フェアクリエーションの
新しい価値観で育てるダンス

文化庁「令和4年度(第73回)芸術選奨」文部科学大臣賞受賞
愛知県芸術劇場エグゼクティブプロデューサー
唐津絵理インタビュー

本受賞では「愛知県芸術劇場×Dance Base Yokohama パフォーミングアーツ・セレクション2022」の全国ツアーを行い、
ダンスの多様性を示したことが高く評価された。
今年上演する2つのプロジェクトを中心に、唐津が今考える作品づくりとは。

芸術創作プロセスを再定義し
健全な創造環境に努める

唐津がアーティスティックディレクターを務めるダンスハウス「Dance Base Yokohama(DaBY)」で創作。2021年「ダンスの系譜学」「鈴木竜トリプルビル」に続く公演が、今年の春に初演を終えて8月のツアーに向かうダンスプロジェクト『Rain』、9月初演の「パフォーミングアーツ・セレクション2023」となる。

DaBYダンスプロジェクトで大事にしていることはありますか。

唐津(以下、唐) 当劇場とDaBYで共同製作した作品を当劇場で初演した後、日本各地や海外で上演し、再演を重ねてアップデートします。DaBYのリハーサルスタジオは、従来の閉鎖空間を改善し、誰にでもダンスをひらく設計にこだわりました。健全なプロセスで創作すれば作品も充実していくと思うんです。

『Rain』のツアーへの思いをうかがいたいです。

唐 「空間全体を身体で感じる」が本作のコンセプト。原作の短編小説『雨』はコロナ禍にすごくリアリティを感じます。雨の気配や湿度、南の島の匂い、日々の閉塞感とか目に見えないいろいろなものを体感してほしいです。言語では表せない次元のものを感じられるのがダンスの面白さだと思っています。完売した初演では、身体に加えて大巻伸嗣さんの美術とevalaさんの立体音響も一体となる空間を観客の皆さんと共有できたかなと。上演で効果的だったこと、そうでなかったことをさらに突き詰めてツアーに挑みます。愛知県出身の世界的なダンサー米沢唯さんにも出演していただくので、ぜひ観てほしいです。

「パフォーミングアーツ・セレクション2023」はどのような内容になりますか。

唐 各会場で2〜3作品をセレクトしたショーケース形式のツアーを行います。国際的に活躍している一流アーティストによる新作3作品を創作中です。中には社会との関わりをテーマに「ダンスが何に役立てられるか」を考え、その応答をダンスで表現する方も。多様な作品を上演するので、それぞれの個性を楽しんでお気に入りを見つけてください。

今後の展望をお聞かせください。

唐 今年も質の高い作品をもって地方をツアーします。また、最近はフェアクリエーションという造語をよく使うのですが、フェアトレードのように安心安全な製品を作るためには、生産過程も重視する必要があります。舞台作品でも創造プロセスから見直し、お客さまにもその過程を意識していただくことによって、舞台業界の発展の後押しができるようにメッセージを発信していきたいと思っています。

愛知県芸術劇場×DaBYダンスプロジェクト
『Rain』

鈴木竜(DaBYアソシエイトコレオグラファー)×大巻伸嗣(現代美術作家)×evala(サウンドアーティスト)による、舞踊と美術と音楽の三位一体。イギリスの小説家・劇作家サマセット・モームの傑作短編小説『雨』(1921)を題材にしたライブパフォーマンスの体験を通じて、生きている感覚が観客に強く響く。

ダンス 米沢唯

大巻伸嗣さんの美しい美術を目の当たりにした時の感動と、初日の幕が降りたときの安堵と喜びは忘れられません。8月のツアーで新しい『Rain』が誕生する場に立ち合えることを楽しみにしています。

2023年8月18日(金)開催
愛知県芸術劇場×DaBYダンスプロジェクト
鈴木竜×大巻伸嗣×evala
『Rain』
場所/幸田町民会館さくらホール
時間/18:30〜(公演時間は約70分、休憩なし)
料金/プレミアムシート5,000円、一般3,000円、【U25】1,000円
チケット/7月2日(日)より販売(幸田町民会館、チケットぴあで取扱い)
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※3歳以下のお子さまは入場できません。
※国内外ツアーあり(東京・福岡・香港)。

詳しくはこちら

「劇場と子ども7万人プロジェクト」(小・中・高校生招待)対象公演。
詳細はこちらをご覧ください。

■視覚に障がいがあるお客さまへ
事前にパンフレットのデータをEメールでお送りできます。



米沢唯・山田怜央・鈴木竜によるダンスワークショップ
8月15日(火)愛知県芸術劇場大リハーサル室(愛知芸術文化センター地下2階)
※詳細が決まり次第ウェブサイト等でお知らせします。

パフォーミングアーツ・セレクション2023



DaBYで創作した新作の世界初演を、「ミニセレ」として上演。愛知から世界に創造・発信していく。イリ・ポコルニ(元NDT)演出・振付によるDaBYレジデンスダンサー出演作、島地保武×環ROYの男性デュオ、柿崎麻莉子×アリス・ゴドフリーの女性デュオの3作品。

2023年9月16日(土)・17日(日)開催
愛知県芸術劇場×Dance Base Yokohama
パフォーミングアーツ・セレクション2023
場所/愛知県芸術劇場小ホール(愛知芸術文化センター地下1階)
時間/16日(土)14:00〜、18:30〜、17日(日)14:00〜
料金/一般4,500円、【U25】2,500円
チケット/6月30日(金)より販売
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※3歳以下のお子さまは入場できません。16日14:00は託児サービスあり(有料・要予約)。
※国内ツアーあり(群馬・大阪・東京)。会場により演目が異なります。

詳しくはこちら

柿崎麻莉子によるワークショップ
9月11日(月)
※詳細が決まり次第ウェブサイト等でお知らせします。

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