舞台芸術の秋、未知への探求「ミニセレ」の冒険

当劇場のプロデューサー陣が「小ホールで今観てほしい」先駆的・実験的な作品を多様なジャンルから選出した、
ミニシアターセレクション「ミニセレ」。
気鋭のアーティストやクリエイターが限りない創造性で感覚を揺さぶる新境地を開く。

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サウンドパフォーマンス・プラットフォーム特別公演
安野太郎 ゾンビ音楽
『大霊廟Ⅳ ー音楽崩壊ー』

音と身体を核とした、舞台芸術の新たな表現にチャレンジする
「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム」の特別公演が決定。
国内外問わず活躍するアーティストが約7年ぶりに当劇場に再登場し、最新作を発表する。

安野太郎 Taro Yasuno

作曲家。1979年生まれ。日本人の父とブラジル人の母を持つ。2002年東京音楽大学作曲科卒業、04年情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了。代表作に「音楽映画」シリーズや「サーチエンジン」、「ゾンビ音楽」シリーズがあり、2作品のCDをリリース。19年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展日本館代表作家の一人。愛知県立芸術大学准教授。

© 古泉智浩

人間の美学に基づかない
エキセントリックな「ゾンビ音楽」

文字自体からもおどろおどろしさが漂う「ゾンビ音楽」は、2012年から継続している作曲家・安野太郎のライフワーク。プログラミングされたロボットがリコーダーを自動演奏し、オリジナル楽曲を奏でる。生命や意思がなく、人間のように微細なコントロールが効かない機械によって奏でられるリコーダーは、普通の人間が好むハーモニーから外れた奇妙な音に聴こえ、音楽の生ける屍(しかばね)として「ゾンビ音楽」を提唱。安野はこの活動を通じて、テクノロジーと社会、人間の関係性を背景に、音楽自体の価値基準を問い直しており、特異な音楽とビジュアルイメージを伴って、世界的な評価を得てきた。15年「フェスティバル/トーキョー15」の参加をきっかけに、巨大な足踏みふいご装置による上演スタイルが完成。以降この編成を『大霊廟』と呼び、“音楽家のエコシステム”に注目した22年京都での大型公演「『大霊廟Ⅲ』ーサークル・オブ・ライフー」は大盛況を収めた。

『大霊廟』シリーズの過去公演動画

安野ならではの葛藤とは…

一方で、21年より愛知県立芸術大学で教鞭を執り始めた安野は、音楽大学を出ても音楽家として食べていくのは極めて困難な社会があり、その音楽大学で学生たちを指導し世に送り出す立場になった大学教員の自分という2つの現実に葛藤を抱く。本公演の制作にあたり、音楽家を取り巻く環境や社会における役割について、音楽にまつわるさまざまな人々に取材やインタビューを実施。「音楽教育」に焦点を当て、ドキュメンタリーにゾンビ音楽を掛け合わせた作品を生み出す。安野の当劇場の出演は「サウンドパフォーマンス・プラットフォーム」シリーズの前身となる「AACサウンドパフォーマンス道場」(07・11年)、「パフォーミングアーツ・セレクション」(16年)以来。音楽に精通している方もそうでない方も、唯一無二の世界観に触れてみてはいかが。

公演に向けた実験の様子(愛知県立芸術大学)。「作品を通して、 音楽大学や音楽教育について考えている」と安野。

愛知県芸術劇場プロデューサー 藤井明子

ハイテクなのかローテクなのか、摩訶不思議な作品です。人工知能(AI)の発達により大きく社会が変化している現在、これからの世の中について思いを巡らせるきっかけになるかもしれません。

2023年10月14日(土)・15日(日)開催
サウンドパフォーマンス・プラットフォーム特別公演
安野太郎 ゾンビ音楽『大霊廟Ⅳ ー音楽崩壊ー』
場所/愛知県芸術劇場小ホール(愛知芸術文化センター地下1階)
時間/14日(土)14:00〜、18:30〜、15日(日)13:00〜(公演時間は各約80分、休憩なし)
料金/一般3,000円、【U25】1,000円
チケット/9月15日(金)より販売
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※未就学のお子さまは入場できません。15日(日)のみ託児サービスあり(有料・要予約)。

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