塩田千春《不確かな旅》2016/2019 個展「魂がふるえる」森美術館、東京,Photo: Sunhi Mang, Courtesy of Mori Art Museum,
© JASPAR, Tokyo, 2022 and Chiharu Shiota.

生きることの意味を考える場に
国際芸術祭「あいち2022」でリアルな体験を!

いよいよ7月に開幕を迎える国際芸術祭「あいち2022」。
芸術祭の柱である現代美術展、パフォーミングアーツ公演、ラーニング・プログラムの見どころをチーフ・キュレーターの飯田志保子が紹介します。

まちと芸術が一体となる、3年に一度のアートの祭典

国内最大規模の芸術祭の一つ「あいち2022」は、現代美術を基軸とし、舞台芸術なども含めた複合型の芸術祭。世界32の国と地域、全100組のアーティストが参加し、愛知芸術文化センターのほか、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)のまちなかが会場です。

テーマは「STILL ALIVE」。愛知県出身で世界的に評価されるコンセプチュアル・アーティストの河原温が、1970年代以降、電報で自身の生存を発信し続けた《I Am Still Alive》シリーズに着想を得ています。「あいち2022」は会期中を通して、皆さまとこの「STILL ALIVE」を多角的に解釈していきます。

河原温
ソル・ルウィットに宛てた電報、1970年2月5日
《I Am Still Alive》(1970‒2000)より
LeWitt Collection, Chester, Connecticut, USA
© One Million Years Foundation

【現代美術展】

コンセプチュアル・アートの源流を再訪するとともに、現代美術の文脈で語られてきた「パフォーマンス・アート」にも注目。写真や映像、パフォーマンスなどの表現を通して、人間の強さと脆さ、人々の移動、アイデンティティやジェンダーなど、この時代に生きることの意味を一緒に考える機会を提供したいと思っています。 まちなかでは、テーマ「STILL ALIVE」に基づき、各会場のコンテクストに応答するアーティストの作品を展示。それぞれの会場で土地柄やその文化的特徴を色濃く反映した作品と出会えます。

会場 愛知芸術文化センター

現代美術とパフォーミングアーツの両分野を横断し、ラーニング・プログラムがアートと観客を繋ぐ、「あいち2022」の象徴的な場所。

笹本晃《ランダム・メモ・ランダム(random memo random)》2017,
© Aki Sasamoto,Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo.

会場 一宮市

「真清田神社」に由来する土地であることから、駅から神社周辺にかけてのエリアでは、祈り、病、生死、ケア、メンタルヘルスにちなんだ作品が、そして尾西地域では、繊維業の歴史に触れる作品などが見られます。

塩田千春《I hope...》2021、個展「I hope…」ケーニッヒギャラリー、ベルリン、ドイツ, Photo: Sunhi Mang, ©JASPAR, Tokyo, 2021 and Chiharu Shiota.

会場 常滑市

大地の恵みと、火、水、空気といった自然の力から生まれる陶芸や「土」の文化に根差した表現、また、常滑の製陶産業の歴史からインスパイアされた作品が多数展示されます。こちらのページで詳しく紹介します。

デルシー・モレロス《大地 (Enie) - ウイトト族の言葉で-》2018, Photo: Ernesto Monsalve, Courtesy of the artist.

近くで見ると、まるでクッキーのよう!粘土や土、シナモン、クローブからできています

会場 有松地区(名古屋市)

有松・鳴海絞りで知られる有松地区。世界の多様な文化圏で受け継がれてきた伝統的な手工芸の再解釈や、歴史的な街並み、絞り染めの文化から影響を受けた作品など、有松と共鳴するさまざまな「手から生まれた作品」がそろいます。

ユキ・キハラ《サーモアのうた(Sāmoa no uta) A Song About Sāmoa - Fanua(Land)》 2020/21, Courtesy of Yuki Kihara and Milford Galleries Dunedin and Queenstown, Aotearoa New Zealand Photo: Glenn Frei.

【パフォーミングアーツ公演】

パフォーミングアーツでもテーマ「STILL ALIVE」に応答した、領域横断的で実験性に富んだプログラムを紹介します。歴史的なパフォーマンスを再演・再解釈する作品、VRなどの最新テクノロジーで身体表現を拡張する作品のほか、ケアを施す人と受ける人の関係性など、この時代を反映した多様な生のあり方を観客に問いかけます。
ART LIBRARY & NEWSにもパフォーミングアーツに関する情報があります。

バック・トゥ・バック・シアター『ODDLANDS』2017,Photo: Jeff Busby.

足立 智美,© Guillaume Kerhervé//Maison de la Poésie de Nantes.

アピチャッポン・ウィーラセタクン,Image photo,Courtesy of Apichatpong Weerasethakul.

【ラーニング・プログラム】

「包摂性」「多様性の肯定」「自分を知り、世界を知る」。この3つのコンセプトをもとに、2021年の夏からさまざまなリサーチ・プロジェクトが進行してきました。会期中はこれらを発展させるとともに、現代美術展のガイドツアーやスクール・プログラム、そしてより積極的に参加していただけるようなボランティア・プログラムも充実しています。

愛知と世界を知るためのリサーチ、猩々コレクティブ『猩々大発生』の参考図版、
笠寺猩々保存会の猩々

スクール・プログラムの参考図版
(「あいちトリエンナーレ2019」学校団体鑑賞の様子 )

2022年7月30日(土)〜10月10日(月・祝)[73日間]開催
国際芸術祭「あいち2022」
テーマ/STILL ALIVE 今、を生き抜くアートのちから
芸術監督/片岡真実(森美術館館長、国際美術館会議(CIMAM)会長)
主な会場/愛知芸術文化センター、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)
詳しくは公式ウェブサイト

「あいち2022」ポップ・アップ!
県内に広く「あいち2022」を届けるために、参加アーティストのうち10組程度が、主に本展とは異なる作品を県内4市(長久手市、蒲郡市、半田市、西尾市)の文化施設などで巡回展示します。詳しくは次回(vol.113)で紹介します。

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