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「マクベス」特集ビデオ上映会開催中

2012年02月28日

ただいま、アートプラザ・ビデオルームでは『マクベス』に関するビデオ上映会が開催中です。『マクベス』をテーマとしたオペラ、演劇、バレエ、映画などが勢ぞろいです。愛知県文化振興事業団の主催公演ヴェルディ作曲オペラ『マクベス』(3月17日コンサートホール)の関連企画です。 

『マクベス』と言えば、『ハムレット』『リア王』『オセロ』と並ぶ、シェイクスピアの4大悲劇の一つです。この中では最も簡潔でドラマティックな構成のため、人気が高く、上演機会が多いことでも知られています。多くの演出家や作曲家、映画監督などの、創作意欲をかきたてるのでしょうか。様々なジャンルの作品が生み出されています。

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ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)

 

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"Macbeth seeing the ghost of Banquo"  Théodore Chassériau(1819-1856)

 

イタリア・オペラの作曲家ヴェルディは、生涯で3回、シェイクスピアに挑んでいます。最初がこの『マクベス』、次が『オテロ』、最後が『ファルスタッフ』です。オペラ『マクベス』はヴェルディ若かりし頃(1847年初演、34歳)の力作です。原作自体は、オペラ向きとは言い難い作品だと思います。通常オペラには男女の愛がつきもので、「愛の2重唱」が聴き所ですが、この「マクベス」には、悪と陰謀に満ちた夫婦や魔女など血なまぐさい、どろどろした世界が描かれています。ヴェルディはドラマの展開に強い関心を持ったのでしょうか。甘い愛のドラマがないためか、聴衆には不人気だったようです。ヴェルディは自信作だったのですが・・・。その後、改作もしています。シェイクスピアのドラマをヴェルディがどのように音楽化したかという観点でご覧いただくとおもしろいでしょう。演劇のお好きな方にはぴったりのオペラです。
今回の上映会では6種類の異なったオペラ作品を用意しましたので、演出の違い、歌手の違いなどをお楽しみください。一昔前の演出では、時代背景にあった豪華な舞台や衣装による写実的な演出が主流でしたが、最近の演出では時代を現代に移したり、抽象的な舞台装置を用いて、聴衆の想像力にゆだねるなど様々な工夫をこらしています。オペラの演出も時代とともに変遷するのです。

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ジュセッペ・ヴェルディ(1813-1901)

 

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" Macbeth and Banquo meeting the witches on the heath"
Théodore Chassériau(1819-1856)

 

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Lady Macbeth sleepwalking by Henry Fuseli(1781-1784)


 このほか、ソビエトの作曲家ショスタコーヴィチ(1906-1975)のオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』も衝撃的な作品です。マクベス夫人(野心家の悪女)という名が示すとおり、女主人公は不倫を見つかったため、義父と夫を殺害し、愛人とシベリアに送られるが愛人に裏切られ、自殺するというすさまじいストーリーです。スターリンはこのオペラを見て激怒しました。余りに過激で品がないからでしょうか。上演禁止となり、ショスタコーヴィチの生命まで危ぶまれる事態を引き起こしたのです。その後、彼は『カテリーナ・イズマイロヴァ』という名で改作を行い、刺激的な音楽や場面を減らしたため、当局に受け入れられることとなりました。両者を比較しながら改作の過程をたどるのもおもしろいでしょう。
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ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)

 

このほか、日本的な演出で世界を魅了した『Ninagawaマクベス』やマクベスの時代を戦国時代に移した黒澤明監督の作品で三船敏郎の熱演で有名な映画『蜘蛛巣城』も必見です。
(A.M)