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ただいま、アートプラザ・ビデオルームでは『マクベス』に関するビデオ上映会が開催中です。『マクベス』をテーマとしたオペラ、演劇、バレエ、映画などが勢ぞろいです。愛知県文化振興事業団の主催公演ヴェルディ作曲オペラ『マクベス』(3月17日コンサートホール)の関連企画です。 

『マクベス』と言えば、『ハムレット』『リア王』『オセロ』と並ぶ、シェイクスピアの4大悲劇の一つです。この中では最も簡潔でドラマティックな構成のため、人気が高く、上演機会が多いことでも知られています。多くの演出家や作曲家、映画監督などの、創作意欲をかきたてるのでしょうか。様々なジャンルの作品が生み出されています。

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ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)

 

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"Macbeth seeing the ghost of Banquo"  Théodore Chassériau(1819-1856)

 

イタリア・オペラの作曲家ヴェルディは、生涯で3回、シェイクスピアに挑んでいます。最初がこの『マクベス』、次が『オテロ』、最後が『ファルスタッフ』です。オペラ『マクベス』はヴェルディ若かりし頃(1847年初演、34歳)の力作です。原作自体は、オペラ向きとは言い難い作品だと思います。通常オペラには男女の愛がつきもので、「愛の2重唱」が聴き所ですが、この「マクベス」には、悪と陰謀に満ちた夫婦や魔女など血なまぐさい、どろどろした世界が描かれています。ヴェルディはドラマの展開に強い関心を持ったのでしょうか。甘い愛のドラマがないためか、聴衆には不人気だったようです。ヴェルディは自信作だったのですが・・・。その後、改作もしています。シェイクスピアのドラマをヴェルディがどのように音楽化したかという観点でご覧いただくとおもしろいでしょう。演劇のお好きな方にはぴったりのオペラです。
今回の上映会では6種類の異なったオペラ作品を用意しましたので、演出の違い、歌手の違いなどをお楽しみください。一昔前の演出では、時代背景にあった豪華な舞台や衣装による写実的な演出が主流でしたが、最近の演出では時代を現代に移したり、抽象的な舞台装置を用いて、聴衆の想像力にゆだねるなど様々な工夫をこらしています。オペラの演出も時代とともに変遷するのです。

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ジュセッペ・ヴェルディ(1813-1901)

 

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" Macbeth and Banquo meeting the witches on the heath"
Théodore Chassériau(1819-1856)

 

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Lady Macbeth sleepwalking by Henry Fuseli(1781-1784)


 このほか、ソビエトの作曲家ショスタコーヴィチ(1906-1975)のオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』も衝撃的な作品です。マクベス夫人(野心家の悪女)という名が示すとおり、女主人公は不倫を見つかったため、義父と夫を殺害し、愛人とシベリアに送られるが愛人に裏切られ、自殺するというすさまじいストーリーです。スターリンはこのオペラを見て激怒しました。余りに過激で品がないからでしょうか。上演禁止となり、ショスタコーヴィチの生命まで危ぶまれる事態を引き起こしたのです。その後、彼は『カテリーナ・イズマイロヴァ』という名で改作を行い、刺激的な音楽や場面を減らしたため、当局に受け入れられることとなりました。両者を比較しながら改作の過程をたどるのもおもしろいでしょう。
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ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)

 

このほか、日本的な演出で世界を魅了した『Ninagawaマクベス』やマクベスの時代を戦国時代に移した黒澤明監督の作品で三船敏郎の熱演で有名な映画『蜘蛛巣城』も必見です。
(A.M)
 

[ 映像 ]

愛知芸術文化センター・文化情報センターでは、1992年の開館以来、一年に一作品のペースで「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」を制作しています。

 

去る1月25日(水)に開幕したオランダの「第41回ロッテルダム国際映画祭」(2月5日(日)まで開催)に、このシリーズの第20弾として制作された、牧野貴(まきの・たかし)監督の『Generator』(2011年)が出品され、コンペティション短編部門で最高賞に相当するタイガーアワードを受賞しました。

2006年に設立された短編部門のタイガーアワードを、日本人が受賞するのは、今回が初めてという快挙です。


「ロッテルダム国際映画祭」は、1972年に第一回が開催され、ヨーロッパでは来場者数(約35万人)や上映本数(約700本)の規模では「ヴェネツィア国際映画祭」を越え、「カンヌ国際映画祭」や「ベルリン国際映画祭」、「ロカルノ国際映画祭」などと並ぶ、最も重要な映画祭の一つに数えられており、非商業的な自主制作映画(インディペンデント映画)や実験映画、映像アート作品の普及や支援に大きな役割を果たしてきたことで、高く評価されています。

 

『Generator』は平成22年度の「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」として制作され、昨年開催した「第16回アートフィルム・フェスティバル」(2011年11月22日(火)‐12月4日(日)開催)で初公開されました(上映日は12月3日(土)、4日(日))。

「オリジナル映像作品」は、映像表現の新しい可能性を切り開くことを意図し、“身体”を統一テーマに設定して、毎年、気鋭の作家を登用して実験的な映像作品を制作する企画ですが、牧野監督は人間が作り出した都市の構造が、身体の部位や器官がなす構造と類似していることに着目し、その両者をパラレルに関係づけるという構想から『Generator』を製作しました。


作中には、昨年3月11日(金)に起きた東日本大震災前の東京を、空撮でとらえた映像が登場。
その映像に落下する粒子や流動する液体といった有機的イメージがオーバーラップし、牧野監督の表現に特徴的な抽象と具象が融合する独特の映像世界が現出しています。
また牧野監督作品で音楽を提供してきたジム・オルークが本作品でも音楽を手掛け、荘厳さと緊張感を生み出しています。


12月4日(日)の初公開に合わせて行われたトークで、牧野監督は津波や原発事故による放射能汚染を想起させてしまうのではないかと悩んだが、当初のプランどおり完成させたと、製作時の苦悩を語っています。

ロッテルダムでは「震災によって危機的な状況にある自然環境の脈動と、それが併せ持つ危険性を描いている」と評価され、受賞に到りました。

 

generator&牧野監督.jpg 

左:牧野貴『Generator』(2012年)
右:「第16回アートフィルム・フェスティバル」、『Generator』プレミエ上映での牧野監督によるトークの様子

 

なお「オリジナル映像作品」は、当センター1階アートライブラリーのビデオ・ブースで、リクエストにより鑑賞できます。

また、地下2階アートプラザでのアンコール上映も計画中です。詳細は決まり次第、改めてお伝えします。

 

 

(T.E)

 アートプラザ・ビデオルームで開催中の「バレエ&ダンスの魅力 ビデオ上映会」が大変盛況です。ローザンヌ国際バレエコンクールで1位に輝いた菅井円加さん(17)の快挙のおかげでバレエへの関心が高まっているのでしょうか。

 今回の上映会では、『白鳥の湖』などのクラシック・バレエからモダン・バレエ、最先端のコンテンポラリーダンスに至るまで幅広いジャンルを取り上げました。すべての作品を観ればバレエ・ダンスの変遷がわかるのではないでしょうか。

今回の演目でお勧めの作品を2つ紹介しましょう。

バレエ1.jpg  ピナ・バウシュ(1940-2009)  写真:Leafar

 一つ目が、ピナ・バウシュ振付の『オルフェオとエウリディーチェ』です。
ピナは演劇とダンスの境界線を取り払った「ダンス・シアター」という独自な様式で大変有名です。2009年6月に亡くなりましたが、これはその生涯で唯一テレビ撮影とそのDVD化を許した舞台です。
歌い手とダンサー達が舞台に共に立ち、音楽とダンスが同時進行するという、美しいステージによるダンスオペラです。グルック作曲のオペラとダンスが同時に2倍楽しめるという豪華な舞台ですね。パリオペラ座のエトワールを始めとするダンサーも最高です。この舞台は「この世のものとは思えない」と絶賛されたそうです。ぜひご覧ください。

 

バレエ2.jpg アンジュラン・プレルジョカージュ(1957-)   写真: Raphaël Labbé


 二つ目が、アンジュラン・プレジョカージュ振付のパリ・オペラ座バレエ団による『ル・パルク』です。
この作品は2008年5月に愛知県芸術劇場大ホールでの公演でご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
 モーツァルの典雅な美しい音楽が流れる中、男女の恋物語が進みます。とてもシンプルな舞台ですが、モーツァルトの音楽とダンサーの踊りが見事にマッチングし、幻想的で美しい舞台が生み出されました。
音楽がお好きな方にもぴったりの作品です。

 

 その他、モーリス・ベジャール(1927-2007)、ジリ・キリアン(1947-)、ジョージ・バランシン(1904-1983)、ジョン・ノイマイアー(1942-)、ローラン・プティ(1924-2011)など代表的な名振付家たちの作品やドキュメンタリーが次々と上映されます。どうぞお楽しみください。

 
バレエ3.JPGモーリス・ベジャール(1927-2007)   写真: Erling Mandelmann
 
 

バレエ4.jpgジョージ・バランシン(1904-1983) 


 

 バレエ5.jpgローラン・プティ(1924-2011)   写真:Thomas Peter Schulz


 最後に、文化情報センターが企画制作するジョセフ・ナジの「カラス」公演のご案内です。ナジはフランスを拠点として世界で活躍する振付家・ダンサーです。今回は、ジャズ・ミュージシャンのアコシュ・セレベニとのコラボレーションで,全身を筆にしたアクション・ペインティングを楽しむことができます。ダンスだけでなく、音楽、美術、書など様々なアートに関心のある方にとっては必見の舞台です。ぜひお越しください。
なお、公演日までの間、プロモーション映像を当センター地下2階マルチビジョンで毎時13分-20分(9時台から18時台)の間上映しています。こちらもぜひご覧ください。

「カラス/Les Corbeaux」
◇ 日時 2月21日(火)19時、22日(水) 19時
◇ 場所 愛知県芸術劇場小ホール
◇ 料金 5,000円(前売り)、5,300円(当日) 全席自由


(A.M)
 

平成24年1月25日(水)に「第67回 フレッシュコンサート」を開催しました。

 

今回は、『マリンバで聴く名曲コンサート』と題して、Marimba Duo 風雅 (マリンバデュオ フウガ)の奥村律子さんと小玉麻依さんのお二人による演奏を160名を超える方にお楽しみいただきました。

 

fc67-1.jpg【左側から、小玉麻依さんと奥村律子さんです】

 

◎今回の演奏曲


アンコール曲を含めて6曲を演奏していただきました。

fc67-2.jpg【マリンバを奏でるお二人の動きのあるツーショット】

 

最初に、映画『オズの魔法使い』の『虹の彼方に(ハーロルド・アーレン作曲)』を演奏されました。この曲は、世界的に広く親しまれており、多くの演奏家が取り上げています。

 

続いて、「Marimba Duo 風雅」についての自己紹介の後、2曲目はヨハン・セバスチャン・バッハの鍵盤作品である『イタリア協奏曲 第3楽章』を演奏されました。

来場の皆さんは、お二人の奏でる深みのある豊かな音色に魅了されている様子でした。

 

3曲目と4曲目は、『涙そうそう(森山良子作詞・BEGIN作曲)』『上を向いて歩こう(永六輔作詞・中村八大作曲)』を続けて演奏されました。


演奏後、『鍵盤を打ち鳴らすバチを「マレット」といい、マレットに様々なもの(毛糸など)被せたり、玉の大きさを変えることによって、音色を変えることができる。』という説明とともに、異なるマレットの音色の違いを実演していただきました。


---------マリンバのちょっぴり雑知識--------------------------------------------------------------------
☆マリンバの起源 
アフリカのバントゥー語群で、「リンバ」は木の棒を意味し、「マ」が多くの数を表す。「マリンバ」は多数の木の棒からなる楽器をあらわす。

☆マリンバの音域
通常は4オクターヴ、1980年代に5オクターヴが開発され、現在は5オクターヴ半のものがある。
                                                   (出典 フリー百科事典)

今回、お二人が使用したマリンバは、5オクターヴのものでした。
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また、来る2月28日(火)に初めての「リサイタル」を伏見で開催されるとの紹介もありました。
 

 
最後に、イタリア出身のモンティ作曲の『チャルダッシュ』を演奏していただきました。
『チャルダッシュ』は、マンドリンやヴァイオリン、ピアノなどで多く演奏され、また女子フィギュアスケートの浅田真央選手がフリースケーティング(2006‐2007年シーズン)に使用していたこともあり、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

演奏を終えたお二人に、温かい拍手が贈られました。

 

アンコールは、1972年(昭和47年)に世界中でヒットしたカーペンターズの『トップ・オブ・ザ・ワールド』を演奏していただきました。
皆さんから手拍子がおこり、会場が一体となったような素晴らしい雰囲気のコンサートとなりました。

 


来場の皆さんからは…


◎今回が初めての方々から

・『マリンバの柔らかい音が良かった。「マレット」の名前を初めて聞き覚えました。』《60歳台の男性》

・『正にフレッシュの言葉のままの演奏者、二人でした。マリンバの音色も多彩で美しく、他の楽器にないリズム感、自然の“木“の持つ柔らかな暖かい感じがとても心地よい時間を持てて、幸せ一杯。』《60歳台、女性》

・『鳥肌が立つような感激を受けました。』《70歳以上、女性》

 

◎いつも来られる方々から

・『調べの大切さを改めて知りました。息の合った二人に乾杯。』《70歳以上、女性》 

・『「虹の彼方に」、「チャルダッシュ」の演奏を聞いていると、なぜか涙が出てきました。』《60歳以上、女性》

・『楽器や演奏する姿をすぐ近くで見られ、楽器や音楽の説明が聞けてよかった。』《30歳台、不詳》

 
など、様々な感想をいただきました。ありがとうございました。

 

fc67-3.jpg≪Marimba Duo風雅 お二人からの出演後のメッセージ≫


奥村律子さん

本日は寒い中、足をお運びいただき、ありがとうございました。
未熟な演奏にもかかわらず、温かい拍手をいただき、マリンバの音色をもっと伝えたいと思いました。
これからもマリンバの柔らかく温かい音色を一人でも多くの方に聴いていただけるよう、活動していきます。
ありがとうございました。


小玉麻依さん

フレッシュコンサートに出演させていただき、ありがとうございました。
また、本当に多くの方々に演奏を聴いていただけたこと、嬉しく思います。
コンサートの間、本当に暖かい雰囲気の中で、こちらのほうが気持ちよく演奏させていただきました。
本当にありがとうございました。

 


さて、次回の「第68回 愛知芸術文化センター フレッシュコンサート」は、2月22日水曜日のお昼(12

:15-12:45)に10階フォーラム(県美術館前)で開催予定です。

『四本のフルートによるおいしいコンサート“フルーツパフェ”』と題して、Flutes♪(フルーツ)の4人の

皆さんによる「フルートアンサンブル」をお届けします。

当日、皆さんと会場でお会いできることを楽しみにしています。

 


◎ ○ ◎ お知らせです ◎ ○ ◎
 ※受付終了しました

平成24年10月から平成25年3月までの「フレッシュコンサート出演者」の募集締め切りは、平成24

年6月25日(月)となっています。ご応募をお待ちしています


(M.K)