「第89回 フレッシュコンサート」を11月27日(水)にフォーラムII(2階)で開催しました。
『クラリネットの調べ-秋風にのせて-』と題して、アンサンブルグランミュのメンバーの三摩恵里(さんま えり)さん、村田俊之(むらた としゆき)さん、松下有加(まつした ありか)さん、小栗静華(おぐり しずか)さんによるクラリネット四重奏を160名以上の方にお楽しみいただきました。
【 左から、松下有加さん、小栗静華さん、三摩恵里さん、村田俊之さん】
◎ 今回の演奏会は…‥
モーツァルト、ベートーヴェンの名曲や日本の秋の曲などの6曲でした。
1曲目は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791年)作曲『アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調 K.525 』より「第一楽章」を演奏しました。
演奏は、松本さんがエスクラリネット、三摩さん、小栗さんがソプラノクラリネット、そして、村田さんがバスクラリネットを演奏しました。モーツアルトのうきうきするようなリズムと明るい音楽はコンサートのオープンにふさわしいものでした。
演奏後、村田さんから、アンサンブルグランミュのメンバーの自己紹介がありました。4人とも岐阜県の出身者です。
2曲目は、アストル・ピアソラ(1921-1992年)作曲「革命家」(黒川圭一編曲)を演奏しました。
「ピアソラは、アルゼンチンの作曲家で、自分のことを『タンゴの革命家』と言っている。」などの説明がありました。ピアソラは、バンドネオンの奏者でもあり、タンゴを元にクラシック、ジャズの要素を取り入れた独自の演奏形態を産み出しました。
クラリネット四重奏による演奏は、ピアソラらしい暗い情熱と哀愁に包まれた、旋律とタンゴ特有の強靭なリズムを見事に表現していました。
≪ ものしりあれこれ 「バンドネオン」とは… ≫
ハンドネオンは蛇腹楽器の一種です。
1847年にドイツのハインリッヒ・バンドがアコーディオンの一種であるコンサーティーナ(左右の手で蛇腹を押したり引いたりして、左右にある多角形の木製箱の板面のボタン式の鍵盤を指で押して音を出す楽器)の影響を受けて考案した楽器です。
当初はギター、フルート、ヴァイオリンという編成であったアルゼンチンのタンゴ楽団は、バンドネオンが加わり、現在では「タンゴ」の音楽の主要な楽器となってます。
3曲目は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827年)作曲「ピアノソナタ第8番作品13「悲愴」より「第2楽章」(反岡英志編曲)を演奏しました。
ゆったりとしたロマンチックなメロディーとクラリネットの柔らかな音の響きに観客の皆さんはうっとりと聴き入っていました。
この曲は、べートーヴェンの初期を代表する傑作で、ピアノソナタ第14番「月光」と第23番「熱情」と並んで「ベートーヴェンの三大ピアノソナタ」と呼ばれる人気の曲です。
4曲目は、草川信(1893-1948年)作曲「夕焼け小焼け」(石川亮太編曲)を演奏しました。
村田さんが「ドヴォルザーク(1841-1904年)の交響曲第9番「新世界より」の第2楽章のメロディーを所々に編曲して演奏します。」と説明しました。交響曲第9番第2楽章は、堀内敬三作詞の『遠き山に日が落ちて』や野上彰作詞の『家路』などへの編曲が親しまれています。
情趣あふれる美しいメロディーを奏でるクラリネットの響きは、聴き入る観客の皆さんの心に田舎の秋の夕暮れの風景を思い起こさせたことと思います。
「夕焼け小焼け」は、中村雨紅(1897-1972年)が1919年(大正8年)に作詞し、草川信がゆったりとした曲を付け、1923年に発表しました。この曲は、市町村の防災行政無線などで夕方の時報としても親しまれています。
5曲目は、ヴィットーリオ・モンティ(1868-1922年)作曲「クラリネット四重奏のためのチャルダッシュ」(森田一浩編曲)の演奏でした。
「モンティはイタリアの作曲家。『チャルダッシュ』はもともとピアノ伴奏付きのヴァイオリン曲です。曲は遅い部分、速い部分の繰り返しのあるハンガーの舞曲です。」との説明がありました。チャルダッシュの「チャルダ」は、ハンガリー語で「居酒屋」を意味します。
このチャルダッシュの形式は、ハンガリー・ジプシーの代表的な民族舞曲として、ヨハネス・ブラームス(1833-1897年)の「ハンガリー舞曲集」にも使われています。
曲はゆったりとかなり遅い(ハンガリー語で「ラッシュー」と呼ばれる。)メロディーで始まり、続いて急速なテンポの速いリズム(ハンガリー語で「フリスカ」と呼ばれる。)を繰り返し華やかに終わります。
演奏後は、温かい拍手が起こりました。
この拍手に応え、アンコール曲として「アメイジング・グレイス」を演奏しました。
この歌は、イギリスの牧師ジョン・ニュートン(1725-1807年)が1772年に作詞した賛美歌ですが、作曲者は不詳です。アメリカで最も愛唱されている曲の一つです。
クラリネットによる優しく温かい音色は、神の恵みへの感謝で満たされているような喜びを感じられました。
アンサンブルグランミュの皆さん、幅広い音域と温かくてやわらかい音色でクラリネットの魅力をたっぷり味わうことができました。本当にありがとうございました。
来場の皆さんからは…‥
◎ 今回が初めての方々から
・『会場が吹きぬけ高く、ガラス越しに空が見える雰囲気がクラリネットの音色にぴったりでした。県美術館へ来て、とても良かった27日でした。』《70歳以上、男女》
・『クラリネット四重奏を初めて聴きましたが、自分の認識を変えられた感じです。』
《60歳台、性別不詳》
◎ いつも来られる方々から
・『クラシックは大好き。ワーキングママ・子育ての中なかなか本物の音に触れる機会が持てません。そんな中このフレッシュコンサートは会社から昼時間に来ることができ、とても貴重な機会です。《40歳台、女性》
・『いろいろなコンサートに出かけるのですが、ピアソラの「革命家」という曲は聴いたことのない曲でした。夕焼け小焼けもなかなか編曲がよく、2倍楽しめ、得した気分でした。』《50歳台、女性》
・『クラリネットの柔らかい音色に心がほぐれました。モンティの「チャルダッシュ」は軽快さも加わり楽しかったです。』《70歳以上、女性》
など、様々な感想をいただきました。ありがとうございました。
≪ アンサンブルグランミュからのメッセージ ≫
この度は、フレッシュコンサートに参加させていただき
誠にありがとうございました。
お寒い中わざわざ足を運んでくださった方々、
ふと足を止め聴いてくださった方々、
本当に多くのあたたかいお客様と
同じ時間を過ごさせていただきとても嬉しく、楽しい30分でした。
また、スタッフの方々の細やかなサポートにより安心して演奏をすることができました。
皆様、ありがとうございました。
私たちアンサンブルグランミュは、地元岐阜県、そして東海地区をこよなく愛し、
音楽活動を通じて貢献することを目標として活動しております。
まだまだ未熟ではありますが、今後も今回の貴重な経験を生かし精進し続けます。
そして大好きな東海地区の皆様へ音楽をお届けしていきたいとおもいます。
最後にフレッシュコンサートのますますのご発展を祈っています。
素敵な時間をありがとうございました。
さて、次回は、第91回フレッシュコンサートを、平成26年1月22日水曜日のお昼(午後0時15分-0時45分)にフォーラムII(2階)で開催を予定しています。
『歌の歳時記コンサート-日本の歌 こころの歌-』と題して、田中由美子さんのソプラノ独唱を堀田みづほさんのピアノ伴奏で、北原白秋作詞、山田耕筰作曲の「まちぼうけ」、「この道」などに土井晩翠作詞、滝廉太郎作曲の「荒城の月」の愛唱の歌の魅力を楽しんでいただきます。
(M.K&A.M)
いよいよクリスマスです。街中がクリスマスの飾りやキャロルであふれています。クリスマスChristmasは、本来は「キリストChristのミサmass」という意味です。キリストの降誕を祝う祭です。
The Adoration of the Shepherds(Gerard Honthorst 1590-1656)
さて、アートプラザ・ビデオルームでの「クリスマス特集上映会」もあと4日間となりました。クリスマスを題材とした音楽、映画、オペラ、バレエなどを上映してきましたが、いよいよオラトリオの傑作、J.S.バッハの「クリスマスオラトリオ」とヘンデルの「メサイア」が登場します。
J.S.バッハとヘンデルは二人とも同年(1685年生まれ)、しかもドイツ東部の生まれですが、活躍場所や作曲内容は大きく異なります。J.S.バッハはアイゼナッハに生まれ、ドイツ東部(ワイマール、ケーテン、ライプチッヒ)で主に教会音楽家として活躍しました。一方、ヘンデルはハレに生まれましたが、イギリスに渡り、オペラ、オラトリオなどの劇場音楽の作曲家として人気を博し、イギリスに帰化しました。ローカルで地味ながら着実な仕事をしたJ.S.バッハに対し、外交的で華やかで国際的な活躍をしたヘンデル。現在では、評価は逆転し、J.S.バッハは「音楽の父」と呼ばれ、後世の作曲家に大きな影響を及ぼしました。ヘンデルの作品の多くは忘れ去られましたが、近年では再評価されています。
J.S.バッハ(1685-1750) ヘンデル(1685-1759)
J.S.バッハの「クリスマスオラトリオ」は、「クリスマスの物語」(マリアとヨセフ、馬小屋の飼い葉桶に眠る幼子イエス、天使の群、羊飼いたち、東方3人の博士たちなどが登場)を基に6つの独立したカンタータ(礼拝用の音楽)を一つにまとめたものです。構成は、器楽曲、合唱曲、レチタティーヴォ(話すように言葉の抑揚をつけて歌われる曲)、アリア(旋律的に歌われる 曲)、コラール(ドイツ賛美歌)から成ります。クリスマスの喜びが伝わってくるような輝かしく素晴らしい音楽です。ビデオ作品はオリジナル楽器によるガーディナーの演奏とバッハの権威であるリリングの演奏の2種類を上映します。
「クリスマスオラトリオ」冒頭(自筆譜)
ヘンデルの「メサイア」は合唱好きの人は誰でも知っている名曲です。「メサイア」とは救世主の意味です。聖書の言葉に基づき、イエス・キリストの生涯を、独唱・重唱・合唱で歌うもので、素晴らしい曲ばかりです。特に、第20曲のアルトのアリア「この方は侮られて」では、ヘンデルが感動のあまり涙を流しながら書いているところを召使が目にしたという説話も残っています。また、第2部最終曲の「ハレルヤ (Hallelujah)」(通称「ハレルヤコーラス」)は特に有名で、1743年、初めてロンドンで演奏された際、国王ジョージ2世が、「ハレルヤ」の途中に感動のあまり起立したため、それ以降“ハレルヤ”のところでは聴衆が立ち上がる習慣ができたといわれています。ビデオ作品は、ホグウッドによるオリジナル楽器による演奏です。
「ハレルヤコーラス」終結(自筆譜)
この他にも、名歌手や有名合唱団のクリスマス・キャロルも上映しています。本物のクリスマスの喜びを味わっていただければ幸いです。
(A.M)