POMPEI E I SUOI ABITANTI
古代ローマ文明の輝き
世界遺産 ポンペイ展
「ポンペイ」は、南イタリアのナポリから南東約23kmにある古代都市遺跡として知られている。西暦79年にヴェスヴィオ山の噴火で一瞬のうちに埋没したこの古代都市の発掘の歴史は、1748年のブルボン家のカルロ王(後のスペイン王カルロス3世)の発案によるものが本格的な発掘の第一歩であったが、じつはそれ以前の16世紀に、水路工事のさなか偶然にもポンペイの街の一角に掘り当たっている。しかし、これがかつてロ−マ帝国時代に経済的な基盤のうえに栄えた幻の都市ポンペイの一部であると結びつけることはできなかった。
その後、発掘も体系的な調査方法が取り入れられ、散発的な発掘から区割りを特定し、集中的に発掘するものへと転換し、画期的な成果を挙げるようになっていった。なかでも1863年にナポリの著名な考古学者ジュゼッペ・フィオレッリが発掘総監督に就任以後の発掘は、それまでの方法とは一線を画すものであった。堆積した灰の中の人や物の跡と思われる空洞に石膏を流し込む方法を取り入れることで、生々しい当時の災害の状況イメ−ジが再現されたのであった。20世紀に入っても、発掘作業は継続され、特に1923年からアメデオ・マイウーリが発掘総監督に就任して以来、画期的な発見が相次いだ。そして現在では、新たな発掘よりもこれまでの調査結果を未来に引き継いでいくことに意が注がれている。
この展覧会は、1997年にユネスコから世界遺産として登録されたポンペイ遺跡の発掘品から、当時の人々の生活を探り、21世紀の私たちの生活と比較検証するものである。2000年も前とはいえ、すでにポンペイでは、碁盤目状に整備された都市構造や水道設備が完備していた。そして、発掘された外科手術用の医療器具や住宅装飾の壁画などから、科学技術も芸術も高度に発達していたことが証明されるのである。
さて、本展覧会では、こうしたポンペイの人々の暮しをわかりやすく理解するために、次の6つのセクションに分けて構成している。「人と自然」では代表的な壁画《庭園の風景》(フレスコ画)や彫像、「住まいと都市」では針やはさみ、ランプなどの生活用品を、また「豊かなくらし」では肖像画として知られている《パン屋の夫婦》(フレスコ画)や狩猟器具、農業器具などを展示。そして「市民のくらし」では住宅の復元模型や化粧品、装身具、「科学と技術」では医療器具や計量器具、「世界の広がり」のなかではポンペイの交易状況を立証する装飾品などが展示されており、これらの展示物からポンペイの人々の豊かな暮しが推測されよう。そして、鑑賞の後には、古代人からの「21世紀は私たちより豊かですか」という問いかけを感じるのではなかろうか。
【 B.K.】
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2002年2月8日(金)〜4月7日(日)
愛知県美術館[愛知芸術文化センター10階]
午前10時〜午後6時 金曜日は午後8時まで
(入館は閉館30分前まで)
休館日=毎週月曜
[ただし2月11日(祝)は開館、翌12日(火)は休館]
観覧料=一般 1,200円 (1,000円)
高校・大学生 900円 (700円)
小・中学生 600円 (400円)
*( )内は前売り、および20名以上の団体料金
*ファミリーの方、身体等に障害のある方とその付き添いの方には割引制度があります。
表紙 : 《パン屋の夫婦》 古代フレスコ、55年〜79年、第4様式
《庭園の風景》 古代フレスコ、1世紀中頃
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