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夢見るような美しさ:ウインナオペレッタ「白銀の時代」レハールの世界

2016年01月12日

ニューイヤー・ウインナオペレッタ映画上映会は、「金の時代」のJ.シュトラウス2世の作品は終わり、いよいよ「白銀の時代」に入ります。

時代は「世紀末ウィーン」とも呼ばれる、クリムト、フロイト、マーラーなどが活躍した20世紀初頭。この時代は文化が爛熟した時代。その中で大衆に人気を博したのが、ハンガリー生まれのフランツ・レハールのオペレッタです。

 

フランツ・レハール(1870-1948)

 

彼の最も有名な作品は『メリー・ウイドゥ(陽気な未亡人)』。『こうもり』と並ぶウインナオペレッタの金字塔です。この作品は1905年、アン・デア・ウィーン劇場で初演(この劇場では、『こうもり』『ジプシー男爵』『ルクセンブルク伯爵』も初演されています。)、大ヒットし、その人気は世界中に広がりました。甘美なメロディとワクワク、ドキドキするストーリー展開、すぐれた人間の心理表現は何度見ても心を打たれます。テーマソングの「メリー・ウイドゥワルツ(唇は語らずとも)」やフレンチカンカンなど楽しい踊りも満載。必見です。映像は、オーストリアのメルビッシュ音楽祭の野外上演を撮影したもの。湖畔の広大な野外ステージを用いた豪華な舞台も楽しめます。

余談ですが、アドルフ・ヒトラーがこの作品を好んだため、レハールは妻がユダヤ人であったにもかかわらず、ヒトラーの厚い庇護を受けたとのこと。レハールもヒトラーにこの曲のスコアを送ったとのエピソードが残っています。しかしながら、このため、戦後はナチスの協力者として非難を浴びることになるのですね。

 

 

『メリー・ウイドゥ』フィナーレ

(Franz Lehár : Finale de La Veuve joyeuse, 2003 aux Matelots de la Dendre Photo perso)

 

 他に上映するレハールの作品は『微笑みの国』『ルクセンブルク伯爵』『ジュディッタ』『ロシアの皇太子』『ジプシーの恋』『パガニーニ』の6作品で、すべて名作ぞろいです。レハールの音楽は、少し憂いを帯びた甘く夢見るようなメロディーが特徴で、胸がしめつけられるような魅力を感じます。テーマはすべて「男女の愛」とその駆け引き。熟年の愛、若者の愛、不倫の愛、貴族と踊り子の愛、片思いなど様々な「愛」が歌われ、語られ、踊られます。まさに「愛の百科事典」「愛の展覧会」ですね。夫婦や恋人と一緒に見ると、愛がより深まるのではないでしょうか。見終わった後には、聞いたメロディーが体にしみこんで、自然と口から出てくるような幸福感を味わうことができます。

 

 これらの作品で、『メリー・ウイドゥ』に次ぐ傑作と言われているが、『微笑みの国』です。中国の王子とウイーンの令嬢との恋物語。最初から最後まで、甘美なメロディーに溢れています。オペラが好きな方にはたまらないでしょう。

 ストーリーを楽しみたい方はコミカルな『ルクセンブルク伯爵』がお勧めです。楽しいストーリー展開と明るい音楽で、見終わった後にはさわやかな感動が残ります。筆者が大好きな作品です。

 ヴァイオリンの好きな方には実在の超絶技巧ヴァイオリニストで作曲家のニコロ・パガニーニを題材とした『パガニーニ』がお勧め。演奏されるヴァイオリン音楽も魅力的です。

 映画好きな方には『ジュディッタ』。美しい地中海の風景の中で歌われる愛と別離はとても感動的です。この作品はレハール最後の作品で、悲劇です。

 このほか、『ロシアの皇太子』『ジプシーの恋』も美しいメロディーと現地の美しい風景が楽しめます。

 

 

 

ポストカード(『ルクセンブルク伯爵』第2幕より)

(Postcard illustrating the song "Mädel klein, Mädel fein" from the operetta Der Graf von Luxemburg circa 1910)

 

次回は、白銀の時代のもう一人の作曲家カールマンをご紹介します。

 

♪一口メモ♪

ウインナワルツと通常のワルツはどこが違うの?

通常のワルツは3拍子。「ズンチャッチャ」と3つの拍は均一です。一方、ウィンナワルツの場合は、少し崩れた形となり、2拍目をすこし早めにとるため、1拍目と2拍目がすこし詰まり、2拍目と3拍目が少し間延びする「ズチャッチャー」となります。これが、ウイーン独特の「訛り」であり、甘美なメロディーを生み出すのです。

(A.M)