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ロベルト&クララ シューマン展がアートライブラリーで開催されています

2010年11月18日

今年はロベルト・シューマンの生誕200年です。今回、クララとロベルトの夫妻に焦点をあて展示いたしました。ちなみにシューマンの妻クララは生誕191年です。今回の展示の見どころなどを紹介しましょう。

1 クララの自筆手紙を展示しています。
今回の一番の目玉がこれです。今回の展示のために愛知県立芸術大学の芸術資料館から借りてきました。実は、額の裏にも手紙があり、表と裏の両方から見ることができますが、展示の都合で表だけとさせていただいています。これは、クララが1851年10月にデュッセルドルフにて友人のマリアンヌにあてた手紙です。
内容は、スイスやベルギーなどへの旅の報告と近況を述べ、近況の中でフランツ・リストがシューマン夫妻を訪れ一緒にピアノの連弾を行ったことを書いています。他に友人の演奏会への忠告や子供たちの近況など日常的なことも多く述べています。

 
シューマン展2-1.jpg 額に入ったクララ自筆手紙
 
シューマン展2-2.jpg 拡大写真

2 ロベルトの自筆譜とクララの筆写譜を展示しています。(ファクシミリ、愛知県立芸術大学所蔵)
ロベルトの自筆譜は有名なピアノ協奏曲イ短調の冒頭部分を展示しています。ロベルトはモーツァルトと並んで自筆譜が美しいと言われています。楽譜を見ていると作曲家の情熱がほとばしってくるようですね。
一方、クララの方は歌曲「愛の魔力」(詩:ガイベル)の冒頭です。クララはピアニストとして大変著名で、当時のヨーロッパでは指折りの腕前として知られていました。作曲家としてはあまり知られていませんが、歌曲やピアノ曲などで美しい小品を作曲しています。この筆写譜はロベルトとクララのそれぞれの歌曲が収められています。(有名な「献呈」も収められています。)「2人の愛のアルバム」とも言えるでしょう。

 シューマン展2-3.jpg 
ロベルト:ピアノ協奏曲イ短調(冒頭)自筆譜(ファクシミリ)

 

シューマン展2-4.jpg
クララ:歌曲「愛の魔法」(冒頭)筆写譜

3 ロベルトのミステーク切手も展示しています。
 切手史上前代未聞の事件を紹介します。時は1956年、ロベルト・シューマン没後100年を記念し、東ドイツでは記念切手が発行されました。シューマンの肖像の後ろに楽譜を配した美しい切手です。ところが、よく見ると楽譜がシューマンではなくシューベルトの歌曲「さすらい人の夜の歌」の楽譜なのです。あわてた東ドイツは間違い切手を回収し、急いで正しい楽譜(歌曲「月の夜」)を配した切手を発行し直すのですが、すでに相当数出回ってしまったのです。現代では、ミステーク切手の方が高く売られているようです。
シューマン展2-6.jpg 東ドイツ発行のシューマン切手
【上段】間違い切手(今回の展示)   【下段】正しい切手

 なお、西ドイツでもシューマン切手を同時期に発行し、同様に背後に自筆譜が配されていますが、こちらはピアノ・ソナタ第一番の冒頭で、正しいものでした。
シューマン展2-5.jpg 西ドイツが発行したシューマン切手

4 ブラームスとクララ
 ところで、昨年、音楽映画「クララ・シューマン 愛の協奏曲」が封切られ、ご覧になった方も多いと思います。この映画のキャッチコピーが「シューマンとブラームス2人の天才に愛された女神」で、ブラームスとロベルトとクララの三角関係を描いています。監督がなんと、ヘルマ・サンダース=ブラームス、つまりブラームスの末裔なのですね。
 シューマン展2-7.jpg ヨハネス・ブラームス(1833-1897)

ブラームスがクララを愛していたのは事実ですが、その愛が恋愛感情なのか、プラトニックなものなのか、敬愛や友情のようなものなのか、あるいは片思いだったのか、よくわからない部分も多いようです。でも、クララがいたからこそ、ブラームスは多くの素晴らしい曲を作曲できたというのは事実です。ブラームスのロマンティックな作品を聞くと、クララへの満たされない想いが聴こえるような気がしませんか。ブラームスは生涯独身で、クララの死後、相次ぐようにして世を去ります。
 シューマン展2-8.jpgクララ・シューマン(1819-1896)

クララは、ロベルトの作曲を支え、7人の子どもを育て、ピアニストとして各地を演奏旅行します。ロベルトの死後はロベルトの作品を編集し、世に紹介するとともに、ブラームスの作曲をも支えるというスーパーウーマンだったのです。なお、ドイツではクララは大変人気があり、ユーロ切替前の昔のドイツマルク(100マルク)札にその肖像が描かれていました。 
 

今回の展示では、ぜひクララの生涯にも関心を持っていただきたいと思います。
展示は11月28日まで。

(A.M)