キャラクター
太宰治は「お伽草子・瘤取り」のなかでこう述べている。この物語には,不正の事件は,ひとつも無かったのに,それでも不幸な人がでてしまった。それは日常倫理では測れないことである。性格の悲喜劇というものであり,人間生活の底には,いつもこの問題が流れている。
人はそれぞれの性格が演出するドラマを日常の中にもっている。
神様,山伏,大名に太郎冠者,お百姓、鬼に狐に猿,おじいさん……狂言に登場するキャラクターである。彼らが当時の世相の中で,日常を笑いと皮肉を交えて演じている。
ムカシ ムカシノオ話ヨ
ミギノ ホオニ ジャマッケナ
コブヲ モッテル オジイサン
瘤とは一体何だろう。責任やプレッシャーからくるストレスだろうか,あるいは逆に,ゆとりだろうか。瘤と楽しく付き合えるひと、苦痛に感じるひと、同じ瘤でも性格や立場の違いにより,感じ方はさまざまである。狂言「こぶとり」のように、キャラクターの差が,大きな結果の相異を生むことがある。
表紙写真はブラックシアター狂言「こぶとり」でおじいさんを演じる茂山千作(右)と野村万作(左)
【写真撮影:安井豊彦】
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