欧州文化都市(European Capital of Culture)、ってご存知ですか?
毎年ヨーロッパの一都市を選んで、その都市の文化を発信してもらうと同時にさらに重点的に文化的な整備を行っていくという欧州の文化都市戦略のことなんです。2009年はオーストリアのリンツ市が欧州文化都市に選ばれました。リンツはウィーンから特急でわずか1時間30分の街ということで、リンツまで足を伸ばしてみました
欧州文化都市に選ばれると、沢山の予算が付き、スポンサーからの協賛が得られるということで、文化施設の整備や大きなプロジェクトが開催できるようになります。
行政あげて街中でリンツの文化都市をPR、この欧州文化都市のロゴ「09」をもとにしたデザインで埋め尽くされている感じがしました
電車も・・・ 道路も・・・
駅も・・・ 車も・・・
案内所ではオリジナルグッズも充実
リンツは、メディア・アートで著名な街なのですが、その中心的な役割を果たしているのが、「アルス・エレクトロニカ・センター」という文化施設です。欧州文化都市になったことをうけ、リンツ市文化行政の目玉施設、アルス・エレクトロニカ・センターは、自主企画スペースが大きく増築され、2009年2月に再オープンしました。
(↑アルス・エレクトロニカ・センター ↑増設された企画室(右側はドナウ川) ↑ホワイエでのキッズワークショップ)
窓には沢山のLEDが仕込まれていて、それ自体が組み替えることによって、様々なアーティストの作品にもなるように考えられているそうです。そこにはハードとしての建物という考え方はありません。建物そのものがアートであり、ソフトである、ということなのでしょう。貸し館が当たり前の日本とは根本から異なる、芸術にとっては理想的な考え方だと感じました。
アルス・エレクトロニカ・センターのディレクターのジェルフリード・ストッカー氏は、世界のメディア・アート界をリードする存在。アルス・エレクトロニカでは、毎年、様々な賞を出しているのですが、2009年アルスエレクトロニカ・デジタルミュージック部門で受賞したのは、「AACサウンドパフォーマンス道場」の審査員の三輪眞弘(作曲家・IAMAS教授)さんと佐近田展康さん(音楽家/サウンド・メディア・アーティスト、名古屋学芸大学メディア造形学部准教授)のユニット、フォルマント兄弟なんですよ
(↑TV取材を受けるディレクターのジェルフリード・ストッカー氏)
受賞式は9月初旬に開催されるフェスティバルで行われるそうですが、今年のゲストも、知能ロボット学者の石黒浩さんとダムタイプの池田亮司さんなど、日本人アーティストの割合がとても高いです。
お聞きしてみると、やはり日本のメディア・アートはとても繊細だからということで、ディレクターが大変評価されているようです。メディア・アートというと、ハイテクをこれ見よがしに使っている作品が多いように感じることもありますが、テクノロジーはあくまで手段。アートと社会、ひいては人間との関係を考えていくための道具なのでしょう。その点でも、控えめで繊細な日本のメディア・アートに注目が集まっているのかもしれません。
(↑案内をしてくれたクリエイティブ・マネージャーの小川さん)
アルス・エレクトロニカ・センターで、クリエイティブ・マネージャーとして働いている小川絵美子さんがセンターを案内してくれました
子供が影絵と遊んでいます(左下)。インタラクティブな作品が多く、一般の方から専門家まで楽しめる施設でした
(E.K)