アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会との共催で、アマチュア写真家によるインターナショナル・フォトコンクール優秀者の写真展を開催しています。
今年のテーマは、« Métiers du monde »(世界の職業)。世界5大陸74か国167名の参加者の中から25名の優秀者が決定されました。本展では、優秀者の44作品をご覧いただきます。ダイナミックな職業の驚くべき多様性と日々の仕事の厳しくも美しい側面の中で人間が表現されています。今回の優秀者の国籍は、中国、インド、ドミニカ、タイ、バヌアツ、コロンビア、ベネズエラなどいわゆる先進国以外の国が多く、職業もホワイトカラーではなくブルーカラーがほとんどです。そのためか、真剣に労働する人々の苦労、仕事をする喜びなどがダイレクトに伝わってきます。
写真展示の様子
Wulttiphat PHONGPHAEW(Thailande)
Xiaogang NING(Chine) 1er Prix
Samuel BREUIL(Republique Domunicaine)
また、金、土、日曜日14時からの上映会では、短編ドラマ『男の親友 (Le Meilleur ami de l’homme) 』(監督:ヴァンサン・マリエット)と長編コメディー『女優たちの宴 (Le Bal des actrices)』(監督:マイウェン・ル・ベスコ)を続けて上映します。
短編『男の親友』は、犬の調教師がテーマ。男の親友の老いた犬、上司、恋人との関係を描いた12分の短いドラマです。見終わった後に不思議な余韻を残す作品です。
長編『女優たちの宴』は、とてもおもしろい作品です。監督にダメだしされる女優、オーディションで落とされる女優、活躍の舞台をハリウッドへ移すべく英会話に磨きをかける女優、役づくりに触発されて母性が芽生え始める女優、全部嫌になってインドに行っちゃう女優…など「女優」のありのまま全てを汲み取ろうとする意欲的な作品です。監督のマイウェンは女優としても有名ですが、この映画の撮影がさまざまな問題を引き起こし、自分の家庭にも騒動を引き起こしてしまいます。しかし、これも事実なのかフィクションなのか・・・・。フランス映画が好きな人にはフランスの女優がたくさん出演していますので、興味深いことでしょう。
マイウェン・ル・ベスコ(1976- )
なお、3月1日(土)14時から、アリアンス・フランセーズ愛知フランス協会館長クリストフ・ドレイエール氏によるミニトークがあります。上映する作品の解説や写真の説明なども予定していますので、ぜひお越しください。
A.M
愛知県文化振興事業団主催のコンサートシリーズ「ベートーヴェン―その原点と到達点」に関連し、ベートーヴェンの名曲を名演奏家の映像でお楽しみいただいていますが、いよいよあと3日で終了です。最後を飾るのは、晩年の傑作群、交響曲第9番「合唱」、ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)、オペラ「フィデリオ」です。いずれもベートーヴェンが渾身の力を込めた、人類の遺産ともういうべき力作です。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
特に3月8日(土)に愛知県芸術劇場コンサートホールで上演される「ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ曲)」は、演奏に80分近くかかる大作で、教会音楽の中でも最高傑作の一つです。ベートーヴェンはこの曲の楽譜の冒頭に"Von Herzen ― möge es wieder ― zu Herzen gehen"(心から出で、願わくば再び、心へと至らんことを)と記しています。ミサ曲はカトリック教会の礼拝(ミサ)の中で歌われるものですが、この曲は、本来の意味を超えて、人類への普遍的な愛を歌ったものと言えましょう。ミサ曲の終章「dona nobis pacem(我らに平安を与えたまえ)」の冒頭には「Bitte um innern und äussern Frieden(内的そして外的平安を求める祈り)」と記されています。彼はその中で、神の世界、精神世界の平和のみならず、この世の平和を祈っています。「平和への祈り」は、戦争の影におびえる現代の人々の心にも強く訴えかけてきます。
「ミサ・ソレムニス」より「キリエ」(冒頭)の自筆譜
※冒頭の余白に“Von Herzen ― möge es wieder ・・・・”という記述がある。
また、2月16日(日)11時からは、ベートーヴェンを題材とした音楽映画「不滅の恋:ベートーヴェン」を上映します。ベートーヴェンが亡くなった後、秘密の家具の引き出しから3通の熱烈なラブレターが見つかったのです。筆跡はベートーヴェンのものでした。抑えようのない情熱がほとばしりるような、迫力と切迫感に満ちたこの手紙は、いつ、誰に向けて書かれたのか、また、相手に届けられたのかどうか、謎に包まれています。その手紙の一節を紹介します。
「私の忠実な唯一の宝、私のすべてでいてください。あなたにとって私がそうであるように」
「あなたがどんなに私を愛していようと、私はそれ以上にあなたを愛している」
「わが不滅の恋人よ、運命が私たちの願いをかなえてくれるのを待ちながら、心は喜びに満たされたり、また、悲しみに沈んだりしています。」
この映画は、弟子のシントラーが、この手紙の「不滅の恋人」探しをするというストーリーです。映画にはフィクションもかなり含まれていますが、ベートーヴェンの女性との関わり(意外に女性にもてたようです。)や当時の社会風景なども描かれ、とても興味深いとともにベートーヴェンの音楽もたくさん使われ(音楽監督は指揮者のゲオルク・ショルティ)、音楽ファンにも楽しめる映画です。
「不滅の恋人」がいったい誰だったのか・・・いろいろな説がありますが、現在の研究ではアントニア・ブレンターノ(1780-1869;オーストリア伯爵家の出、夫は銀行家)であるとされています。映画では別人となっていますが、謎のままであった方がベートーヴェンの希望に沿うのではないでしょうか・・・。
この映画は、上映終了後にアートライブラリー・ビデオブースで視聴することができます。
「不滅の恋人への手紙」(最後の部分)
※「あなたを――私のいのち――私のすべて――
お元気で――おお――私を愛し続けてください――
あなたの恋人の忠実な心を、けっして誤解しないで。
L.
永遠にあなたの 永遠に私の 永遠に私たちの」
「不滅の恋人」とされるアントニア・ブレンターノ(1780-1869)
なお、アートプラザ・カウンター横では、ミサ・ソレムニス(キリエ)と交響曲第9番「合唱」の自筆譜(ファクシミリ)を愛知県立芸術大学芸術資料館から借用して展示しています。
プラザ内で展示中の自筆譜(ファクシミリ)
自筆譜を見ると、作曲家の個性が現れ、とてもおもしろいですね。ベートーヴェンの自筆譜は大変荒々しく、悪く言うと殴り書きみたいなのですが、苦闘しながら推敲に推敲を重ねて作曲している様子がよくわかります。こちらも是非ご覧ください。
(A.M)
「第91回 フレッシュコンサート」を1月22日(水)にフォーラムI(2階)で開催しました。
『歌の歳時記コンサート-日本の歌 こころの歌-』と題して、北原白秋と土井晩翠の歌を田中由美子(たなか ゆみこ)さんのソプラノ独唱と堀田(ほった)みづほさんのピアノ伴奏で、180名以上の方にお楽しみいただきました。
【 左から、堀田みづほさん、田中由美子さん 】
◎ 今回のコンサートは…‥
北原白秋作詞、山田耕筰作曲の歌と土井晩翠作詞、瀧廉太郎作曲の歌など7曲を歌いました。
1曲目から5曲目までは、日本の名コンビである北原白秋(1885-1942年)と山田耕筰(1886-1965年)の歌で、1曲目は、「ペチカ」を歌いました。
この唱歌は、1924(大正13)年に「満州唱歌集」の一つとして発表されました。
満州唱歌は、文部省唱歌に歌われる日本風土と満州の風土がかけ離れていることから、満州に親しみを覚えることができる教材として、当時の南満州教育会が発行した教科書の唱歌集です。「満州」とは、現在の中華人民共和国において、「中国東北部(遼寧省、吉林省、黒竜省と内モンゴル自治区の東部)」と呼ばれる地域です。
歌唱後、田中由美子さんから、「今日の皆さんは、びっくりなさったでしょう。フレッシュコンサートなのに若い二人でないことに…。頭に『リ』をつけてリフレッシュな気分でお聴きください。」とお話があり、パートナーである堀田みづほさんを紹介しました。
「日本の歌曲のゴールデンコンビでした北原白秋と山田耕筰の身近な歌をお届けします。最初の歌は『ペチカ』です。ペチカは煉瓦で作られたロシア式暖炉です。山田耕筰は、ドイツ・ベルリン音楽学校に留学し、帰国後、日本初のオーケストラ(東京フィルハーモニー会)の指揮者になりました。」、「黒柳徹子の父さん(黒柳守綱(1908-1983年))はヴァイオリニストで山田耕筰さんのレッスンを受け、美空ひばりも歌のレッスンを受けました。」とお話しました。また、山田耕筰さんの改名については「後年の耕筰は、頭の毛が無くなって、毛をつけようとカタカナ『ケ』の2つ、竹冠を『作』の上に付け、『耕筰』と改名した。」とのユーモラスな話もありました。
2曲目は、「まちぼうけ」を歌いました。
この唱歌も1924(大正13)年に「満州唱歌集」の一つとして発表された。
中国戦国時代(紀元前403年‐紀元前221年)の法家(ほうか)の韓非(かんぴ 紀元前280年-紀元前233年)の著書『韓非子』の「五蠹(ごと)篇」の中にある説話から『守株』、『守株待兎(しゅしゅたいと。株(くいぜ)を守りて兎を待つ)』の故事成語です。これを採って、北原白秋がユーモラスに作詞し、山田耕筰が作曲した童謡です。
≪ ものしりあれこれ ? 「守株待兎」とは ≫
『韓非子』の「五蠹(ごと)編」の中にある「宋人有耕田者(宋人田を耕すものあり)」で、「宋の農夫が、ある日、ウサギが切り株にぶつかって死んだのを見て、また、同じようなことが起こると思って、仕事もせず、毎日切り株を見守っていた。」というたとえです。このことから、物事はいつもうまくいくものでないことから「古い習慣に固執し、全く進歩がないこと」または「偶然を当て込むような愚かなことをする。」という意味です。
『韓非子』が出典となる故事に「矛盾」「逆鱗」「貴箕子(きし)の憂い」などがあります。
3曲目は、「鐘が鳴ります」を歌いました。
これは、民謡詩集『日本の笛(1885-1942年発行)』の「草木瓜」の中にある詞を山田耕筰がけだるく、ものうい感じのメロディの歌です。1923年8月号の雑誌「女性」に掲載されました。
田中さんから「逢引の約束で待っていると、鐘が鳴り、日が暮れて、一番星が出てくるころ、待てども君の姿さえ見せてくれない…。」という歌の解説がありました。
4曲目は、「からたちの花」を歌いました。
この歌は、1925(大正14)年に雑誌『女性』に発表された文部省唱歌です。
田中さんから「この歌は、二人のコンビの名曲の中でも記念的な作品です。山田耕筰が10歳の時、寄宿先の印刷工場に勤めながら夜学の勉強をした。工場でつらい目に遭うとき、からたちの垣根まで逃げ出し泣いたという山田耕筰の思い出を北原白秋が『からたちの花』の詞にしました。」というお話がありました。
5曲目は、「この道」を歌いました。
田中さんから「この歌は、幼い頃の北原白秋が柳川(福岡県柳川市)から母親の実家(熊本県南関町)へ帰る時が母親とのやさしい生活であったため、その道の情景と晩年に北海道(札幌市)を旅行した道の情景を歌ったもので、「からたちの花」の妹分となる歌です。」との説明の後に歌いました。
歌唱の後、「山田耕筰と北原白秋が抱く、母の気持ちをお分かりになりしましたでしょうか。」とお話をし、最後の歌の説明がありました。
6曲目は、土井晩翠(1871-1952年)作詞と瀧廉太郎(1879-1903年)作曲の「荒城の月」を岩河三郎(1923-2013年)編曲で歌いました。
田中さんから「瀧廉太郎は23歳で亡くなっている。若者が作ったと思わせない静寂で哀切を極めた曲です。『荒城の月』をベートーヴェン作曲『月光ソナタ(ピアノソナタ第14番作品27-2、 1801年)』の曲をピアノ伴奏に、東洋と西洋のコラボレーションをお楽しみください。」とのお話がありました。
聴衆の皆さんは、ソプラノの歌声と月光ソナタのメロディが見事に調和した幻想的な美しい雰囲気に魅了されていました。
たくさんの拍手に応えて、「竹久夢二(1884-1934年)は今年、生誕130年です。『竹久夢二を歌う会』で歌っているその中で、『母』をアンコールとして聴いていただきたいと思います。」とお話があり、「母(小松耕輔(1884-1966年)作曲)」を歌いました。
日本人に親しみのある名歌曲の歌唱、その魅力を本当にありがとうございました。
≪ ものしりあれこれ ? 「竹久夢二詩歌の曲」には≫
竹久夢二の詩歌に作曲をしたものには、「ふるさと(弘田龍太郎作曲)」、「宵待草(多 忠亮作曲)」、『たそがれ(竹久晋士作曲)』、『草の夢(桜メイ作曲)』、『花をたづねて(山本芳樹作曲)』、『わすれな草(藤井清水作曲)』、『雪よ小雪よ(佐藤 勝作曲)』などがあります。
来場の皆さんからは…‥
◎ 今回が初めての方々から
・『小学校で歌った曲、懐かしく聞くことができました。素晴らしい歌声、歌の説明がよかったです。』《60歳台、女性》
・『新年にふさわしく、こころが洗われるような清らかな歌声、すばらしかったです。「荒城の月」とベートーヴェンの「月光ソナタ」、とてもぴったり合って新たな感動がありました。』《60歳台、女性》
・『田中さんののびやかで、柔らかい声に癒されました。』《60歳台、女性》
◎ いつも来られる方々から
・『日本歌曲を代表する北原白秋と山田耕筰の名コンビによる最も親しまれた曲で久しぶりに名唱を鑑賞しました。「荒城の月」は短くして今世を去った滝廉太郎の名曲、この曲にベートーヴェンの月光のイメージを編曲したコラボレーションは非常に雰囲気にマッチしており、その曲の悲しさが表現によく出てコンサートを楽しんだ時間であった。』《70歳以上、男性》
・『日本の歌曲の名曲は、大変すばらしいと思います。ソプラノの歌も声が透き徹って聴きがいがある。』《70歳以上、男性》
・『昼下がりの透き通った声で、眠気は吹き飛びました。ピアノ曲の「月光のソナタ」は引き込まれました。』《70歳以上、性別不詳》
など、様々な感想をいただきました。ありがとうございました。
≪ 2人からのメッセージ ≫
田中由美子さん、堀田みづほさん
よく響く吹き抜けの会場で、多くのお客様にも恵まれ、
気持ちよく演奏することができました。
もっとざわざわした中での本番をイメージしていましたが、
お客様にはとても集中して聴いていただき、
また、速くて的確な反応に心強い思いをしました。
アンケートにて頂いた過分なお言葉の数々は私どもの財産とし、
今後の活動の原動力としたいと思います。
また、どこかで(できればステージで)、皆様と
お会いできることを心から願っています。
さて、次回は、愛知芸術文化センターフレッシュコンサート「ファイナルステージ2」となる第92回フレッシュコンサートを、平成26年2月26日水曜日のお昼(午後0時15分-0時45分)にフォーラムI(2階)で開催する予定です。
『オーボエとピアノ、フルートで紡ぐ愛の調べ』と題して、オーボエ坂内紘子さんとピアノ中山恵さん、フルート遠藤佳奈子さんによるアンサンブルで、モーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』から「恋はどんなものかしら」、カッチーニ「アヴェ・マリア」などの愛の調べをお楽しみください。
↓詳細はこちら
http://www.aac.pref.aichi.jp/bunjyo/jishyu/fresh/index.html
(M.K&A.M)
2月7日午後5時すぎから、CBCラジオの「丹野みどりのよりどりっ!」という番組の中の1コーナーで、「氷上の音楽―フィギュア・スケートのプログラム曲―」の展示が紹介されました。当日は、ソチ五輪開会式直前ということで、オリンピックネタとして取り上げていただきました。実際には、フィギュア団体が開会式よりも前に始まっていて、羽生選手(男子シングル)の演技が行われ1位を獲得し、朝からニュースでかなり報道され、盛り上がっていました。
中継は、レポーターの方と技術サポートの方の2名で午後4時ごろから準備が行われました。まず、機材を中継場所に運び込み、アンテナやマイクをケーブルでつなぎ、会場での音声を放送局まで送信できるようにします。
それと並行して、どんな話をするのか打合せをしました。
そして、ペンをマイクに見立てて1度目のリハーサル。
話すことが多すぎて時間が足りなさそうなので、レポーターの方が時間内に収まるよう進行を書き直します。
また、中継で流すCDについても打合せをして、どのような段取りで、再生するかなどを決めました。
いよいよ本番。筆者も放送で話をするのは初めてなので、少し緊張しました。しかし、レポーターの方がうまくリードしてくださったので、何とか無事に約7分間の長丁場を乗り切ることができました。
途中で、展示に使用しているCDの音を放送にのせました。浅田選手がショートプログラムで使う曲の「ショパン:ノクターン 第2番 変ホ長調 作品9の2」を、これまた愛知の生んだ天才ピアノ少年牛田智大君の演奏録音でラジオのリスナーの皆さんに聴いていただきました。
放送後の記念撮影。
赤い服の方が、今回レポーター役の吉村史織さん、白い服の方が技術サポート役の中嶋絵美さん。中嶋さんも他の日には、レポーター役をすることがあるそうです。
(H.K)