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「第17回アートフィルム・フェスティバル」牧野貴監督『2012』を3D上映します!!

2012年12月14日
[ 映像 ]

愛知芸術文化センター12階のアートスペースAでは、現在「第17回アートフィルム・フェスティバル」を開催中です(12月16日(日)まで)。
例年に比べ寒さが厳しい中、連日、熱心なお客様に足を運んでいただいており、スタッフ一同、大変嬉しく思うとともに、映画館では上映が難しいアート系の作品を集中的に紹介するこの上映会が、名古屋の冬の風物詩として定着しているのだな、という実感を得ています。


前半に行った「特集1 フランス・ドキュメンタリー・セレクション2012」は、アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会の協力により、フランス本国のアンスティチュ・フランセから、直接DVDを送ってもらい、上映を行いました。そのため大半の作品がフランス語原語、英語字幕付きという形での上映になりました。
一部、言語的なハンディがあるので内容が十分に理解できない、というご指摘もいただきましたが、今回は映画の他、ダンス、音楽、美術など、芸術に関するアート系ドキュメンタリーをセレクトしたこともあり、画面を追っていればほぼ内容が伝わってくる作品が多く、大半の観客の方々から非常にいい反応をいただきました。


特に作品制作の現場を記録した作品は、画面に登場する人物たちのやり取りから、そこで何が起こっているか、言葉の壁を越えて伝わってくるものがあったといえるでしょう。
例えば、ゴダールやトリフォーらとともに、ヌーベルヴァーグと呼ばれる一群の作家たちの一人に数えられるエリック・ロメールの、『夏物語』(1996年)の制作過程を時系列に即して記録したジャン=アンドレ・フィエスキの『「夏物語」ができるまで』(2005年)では、撮影時に合図を送る小道具のカチンコを用いず、柔らかな感触で手を叩くことでスタートを指示する様が記録されていました。
ロメール作品の極めて自然な画面のニュアンスは、こんなところから生まれていたのだなと思うと、その創作の秘密の一端に触れた驚きと喜びが観る者に訪れます。


続く「特集2 松本俊夫「蟷螂の斧」三部作一挙上映+初期ビデオ・アート探求」では、日本において映像表現の先端的な動向を常に切り開いてきた松本俊夫が、オムニバス形式の映画に新たな可能性を探るべく挑んだ「蟷螂の斧」三部作が今年、完結したことを受けて、これを一挙上映する愛知初となる上映の機会でしたが、松本俊夫の久々の新作への関心はもちろん、当センターが所蔵する1970?90年代の代表的な作品7本を上映するプログラム「松本俊夫作品集」にも、熱心な観客の方々にお越しいただけたことも、嬉しい反応でした。
また、これも初上映となる瀧健太郎監督のドキュメンタリー『キカイデミルコト ?日本のビデオアートの先駆者たち?』(2012年)は、日本のビデオ・アートの歴史を考察する映像作品という、これまでに類例のなかった企画で、国内のみならずアメリカ、ドイツ、韓国といった海外にも取材の足を伸ばしたこの労作は、9日(日)の上映終了時には、来場した瀧監督に向け観客から拍手が巻き起こるという、嬉しい光景も見られました。


引き続き行われるプログラムでは、15日(土)、牧野貴監督『2012』(2012年)ライブ上映で、牧野監督から今回、3D上映を試みたい、という提案がありました。牧野作品は過剰なまでに多重露光を行うことによって、画面自体に奥行き感といったものがありますが、3D効果によってそれがどのように深められてゆくのか、興味を惹かれます。この貴重な機会を、ぜひお見逃し無く!

2012.jpgなお、「第17回アートフィルム・フェスティバル」が終了した翌週、22日(土)には、学生による選りすぐりの優秀作を集めた「インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル2012 名古屋特別上映」が開催される運びとなりました。年末の慌ただしい時期となりますが、こちらにも足をお運びください。


(T.E)