世界で最も人気の高いコンテンポラリー・ダンスカンパニーの一つ
NDTが5年ぶりに来日

芸術監督のエミリー・モルナーとともに、才能豊かな気鋭振付家と世界中から集まった
選りすぐりのダンサーたちによる共同制作。
オランダ国内外で上演を続けているNDTがコロナ禍を経て
豪華5作品(愛知は4作品上演)の日本ツアー、今から待ち遠しい。
文/作家・ヤサぐれ舞踊評論家 乗越たかお

「これだけ豪華なプログラムなら、オランダまで見に行っても惜しくない...」と思えるほど珠玉の作品群が揃えられているのが、今回のNDT(ネザーランド・ダンス・シアター)公演である。オランダを拠点に世界のコンテンポラリー・ダンスを牽引してきたNDTは、2019年の来日公演でも記録的な成功を収めた。今回はさらに名作から最先端までダンスの流れを俯瞰できる作品が組まれている。今、世界のダンスをリードするアーティストたちの作品を一挙に見られるチャンスだ。そこで個々の作品について見どころを紹介していこう。

01 ガブリエラ・カリーソ振付『ラ・ルータ』
La Ruta

人気カンパニーのピーピング・トム主宰、ガブリエラ・カリーソの演劇的な作風で人間のどろりとした内面を描き出す力は本作でも健在。驚きに満ちたイメージが、次から次に観客を襲っていく。

舞台上は、雨よけのついたボックス型のバス停がある田舎の国道のような場所。そこだけボンヤリと映し出された道路へ、次々に奇妙な人々(や鹿やあれこれ)が訪れる。生死の境もあやふやになり、意表をつく展開が淡々と続く。日本の「ある文化」も象徴的に使われる。どこか懐かしさのあるこの悪夢に、ぜひ迷い込んでほしい。

02 クリスタル・パイト振付『ソロ・エコー』
Solo Echo

クリスタル・パイトの作品は前回のNDT公演でも上演され、23年は自身のカンパニーであるキッドピボットの『リヴァイザー/検察官』でも来日し、多くのファンを得た。二つともたまたま言葉を使う作品だったが、今回はダンスのみの魅力を味わえる。

本作は抽象と具象のバランスが絶妙である。具体的なストーリーがあるわけではないのだが、ダンサーたちの関係性が声なきドラマを紡ぎ出していく。さまざまなことが起こるたび、人と人とが助け合い、つながり合い、そして別れを繰り返していく。ラストは特に胸に迫るシーンが待っている。

03 ウィリアム・フォーサイス振付『ワンフラットシング,リプロデュースト』
One Flat Thing, Reproduced

独自の身体理論でダンスを変革したウィリアム・フォーサイスは、ダンスの地平を大きく広げた巨人である。彼のザ・フォーサイス・カンパニーでは安藤洋子や島地保武らが活躍していた。本作はそんな彼の代表作の一つである。

轟音と共に20人のダンサーが20台の長テーブルを引っ張り出して一面に並べる。舞台空間を侵犯し占拠する長テーブルの周囲で、ダンスは強く、ときにユーモラスに展開していく。動きのセオリーと人間の身体が、こうも見事に溶け合うものか。フォーサイスは、今こそ再認識すべき価値がある人物だと納得させられる作品だ。

04 シャロン・エイアール&ガイ・ベハール振付『ジャキー』
Jakie

シャロン・エイアールはかつてオハッド・ナハリンの代わりにバットシェバ舞踊団の共同芸術監督を務めていたこともある。自身のL-E-Vダンスカンパニーはジャンルを越えた活躍が高く評価されており、かつては柿崎麻莉子も所属していた。彼らの作品が正式に日本で紹介されるのは初めてかもしれない。

そのスタイルは独特。ダンサーたちは密集し、ルルベ(カカトを上げた状態)で細かく揺れ続ける。一人離れては再び集団に呑み込まれ、孤独と安寧が幾重にも反響し合う。「早く強く」のダンスを超えた、複雑で強靱な最先端のダンスなのである。

7月12日(金)ラ・ルータ/ジャキー/ワンフラットシング,リプロデュースト
13日(土)ラ・ルータ/ソロ・エコー/ワンフラットシング,リプロデュースト
※マルコ・ゲッケ振付『アイラブユー,ゴースト』は神奈川のみ。

愛知県芸術劇場プロデューサー 
唐津絵理

世界中から集まった素晴らしいバレエダンサーたちが、今最も人気の高い振付家たちと生み出す極上のパフォーマンスの数々。日本だけの特別プログラムをお見逃しなく。

2024年7月12日(金)・13日(土)開催
NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)プレミアム・ジャパン・ツアー2024
場所/愛知県芸術劇場大ホール(愛知芸術文化センター2階)
時間/12日(金)19:00〜、
13日(土)14:00〜(公演時間は2時間、休憩あり)
料金/SS席14,000円(パンフレット付は15,000円)、S席13,000円
A席10,000円、【A席U25】5,000円、B席7,000円、【B席U25】3,500円
C席5,000円、【C席U25】2,500円
チケット/3月22日(金)より販売
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※4歳以下のお子さまは入場できません。13日(土)のみ託児サービスあり(有料・要予約)。

詳細はこちら

「劇場と子ども7万人プロジェクト」(小・中・高校生招待)対象公演。
詳細は公演ページをご覧ください。

■聴覚に障がいがあるお客さまへ
聴覚支援システムとして「ヒアリングループ(磁気ループ)」が客席の一部で作動します。(13日のみ・要予約)。

■視覚に障がいがあるお客さまへ
事前にプログラムのデータをEメールでお送りできます。

ツアー情報
群馬  
2024年6月30日(日)高崎芸術劇場
神奈川 
2024年7月5日(金)・6日(土)神奈川県民ホール

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