2016年01月12345678910111213141516171819202122232425262728293031

ハンガリーの血がたぎる情熱的なカールマンの世界

2016年01月26日

「ウインナ・オペレッタ 白銀の時代」の最後を飾るのは、カールマン作曲の3本の作品です。

エメリッヒ・カールマンは、ハンガリー生まれ。ウイーンで活躍しましたが、ユダヤ系のため第2次大戦中はアメリカに渡り、アメリカに帰化しました。前回紹介したレハールもハンガリー生まれですが、レハールよりもさらにハンガリー色豊かな作品を作りました。優雅なウィンナ・ワルツを縦糸に情熱的なチャールダッシュを横糸に、織りなす音楽は、私たちを夢の世界に誘います。また、アメリカの軽音楽の影響を受けたフォックストロット(社交ダンス)も取り入れています。セリフ入りの歌芝居としてのオペレッタは、その後ミュージカルへと姿を変えていきます。カールマンのオペレッタは、かなりミュージカルに近いと言えます。

 

エメリッヒ・カールマン(1882-1953)

カールマンの最高傑作は『チャールダッシュの女王』(1915年)です。むせびなくヴァイオリン、もの憂いジプシー音楽の響き、そして情熱的なチャールダッシュ。ウインナ・オペレッタの魅力が凝縮されています。チャールダッシュとは、ハンガリーの民族舞踊です。ハンガリー語で「酒場」を意味し、ジプシー音楽では定番の形式。二つの要素から構成され、「ラッシュ」はテンポを落として抒情と哀愁を表現し、「フリスカ」では速く軽やかに情熱と躍動感が表現されます。浅田真央が2006-2007シーズン におけるフリースケーティング(FS)でチャールダッシュを使用したことでも有名になりましたね。

さて、さらに今回の映画は、映像もこのオペレッタ・シリーズの中でも最高傑作です。アンナ・モッフォ、ルネ・コロとも美男、美女を配し、脇も芸達者なサンドール・ネメスと可憐なダグマール・コラーが固めています。舞台セットも豪華です。楽しいストーリーと美しい音楽、そして踊りを素敵な映像とともに味わってください。日常の世界を忘れて、夢の世界を体験できるでしょう。

 

チャールダッシュ

Voivodina Hungarians (Kupusina and Doroslovo) national costume and dance.

ウインナ・オペレッタは第2次大戦後にはほぼ終焉します。その後は、ミュージカルが取って変わるのです。しかし、ウインナ・オペレッタは今でも生き残っています。ウイーンには「シュターツオーパー」という世界最高峰のオペラハウスがありますが、こことは異なり、庶民的な「フォルクスオーパー」というオペレッタ専用劇場があります。オペレッタはウイーン市民の心の中に生き、生活に溶け込んでいるのですね。ブダペストにも同様にオペラハウスとは別の庶民的な「ブダペストオペレッタ劇場」が市民に親しまれています。

 

ウイーン・フォルクスオーパー

 

実は、日本でも大正時代にオペレッタが一時はやったことがあります。「浅草オペラ」です。大正6年から関東大震災までの7年足らずの短い活動でした。もっと長く活動できれば、日本でもオペラやオペレッタが定着したかもしれませんね。

今回の上映会では、J.シュトラウス2世、レハール、カールマンの3人の代表作を取り上げましたが、アートライブラリーでは、その他にもオペレッタの名作が録音・録画とも多く所蔵しています。ぜひ、ご利用ください。  (A.M)