撮影:江成常夫

開館30周年記念
展覧会 岡本太郎

大阪万博の《太陽の塔》や渋谷駅の巨大モニュメント《明日の神話》などで知られる岡本太郎。
代表作はもちろんのこと、彼が撮った写真や生活用品のデザインなど、
多方面にわたる彼の活動の全貌を紹介する大回顧展が行われる。

いまなお若者たちに愛される
岡本太郎、その芸術に迫る

日本の戦後美術史において、岡本太郎ほど有名な作家はなかなかいないだろう。「芸術は爆発だ!」というセリフは特に知られているし、テレビのコマーシャルやバラエティ番組で見せた一風変わったそのキャラクターは、お茶の間に強烈な印象を残し、人々がなんとなく思い描く“ゲイジュツ家”像を形作っていったと言っても過言ではない。

だから美術にさほど興味のない人々にも岡本太郎という名前は浸透しているし、マンガ『20世紀少年』などで《太陽の塔》を知った世代も増えていることだろう。しかしながら、「じゃあ岡本太郎って、いったい何をやった人なの?」と尋ねられて、ちゃんと答えられる人はどれくらいいるのだろうか。実際、その抜群の知名度に比べると、岡本太郎の芸術の詳細はあまり知られていないのである。

彼の業績について人々が明確にイメージできないのは、岡本太郎の活動が実に多面的に展開されたこともその理由の一つかもしれない。ある時、あなたの本職はなんなのか、と尋ねられ「しいて言えば人間ですね」と答えた彼は、多くの日本人が重きを置く肩書などというものに、これっぽっちの価値も見出さなかった。そして、自分の創作意欲の赴くままに、絵画や彫刻はもちろんのこと、建築や写真、生活デザインやパブリックアートなど、ありとあらゆる媒体を用いて、自らの芸術を人々に届けようとした。

そんな彼の残した芸術を余すところなく伝えるために企画されたのが、今回の大回顧展である。会場ではあまり難しいことを考えず、岡本太郎の作品と“対決”してみて欲しい。人々が芸術を頭で理解するのではなく、全身でぶつかって体感する。それこそが岡本太郎の願いだったのだから。

愛知県美術館 主任学芸員 石崎尚

岡本太郎 Taro Okamoto

1911年神奈川県生まれ。30年東京美術学校(現・東京藝術大学)退学後、渡仏。パリ大学で哲学や心理学、民族学を学ぶ。抽象芸術やシュルレアリスムの運動に参加するなど前衛的な活動を続け、40年に帰国。中国への出征を経て、47年本格的に創作を再開。53年以降、サンパウロ、ヴェネチアの各ビエンナーレほか国際的に活動する。70年大阪万博に《太陽の塔》を発表。89年フランス政府より芸術文化勲章受章。96年没。

見どころ

1.最初期から晩年までの代表作・重要作を網羅

岡本作品のほぼすべてを所蔵する川崎市岡本太郎美術館と岡本太郎記念館が主催者として参画。両館の全面協力のもと、代表作・重要作が勢ぞろいするほか、国内各地の美術館からの出品作品を加え、岡本芸術の全容に迫る。

2.最大規模のスケールで大阪、東京、愛知を巡回

大阪、愛知では初めての回顧展実現の機会となるだけでなく、没後開催された回顧展の中で最大規模といえる大回顧展。
※大阪会場は既に終了

3.岡本芸術と人間・岡本太郎を体感

いまなお人々を惹きつけ、世代を超えて共感を広げる岡本太郎。本展は、岡本芸術の特質と本質、さらにはその底流にある人間・岡本太郎を、展覧会場の空間体験をとおして一人ひとりが感知する体感型の展覧会。

第1章:“岡本太郎”誕生 ―パリ時代―

《空間》1934/54年 川崎市岡本太郎美術館蔵

《露店》1937/49年 ソロモン・R・グッゲンハイム美術館蔵

《傷ましき腕》1936/49年 川崎市岡本太郎美術館蔵

第2章:創造の孤独 ―日本の文化を挑発する―

《燃える人》1955年 東京国立近代美術館蔵

《森の掟》1950年 川崎市岡本太郎美術館蔵

第3章:人間の根源 ―呪力の魅惑―

《愛撫》1964年 川崎市岡本太郎美術館蔵

《縄文土器》1956年3月5日撮影(東京国立博物館)川崎市岡本太郎美術館蔵

第4章:大衆の中の芸術

《日の壁(旧東京都庁舎壁画原画)》1956年 岡本太郎記念館蔵

第5章:ふたつの太陽 ―《太陽の塔》と《明日の神話》―

《明日の神話》1968年 川崎市岡本太郎美術館蔵

《太陽の塔》1970年 万博記念公園 ※本展では1/50の作品を展示

第6章:黒い眼の深淵 ―つき抜けた孤独―

《雷人》1995年(未完)岡本太郎記念館蔵

岡本太郎ポートレイトおよびすべての作品 ©岡本太郎記念現代芸術振興財団

2023年1月14日(土)~3月14日(火)
展覧会 岡本太郎
場所/愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
時間/10:00〜18:00
※金曜〜20:00(入館は閉館30分前まで)
休館日/1月16日(月)、2月6日(月)、2月20日(月)、3月6日(月)
料金/一般1,800(1,600)円、高大学生1,400(1,200)円、中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金

スライドトーク(学芸員による展示説明会)
学芸員による作品解説を行います。
日時/2023年1月21日(土)、1月29日(日)、2月4日(土)
各回11:00~11:40、 2月24日(金)18:30~19:10
会場/アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
定員/各回先着90名(申込不要)
料金/無料

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