愛知芸術文化センター・文化情報センターでは、1992年の開館以来、一年に一作品のペースで「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」を制作しています。
去る1月25日(水)に開幕したオランダの「第41回ロッテルダム国際映画祭」(2月5日(日)まで開催)に、このシリーズの第20弾として制作された、牧野貴(まきの・たかし)監督の『Generator』(2011年)が出品され、コンペティション短編部門で最高賞に相当するタイガーアワードを受賞しました。
2006年に設立された短編部門のタイガーアワードを、日本人が受賞するのは、今回が初めてという快挙です。
「ロッテルダム国際映画祭」は、1972年に第一回が開催され、ヨーロッパでは来場者数(約35万人)や上映本数(約700本)の規模では「ヴェネツィア国際映画祭」を越え、「カンヌ国際映画祭」や「ベルリン国際映画祭」、「ロカルノ国際映画祭」などと並ぶ、最も重要な映画祭の一つに数えられており、非商業的な自主制作映画(インディペンデント映画)や実験映画、映像アート作品の普及や支援に大きな役割を果たしてきたことで、高く評価されています。
『Generator』は平成22年度の「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」として制作され、昨年開催した「第16回アートフィルム・フェスティバル」(2011年11月22日(火)‐12月4日(日)開催)で初公開されました(上映日は12月3日(土)、4日(日))。
「オリジナル映像作品」は、映像表現の新しい可能性を切り開くことを意図し、“身体”を統一テーマに設定して、毎年、気鋭の作家を登用して実験的な映像作品を制作する企画ですが、牧野監督は人間が作り出した都市の構造が、身体の部位や器官がなす構造と類似していることに着目し、その両者をパラレルに関係づけるという構想から『Generator』を製作しました。
作中には、昨年3月11日(金)に起きた東日本大震災前の東京を、空撮でとらえた映像が登場。
その映像に落下する粒子や流動する液体といった有機的イメージがオーバーラップし、牧野監督の表現に特徴的な抽象と具象が融合する独特の映像世界が現出しています。
また牧野監督作品で音楽を提供してきたジム・オルークが本作品でも音楽を手掛け、荘厳さと緊張感を生み出しています。
12月4日(日)の初公開に合わせて行われたトークで、牧野監督は津波や原発事故による放射能汚染を想起させてしまうのではないかと悩んだが、当初のプランどおり完成させたと、製作時の苦悩を語っています。
ロッテルダムでは「震災によって危機的な状況にある自然環境の脈動と、それが併せ持つ危険性を描いている」と評価され、受賞に到りました。
左:牧野貴『Generator』(2012年)
右:「第16回アートフィルム・フェスティバル」、『Generator』プレミエ上映での牧野監督によるトークの様子
なお「オリジナル映像作品」は、当センター1階アートライブラリーのビデオ・ブースで、リクエストにより鑑賞できます。
また、地下2階アートプラザでのアンコール上映も計画中です。詳細は決まり次第、改めてお伝えします。
(T.E)