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「ベルカント・オペラの魅力」 ビデオ上映会が開催中です。

2012年07月13日

 「ベルカント・オペラ」とは、19世紀前半の高度な歌唱技術を伴うオペラです。
代表的な作曲家はロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニの3人です。今回は、愛知県文化振興事業団主催の『ランメルモールのルチア』公演に関連して、ドニゼッティとベッリーニを取り上げました。
 この2人は、次に述べるとおり、性格も音楽も対照的です。なお、ドニゼッティのオペラが再評価されたのは、今世紀後半になってからで、マリア・カラスの功績とも言われています。

 

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ガエターノ・ドニゼッティ(1797-1848)

 ドニゼッティは、イタリアのベルガモに生まれました。彼は、大変多くの作品を作り、オペラは70近く作曲しました。彼の特技は、オペラの早書きです。『愛の妙薬』は上演に約2時間かかりますが、これをわずか2週間で書き上げています。『ランメルモールのルチア』には珍しく6週間もかけましたが、『連隊の娘』の第2幕に至ってはたった4時間で完成したと言われます。
 

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ヴィンチェンツォ・ベッリーニ(1801-1835)

 一方、ベッリーニは、シチリア島・カターニアに生まれ、34歳で亡くなった早逝の作曲家です。ベッリーニの音楽は気品があり、その息の長い流麗なメロディは、深い憂愁と情感を湛えて聴く人の胸を締めつけます。彼の音楽を愛したショパンは、ベッリーニの墓のそばに埋葬されたいと願いました。ワグナーも賞賛を惜しまなかったそうです。イタリアの作曲家のアリーゴ・ボイートは、「ベッリーニを愛さない人は、音楽を愛さない人だ」とまで言っています。

 

 さて、今回の上映会の目玉は、ドニゼッティの『ランメルモールのルチア』です。これは、イタリア・オペラの屈指の名作で、美しい旋律にあふれています。
また、主役のソプラノ歌手の名技を最大限に見せるため、最終幕に、悲劇に耐えきれず精神錯乱して、コロラトゥーラ(速いフレーズの中に装飾を施した旋律)で曲芸的アリアを歌うという、「狂乱の場」でも有名です。


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「ルチアの六重唱」のカリカチュア (1900年頃)


 今回の上映会では、『ルチア』の4本のビデオを用意しました。サザーランド、デヴィーア、ボンファデッリ、ネトレプコの4人の歌姫の競演です。この中では、ネトレプコが容姿・歌唱とも最高ですね。メトライブ(メトロポリタン歌劇場の公演)として、映画館でも上映されました。


 ベルカント4.jpg  photo: Marcimarc 
アンナ・ネトレプコ(1971-)

 愛知県文化振興事業団の公演では、ルチア役を日本を代表するソプラノ歌手の一人である佐藤美枝子さんが演じ歌います。佐藤さんは、オペラ『ファルスタッフ』公演(平成20年、愛知県文化振興事業団主催)でもその輝かしい歌唱で愛知の聴衆を魅了しました。佐藤さんのコロラトゥーラが楽しみですね。

 なお、今回ご紹介できませんでしたが、ドニゼッティのオペラ「アンナ・ボレーナ」は、ヘンリー8世の愛人、アン・ブーリンを描いたオペラです。次回の「シェークスピア歴史劇」映像上映会で、ネトレプコ主演の映像(英語字幕)を上映します(8月17日(金)14時30分から)ので、どうかお見逃しなく。

A.M