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作品の創作過程を垣間見るおもしろさ3―AACサウンドパフォーマンス道場プレゼンテーション2

2009年09月17日
[ 音楽 ]

 9月10日(木)18:00-21:00、AACサウンドパフォーマンス道場プレゼンテーション2を行いました。

AAC道場プレゼン風景.jpg AACサウンドパフォーマンス道場は、愛知県が行っている若手アーティスト育成プログラムの1つで、7月の書類選考で入選となった4組のアーティストに、小ホールで作品上演の機会をつくり、その費用を負担します。加えて、このプロジェクトの特徴は、本公演に向けて、「アーティストのための舞台技術セミナー(8/21)」「プレゼンテーション1(8/22)」、そして今回の「プレゼンテーション2」という“ブラッシュアップ・プログラム”を経ていくことで、作品をより完成されたものへと作り込んでいくこと。(それぞれの様子はすでにブログにアップしてきましたので、ぜひあわせてお読みくださいね) 
 今回のプレゼンテーション2の会場は、本公演(10/10)と同じ、愛知県芸術劇場小ホールです。そのため、催しは、テスト上演とそれに対する選考員のコメントという形になりました。 


 本公演に至るまでにプレゼンテーションを重ねて、余分な部分をそぎ落としたり、構成を変更したり、別の演出を付け加えたりするところは、文章の推敲に似ているかもしれませんたとえばダンス公演の場合、止め通し稽古や通し稽古などのリハーサルで演出家や振付家がパフォーマーや舞台技術にダメ出しし、次の稽古のときには修正がなされ、本番に向けて急ピッチで創り込んで行きます。こうした作業を行えば行うほど、作品が締まって、完成度が上がります。 しかし、音楽を中心とした公演では、その時間や機会がなかなか持てないのが実情で、若いアーティストにはこうした経験のない人も多いと思います。道場では、作品創り自体に時間をかけ、そうした経験も積んでもらいたいと思っています。
 今回、プレゼンテーション2では、すべてのアーティストの上演がプレゼンテーション1から飛躍的に形となって現れてきました!そして限られた時間の中で舞台監督や音響、照明スタッフとも打ち合わせが進みました


AAC道場入選者プレゼンリハ風景.jpg
 最初は、Craftwife【クラフトワイフ】による 『Craftwife』。幕に映し出された大きな映像と、リアルな身体。プレゼンテーション1の時に指摘された「奥行き感」という課題を、紗幕の向こう側にパフォーマーがたたずむシーンから始まることで、みごとにクリアーしていました。ミニスカートをはいたパフォーマーが高い台に乗って体を揺らしてリズムを取りながらiPhoneを操作するテクノポップサウンドは、これまでのAACサウンドパフォーマンス道場には登場しなかったポップなパフォーマンス。その裏に、コピー/リアルやwifeという立場の問題が見え隠れしています。

craftwifeプレゼン2_1.jpg
 2組目は、coup d'etats【クーデターズ】による 『Frictional noise』。舞台上の白い紙に大きく描かれた曼荼羅もしくは植物を思わせるイラストは、鉛筆で描かれているため、パフォーマーの足や手は動きを重ねるたびに黒く泥がついたように汚れていきます。荒々しい息づかいの音と、一方でゆっくりとスローモーションのように動く映像は、とても迫力があり、イラストの上で、パフォーマーがひきずるたくさんのケーブルは、まるで血管のように、あるいは虫がうごめいた軌跡のように見えました。今回は衣装なしでしたが、本公演では白の衣装を用いるとのこと。パフォーマンス、映像のスイッチング、音のそれぞれの構成がこれからどうなっていくのか、楽しみです。

coup d'etatsプレゼン2_1.jpg
 そして、groove transformiste-INTER-DISCIPLINE;INTO-MUSIC-【グルーヴ・トランスフォルミスト―インター・ディシプリン;イントゥ・ミュージック―】 。今回なんと8名もの出演者、スタッフが(その多くが東京から)参加しました。本公演ではさらに2名増え、合計10名の大所帯のグループになる予定です。今回は、ピアノ2台、オーボエ、打楽器に電子音響が加えられ、音は非常に表情豊か。強い緊張感があります。さらに映像、ダンサー2名も加わり、作品の全体像が見えてきました。今後は、この豊饒な要素がどのように整理されるのか、期待が高まります。

groove transformisteプレゼン2_1.jpg

 最後は、池田拓実による『テーブルの音楽(Table Music)』。テーブル上に物を置いたり並べ替えたりする行為を映像で映しますが、置かれたものはちょうどそれが隠れる大きさの四角ですぐに覆われて見えなくなってしまいます。置いた時に出た音は録音され、加工され、合成され、どんどん変わります。プレゼンテーション1では机の上で行われるパフォーマーの手元と後ろに映された映像の両方を見比べることもできましたが、小ホールのように空間が広がると、もうパフォーマーの手元にはなかなか目が行きません。空間バランスと、物を置く手順や構成が、作品の仕上がりに大きく関わってくることは間違いないようです。
池田プレゼン2_1.jpg
 いかがですか?おもしろそう!と感じた作品はありましたか?一言で「サウンドパフォーマンス―音を用いたパフォーマンス」と言っても、その表現は本当に様々です。それが現代の音楽を取り巻くアートの一つの姿であり、このサウンドパフォーマンス道場のおもしろさの一つでもあります。
 10月10日の本公演では、観客の投票によって「オーディエンス賞」を決定します。ぜひ皆さんも気に入った作品に1票を投じてください。そして、選考委員が公開審査によって決定する優秀賞とのちがい、共通点も探してみてください。入場料は1,000円です。ただいま前売り券発売中!実は今回客席はかなり限られます。ぜひお早めにお買い求めください!!ご来場お待ちしています