「旧丸利陶管」の近くにある見守り猫「とこにゃん」と八木さん。
【おでかけAAC】国際芸術祭「あいち2022」を体感!
知多半島を代表する観光スポット常滑「やきもの散歩道」
アート・文化施設やモノづくりの現場にでかけてレポートする「おでかけAAC」。
今号は国際芸術祭「あいち2022」で主な展示会場となる常滑市のやきもの散歩道。
10を超えるアーティストが作品展示をする会場の魅力に触れました。
撮影/間宮博(P&P)
「常滑の魅力に触れていただけるようNPOや市民の方とともに準備を進めています」
ノスタルジックな風景に出会う
静かでのどかな“常滑さんぽ”
独特な雰囲気のレンガ煙突、不要となった土管を再利用して作られた道や坂、そこを猫がのんびり行き交う様が似合う街「常滑」。ここで作られてきた1000年の歴史を持つ“常滑焼”は日本六古窯の中で最も古く、最大規模だ。とこなめ観光協会常滑支部 支部長の八木孝幸さんは「戦火を逃れ、今も当時の面影を残す建物を観ることができる」と話す。今回は、そんな常滑らしい風景をギュッと凝縮したエリア「やきもの散歩道」を紹介する。
「やきもの散歩道」は、名鉄常滑駅から徒歩約10分の場所に位置する小高い丘にある人気観光スポットで、先述したレンガ造りの煙突や登窯、黒塀の工場、陶器の廃材利用の坂道など、常滑の魅力と歴史を伝える空間を歩くAコースは約1.6kmで所要時間は約60分。少し範囲を広げ、常滑焼の歴史や産業観光施設「INAXライブミュージアム」などを巡るBコースは約4kmで所要時間は約2時間30分。いずれも2007年に「美しい日本の歴史的風土準100選」に認定されている。
八木さんは「やきもの散歩道」を含む常滑の良さのひとつは「雑音のない、ものづくりに集中できる静けさ」であり、国際芸術祭「あいち2022」で展示される作品を、そんな常滑の空気の中で目にすることで「のどかな常滑でアートに触れながら、ゆったり考えたり、新しい発見をしたりするきっかけになれば」と話す。芸術祭で展示される作品がどのように街と調和するのか。また、街の至る場所で出会う常滑焼の器に実際に触れ、焼き物が持つぬくもりや繊細さを感じることができれば、きっとより国際芸術祭「あいち2022」も、楽しいものになるはず。
かつては約400本あったが、現在は80本ほどになったレンガ煙突。
1887年頃に築かれ、1974年まで使用された登窯(陶榮窯)。日本に現存する登窯としては最大級。
国際芸術祭「あいち2022」の展示会場のひとつ、「廻船問屋 瀧田家」前の坂道「デンデン坂」。
明治期の土管と昭和初期の焼酎瓶が左右の壁面を覆う土管坂。やきもの散歩道を代表する風景。
名鉄常滑駅から「やきもの散歩道」に向かう途中にある「とこなめ招き猫通り」。個性豊かな猫をモチーフにした作品が50体並んでいる。
「あいち2022」の展示会場を辿りました!
当時の面影がそのままに「旧丸利陶管」
1970年代頃まで大きな土管を大量生産していた場所。シカゴを拠点に活動するシアスター・ゲイツをはじめ、複数のアーティストが常滑の人々とともに制作を行う。
常滑の歴史を伝える「廻船問屋 瀧田家」
江戸時代から明治時代にかけて廻船業を営んでいた瀧田家の住宅。「あいち2022」では、トゥアン・アンドリュー・グエン、ニーカウ・ヘンディンの、人や物の移動に思いを馳せる作品を展示。
気軽に立ち寄れるギャラリー「常々(つねづね)」
盆栽鉢製陶所の倉庫をリノベーションしたカフェを併設する小さなギャラリーで、普段からさまざまな展覧会を開催。多くのトリエンナーレやビエンナーレに参加する田村友一郎の新作を展示する。
陶の歴史を感じる空間「旧青木製陶所」
普段は立ち入ることができないギャラリーの2階にフロレンシア・サディールと黒田大スケの作品を展示。それぞれの方法で陶と向き合った作品が見られる。
見晴らしの良い高台にある「旧急須店舗・旧鮮魚店」
急須屋や魚屋など、さまざまな生業の場所として利用されてきた空き家に、人々の営みや、伝承、土地の風景や歴史から生成したドローイングや彫刻を制作する尾花賢一の作品を展示。