2020年5月開催「A Live vol.1 – SUPER T market」より©Tomoko Mukaiyama_Reinier van Brummelen
映像の広がる空間に音が重なる
KUMANO(熊野)の現実と架空に浸る追体験
従来の形式にとらわれない舞台芸術やインスタレーション作品を発表する向井山朋子。今回はオランダを代表するシネマトグラファー、レニエ・ファン・ブルムレンとの協働で、故郷・熊野の映像とピアノ楽曲を合わせた、極私的な視点による熊野の魅力を表現する。
音楽と映像を重ねることで
熊野の世界を再構築する
熊野から影響を受けた作品を発表してきた向井山朋子が、真正面から故郷や幼少の頃の記憶と向き合った作品を新たに創作。さまざまな場所でいろいろな国の人々と出会ってきたことで、外から見た自身の足元の発見や、自然の畏れを感じる熊野の力を紐解いてみたくなったことがきっかけだという。
主なマテリアルは、2020年春に向井山自ら熊野で撮影した風景や古アルバムの一片、クロード・ヴィヴィエの有名な技巧的難曲「Shiraz(シラーズ)」(1977年)や、ロベルト・シューマンの小品を断片的に使用した向井山のピアノ演奏だ。映像は、台座に置かれたピアノを取り囲むカーテンやスクリーンに投影。「音楽と映像が対等な位置にいるところから始めたい」と、ある時は音楽が空間と時間を引っ張り、ある別の時には映像が空間を支配するという関係を築き、向井山は“観る音楽”、レニエ・ファン・ブルムレンは“観えない映像”をクリエーション。それぞれの分野が持っている“そのものではないこと”を目指すという。
「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作ったといわれる土地に長年住んだからこそ、熊野で感じる自然への畏怖を表現したい」という向井山。リアルタイムのピアノ演奏と、彼女の私的な熊野の映像に包まれることで、我々にとっては見たことのない熊野の一面に出合えるはず。
公演に向けてスクリーン素材を選びながらプロジェクターのテストをしている様子。
向井山朋子 Tomoko Mukaiyama
©Tomoko Mukaiyama
ピアニスト/美術家/アートディレクター。オランダ・アムステルダム在住。1991年国際ガウデアムス演奏家コンクールで日本人ピアニストとして初めて優勝、村松賞受賞。音楽のみならず美術、建築、ファッション、ダンス、写真など幅広い分野とのコラボレーションで独創性を発揮している。
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撮影の場所は、イザナミの眠る熊野の花の窟の境内です。朽ちはじめた椿なのに、あまりに色が鮮明で美しく、生々しくはっと目を引く光景でした。見上げるときにはつぼみや、咲きかけの椿を持つ木もあったのですが、落ちた花にそそられて。
愛知県芸術劇場 プロデューサー 藤井明子
自身が育ってきた熊野という環境を、オランダに長年住む今の朋子さんが切り取り、それをどう再構築するのか、とても興味深い公演です。コンサートであり、映像のインスタレーションでもある、ピアノと多面のスクリーンで表現される彼女の集大成とも言える作品をお楽しみください。
2021年10月22日(金)・23日(土)開催
向井山朋子『KUMANO』(熊野)
場所/愛知県芸術劇場小ホール(愛知芸術文化センター地下1階)
時間/22日(金)は19:00~、23日(土)は14:00~(公演時間は約70分)
料金/一般4,000円、【U25】1,000円
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※未就学のお子さまは入場できません。23日(土)のみ託児サービスあり(有料・要予約)。
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