曽我蕭白《群仙図屏風》(部分)明和元(1764)年 紙本着色 六曲一双 文化庁蔵

さまざまな“仕掛け”を読み解けるか―
「曽我蕭白 奇想ここに極まれり」

近年の江戸絵画ブームで注目の集まる「奇想」の絵師たち。その中でも特に「奇想」という言葉の似合う曽我蕭白の画業を明らかにする。

約十年ぶりとなる大規模回顧展
蕭白の知られざる側面に迫る

 江戸時代中期に伊勢松阪や播州高砂を中心に活躍した曽我蕭白(1730~1781)は、その奇怪な画風や奇人・変人というエピソードが大きく取り上げられ、「奇想」の絵師として紹介されてきた。本展覧会では、蕭白が影響を受けた絵師たちの作品とともに、蕭白の画風変遷が分かるように制作年代順に展示する。31歳で《林和靖図屏風》(三重県立美術館蔵)を制作するまで、数点の作品を描いたことは分かっているが、既に画風が確立しているこの時期まで蕭白が何をしていたのかは明らかになっていない。35歳時に描かれた《群仙図屏風》(文化庁蔵)は極彩色で飾られた仙人たちの異形な姿から蕭白の代表作とされている。蕭白の「奇想」というイメージはこれら30代頃の作品によって作られているのではないだろうか。晩年に京に定住した蕭白が、謹直な構成と細緻な描き込みを特徴とする「山水図」を多く描いていたことは大きく取り上げられることが少ない。
 蕭白は作品のなかに鑑賞者の知識を前提とするさまざまな“仕掛け”を込めた。この“仕掛け”を読み解いていくことにより、蕭白が何を考えて作品を制作したのか、そして晩年の画風に変化していく理由も見つけることができるのではないだろうか。展示された作品を初期から晩年まで追っていくことで、「奇想」という言葉から連想されるイメージは蕭白の一側面のみを捉えたものであることを知っていただきたい。醜怪な画風によって人の目を喜ばせるための作品、と批判された蕭白の作品には、その画面の奥に蕭白の声が隠されている。―由良 濯(愛知県美術館 学芸員)

1760年 宝暦十年 31歳

曽我蕭白《林和靖図屏風》宝暦十(1760)年 紙本墨画淡彩 六曲一双 三重県立美術館蔵

1764年 明和元年 35歳

曽我蕭白《群仙図屏風》明和元(1764)年 紙本着色 六曲一双 文化庁蔵

ca. 1764 明和元年頃

曽我蕭白《松鷹図(旧永島家襖絵)》明和元(1764)年頃 紙本墨画淡彩 五面 三重県立美術館蔵

曽我蕭白《唐獅子図》(部分)明和元(1764)年頃 紙本墨画 双幅 朝田寺蔵

1775~1781年 安永年間 晩年

曽我蕭白《楼閣山水図屏風》紙本着色 六曲一双、近江神宮蔵

2021年10月8日(金)~11月21日(日)開催
曽我蕭白 奇想ここに極まれり
場所/愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
時間/10:00~18:00 ※金曜は~20:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日/毎週月曜日
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