ダンス・イン・パーク「有頂天時代突入」

 ますます多彩な表現に触れる機会が増えたコンテンポラリー・ダンス・シーンの中で、飛び抜けて輝いているコンドルズ。主宰の近藤良平はダンサー、振付・演出家にして、映像の分野でも才能を見せる気鋭で、人気だけでなくその評価は高い。そんな彼が率いるステキな男性揃いのダンス集団が、愛知県に初登場。一般公募で集まった男子諸君と屋外で踊るという、"お初尽くし"の公演を行った。
 愛知芸術文化センター(AAC)10周年記念公演のひとつとして、愛知県文化情報センターがコンドルズを迎えて制作した企画は「ダンス・イン・パーク『有頂天時代突入』」。文化情報センターではこれまでも、未経験の一般参加者と世界的アーティストとの共同制作や、公共スペースでの無料公演を仕掛けてきたが、今回は折しも栄公園・オアシス21のオープン直後。そこで、オアシス21+AAC'スーパー・ドッキング・セレモニー'と銘打って、両施設をつなぐイベントに仕立てた。
 晴天に恵まれた11月4日ライブ当日。オアシス21の地階から吹き抜けの『銀河の広場』にステージとパフォーマンススペースが仮設で組まれ、その周囲には若干の客席が設けられた。しかし、ライブが始まれば何事かを察知したギャラリーが増えだし、観客の輪は膨れ上がって階段にも地上にも。ファンも通りすがりも関係なく、人々は一緒になって彼らを見つめる。これだけでも、オアシス21を舞台にとったことは意義深かったのではないか。
 コンドルズといえば学ラン、もしくはラクダのシャツ&ももしきがユニフォーム(!?)。『ずんどるこ30』と名付けられた一般参加の男性陣も学ラン姿で、それだけでも奇妙に圧倒される。コンドルズがジャンプやダイブなどの技をシャープにダイナミックに観せれば、ずんどるこは映画やCMで耳なじみのあるスタンダードナンバーのリズムに合わせ、小気味いい動きとフォーメーションを展開する。さらに、近藤は演劇的趣向も取り入れ、緩急の効いた演出を。コント的要素の強いシーンもふんだんで、会場は笑顔に包まれた。
 印象的なのは、子どもたちが興奮した表情を見せたり、真似をしたりする様子。コレはコレで楽しまされた。最後までじっと見届けたおじいちゃん、おばあちゃん方が、どんな感想を持ったかも気になるところだ。そもそも普段、ナマの表現活動に触れる機会の少ない世代には、ダンスのイメージや経験から解き放たれる刺激的な時間となったのではないだろうか。もちろん老若男女を問わず、誰もがダンスの魅力や可能性の"一端"に触れられる好機となったことを信じたい。
 束の間の、偶然の出会いに過ぎないとしても、往来なんだからスレ違うだけで十分。コンドルズに限らず、優れた表現者は世界中にいるのだ。出会いを積み重ねていけばいい。AAC10年の集大成は、相も変らず人と人をつなぐ"場"を育むことだった。でも、これまた十分。それがAAC最大の使命なんである。

小島祐未子(ぴあ中部版 演劇担当)

Photo : Tatsuo Nanbu