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あいちトリエンナーレ2010 野村誠『プールの音楽会』 水音気持ちよかった!

2010年09月10日

日差しは水の底まで届いている。水面のすぐ上に、雲ひとつない空。青と青に挟まれた世界で行われる今回のパフォーマンス。太陽に照らされ熱々になったコンクリートのにおいは、私を懐かしい気分にさせてくれた。プールサイドに体操座りして、これから行われるパフォーマンスを待つ。
ハーメルンの笛吹きのように、一列でリコーダーをならしながら野村誠さんを筆頭に音楽隊が入場してきた。彼らが順番に「ドッボーン」とプールに飛び込むたびに、舞い上がる大きな水しぶき。「びしょびしょだ!」もう、これからどれだけ水をかぶろうと平気になった。全部で7曲演奏された『プールの音楽会』から、数曲報告する。
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『バタ足クインテット』
二人の指揮者がプールの端と端に分かれ、水中に譜面台を立てて、指揮をし、その間を音楽隊がバタ足で行ったり来たり。指揮にあわせながらのバタ足。その光景だけでも十分におもしろいのに、途中で入る演者のブレス(息継ぎ)が、「はーーーっ」と必死! それがおもしろくて、おもしろくて。かなりの体力と肺活量を要する水中での演奏。演出だったのか?本気だったのか?観客もみな声を出して笑っていた。
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『ウォーター・トガトン』
竹筒を持った12人が竹と竹を打ち鳴らしたり、竹筒を水中に落とし込みながらプールの隅々を駆け回る。「トプーン、トプーン」12人がそれぞれの場所で竹筒を上下することで生まれるハーモニーは美しく、繊細な音に耳をそばだてた。
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『ペットボトル・ドラミング』
水面が平原だったなら、ペットボトルはそこに放たれた羊のよう。それぞれ手にもったペットボトルを打ち鳴らす音楽隊は羊飼い。ペットボトルの羊たちは、さすがに「メェ、メェ」とは言わいけれど、それぞれが波に揺られ、水面をたゆたい、ぶつかったり離れたり、それぞれが意思を持って音楽を奏でているみたいだった。
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『バタフライとゴジラ』。
ゴジラというのは野村さんの泳ぎのこと。小さい頃、水泳があまり得意ではなかった野村さん。バタバタと、もがきながら泳いでいる姿を見て、友人たちにまるでゴジラが暴れているようだと笑われた経験があり、野村さんは、その「ゴジラ泳ぎ」を肯定したかったそう。それが出発点となり、「ゴジラ泳ぎ」は水から生まれる音楽の共演という今回のパフォーマンスになったよう。野村さんの鍵盤ハーモニカのソロは、さすがだなぁと思わせる貫禄があった。
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『ウォーターパーカッションオーケストラ』
音楽隊は水中をぐるぐると行進。先ほどしんと静まり返っていた水面が、一気ににぎわい出す。キャラバンが浮き沈みするたびに、リコーダーも水中を浮き沈み。「ピーピー」「ぴょろぴょろ?」。リコーダーを水の中でならすとこんなにおもしろい音がするんだ!小さい時は、リコーダーを水の中でならすなんて、絶対叱られそうな気がしてできなかったのにな。そのせいか、なんだかこの音、とってもイタズラ心をくすぐられる。
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「楽しむ心」というのは、いつまでたっても失わないものなのかも知れない。
(アートマネジメント実践講座研修生 M.F)