されています。しかし多くの作品が、コンピューターを導入していても、制作プロセスの簡略化や合理化に留まっていたのに対し、大山作品では人間の皮膚を接写した画像を取り込み、それを細かく分解しコラージュ的に再構成することで、登場するキャラクターの肌の質感を作り出すといった、より踏み込んだ創造的なアプローチを試みている点に特色があります。新しい技術を用いて、過去にはなかった表現に踏み込んでゆくという意味での現代性が、『HAND SOAP』の国際的な舞台での評価につながっている様に思われます。

 アニメーションという共通の手法を持ちながら、三者三様、それぞれが作り出した独自の表現世界を、この機会にぜひお楽しみください。会場ではオランダでグランプリを受賞した際に授与された記念の表彰楯(写真参照)など、貴重な資料の展示も行います。既に『HAND SOAP』をご覧になっていらっしゃる方にも、作品への興味がより深まるでしょう。

(T.E)

 

「パブロ・カザルスとチェロ映像上映会」関連事業として、1月23日(日)天野武子先生によるトークとミニコンサートが開催されました。抽選で選ばれた約40名の方々が熱心に耳を傾けました。

天野先生は、愛知県立芸術大学教授で後進者の育成に携わるとともに、チェリストとしても大変精力的な活動をされています。今年の3月でご退官とのことで、大変ご多忙な中ですが、ご無理を言って来ていただきました。
 天野1.jpg

 

さて、トークは『鳥の歌』から始まりました。天野先生は1971年の国連平和デーでのカザルスの演奏をテレビで見て、人生が変わるほどのショックを受けたとのことです。カザルス94歳(なくなる2年前)のときの演奏で、その時の言葉を紹介しました。カザルスは「私はもう14年もチェロの公開演奏をしていませんが、今日は弾きたくなりました」と運ばれてきた愛用のチェロを手にとって、「これから短いカタルーニャの民謡《鳥の歌》を弾きます。私の故郷のカタルーニャでは、鳥たちはピース、ピース、ピース!と鳴きながら飛んでいるのです」と右手を高く上げて、鳥が飛ぶように動かしながら、ピース、ピース!とくり返しました。「この曲はバッハやべートーヴェンや、すべての偉大な音楽家が愛したであろう音楽です。この曲は、私の故郷カタルーニヤの魂なのです」。
天野先生は、これまでずっとこの『鳥の歌』を演奏できませんでしたが、1992年のバルセロナ・オリンピックの閉会式で歌手(ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルス)がこの歌を歌うのを聞き、カトリックのイエス様の誕生を祝うクリスマスソングであったことが分かり、その後、演奏するようになったということです。
天野2.jpgFerdinand Schmutzer 1914
 
 

この後、天野先生からカザルスの生涯をじっくりと語っていただきました。カザルスの生い立ちから、晩年(81歳)に若い美人の奥様(21歳)と結婚し、亡くなるまで、数多くの画像を紹介しました。また、カザルスの故郷へ旅行した時の写真も交え、大変熱のこもったお話が聞けました。天野先生が心底カザルスを敬愛していることが伝わってきました。
 天野3.jpg

 

トークの後は2曲演奏しました。バッハの『無伴奏チェロ組曲第1番全曲』と『鳥の歌』です。バッハの曲は13歳だったカザルスが、バルセロナの楽譜屋で楽譜を偶然手にして、当時練習曲と思われていたこの曲の真価を察したのですね。その後10年にわたって研鑽を積み、満を持して開かれた演奏会は世界に衝撃をもたらしたとのこと。カザルスの発見した楽譜はカザルス博物館にも残っており、天野先生も現地で確認されたのですが、オリジナルに近いものではなかったとのことです。最近では研究も進み、またオリジナル楽器(古楽器)の影響もあり、響きもやや軽めな演奏が増えています。天野先生の演奏も最近の研究成果も踏まえ、バッハの自由で孤高な精神を表現しているように感じられました。
最後の『鳥の歌』はカザルスのエピソードと重ね合わせて聞くと、キリストの誕生と平和への想いが伝わり、とても心が動かされました。
 天野4.jpg

 

チェロは人間の声に最も近いと言われます。音域が似ているのですね。ヴァイオリンのやや高めの音と違い、温かみのあるゆったりとしたチェロの素晴らしい音を堪能することができました。40人という大変小さな空間での眼前での演奏で、とても贅沢なひと時でした。また、カザルスを通して、芸術と社会との関わりや平和についていろいろ考えさせられる一日でした。

(A.M)