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 10月19日から11月5日まで、「ルネッサンス・バロック音楽関連映像」がアートプラザ・ビデオルームで上映されていますが、関連事業として、10月30日(土)14時から中世ルネサンス古楽奏集団「ウンガレスカ」ミニライブが開催されます。
 ウンガレスカのユニークな紹介がちらしにありましたので紹介します。
3年前に結成。古楽器や民族楽器を織り交ぜながら演奏し、楽しむことを基本に古楽普及に励む。各地イベント、幼稚園、高校、カフェ、雑貨店、路上などに出没。他己紹介「中世の世界観が大好きな田舎育ちの古楽伝道師たち」「何はともあれ音が気持ちいい」「一緒に混ざりたい」(http://ungarescha.untokosho.com

今回のミニライブに当り、ウンガレスカからメッセージも届いています。
「中世ルネサンスの都市や農村の世界を、私たちの音で楽しんでいただけたら嬉しく思います。」

ウンガ1.jpg  ウンガレスカのリハーサル風景

ウンガ2.jpg
 
 さて、当日の演奏曲目が決まりましたのでお知らせします。
(演奏曲目)
◇ウンガレスカとサルタレロ (Ungaresca&Saltarello)
◇ディンディリン、ディンディリン(Dindirin, dindirin),水を越えて(Pase el agua)
◇Santa Maria,strela do dia (聖母マリアのカンティガ集100番)
◇聖母マリアのカンティガ集119番,302番
◇ロンドとサルタレロ (Ronde&Saltarello)
◇ヴォルタ (La Volta)
◇皆で声をそろえて歌おうよ(Cuncti simus concanentes)
◇ドゥクチア(Ductia)
◇シチリアーナ( Siciliana)

13世紀から16世紀ころまでのヨーロッパ各地(イタリア、スペイン、フランドル、イングランド)の民衆の踊りの音楽、宮廷の音楽、巡礼者の聖歌など大変バラエティに富んだ曲目です。中世・ルネサンス時代の音楽が、当時使われていた楽器(復元楽器)によって現代によみがえります。当時にタイムスリップするような不思議な体験ができます。曲も短いものばかりで、とても楽しめますよ。

 先着30名ですので、どうぞお早めにお越しください。
(A.M)

 

 

緑色の巨大な風船の下をエスカレーターで上り、たどり着いた11階。そこには緑のトンネル、<チャンネル>という夢の作品が待っています。
実際に中に入ってみると、ここが名古屋の中心地であることを一瞬忘れるような、はたまた、子どもの頃に戻ったように素直に不思議だなあ、と感じられる、そんな世界が広がっていました。

今回は、そんな魅力ある空間を作り出すアーティスト、松井紫朗さんの本を中心に、2冊の本と、一本のDVDを簡単にご紹介させて頂きます。

『SHIRO MATSUI 1992-1995』
 東京画廊 1995年出版
(請求記号 T712N/MA77T/1995 資料番号9110389427)
 松井2210-1.jpg

この図書は、1995年7月3日―7月29日に東京画廊で開催された展覧会のカタログです。
なかでも私にとってのオススメは<Step-Rule>という作品。松井2210-2.jpg
白い矢印が階段を駆け上り、やがてたどり着く踊り場…。夕方の光をたっぷり浴びて、さらにその先へと進んでいきます。
繊細さと静粛な雰囲気の空間に、どこか懐かしい匂いを感じさせてくれます。
 

 

お次は、この方のこの本です。
『ARTIST FILE 2009  013 MIYANAGA Aiko』
国立新美術館 2009年出版
 (請求記号 702.07/A94K/2009-13 資料番号 9110482566)
 
2009年に国立新美術館で行われた展覧会の宮永愛子さんの作品のみを掲載したカタログです。目印の表紙は、キャンドルのような白い置時計。洋風のようでいて、少し和風のテイストを含んだ<景色のはじまり>はどこか哀愁が漂います。
 

 

 続きまして、DVDのご紹介です。
『ローザス・ダンス・ローザス』
2003年出版
 (資料番号9430001427 収録時間57分)
 ローザス2210.jpg
10/26―10/28に行われるパフォーミングアーツ終盤の公演、ローザス・ダンス・ローザスが収録されています。公演前の予習に、また、公演後の復習にもどうぞご活用ください。
この他にも、ローザスのDVDは3枚所蔵しています。

トリエンナーレ閉幕まで残すところあと一週間を切り、ようやく待ちわびた芸術鑑賞に相応しい季節がやって参りました。興味ある方はもちろん、興味のない方もこの機会に是非、芸術、読書の秋を感じに、アートライブラリーへ足を運んでみませんか?
(アートライブラリースタッフ M.Y)
 

今回の上映会にあわせて、ルネサンス・バロック時代に使われていた楽器の展示をしています。
 展示している楽器は、上映会期間中の10月30日(土)(14:00から)にミニライブをしていただく古楽奏集団ウンガレスカさんから提供いただいています。  

 ルネ2-1.jpg上映会開会日の前日でしたが、同じ愛知芸術文化センターの中にある愛知県美術館から展示ケースを運んでディスプレイしました。


 楽器展示で難しいのは、楽器は音を奏でるというのがいちばんの目的であるはずなのに、お客様に楽器そのものに触れていただくことがむずかしい点やそれぞれの楽器の音色をどのようにお伝えするかというところでした。
そこでまず、ただ並べただけでは何がなんだかわからないので、展示の常套である楽器の呼び名と簡単な説明文を添えました。
それでも楽器に触れたい。音が出してみたい。どんな音がするのか確認したい。という方は、ライブに来ていただいて、所有者であるウンガレスカさんとお友達になっていただきたいと思います。

 まず、はじめにお断りしておきますが、ここに展示してある楽器は、すべてレプリカ(いわゆる複製品)です。なぜなら、当時製作され演奏された楽器で現代にまで残っているものは、大変数も少なく、演奏できる状態の楽器のほとんどが、高名な演奏家や博物館に所蔵されているためです。
 でも、今回上映している映像にもあるように、当時の貴族の館でこんな楽器を使って楽しんでいたのかという思いをはせるだけでも楽しくなりませんか?
筆者は、子どものころ、自分は貴族にはなれないが、その雰囲気は庶民の私でも味わうことができる。そんな強い思いにかられてリコーダーを必死にそして楽しく練習しました。

 展示されている楽器を、写真や文章でお伝えするのは大変難しいのですが、ご来場いただけるきっかけになればと思ってご紹介します。

ルネ2-2.jpgこれは、ゲムスホルンといいます。
動物の角をくりぬいて作ってあります。
上の2本と下の1本は水牛製(本物です)。上から3番目は陶器製です。息を入れて、穴を指で押さえて音程をかえます。大きくなるほど低い音がします。現代のオカリナのような柔らかい音がします。

 

 


 

ルネ2-3.jpg次に、バロックリコーダー(写真上)とルネサンスリコーダー(写真中)です。
バロック時代のリコーダーは、管内部が円錐形、ルネサンス時代のリコーダーは、円筒形で、その内径構造からルネサンスリコーダーの方がバロックリコーダーに比べ倍音が少なく、素朴で大きな音がします。
この2本は、ソプラノタイプで、小学校で手にするサイズと同じですが、本体は、プラスチックではなくて木でできています。展示されている楽器では、部分的に金属や象牙が使われています。
写真下は、シャリュモーといいます。
現代のクラリネットの祖先にあたる楽器です。リード(植物の葦(あし)を薄くけずったもの)がつけてあって、そこに息を入れることでリードを振動させて音を出します。これも、穴を指先の腹で押さえたり開けたりして音程をかえます。

 

ルネ2-4.jpg左の写真上がツィンクです。コルネットと呼ばれることもあります。
現代の金管楽器と同じくマウスピースに唇を当て振動させて音を出します。本体は、木製革巻きで、8角錐をゆるやかにカーブさせた形状となっています。
マウスピースは、現代のように金属ではなく木製です。


そして、写真下がラオシュプファイフェというなんだか舌をかみそうな名前の楽器ですね。甲高い大きな音がでる楽器で、屋外での演奏向きのようです。馬の上に乗って演奏している版画が残っています。
キャップの中に、リードが2枚合わせた状態で入っていて、息により圧力をかけ、2枚のリードを振動させて音を出します。現代のオーボエやファゴットが、同じ発音構造でダブルリード楽器の仲間です。

 

ルネ2-5.jpg最後にルネサンス・ギターです。
これまでは、すべて管楽器でしたが、これだけは、現代のギターと同様に、張ってある弦を指で弾いて音を出します。見飽きない美しい楽器です。
弦の張り方や本数は、現代楽器のウクレレとそっくりです。

 

 

 


 

今回の映像の中には、展示品と同種の楽器も使われています。
また、10月30日(土)のウンガレスカミニライブでは、ヴィオラ・ダ・ガンバ、プサルテリ、ハーディ・ガーディなんていうあまり聞きなれない珍しい楽器も登場しますので、お楽しみに!

皆様のご来場をお待ちしております。

(Y.K)
 

ルネサンス・バロック音楽って何?
 ルネサンス音楽は15世紀から16世紀にかけてのヨーロッパの音楽です。ルネサンスは「再生」を表す言葉で、古代ギリシャ・ローマの復興を目指した美術・文学などの文化運動ですね。ただしルネサンス音楽は時代は同じですが復興とは関係がありません。声楽曲(教会音楽)が中心で、今のフランスやベルギー、イタリア地方で栄えました。日本にもザビエルがこの時期の音楽を伝えたようです。
代表的な作曲家にパレストリーナ(1525頃-1594)、ラッソ(1532-1594)がいます。

 

 

パレストリーナ

 

 バロック音楽は17世紀から18世紀、1750年頃(バッハの没まで)までの音楽です。バロックとは元来「いびつな真珠」という意味です。均整と調和のとれたルネサンス様式に対し、ゆがんだ印象があるという意味で名づけられたとのこと。自由な感動表現、動的で量感あふれる装飾形式が特色です。この時代に現代の音楽の基礎が作られたと言えるでしょう。代表的な作曲家には、J.S.バッハ(1685-1750)、ヘンデル(1685-1759)、ヴィヴァルディ(1678-1741)がいます。
 バロック音楽は近年大変な人気を博しています。オリジナル楽器(古楽器)の演奏者が増え、様々な演奏表現で古い音楽から新しい魅力を引き出しています。特に、バロック・オペラはヨーロッパでは大ヒットしています。様々な音楽にあふれている現代人の心にバロック音楽はさわやかに響き、癒しのような効果をあげるのではないでしょうか。

 ルネ2.jpg   ルネ3.jpg     ルネ4.jpg 
   J.Sバッハ                 ヘンデル              ヴィヴァルディ

 
今回の映像の見どころは?

 今回上映している映像は、昨年アートライブラリーが受入れたDVD「ルネッサンスバロック音楽大系」(アイエムシー出版)で、全21巻にわたる壮大なシリーズです。作曲家はダンスタブル(1390頃生)、デュファイ(1397-1474)からモンテヴェルディ(1567-1643)、ヴィヴァルディを経てバッハ、ヘンデルに至るまで約350年にわたる作曲家75人の作品371曲を取り上げています。

ルネ5.jpg

このシリーズの見どころを紹介しましょう。

ア 楽器に注目してください!ルネ6.jpg
 当時使われたオリジナル楽器(古楽器)が多く使われています。現代楽器と似ていますがどこが違っているのでしょうか。見たことのないような珍しい楽器も多くありますので楽しんでください。
たとえば、バロック・ヴァイオリン(右図)ではモダン・ヴァイオリンと異なり、駒の下部が薄く上部が厚いこと、指板が短いこと、ネックが太いことなどの特徴があります。また、バロックボウ(弓)は中間部が少し膨らんだ本当の弓に近くなっています。

イ 音色や演奏方法に注目してください!
音色は優美でありやや渋く聞こえますね。これは当時のピッチ(音高)が現代(A440Hzが標準)よりも低かったのですね。(バロックピッチA415Hz)また、弦楽器ではヴィブラートをかけずに(又は少なくして)演奏しています。
                                              バロック・ヴァイオリン
 

ウ 美しい収録場所と衣装に注目してください!ルネ7.jpg
収録は、曲目にあわせてヨーロッパの歴史的な宮殿や教会で行われています。美しい宮殿の広間や教会の礼拝堂も必見です。また、演奏者は当時の華麗な衣装をまとっており、あたかも数百年前にタイムスリップしたかの感がします。

エ 映像や音にも注目してください!
デジタルハイビジョンでの鮮明な画像と録音は大変素晴らしく、カメラワークもとても見やすく、見るものを飽きさせないようになっています。 
 

                                                     撮影の一部が行われたコロルノ宮殿
                                                      (パルマ/イタリア)

 

オ 各国ごとの音楽の違いを味わってください!
イタリア、フランス、ドイツ、イギリスなどそれぞれの国の風土や民族性、宗教の違いなどが音楽にも現れています。その違いも楽しいです。
                     
カ 「アーティストによる古楽器紹介」の映像をご覧ください!
この映像は、アーティストが実際に使用した古楽器の歴史や構造をわかりやすく解説しています。鍵盤楽器、弦楽器、管楽器にわたり15の楽器を紹介しています。これは必見ですよ。

 

 なお、筆者のお気に入りは、時代が最も古い「ルネッサンス=声楽曲集=」です。聴いているうちに心が清められ、そこからなにか新しい力を得るような感動を覚えます。

 

 次回は、上映会場で実際に展示されている古楽器について紹介します。
(A.M.)
 

アートライブラリーに今月も新着図書・CDが入りました。お勧めのものをご紹介します。
まずは本から。

『すぐわかる日本の国宝』
岡本祐美著  東京美術  2010年4月発行
(請求記号/709.1/O42s  資料番号 9110484758)
 2210-1.jpg
芸術の秋、国宝をめでる旅に出かけてみませんか?
何も知識をいれずに対面するのもいいけれど、少し知識をいれてから観るのもいいものです。
この本で少し、勉強してみましょう。各国宝に3つの「見るポイント」が書かれてあり、分かりやすく説明がしてあります。
本の中で国宝を観るのもよし、また、本を読んで実物を観るのもよし。
芸術の秋におすすめの一冊です。
(ライブラリースタッフE.I)


『女の子のための現代アート入門』
長谷川祐子著 淡交社 2010年発行
(請求記号702.07/Ha36o 資料番号9110484355)
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目に飛び込んでくるビビッドピンクの表紙に白抜きのタイトルが可愛い。
思わず手に取ってしまったのですが、可愛いだけじゃなく中身もしっかり充実。東京都現代美術館チーフキュレーターである著者が、現代アートをわかりやすく解説・紹介してくれています。代表的なアーティストはこれでおさえられるかも。
ちなみにタイトルの「女の子」とはメタファーのようなので、男の子も安心して手に取ってみてください。まだかたちが定まらずふわふわしたあなたの現代アートのイメージも、この本をきっかけに変わるかもしれません。
(ライブラリースタッフA.U)


『古[←→]今(むかしといま)比べてわかるニッポン美術入門』
和田京子編著 平凡社 2010年発行
(請求記号702.1/W12m 資料番号9110484678)
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日本の伝統美術を題材にした現代美術の作品…何が思い浮かびますか?
この本は、色々な枠組みをとっぱらい日本美術の昔と今をとりもってくれる本です。
「デコトラ」と「日光東照宮陽明門」や「ガンダム」と「戦国武将」など何の関連性もないようなものでも、比べてみると、確かにどこか繋がっているのだと知ることができます。
「日本の美術」とは何なのか?を考えさせられますよ。
(ライブラリースタッフT.K)


『ブルーノ・ムナーリの本たち』
ジョルジョ・マッフェイ著,滝下哉代訳 ビー・エヌ・エヌ新社 2010.2発行
(請求記号757/Mu32m 資料番号9110484426)
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芸術家、デザイナー、教育者…様々な分野で活躍したブルーノ・ムナーリ。こちらは、そのムナーリが手掛けた「本」の作品目録です。年代順に各作品の表紙写真、出版社、印刷会社、発行部数、製本や表紙印刷・加工について、またそれぞれの本に関する引用文等が掲載されています。本の写真を眺めるだけでも楽しいので、ムナーリの作品に興味がある方はもちろん、そうでない方にも手に取ってページをめくってみていただきたい1冊です。
(ライブラリースタッフA.I)


最後にCDをご紹介。
『クラヴィコードの世界 秘められた音楽領域を探る』
宮本とも子演奏、コジマ録音、2010年発売
(請求記号C1*/ミ  資料番号9310196284)
 2210-5.jpg
はじめて体験する音でした。美しく、繊細。透明感のある響き。
オルガンともピアノともチェンバロとも違う、どこか懐かしさも感じさせる音。
クラヴィコードは、オルガンと並ぶ最古の鍵盤楽器だそうです。
オルガンは「公」の場所で演奏されてきた楽器。クラヴィコードは800年以上の間、
いつも静かな「私」的空間で、音楽家一人ひとりの魂に寄り添ってきた楽器。
このCDは、日本初のクラヴィコード・ソロ・アルバム。今回オススメの一枚です。
(ライブラリースタッフK.M)


このほかにもたくさんの新着図書とCDが入ってきています。ご来館をお待ちしております!

 

あいちトリエンナーレ2010もあと2週間です! これまでにも、アートマネジメント実践講座研修生が行われたパフォーマンスの様子を報告してくれましたが、ここでまた3つまとめて紹介します。


まことクラヴ『長者町繊維街の日常』(9/3,4開催)

今回のまことクラヴの作品タイトルは『長者町線維街の日常』。会場に選ばれたのは婦人服などの企画・製造・販売を行っている繊維総合商社・丹羽幸(株)の荷さばき場。「会社見学へようこそ」という開演前のアナウンスがあり、丹羽幸の社員もパフォーマンスに参加。まことクラヴのメンバーと社員が一緒になって、丹羽幸の社歌を合唱したり、商品やまことクラヴ部員(!)をダンボール箱に詰めたりと、その場と人とを存分に生かしたものになっていました。

makoto.jpg

「日常と非日常」が一緒になった作品。でも、社員が段ボールに服を詰めていく作業の手慣れた手つきは、正しいフォームがあるかのような無駄のない綺麗な動きで、見慣れない私にとっては非日常的な一つのパフォーマンスに思えました。逆に想像ではありますが、まことクラヴの部員は、毎日のようにパフォーマンスを考えたり実行しています。一般的な日常というものはどういうものか、考えてみたくなりました。

(アートマネジメント実践講座研修生T.Y)



umeda1.jpg梅田宏明『Adapting for Distortion』『Haptic』(9/11,12開催)

海外で活躍している梅田宏明は、映像、音、照明、振り付け、ダンスをたったひとりでやってしまう。しかも今回の作品は日本初上演だ。舞台は途中、休憩を挟んで25分ずつの2作品の上演となっている。

『Adapting for Distortion』

静寂の中で暗転したかと思うと、小さな光のドットが一列になって増えていった。遠くから聞こえてくるような雨音がだんだん強くなってくると、白い衣装にスキンヘッドの梅田が静かに中央に立つ。音響は一変してリズミカルなデジタル音に変わり、光の直線やグリッド線の激しい変化で舞台が埋め尽くされていった。彼自身の身体も生きたスクリーンとなり、2次元世界の3D映像の中にいるような不思議な感覚に襲われた。

『Haptic』

黒い衣装をまとった彼の体が、多彩な色の中でうねりながら、まるで浮き上がっていくようだった。

umeda2.jpg
意外にも彼は、自分の表現にダンスは不必要かもしれないと考えているという。納屋橋会場では実験的インスタレーションも行っている。彼の舞台は、ドンドン進化していきそうだ。

(アートマネジメント実践講座研修生I.K)



コンタクト・ゴンゾ『non title』(9/18-20開催)

コンタクト・ゴンゾのパフォーマンスはかなり独特です。コンタクト・インプロビゼーションというメソッドのダンスを軸に、彼らは接触(コンタクト)行為を非常に激しいものへと変化させました。そのためパフォーマンスが「殴り合い」と称されています。
彼らは、気持ちの中で「押す」と「殴る」をイコールにすることで、アウトプットする表情がなくなるのだと語っています。もちろん信頼関係を築いた上での行為でありますが、痛みを感じる行為ゆえに、観客は時として目を背けてしまいます。

gonnzo.jpg

今回の3日連続のパフォーマンスは、それぞれ、梅田哲也(アーティスト、9/18)・姫野さやか(ドラマー、9/20)とのコラボによるものと、彼らのみのパフォーマンスと毎回違う演出で楽しめました。「コンタクト」を単に彼らの身体の接触としてとらえるか、コラボしたアーティストや観客を含むすべての人の出会い(コンタクト)ととらえてみるのも面白いかもしれませんね。

(アートマネジメント実践講座研修生S.K)


 

日本で初めての本格的オペラハウス誕生
 1992年(平成4年)10月30日、待ち望んでいた芸術の殿堂「愛知芸術文化センター」が名古屋の栄に誕生しました。このセンター内に国内初のオペラハウスである3面舞台の「愛知県芸術劇場」大ホールができました。どうしてオペラハウスと呼ばれたかというと、3層のバルコニーからなる馬蹄型ホールであること、舞台が主舞台、側舞台、後舞台の3面舞台であること(これにより複数の舞台のセットが可能で迅速な舞台転換が可能。また、毎日演目を変える事が可能)、さらに舞台設備が大規模であることなどがその理由です。(今では同様のオペラハウスは新国立劇場やびわ湖ホール、兵庫県立芸術文化センターなど増えました。) 

大ホール舞台.jpg
愛知県芸術劇場大ホールの3面舞台

 

大ホール客席.jpg
大ホールの馬蹄形客席

 

東西の芸術が融合した歴史的な公演
 この劇場の杮落としがバイエルン国立歌劇場によるオペラ『影のない女』(R.シュトラウス作曲)でした。この公演は、市川猿之助が歌舞伎の手法を用いて演出を行うということで大変話題を呼びました。また、R.シュトラウスを得意とする名指揮者サヴァリッシュとバイエルン国立歌劇場の引越し公演ということでチケットの争奪戦ともなりました。筆者も朝からプレイガイドの列に並び、かろうじてチケットを確保しました(S席は40,000円でした)。また、当日は、満席となった大ホールの豪華な客席で、わくわくしながら幕が上るのを待っていたことを思い出します。
 さて、公演も大変優れたものでした。市川猿之助演出は歌舞伎の所作に基づく動きやすばやい場面転換、衣装やメイクなど徹底しており、東洋的で幻想的な舞台を創り上げていました。また、サヴァリッシュも大編成のオーケストラから豊かな響きを引き出すとともに、歌手も役柄を見事に演じていました。まさに日本のオペラ上演史の1ページを飾る伝説的な公演であったと言えるでしょう。

 

オペラ『影のない女』
 R.シュトラウスのオペラで有名なのは『ばらの騎士』や『サロメ』ですね。次が『エレクトラ』か『ナクソス島のアリアドネ』でしょうか。今回の『影のない女』は、R.シュトラウスのオペラの中では頂点をなす作品と言われますが、めったに上演されません。その理由は、台本が難解であること、メルヘン的であるため演出が難しいこと、歌手の負担が大きいことなどが考えられます。国内でも上演は珍しいのですが、今年度は5月に新国立劇場での上演があり、さらに来年2月にはマリインスキー・オペラ来日公演と、最近ようやく脚光を浴びてきたようです。

 02-aac3.jpg 第1幕より  夢の誘惑
染物師バラクの妻から影を奪いとるため、皇后と乳母は魔法を使って幻想の世界を作りだす。夢の誘惑にうっとりとなるバラクの妻。(写真:木之下 晃 AAC No.3より)


 RStrauss.jpg リヒャルト・シュトラウス(1864―1949)

11-aac3.jpg 第2幕より  ファンタジー
染物師バラクの妻から影を奪い取るのに失敗した皇后と乳母が霊界に戻っていくシーン(写真:木之下 晃 AAC No.3より)

 このオペラの台本は文豪フーゴー・フォン・ホフマンスタールです。R.シュトラウスは彼との共同制作で名作オペラを多く残しています。ストーリーはおとぎ噺風で、2組の夫婦(皇帝と皇后、染物師バラクとその妻)が試練を経て、真の愛で結ばれるというもので、モーツァルトの「魔笛」の世界を20世紀に蘇らせたものと言えるでしょう。ところで『影のない女』の「影」とはどういう意味でしょうか?皇后が子どもができないのは影がないためであるということからすると、「母親であることの証」あるいは「人間となることの証」と言えるでしょうか。皇后は「影」を必死に手に入れようとします。先日上演されたばかりのトリエンナーレオペラ「ホフマン物語」で、「影」を失ってしまったホフマンのことも連想されますね。あらすじは複雑となりますので省略します。ビデオを見てのお楽しみといたしましょう。

 

影展示資料.jpg
 なお、当時のポスター、パンフレット、写真、新聞記事なども展示しますので、ぜひご来場ください。先着30名ですので、満員の場合はお断りすることもございます。また、オペラの雰囲気を楽しむため、途中入場はご遠慮いただきますので、お早めにお越しくださるようお願いします。
 (A.M)

 

 酷暑ばかりの長い夏がようやく終わりを告げ、一気に秋が深まった感がありますが、このさわやかな季節、お昼のひとときを当センターの2階フォーラムで音楽でお楽しみいただくのは、いかがでしょうか。

10月27日(水)に開催される第52回フレッシュコンサートに出演予定の守矢花梨さんから、出演に際しメッセージをいただきました。

 

守矢花梨さん.jpgはじめまして、守矢花梨です。現在桐朋学園大学のカレッジディプロマコースに在籍中です。在学中に右手に障害が発症し、今は左手のピアノ曲を勉強しています。

今回の曲目はブリューメンフェルトのエチュードOp.36、スクリアビンのプレリュードとノクターン、バッハ=ブラームスのシャコンヌBWV1004です。どの曲も左手のみで演奏される曲ですがバッハ=ブラームスやスクリアビンはコンサートでもしばしば演奏される名曲です。

ブリューメンフェルトのエチュードもとても愛らしく熱情もある曲で左手のピアノ曲の特徴をあますところなく伝えています。このように普段なかなか聴けないようなプログラムになっておりますのでぜひ会場に足をお運び下さい。

 


 

 

 

 

 私たちスタッフも守矢さんのピアノが当センターのフォーラムに響き渡るのをとても楽しみにしてます。大勢のお客様と共有できると嬉しいですね。それでは会場でお会いできるのを楽しみに!

 

 

(K.K.)
 

 今回で13回目を迎える演奏会は、【ベートーヴェン・プログラム】です。アートライブラリーでも、演奏される3曲、1:交響曲第8番ヘ長調(作品93)、2:序曲「レオノーレ」第3番(作品72b)、3:交響曲第5番ハ短調(作品67)を中心に、CD、LD、図書、雑誌などの関連資料を集めました。

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 まずはCD。アートライブラリーにはベートーヴェンのCDがたくさんあります。演奏楽団も指揮者もさまざま。ベルリン・フィル、ウィーン・フィルなど世界各地の楽団の演奏や指揮者による違いを聞き比べてみるのも面白いですね。

 

  昔懐かしいLPもあります。アナログ録音をお楽しみいただけます。デジタルとの音の違いを研究してみるのも面白いかもしれません。
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 映像資料のLDやDVD。コンサート風景を楽しみながら音楽を聴くことができ、CDやLPとはまた違った臨場感を味わえそうですね。
今回の指揮者はネルロ・サンティです。彼は事業団の招聘で'94年に大ホールでローマ歌劇場の「椿姫」、「トスカ」を振っています。サンティ指揮のベートーヴェン以外のCDやLPも集めてみました。指揮者に魅かれた方はこちらもどうぞ。
NHK響3.JPG

 

 そして、図書。なんと「交響曲第5番(『運命』)」だけを取り上げた図書がアートライブラリーにありました! 
その他、ベートーヴェンの交響曲がテーマの本、ベートーヴェンの生涯に関する本、またNHK交響楽団に関する本もあります。
NHK響5.JPG 


 雑誌記事もあります。古い記事でも普遍性のある内容で、興味深いものがいくつか見つかりました。『運命』は、やはり「超名曲」なのですね。よく知っている曲について、雑誌記事などで改めて勉強してみると、新しい発見をもって今までとは違った感覚で聴くことができるかもしれませんね。
NHK響6.JPG

 

 演奏会は10月30日(土)。アートライブラリーの展示は10月1日から実施しています。演奏会に足を運ばれる方もそうでない方も、一度ぜひライブラリーの所蔵資料をご覧になってみてくださいね。
(ライブラリースタッフK.M)

AAPPACって何?

ロゴマーク.jpgAAPPAC(Association of Asia Pacific Performing Arts Centres:アジア太平洋パフォーミングアーツセンター連盟)は、アジア太平洋地域の主要な総合芸術文化施設で構成される連盟です。1996年に発足し、現在、21カ国1地域73団体で構成されています。
日本では、愛知芸術文化センター、新国立劇場、サントリーホールの3施設が加盟しています。当センターは、AAPPACの設立当初の中心的メンバーです。
海外では、オーストラリアから、シドニー・オペラハウスやメルボルン・アーツセンター。
中国から上海大劇院、香港文化センター。台湾から蒋介石文化センター。韓国からソウルアーツセンター。シンガポールからエスプラネードシアター。など各国を代表する劇場が参加しています。


会議風景.jpg年次総会が開催されました

本年9月15日から17日まで、当センターで年次総会が開催されました。当センターでは1999年以来2回目の開催となります。
今回は、あいちトリエンナーレの開催に併せて総会を誘致したものです。この期間中、パフォーミングアーツについての活発な情報交換やディスカッションが行われました。

そのプログラムの一部を紹介しましょう。

・ 基調講演「アジア太平洋地域における文化交流圏の形成について」(講師:青木保、元文化庁長官)
・ 企画担当者会議
・ ディスカッション「芸術センターと周辺地域との関係」
・ ディスカッション「先端的・先進的な作品へのアプローチについて」 など

会議やディスカッションを通して、他国の文化や施設についての理解を深めるとともに、パフォーミングアーツの分野での課題について話し合いました。
会議は英語で行われ、日本語⇔英語は通訳をつけました。筆者は英語が駄目で通訳つきでコミュニケーションをしましたが、国際社会での英会話の重要性を痛感しました。
この他にも、オプショナルツアーも行われ、トリエンナーレ美術展見学、オペラ「ホフマン物語」ゲネプロ見学、文化ツアー(名古屋城、産業技術記念館)なども楽しんでいただきました。
最後に、来年開催のメルボルン(オーストラリア)で再会することを期待して、3日間の充実した会議に別れを告げました。


展示風景.jpg今回の展示内容は?

AAPPACの概要、年次総会の模様をパネルで展示するとともに、加盟施設のパンフレット、記念誌、グッズなどを展示しています。また、台湾の蒋介石文化センター、上海大劇院、新国立劇場及びサントリーホールの4施設の映像を随時上映しています。(台湾と上海の映像は日本語字幕はありません。)
アジア太平洋地域の舞台芸術について触れるよい機会です。10月11日(月・祝)まで展示しています。ぜひご来場ください!

(A.M.)
 

  「ルネッサンス・バロック音楽関連映像上映会」<10月19日― 11月5日、アートプラザビデオルーム>の関連事業として、10月30日(土)14時からウンガレスカのミニライブが開催されます。
 ウンガレスカは愛知県を中心に主に中世ルネサンス時代のヨーロッパの音楽を演奏する古楽奏集団です。ウンガレスカという名前は、マイネリオ作曲の「ウンガレスカとサルタレロ」という曲をよく演奏していたところからつけられたとのこと。ウンガレスカは、ハンガリーの舞曲でもあるようです。

 ウンガレスカホームページ ↓
 http://ungarescha.untokosho.com/index.html

 このウンガレスカのリハーサルが10月3日、芸術文化センターで行われました。メンバーが5人集まり、様々な珍しい楽器をたくさん持ってきて練習しました。初めて見る楽器ばかりで、どんな音がするのでしょうか。興味津々でした。その楽器の一部を紹介しましょう。

ハーディー・ガーディー.jpg◇ハーディー・ガーディー Hurdy gurdy

別名手廻しヴァイオリン。弓の代わりにハンドルを回すと木の円盤で弦を擦り、ボタンのような鍵盤で弦を押さえて旋律を鳴らせます、時にリズミックなノイズを出し伴奏します。バグパイプのような音を出します。放浪の大道芸人がよく使用したとのことです。今でもフランス、ハンガリーなどの国の伝統楽器として使用されることが多いです。

ハンマー・ダルシマー.jpg◇ハンマー・ダルシマー Hammer dulcimer
箱型の共鳴体に張られた多数の金属製の弦を、ばちで打って演奏します。金属製の弦を打って音を出す点や、音色の類似性から「ピアノの先祖」と呼ばれることもあります。同系の楽器として、西南アジアのサントゥール、ハンガリーのツィンバロムなどがあります。音の減衰が長く、繊細で美しいのが特色。

ゴシック・ハープ.jpg◇ゴシック・ハープ Gothic harp
中世のハープ。現在のハープと異なり、音を換えるペダルはありません。またアイリッシュハープのように半音を換える器具もありません。とても繊細で音の立ち上がりがクリアで、音の形をそのまま再現します。






 

 まだまだ、いろいろ珍しい楽器がありましたが、ライブでのお楽しみといたしましょう。

 筆者もリハーサルの一部を見学させていただきました。
 「聖母マリアの賛歌」では、民衆のマリアへの敬虔な思いが伝わってきました。カトリックの聖職者が歌うグレゴリア聖歌のような静的なものではなく、動的であり、踊りたくなってくる音楽です。民衆の素朴な思いが感じられますね。中世の農村生活が思い浮かぶような心地がしました。
 「シチリアーノ」では、美しく懐かしいメロディーが、ゴシック・ハープ、ハーディー・ガーディーとリコーダーで奏でられ、余りの懐かしさと美しさにうっとりしてしまいました。これはどこの民謡だったのだろうかと考えていたら、レスピ―ギ作曲の「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3番の曲ということを思い出しました。レスピーギは16世紀イタリアの作者不詳のリュート曲から編曲したのですね。この曲はTVCMでも流れたことがあります。また、平原綾香さんも編曲して歌っていますね。なお、シチリアーノとは、ルネサンスからバロック音楽に遡る舞曲の一つで、ためらいがちにたゆとう曲想と付点リズムが特徴的です。

ウンガレスカ.jpg
リハーサル風景

 ライブでは、この他にも、ドゥクチア、ヴォルタなども演奏されます。
古楽器の演奏を聴くと、現代の楽器から失われてしまった何かを強く感じます。懐かしさというか、素朴な暖かさが心の中に蘇ってきます。
 めったに聴く事ができない貴重な演奏ですので、ぜひお楽しみください。なお、会場の都合で、先着30名となっていますので、ご理解いただききますようお願いします。
 さらに、上記の上映会期間中には、ウンガレスカが普段使っている珍しい古楽器も展示いたします。こちらもお楽しみください。

(A.M.)