舞台芸術の秋、未知への探求「ミニセレ」の冒険

当劇場のプロデューサー陣が「小ホールで今観てほしい」先駆的・実験的な作品を多様なジャンルから選出した、
ミニシアターセレクション「ミニセレ」。
気鋭のアーティストやクリエイターが限りない創造性で感覚を揺さぶる新境地を開く。

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ヌトミック+細井美裕『辿り着いたうねりと、遠回りの巡礼』
マルチチャンネルスピーカーと身体のための演劇作品

額田大志主宰ヌトミックとサウンドアーティスト細井美裕が「ミニセレ2021」の『波のような人』以来の再タッグ。
作品の骨子を作るための基礎研究やワークショップでトライアンドエラーを経た今、何を表現するのか。

ヌトミック 額田大志 Masashi Nukata

演出家・作曲家・劇作家。1992年東京都出身。東京藝術大学で作曲を学び、並行して舞台芸術芸術の創作を開始し、2016年に演劇カンパニー・ヌトミックを結成。出自の異なるパフォーマーの個性を最大限に活かしたボーダレスな演出を得意とする。CM音楽や舞台音楽など、音楽家としても精力的に活動。第16回AAF戯曲賞大賞を受賞。

人間の知覚への興味を持つ
極めてシンプルな音の世界

細井さんと初めて創った舞台作品では「本当はもっと絶対いいものができるのに」みたいなジレンマがお互いにあり、もう一回やりたいなと。一言で言うと「舞台」ですが、二人の専門分野が離れているからこそ考え方や捉え方が違うので面白いです。昨年のワークショップで「自分たちが求めている演劇」が明確になりました。今回は悲しいセリフのときに悲しい音楽という俳優を補佐する基本的な舞台音楽ではなく、ホワイトノイズのようなものになりそうです。一つの無機質な音に対してパフォーマーがそこにいて何かをすることで、音の聞こえ方や舞台上の見え方が変わり、組み合わせによって鑑賞者の中で自発的に情景や感情が生まれる体験ができないかなと。目の前のお客さまがいないと成立しないすごく繊細な作業なので、能動的に一緒に楽しめたらと思っています(ヌトミック 額田大志)。

細井美裕 Miyu Hosoi

1993年愛知県岡崎市出身、慶應義塾大学卒業。マルチチャンネル音響を用いたサウンドインスタレーションや、屋外インスタレーション、舞台公演、自身の声の多重録音作品制作を行う。NTT ICC無響室、YCAM、東京芸術劇場コンサートホールなどで作品を発表。「SHURE24:世界のオーディオカルチャーをプッシュする24人」に選出。

演劇とインスタレーションの
ボーダーを探り、発見したこと

新作に向けて、やることやらないことを額田くんと話し合いました。音はノイズだけでも世界を十分広げられるんじゃないか。その中でもやれることはスピーカーの見た目や音量、チャンネル数などたくさん。鑑賞者には「くらってほしい」です。脳みそで理解するよりも感覚的にファッてくる瞬間が1秒あればいい。演劇は舞台上で起きていることを自分が受け止めにいくイメージですが、インスタレーションは何も感じなければ通り過ぎることもできるし、深く潜って感じることもできます。その間となると、普段の演劇よりも「この音は何を意味しているんだろう」と少し踏みこんでもらえたらうれしいです。マルチチャンネルスピーカーは最近流行っていますが、システム的には昔からあるもので「そもそも何だっけ?」と考えを巡らしてほしいなと。東京ではなく地元愛知での上演、攻めてみます(細井美裕)。


基礎研究で音の聞こえ方のパターンを一つひとつ実験し、22 年12月に発表兼ワークショップ【Theater Idioms】を行った。

マルチチャンネルスピーカーと身体の実験の様子

愛知県芸術劇場プロデューサー 山本麦子

個人的で秘めやかな、でも個人ではどうしようもないことが淡々と進んでいく作品です。言葉にできない何かを表現するための音響、劇場空間でしか味わえない体験になりそうです。

2023年10月27日(金)〜29日(日)開催
ヌトミック+細井美裕『辿り着いたうねりと、遠回りの巡礼』
マルチチャンネルスピーカーと身体のための演劇作品
場所/愛知県芸術劇場小ホール(愛知芸術文化センター地下1階)
時間/27日(金)19:00〜、20:30〜
28日(土)11:00★〜、12:30★〜、17:00〜、18:30〜
29日(日)11:00〜、12:30〜、15:30〜、17:00〜
(公演時間は各約30分、休憩なし)
料金/一般1,000円、【U25】500円
チケット/9月15日(金)より販売
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※未就学のお子さまは入場できません。上記★の回のみ託児サービスあり(有料・要予約)。

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■視覚に障がいがあるお客さまへ
事前にパンフレットのデータをEメールでお送りできます。
また、29日(日)11:00の回の開演前に、視覚に障がいがある方を対象にした舞台説明のバックステージツアーを開催します(要予約)。



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