無彩色の区画と線に3原色の色面。いまここにあるピート・モンドリアン[1872−1944]の手がけた無表情な一枚の絵に、わたくしたちは絵画の最も普遍的なさまのひとつを見ることができます。純化された精神性。禁欲的にして客観的な調和。その神秘的とすら言える静かな冷たさに安らぎを覚える人は少なくないでしょう。

モンドリアンやテオ・ファン・ドゥースブルフ[1883−1931]を中心にしたグループの発行誌名「デ・スティル」は、オランダ語で「様式」の意味をもっています。1917年に創刊されたこの雑誌には、前世代のアール・ヌーヴォーの美学の代名詞である曲線に対抗して、当初「直線」という名称が与えられようとしていました。しかし、モンドリアンたちがあえて「デ・スティル」の語を選んだのは、いわば第一次世界大戦後という時代の要請にのっとったからでした。画家、彫刻家、建築家といった諸々の芸術家たちによる共同体を核とした「様式」の確立や、絵画や彫刻と建築の統合した「様式」というものをめざした時代に共通した意識によったのです。純粋な色と線による理想的関係をひとつの絵画形式として達成させた時点で、モンドリアンは時代や地域の相を越える普遍的な美を成就しました。自然美は造形美に勝る、という西洋の美術表現を幾世紀にもわたって呪縛してきた古典的な観念は、このオランダ人芸術家の挑んだ「様式」によってくつがえされたのです。

1995年9月に開館100周年をむかえたアムステルダム市立美術館は、近代・現代美術のコレクションで世界的に評価されています。今回の「20世紀美術の冒険」展のために同館から出品される65点の作品は、前世紀末の革新的な二人の画家、セザンヌとファン・ゴッホ以降こんにちにいたるまでにさまざまの芸術家が挑んできた、美術表現に対する好奇心と思索する精神との結実なのです。

【R.T.】 

アムステルダム市立美術館コレクション展 

1997年9月12日(金)─11月3日(月・祝)

愛知県美術館

午前10時〜午後6時 金曜日は午後8時まで

(入館は閉館30分前まで) 月曜日休館

(ただし9月15日、11月3日は開館、9月16日は休館)

観覧料=一般1,100円(900円)

高校・大学生800円(600円)

小・中学生500円(300円)

*( )内は前売り、及び20名以上の団体料金

 

ピート・モンドリアン《赤、黄、青のコンポジション》

1927年、油彩・カンヴァス、アムステルダム市立美術館蔵

1997 Mondrian Estate / Holtzman Trust / SPDA, Tokyo