西洋と日本の技術・イメージが交差した
明治時代の「視覚開化」

日本の政治・社会・文化状況が大きく変化した時代、明治。
西洋のさまざまな情報が日本に流入したことで、日本の造形はどう変化したのか。
明治時代に生み出された作品から、転換期の視覚文化を問い直す。

多種多様な作品から
明治時代を考える

江戸時代から明治時代への転換は、政治経済体制だけでなく、人々の生活や文化全般を含む、さまざまな状況を変容させた。造形活動の領域でも多彩な動向が生まれた。西洋からもたらされる技術やイメージは日本の人々に驚きを与え、興味を抱かせ、学習や技術向上の意欲をもたらす刺激となった。また、近代国家として歩み始めた日本を、造形によって対外的にどのように示していくか、という意識を芽生えさせもした。このように、西洋からの情報は当時の日本の人々に新たな視覚——新たなものの見え方や見方、見せ方を開いていった。「文明開化」は「視覚開化」でもあったのだ。

本展は、明治時代に焦点を当て、日本のさまざまな造形にどのような変化が起こったのかを考える企画だ。西洋から入ってきたものと日本にあったもの、和洋の技術やイメージが接近し、併存し、混交した。その活況はジャンルの越境にも現れ、絵画と印刷、平面と立体、それぞれが影響し合い刺激し合う中で、実に興味深い造形物が生み出された時代が明治だった。そして、それらの造形に関わった明治の人物たちもまた、一つのジャンルや肩書に収まらず、多様な活動をした人が多い。

絵画・写真・印刷物・彫刻・工芸など、会場には明治時代のさまざまなメディアや造形物が集結する。その多種多様さに、一瞬混乱するかもしれない。しかしその視覚的な混乱もまた、造形面から明治という時代を考えようとする、この展覧会の醍醐味といえるだろう。

愛知県美術館 学芸員 中野悠

1. 明治期の魅力的な作品が集結!

明治期の美術品や工芸品を多数所蔵する神奈川県立歴史博物館を中心に、他の美術館や博物館・個人蔵のものを加え、明治期特有の技術や表現が見られる作品約200点を一堂に展示。

2. 初公開!新発見の作品、資料を多数紹介

本展準備中に、明治時代前半に制作された貴重な油彩画や写真、印刷物が新たに見つかった。これまで見過ごされていた資料や事実と合わせて、初公開となる作品、資料にも注目したい。

3. 東京・横浜⇔愛知 つながる明治のヒト・モノ・コト

陶磁器・七宝など輸出工芸の生産や流通、新しい技術の伝播や図画教育、それらに関わった人物など、明治時代の東京・横浜・愛知のつながりを紹介。

《大倉孫兵衛旧蔵錦絵画帖》より 明治10年代 木版多色摺、折帖 神奈川県立歴史博物館寄託

初代五姓田芳柳《西洋老婦人像》慶應年間-明治初頭 絹本着色*

横山松三郎《旧江戸城写真》明治4年(1871) 鶏卵紙*

池田亀太郎《川鱒図》明治中期 油彩、板*

二世五姓田芳柳《初代愛知県権令井関盛艮像》明治19年頃 絹本著色 愛知県公文書館

森村組《色絵金彩薔薇文蓋付飾壺》明治30年代 陶磁器 株式会社ノリタケカンパニーリミテド

《名古屋城》明治24年(1891) 石版、紙*

寺内信一《裸婦像》明治17年(1884) 陶 とこなめ陶の森

小栗令裕《欧州婦人アリアンヌ半身》明治12年(1879) 石膏 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻

川上冬崖『西画指南』明治4・8年(1871・75) 木版、紙*

初代宮川香山《高浮彫大鷲鯛捕獲花瓶》明治時代前期 陶磁器 神奈川県立歴史博物館寄託 田邊哲人コレクション

※一部作品は場面・展示替えあり
*は神奈川県立歴史博物館蔵

2023年4月14日(金)~5月31日(水)
近代日本の視覚開化 明治
——呼応し合う西洋と日本のイメージ
場所/愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
時間/10:00〜18:00※金曜〜20:00(入館は閉館の各30分前まで)
休館日/毎週月曜日
料金/一般1,500(1,300)円、高大生1,200(1,000)円、中学生以下無料
※( )内は前売券および20名以上の団体料金

「明治」をめぐるリレートーク
会場/アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
定員/各回先着90名
※日時等詳細は美術館ウェブサイトをご覧ください。

スライドトーク(学芸員による展示説明会)
日時/4月30日(日)、5月13日(土)各回11:00〜11:40
5月19日(金)18:30〜19:10
会場/アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
定員/各回先着90名(申込不要)※開始時刻に会場にお集まりください。
料金/無料

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