取材時は「パフォーミングアーツ・セレクション 2022」で上演する
鈴木竜演出・振付・出演の『When will we ever learn?』の再演(公演終了)に向けた稽古中。
©Dance Base Yokohama

【おでかけAAC】
新しいクリエーションが広がる
横浜のダンスハウスDaBY(デイビー)

アート・文化施設やモノづくりの現場にでかけてレポートする「おでかけAAC」。
今号はダンスを中心とするパフォーミングアーツの創作現場へ。
劇場で完成した作品を鑑賞する一歩手前の体験ができる実験的な取り組みに注目。
撮影/海野俊明

Dance Base Yokohama(DaBY)
神奈川県横浜市中区北仲通5-57-2
KITANAKA BRICK&WHITE BRICK North3階
https://dancebase.yokohama

地域や文化芸術を愛する方のためにひらかれたダンスハウスとして、2020年6月に設立。コロナ禍で試行錯誤を重ねながら、舞台業界の新しい時代に向けて変革と挑戦を続ける。
運営:一般財団法人セガサミー文化芸術財団

みなとみらい線・馬車道駅からすぐ。再開発が進む北仲エリアの「旧横浜生糸検査所附属専用倉庫」を復元したレトロな建物の3階。

良い作品を生み、好循環させる
オープン&コレクティブな関係

プロフェッショナルなダンス環境の整備とクリエイター育成に特化した事業を企画・運営する、日本では珍しいダンスハウス「Dance Base Yokohama(以下、DaBY)」。「つくる」「そだてる」「あつまる」「むすぶ」をコンセプトに、ダンスクラス、創作活動(レジデンス)、ワークショップ、トライアウトなどが日常的に行われている。開館時間なら、誰でもいつでも見学自由。振付家やダンサーのみならず、さまざまな分野のクリエイター、20〜30代の若いスタッフ、そして観客も含めた多くの人々が垣根なく交流できる。

DaBYのアーティスティックディレクターを務めるのは、愛知県芸術劇場エグゼクティブプロデューサーの唐津絵理。「DaBYでつくった作品を当劇場で世界初演する官民の連携をしています。さらに全国ツアーの再演により作品を進化させて、今後は海外に発信も」。DaBYは開いた窓から光が入り、白や木製家具を基調に観葉植物を飾った明るく風通しの良い空間。ここにも唐津の細やかな配慮が随所に感じられる。「アーティストにとって一番長く生活している場で、気持ちいいインスピレーションが湧くことはすごく大事。健全な創作プロセスでクリエーションに集中できるように、暗くて閉鎖的だった従来のリハーサルスタジオを改善してダンスをひらくことに徹底的にこだわりました。また、作品をつくる環境そのものが社会に開かれ、もっといろいろな方に興味を持ってもらう機会になれば。ここでは常に見られる状態というスタンスで稽古を行います」。

常任のアソシエイトコレオグラファー鈴木竜さんが思うDaBYらしさとは。「以前は、自身が振付以外の照明や美術・衣裳など舞台上のすべての要素を決めて、それをアーティストや技術スタッフに実現してもらう形で創作を行っていました。一方で、DaBYで活動してきた2年半の中では、様々なジャンルのアーティストやスタッフからの意見を取り入れたり、ディスカッションを行うプロセスに重きを置くようになりました。場が開かれている分いろいろな方々と関わるので、一歩踏み込んだコラボレーションの言語化が重要。僕にとっては良い方向になっていますね。これからの目標は、日本のダンスの環境下で僕の作品に関わってくれる人たちがプロフェッショナルな仕事としてやれるように一翼を担い、きちんと継続していくことです」。

気軽に立ち寄れる回廊には、ダンス関連の資料や過去の公演ポスターも。

DaBYを通じて、日本の舞台業界における課題解決の糸口を探す唐津絵理。

文化施設としての可能性が評価され、2020年度グッドデザイン賞を受賞した。

スタジオではこれまで招聘した海外アーティストの貴重なサインも発見。

鈴木竜はイギリスでダンス経験を積み、振付家として横浜ダンスコレクション2017コンペティションⅠで史上初のトリプル受賞。

愛知県芸術劇場×DaBY共同製作
『Rain』が2023年3月に初演

鈴木竜と現代美術作家の大巻伸嗣、音楽家のevalaがタッグを組んで、サマセット・モームによる短編小説『雨』から着想を得た新作の創作に挑む。出演者に愛知県出身で新国立劇場バレエ団プリンシパルの米沢唯と、DaBYレジデンスダンサーを含めた7名も決定。「自分が関わってきた中で最大規模の作品です。8月までの稽古である程度の形になったので、本番1か月前からDaBYでのクリエーションを重ねてどんどん良い状態へ。これまでトライ&エラーを繰り返してきた学びをしっかり生かして、自分のひとつのターニングポイントになるといいなと思います(鈴木竜)」。

振付	鈴木竜  Ryu Suzuki 出演	米沢唯 Yui Yonezawa 美術	大巻伸嗣 Shinji Ohmaki 音楽	evala

2023年3月11日(土)・12日(日)開催
DaBY ダンスプロジェクト『Rain』
場所/愛知県芸術劇場小ホール(愛知芸術文化センター地下1階)
時間/各日14:00〜
料金/一般5,000円、【U25】3,000円
チケット/2023年1月13日(金)より販売
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※3歳以下のお子さまは入場できません。託児サービスあり(有料・要予約)。

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■視覚に障がいがあるお客さまへ
当日会場に点訳パンフレットをご用意しております。事前にパンフレットのデータをEメールでお送りできます。



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