舞台芸術の秋、未知への探求「ミニセレ」の冒険

当劇場のプロデューサー陣が「小ホールで今観てほしい」先駆的・実験的な作品を多様なジャンルから選出した、
ミニシアターセレクション「ミニセレ」。
気鋭のアーティストやクリエイターが限りない創造性で感覚を揺さぶる新境地を開く。

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第21回AAF戯曲賞受賞記念公演
『鮭なら死んでるひよこたち』
演出・羊屋白玉インタビュー

「戯曲とは何か?」をテーマに上演を前提とした戯曲を募集し、新しい価値観と出会いの場の創造を目指すAAF戯曲賞。
審査員の一人でもあり、本公演の演出を務める羊屋白玉に現在進行形のクリエーションについて話を聞いた。

作品紹介

下校時間前の小学校に、カラーひよこを売る不思議な二人組のムー(男)とフー(女)が現れ、物語が展開していく。ノスタルジックな雰囲気が漂う、個性的な登場人物たちの比較的オーソドックスなセリフ劇の戯曲は、羊屋の演出によってどこまで飛躍するのか。愛知初となる羊屋白玉による演出、AAF戯曲賞初のツアーにも乞うご期待。

『鮭なら死んでるひよこたち』の戯曲はこちら

羊屋白玉 Shirotama Hitsujiya

演出家、劇作家、俳優、ソーシャルワーカー。劇場での公演の他、国内外の現代美術の芸術祭に招聘され、サイトスペシフィックな環境で演劇作品を発表。人や物やまちなど、あらゆる現象の看取りや喪失、目に見えない境界などに関するネガティブなテーマに取り組む。2006年ニューズウィーク日本誌「世界が認めた日本人女性100人」に選出。

それぞれがアイデアを持ち寄る
水平な関係のクリエーション

審査会の初期審査からこの戯曲を評価されていたとお聞きしましたが、その理由は。

羊屋白玉(以下、羊) 審査中は、例えば、ソネットのような作品や、絵や写真、この「形式」は戯曲なのかとか、いろんな視点で議論がありました。その中で私は、劇団に所属せず、上演の機会があまりない、「ひととなり」の劇作家の戯曲に注目していました。守安久二子さんは遅咲きながら、ひたむきに書いている一匹狼な方だと思いました。ダイアローグから始まり、「人づくり革命」という政府の方針(2017年)というモチーフが表れて、どんどん革命の気分になっていく作品で、とりとめのないダイアローグという個人的なことが、革命という社会的なことへひっくり返ってゆく構造もすごく面白い。戯曲に、“革命”という言葉が、さらっと一つあるだけってところも憎い。最近は守安さんの心情から戯曲がどう書かれてラストにいくのか探っているところ。私自身のソーシャルワーカーの仕事での体感と、戯曲から得る体感をすり合わせています。しんどいですが楽しいです。

守安さんとはお話しされましたか。

羊 守安さんの子ども時代の体験をもとにしているので、作品の舞台となる小学校を一緒に見に行って、プライベートの話も聞きました。「戯曲の中で守安さん自身が重なるところはありますか」と伺ったときに、ご本人とは真逆の強烈なタイプのガリア夫人という名前を挙げられてとても驚き、実は登場人物にはものすごく幅があるんだなと。守安さんと過ごした時間や話したことは、大切なクリエーションの素材になっています。

出演者(前列写真左より)は、遠藤麻衣、リンノスケ(きっとろんどん)、神戸浩、スズエダフサコ、田坂哲郎(非・売れ線系ビーナス)。羊屋を含めて撮影。

どのようにクリエーションを進めていますか。

羊 5名の出演者は「自分の気持ちや考えを言葉にできる人」という基準でお誘いし、それぞれのソロのシーンがある構成にしています。最初に私の方から作品の「種」を俳優にシェアして、戯曲と自分の間にあるテーマを個人個人が見つけるところからスタート。各々の意見や違う視点をできるだけ取り入れて、仮にかけ離れたものだとしても何か関係があるだろうと組んでいくようにしています。演出家が言ったことを俳優がそのまま演じるのは創作なのかと疑問視しながらやってきたので、今まで通りの根っこは同じ。今回初めてご一緒する、劇場のスタッフにも同様に「種」を伝えて考えてゆけたらなと思っています。

観客の皆さまにメッセージを。

羊 クリエーションに費やした時間とバックグラウンドが少しわかるような作品にしたいです。この作品に向き合った人たちが「個人的なことと社会的なこと」を重なり合わせてどのように拡張するのか、裏返すのか。作品の中でまた戯曲に問いかけるみたいなことができたら面白く思ってもらえるかなと。ツアー各地でどのような反応を受けるのか、怖くもあり楽しみです。

愛知県芸術劇場プロデューサー 山本麦子

札幌、愛知、九州、東京と拠点が異なるバラエティに富んだ出演者が揃いました。戯曲を事前に読んでいただき、上演でぐんと広がる可能性を観にいらしてください。

※次回のAAF戯曲賞の作品公募は、24年度を予定しています。

2023年11月24日(金)〜26日(日)開催
第21回AAF戯曲賞受賞記念公演
『鮭なら死んでるひよこたち』
場所/愛知県芸術劇場小ホール(愛知芸術文化センター地下1階)
時間/24日(金)19:30〜、25日(土)・26日(日)15:00〜
料金/一般3,000円、【U25】1,000円
チケット/10月13日(金)より販売
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※未就学のお子さまは入場できません。25日(土)のみ託児サービスあり(有料・要予約)。

詳しくはこちら

■聴覚に障がいがあるお客さまへ
26日(日)の公演はタブレット字幕を用意しています(無料・事前予約推奨、空きがあれば当日対応可)。



ツアー情報
福岡  2024年2月16日(金)・17日(土)なみきスクエア
北海道(札幌) 2月22日(木)・23日(金・祝)コンカリーニョ

11月23日(木・祝)
小・中・高校生ゲネプロ招待(あいちウィーク)
舞台鑑賞の楽しみや創造することの面白さを知っていただけるゲネプロ(本公演同様の最終リハーサル)に、小・中・高校生を無料でご招待。
※詳細が決まり次第ウェブサイト等でお知らせします。

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