日本には舞踊を学ぶ本格的な学校がありません。ダンスやバレエのテクニック学ぶ民間のダンス教室はとても多い愛知県ですが、そのダンサーを使って作品を創作する「振付家」となると、自ら目指そうとする人はなかなか生まれてこないという実情があります。「踊りたいけど、創れない・・・」というダンサーたちの呟きが聴こえてくるようです。
そこで2006年夏、愛知県が若手のアーティストを育成するという目標を掲げるにあたって、舞踊部門では「振付家」を育てることを提案しました。
とはいうものの、振付家を育てるなんて途方もないこと、どうやったら実現できるのか? 悩んだあげく、思いついたのが、日本の現役の振付家にアドバイザーとして若手を指導していただくということ。舞踊の不毛といわれるこの日本で、指導者もいない中、日本のベテランの振付家たちは、自ら悩み考え、作品を作り続け、そして今日の地位を築きあげてこられました。決して恵まれている状況ではないこの日本において一定の成果を挙げてこられた振付家のみなさん。彼らのこれまでの蓄積から発せられる助言こそ、現代の日本の若手の振付家のために役立つものだと考えたのです。

公演の後にはアフタートークを開催し、それぞれの思いを語ってもらいました。
左から鈴村さん、服部さん、講師の平山さん、宝栄さん、講師の佐多さん、竹之下さん、講師の山崎さん
「振付家」には、文字どおり、動きをつける「振付」のほか、音楽や美術や照明などを駆使して、作品全体の時間と空間を構成する「演出力」が不可欠です。またダンサーやスタッフ等、作品に関わるすべてのことに目を配り、どのように発言をすれば、自分のイメージを上手く伝えることが出来るかなど、学ばなければならないことは多岐にわたります。
2007年に続いて第2回目となった今回の公演では、作品の長さも前回の20分から40分へと長くなり、参加のハードルも高くなりました。これはコンクールや合同公演で比較的短くてコンパクトな作品を創作することに慣れている振付家に対して、ボリュームのある作品の振付に挑戦してほしい、という思いがありました。
数ヶ月の短い期間ではありましたが、熊本、愛知、東京と、異なる場所で合宿のような生活を送ったような参加者もいました。若手振付家にとって、このような講師との凝縮した時間は、何ものにも変えがたい貴重なものとなったようです。
このプロジェクトの目的は、若手アーティストの育成。ですから舞台公演といっても、それは、単なる通過点でしかありません。実際に、第1回目の参加者6名のうち、その半数の3名が、すでにこのプロジェクトで創作した作品をさらに練り直し、再演しています。これから彼らがどのように活動を広げて行ってくれるのか、それを皆で応援していきたいと思っています。皆さんも彼らの活動に是非ご注目くださいね。そして、振付家を目指す方々の参加もお待ちしております。(隔年開催の予定です)
公演をご覧いただいた方によるレビューはこちら↓
・チャコット「Dance Cube」より
http://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-osaka/nagoya0903a.html・「ダンスの海」より
http://d.hatena.ne.jp/dance300/?of=10 (E.K 撮影 : 南部辰雄)