ミクロコスモス(小宇宙)
「宇」という文字は上下四方すなわち空間を、「宙」は往古来今すなわち時間を意味する。つまり、漢字の表す「宇宙」とは時空のことである。
一方、「ユニバース」なる言葉は、「普遍性」を意味するラテン語から生まれた。天体を普遍的な原理が支配するからくりと捉えたのである。
もうひとつ、宇宙を表す言葉として、アリストテレスが使ったギリシア語「コスモス」がある。コスモスとは、元来、調和する美、秩序ある完全体を意味する言葉だという。コスメティック(化粧品)なる言葉も、この「調和する美-コスモス」から派生したものらしい。
天体というマクロコスモス(大宇宙)に対して、ギリシア人は人間をミクロコスモス(小宇宙)と呼び、その美において等価のものとした。表現された空間を作り出す砂になぞられた結晶のひとつひとつもまた、そこに美しい調和を見ることができる。
勿論、芸術作品そのものが、見、聴きする人の内側にそれぞれの小宇宙を生み出すのだ。
表紙は、荒木高子「砂の聖書」(1983年作 愛知県美術館蔵 撮影:南部辰雄)。
|