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「AACサウンドパフォーマンス道場プロジェクト 特別公演」 終了しました!

2011年02月08日
[ 音楽 ]

“音を用いた新しいパフォーマンス作品”=サウンドパフォーマンスによる、多様なアーティストが一堂に会する公演を行いました。

出演者はなんと15組!!第1部、第2部に分けての上演でしたが、休憩も含めて約6時間もの長丁場で、お客様からは「とってもおもしろかった!!全部聴いたら疲れたけど。」という率直なお声を多数いただきました。

以下、特色あるパフォーマンス&アーティストを中心に、全公演を報告します。なかでも、音楽とただの音、作品か即興か偶然かなど、境界線を問うてくる作品は、いかにもサウンドパフォーマンス道場らしい、と思います。


第1部より
holon.jpgholon(幻燈ダンス)+ 福島諭(サウンド)「影向-YÔGÔ-」
名古屋を拠点に活動を続けるメディア・ダンス・パフォーマンス・ユニットholon(ホロン)と、新潟と東京を中心に活動する作曲家・演奏家の福島諭のコラボレーション。holonは、この道場第1回で、唯一の選考委員特別賞とオーディエンス賞をダブル受賞しました。また福島さんはやはり第1回道場で優秀賞を受賞。彼らは、このサウンドパフォーマンス道場で初めて出会い、以来、時々共演を重ねています。holonによる、OHPを使った独特の流動的で美しい光と、影のダンス。それに重なり寄り添う福島さんの音の響き。重層的な時空間に身をゆだねた時間でした。

MYK!!.jpgMYK!! (マイク!!)『CLAY MUSIC』
 今回もっとも若い、名古屋芸術大学サウンドメディアコース2年生を中心とするグループ。舞台に向かって右手(上手)にミュージシャン、左手(下手)にクレイ(粘土)の操作者が位置し、クレイ(粘土)の風景が変わっていく様子を撮影・加工して投影、音楽も演奏を加工して掛け合わせ、人の手によってユートピア(理想郷)が作られ壊れていく様を表現したコラボレーション。初めての舞台に取り組んだという成果の発表でした。


ikedamoe.jpg池田萠『improvisation for flute solo』
 “クラシック音楽のフルートの独奏のように見せかけながら、すべてが全くの偽り”、という作品。とはいえ、現代音楽のフルート独奏でも、息音を含む奏法や楽器の音と同時に声を出す発声奏法、キーを叩く打楽器的奏法など楽器音以外が多々登場する今日、ましてノイズや息や声が主流のサウンドパフォーマンス道場では、「偽り」には聞こえづらかったかもしれません。



mizunomikako.jpg水野みか子 『H-aki』 (演奏:中川さと子 (ヴァイオリン)、水野みか子(コンピュータ))
 こちらは、完全なヴァイオリンの生演奏と、そこに絡み、加工するコンピュータの音の共演。客席を四方から囲むようにスピーカーを設置し、音が動いたり、音に囲まれたりするように聞こえる曲でした。即興で進行する作品が多い中で、きっちりと構成されたこの作品は完成度の高さを感じさせました。なお水野さんは第1回から4回まで選考委員を務めていただきました。








tokuhisa.jpg徳久ウィリアム(ヴォイス)+竜巻太郎(ドラム)「即興デュオ」
 照明を全く使わない中でのヴォイスとドラムの即興デュオ。徳久さんはヴォイスソロで、第3回オーディエンス賞を受賞しています。暗闇の中、舞台左手から聞こえるドラムと、歩き回るいろいろな声。時に一瞬フラッシュが光りますが、目くらましとなって、ますます視覚には何も映りません。演奏が終わり挨拶のため出演者が登場したのですが、ドラムの竜巻太郎さんはタツマキ星人だったそうで、全身銀色でした。舞台上には2つの小屋?のようなものが置かれていて、左手側にドラムが載っていたのでした。

itou.jpg井藤雄一『fmi』
 コンピュータの画面がプロジェクターで投影され、画面にペンライトで光を当てると、その軌跡が映し出されたり、色彩が移り変わる作品。音もそれにつれて変化してゆきます。その色彩は、まもなく愛知県美術館で展覧会が始まるカンディンスキーの絵のように美しかったです。




adati.jpg足立智美(voiceほか)+田中悠美子(義太夫三味線)「即興デュオ」
声・各種センサー・自作楽器によるソロ演奏などで活動するパフォーマー・作曲家の足立智美。足立さんは第3回および第4回選考委員を務めていただきました。5年前に、「現代音楽家シリーズ第12回 : クリス・マン+足立智美(2005.7.12)」で、レクチャー&パフォーマンスを開催していますので、それをご覧になった方もいらっしゃると思います。
共演者は、義太夫三味線を携えて伝統から即興まで演奏を行う田中悠美子。田中さんは、大友良英、カール・ストーンら多様なミュージシャンと共演したり、ドイツ人演出家の第一人者ハイナー・ゲッペルス『Hashirigaki』、アメリカ前衛人形劇の寵児バジル・ツイスト『Dogugaeshi』などに出演する、希有な義太夫三味線演奏家です。当センターでも、10年前に、「特集公演 若手邦楽家の挑戦(2000.2.29-3.1)」で、野村誠、片岡祐介と一緒に義太夫節に基づく曲をオリジナルアレンジして演奏していただいています。
百戦錬磨の二人の即興演奏は、多種多様な音を自由に操り、勝手にやってるようで、ちゃんと計算された起伏がありました。音の洪水に飲み込まれ、あっと言う間の時間でした。


第2部
kaburagi.jpg鏑木章裕(サウンド)+舞澤智子・下垣浩(パフォーマンス) 『metamorphosen-変容-』
第2部は、ダンスとサウンドのコラボレーションから。白い木々に囲まれた沼のようなところから、命あるものが生まれ巣立っていく様子が描かれました。





baba.jpg馬場省吾+北條知子 『コンピュータ同士の将棋対局における棋譜読み上げ』
当日パンフレットに記されたアーティストの言葉によると、“現代の「何でもアートになり得る」という状況に立ち向かうための一つの術”、であるという作品。タイトルどおり、将棋の棋譜の読み上げを、通常と速めの速度で行っただけのパフォーマンス。賛否両論、デュシャンの「泉」のような作品になるか、といったところでしょうか。



kakio.jpg垣尾優(動き)×高村聡子(歌) 『息の先』
こちらは、音を聴くことについて考えさせ、実際に耳を澄まして音を聴くことを促す作品。歌の高村さんが様々な音について話し、またプロジェクターで多様な音が文字として投影され、実際にいくつかの音を立てます。一方、垣尾さんは、動くことによって様々な音を立て、高村さんが作るプロットに変化を与えていきます。




kurosawa.jpg黒澤勇人 『携帯電話のための5分間』
お客さんが、配られた楽譜に従って携帯電話の着信音を鳴らす作品。少し空席があったためややまばらな印象でしたが、満席であればもっと現象としての作品の形がくっきりと表れたかもしれません。






electro.jpgElectro-Acoustic Operation 『T.V. show “R”』 
ブラウン管テレビが生み出す、アナログノイズの音と、人手(黒子)によって光源が積み上がり移動して生まれる空間。Electro-Acoustic Operation(エレクトロ・アコースティック・オペレーション)の名称で活動する平尾義之さんによると、ブラウン管テレビを捨てる前に1991年初演のこの作品を上演しておきたかったとのこと。機材やテクノロジーの変化がパフォーマンスを変えていくことを物語ると感じました。


yasuno.jpg安野太郎 『音楽映画 第十番』
安野さんが第2回オーディエンス賞受賞したのも、この彼の代表作「音楽映画」シリーズでした。第3番で、名古屋の様々な場所やモノを映し出し、その名前や状況や印象を読み上げていく声を加工して重ねていくという作品。今回の第10番は、「自分と記憶と欲望」がキーワードで、自分撮りを多用しているとのこと。映像と読み上げの選択が、安野さん独特のおおらかさとユーモアセンスがあり、今回も爆笑の連続でした。



folmant.jpgフォルマント兄弟『せんだいドドンパ節』(演奏:岡野勇仁(MIDIピアノ))、『NEO都々逸』(演奏:岡野勇仁(MIDIピアノ)+田中悠美子(義太夫三味線))
フォルマント兄弟は、サウンド・メディア・アーティストの佐近田展康と、作曲家の三輪眞弘によるユニット。佐近田さんも三輪さんも、道場第1回から第4回まで選考委員を務めていただきました。まずは、自分たちの活動の趣旨―テクノロジーと芸術の今日的問題を《声》を機軸探求し、21世紀の《歌》を機械に歌わせることを目指すーについて、自らが語るトークの映像を流してから、そのときに生まれた『せんだいドドンパ節』を上演。岡野勇仁がMIDIピアノを弾くと、出てくる音は、架空の人物、高音キンの《声》となって、『せんだいドドンパ節』を歌うという作品。2曲目の『NEO都々逸』は、第1部で足立智美さんと共演した田中悠美子さんがお師匠さんで、岡野勇仁さんにお稽古をつけるという趣向。田中師匠にたしなめられた岡野さんがMIDIピアノを弾いて答えるやりとりを織り交ぜながら、現代的な都々逸を、岡野さんがMIDIピアノを弾くことで綴りました。2曲とも、笑みのこぼれる作品でしたが、実は高度なテクノロジーと演奏技術によって成り立っているのでした。

ikedatakumi.jpg池田拓実『テーブルの音楽(Table Music)』
最後は、昨年度の第4回優秀賞を受賞した、池田拓実さんの『テーブルの音楽(Table Music)』改訂再演。テーブルの上に物を置いてその音を取り込み加工してゆくとともに、その様子を映像で映し出し、置かれた物はしばらくすると色で覆い隠されてゆくというパフォーマンス。テーブルの上に物を置くという簡単な行為の音と映像は、テーブルマジックのように、変化していく楽しさがありました。最後に技術トラブルがあり、シンプルになってしまったのが、残念ですが、やはり優秀賞を受賞し、再演を重ねた結果の高い完成度が印象的でした。


【関連情報】
今回のAACサウンドパフォーマンス道場特別公演に出演した方々が多数出られる催しが、東京で開催されます。
”AACサウンドパフォーマンス道場の東京ヴァージョン”という印象です。

東京近郊にお住まいの方で、道場公演においでになれなかった方、こうした催しにもぜひご参加くださいね!


クリエイディヴ・ファンタジスタ「ライブで感じるメディアアート」
http://fantasista.creativecluster.jp/2011/02/211-12-live-fantasita.html



(A.F.)